僕と幼馴染と友情物語   作:sata-165

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秀吉編のデートです。
イチャイチャはあんまないです。

6/24
雄二編のデートプランが出てこない。
水着はみんなで買いに行こうかと思ってるので出せないし……
何かアイディアないですかね



儂と歌舞伎と衝撃の帰宅

「ねぇ秀吉君。日曜日って暇かしら?」

 

紫織との帰り道、突然日曜日の予定を聞かれたのじゃ

 

「む? 特に予定は無いのじゃが、どうしたのじゃ?」

 

「父さんの知り合いが歌舞伎役者でチケットを譲ってくれたから一緒に行かないかしら?」

 

「歌舞伎とな?! 喜んで行くのじゃ。して、演目は何じゃ?」

 

「ふふふ、喜んでくれたのは嬉しいけど、興奮しすぎよ」

 

「す、すまんのじゃ」

 

儂は思わず興奮して紫織の肩を掴んでしまっていたようじゃ。普段ならば持ち前の演技力で平静になれるのじゃが、生の歌舞伎が見られるとあって素になってしまったようじゃの。

 

「演目だったわよね。えっと、勧進帳ね」

 

紫織はチケットを確認しながら演目を告げる。

 

「勧進帳じゃと!! それは真かのっ?!」

 

「え、えぇ、そう書いてあるわよ」

 

紫織はチケットを儂に見せてくる。確かに演目の欄には『勧進帳』と書いてあり

 

「しかも、1等席ではないか!!」

 

座席を見ると1等席の一番前の席だった。知り合いが歌舞伎役者とは言ったが、まさかこんな良い席で見れるとは思ってなかったのじゃ。

 

「そんなに喜んでもらえると、こっちまで嬉しいわ」

 

「喜ぶのは当然じゃ!! 勧進帳と言えば歌舞伎十八番の中でも一、二を争うほどの人気じゃし、『読み上げ』や様々な『見得』など見どころも多いのじゃ。なにより儂の好きな『源氏物語』の内容なのじゃ」

 

儂が古典を学ぶようになったのは源氏物語に魅せられたからじゃ

 

「ふふふ、ほんとに好きなのね。(少し無理を言ったけど)チケットを貰ってよかったわ」

 

「当然じゃ。勧進帳を始め歌舞伎はDVDで何度も見た事はあるのじゃが、生で見るのは初めてじゃからの」

 

歌舞伎のチケットとなると高校生が買うには少し高いし、あのような所に一人で見に行くのも気が引けるのじゃ。

 

「それじゃ、日曜日の9時頃に駅前でいいわね。」

 

「わかったのじゃ。楽しみにしておくのじゃ。」

 

儂は早くも日曜が楽しみで胸が躍り始めていた。

 

 

 

 

「あら? 秀吉君 早いわね」

 

「うむ。今日は早く目が覚めてしまったからのぅ。」

 

昨日は姉上が乙女小説を読み始める前に寝付いたから確か9時頃だったはずじゃ

 

「ふふふ、じゃ少し早いけど行きましょうか」

 

「そうじゃの。早い分には問題なかろぅ」

 

待ち合わせの時間には10分以上早いが電車やバスなどで存外時間を使う場合もあるので儂らは電車に乗り目的地へと向かった

 

 

 

 

「ふぅ~、移動だけで疲れたのじゃ」

 

やはり文月市は少々交通の便が悪いのぅ、都心まで来るのに1時間近くかかってしまったのじゃ

 

「そればっかりは仕方ないわね。もう少しで着くはずなんだけど……あったわ。」

 

紫織が指さした先には

 

「おぉっ、本物の歌舞伎座なのじゃ!!」

 

テレビや雑誌で見たことのある歌舞伎座の建物があった。

 

「感動しているところ悪いんだけど、早めに入ってお弁当を買っちゃいましょう。」

 

儂らは歌舞伎座へと入り幕の内弁当を買ったのじゃ。無論、誘ってくれた礼と言う事で儂が代金は払ったのじゃ

 

 

 

 

―――『して又、修験に伝わりしは』

 

『阿羅邏仙人より照普比丘に授かる金剛杖は、かかる霊杖なれば、我が祖役の行者、これを持って山野を経歴し、それより世々にこれを伝う。』

 

『仏門にありながら、帯せし太刀はただ物を嚇さん料なるや。誠に害せん料なるや。』

 

『これぞ案山子の弓に等しく嚇しに佩くの料なれど仏法王法の害をなす、悪獣毒蛇は言うに及ばず、たとえ人間なればとて、世を妨げ、仏法王法に敵する悪徒は一殺多生の理によって、忽ち切って捨つるなり。』

 

『目に遮り、形あるものは切り給うべきが、モシ無形の陰鬼陽魔、仏法王法に障碍をなさば何を以て切り給うや。』

 

『無形の陰鬼陽魔亡霊は九字真言を以て、これを切断せんに、なんの難き事やあらん。』

 

『して山伏の出立は』

 

『即ちその身を不動明王の尊容に象るなり。』

 

『頭に戴く兜巾は如何に。』

 

『これぞ五智の宝冠にて、十二因縁の襞を取ってこれを戴く。』

 

『掛けたる袈裟は』

 

『九会(くえ)曼茶羅の柿の篠懸(すずかけ)。』

 

『足にまといしはばきは如何に。』

 

『胎蔵(たいぞう)黒色のはばきと称す。』

 

『さて又、八つのわらんづは』

 

『八葉の蓮華を踏むの心なり。』

 

『出で入る息は』

 

『阿吽(あうん)の二字。』―――

 

今、舞台では勧進帳の見どころの一つ、弁慶と富樫の『山伏問答』が繰り広げられておるのじゃ。やはり、本物を見ると迫力が違うのじゃ。儂はおもわず身を乗り出してしまいそうになるぐらい興奮していた。

 

――『これなる山水の、落ちて巌に響くこそ、鳴るは瀧の水、鳴るは瀧の水。』

 

弁慶が白紙の勧進帳を読み終え、義経達を先に行かせて、富樫に一礼する。いよいよ、勧進帳もクライマックスなのじゃ

 

ドン ドン ドン ドン ドン ドン

 

パチパチパチパチパチ

 

飛び六法で弁慶が花道を引いてゆき幕が下りると、会場中から拍手が巻き起こった。

 

「さすがにこの距離で見ると迫力が違うわね。物語の世界に引き込まれるような感じだったわ。」

 

「うむ、見得の切り方といい、声の張り方と言い、とても参考になったのじゃ。」

 

「それじゃ、演目が終わったら舞台裏に行ってみる?」

 

「よいのかの? 役者の方々も忙しいと思うのじゃが。」

 

舞台裏に入れるとは紫織は何者なのじゃ?

 

「えぇ。ちょうどチケットのお礼もいいたかったから話は通してあるわ」

 

「ならば、同行させてもらうのじゃ」

 

その後、儂らは幕間を利用して弁当を食した後に演目を最後まで見終わったのじゃ

 

 

 

 

「すいません。春麻さんはいらっしゃいますか?」

 

「ん? 紫織ちゃんか。いらっしゃい」

 

紫織が楽屋に入り名前を呼ぶと奥から30代後半と言ったところの男性が出てきた。よく見ると先程の舞台で義経を演じていた人のようじゃ

 

「先日は無理を言ってチケットを譲っていただきありがとうございました」

 

「あ~、そんなに気にしなくていいよ。俺の分のチケットが余ってたしちょうどよかったからね。それよりも昂史さんは元気にしてるかい?」

 

「えぇ。父は相変わらず元気にしてます。」

 

「少し良いかの?」

 

儂は紫織と春麻さん(?) の会話に区切りがつくのを見計らって話しかける

 

「あ、紹介してなかったわね。こちらが倉崎 春麻さん、父さんの友人で今回チケットを譲ってくれた方よ。それと、この人があたしの恋人で木下 秀吉くんです。」

 

「木下秀吉なのじゃ。よしなに。」

 

「へぇ~、君が紫織ちゃんの彼氏か。確か演劇部のホープって言われてるらしいね。倉崎はうちの屋号でいっぱいいるから俺のことは春麻って呼んでくれ」

 

春麻さんが手を差し出してきたので儂は春麻さんと握手を交わす。

 

「ならば儂も秀吉でよいのじゃ。ところで、春麻さんはさっきの義経を演っておった方じゃよな?」

 

「まぁ今回はうちの家が主催だから、ほとんどうちの役者だよ。それよりも歌舞伎好きなんだろ? 今日の舞台見てどうだった?」

 

「うむ。見得の切り方といい、飛び六法といい、歌舞伎の世界に引き込まれるようで凄かったのじゃ。」

 

「感動してくれたならこっちとしても嬉しいよ。紫織ちゃんに聞いたけど秀吉君は写しが上手いんだってね。ちょっとさっきの舞台の写しをやってくれないか?」

 

写しと言えば模写のことじゃったな。折角じゃし春麻さんの演っておった義経の台詞を写してみようかの

 

「ふふっ、秀吉君の腕前は相当ですから、驚かないでくださいね。」

 

「その自信を見ると期待できそうだね」

 

「いかに弁慶。道々も申す如く、行く先々に関所あっては、所詮陸奥までは思いもよらず、名もなき者の手にかからんよりはと、覚悟は疾に極めたれど、各々の心もだし難く、弁慶が詞に従い、斯く強力とは姿を替えたり。面々計らう旨ありや。」

 

儂は勧進帳にある義経の台詞を言い終えると

 

「ど、どうじゃったかのぅ?」

 

春麻さんに感想を聞く。儂の技術は本職の役者にはどう映っているんじゃろうか?

 

「いやぁ~驚いた。自分の声を生で聴く機会なんてないからな。」

 

ガチャ

 

「春麻 勧進帳の稽古か?」

 

儂らの後ろのドアが開き50近くの男性が出てきた。誰じゃろう?

 

「あ、おやっさん。実はかくかくしかじかで」

 

「ほぅ、演劇部か。ボウズ 女声は出せるか?」

 

「う、うむ? お主は?」

 

「この人は宗司郎さん。うちの家の家長だよ」

 

儂が目の前の人物に困惑しておると春麻さんが紹介してくれた

 

「女声じゃったな。あ、あー、あー、ゴホン。これでどうじゃ?」

 

「これなら女形も立役も出来そうだな。ボウズ 興味あったらうちに来て歌舞伎やらないか?」

 

「うむ。実に魅力的な誘いではあるのじゃが、少し考える時間が欲しいのじゃ。」

 

儂は宗司郎さんの誘いを断った。さすがに仕事となると一生に関わるものじゃし、そう簡単に決めるわけにもいかないのじゃ

 

「そうか。まぁ気が向いたら連絡をくれ」

 

そう言うと儂に連絡先の書いてある紙を渡してきた

 

「うむ。今日はありがとうございました。」

 

 

 

 

「それで、秀吉君は将来についてどう考えているの?」

 

歌舞伎座を後にしてから買い物などをして暗くなってきたので家へと帰る途中に紫織が口を開いた

 

「歌舞伎は魅力的だとは思うのじゃが、まだ具体的なイメージがないのぅ。演劇で培ったものを活かせるものにしたいとは思っておるのじゃが。」

 

「好きな事を活かせるなら一番よね。秀吉君がやりたいと思うなら、あたしはそれを応援するわ」

 

「ありがとうなのじゃ。」

 

「気にしなくていいわ。あたしは一所懸命な秀吉君の顔が二番目に好きだから」

 

「……一番は何じゃ?」

 

なんとなく嫌な予感がするが一応聞いておく

 

「勿論、笑顔よ」

 

「よ、よかったのじゃ。てっきり泣き顔と言うのかと……」

 

「それは3番目よ。4番目は困ってる顔で――」

 

「もういいのじゃ。それより、もう家に着いたぞい」

 

「あら残念ね。今日は楽しかったわ。……ありがとうね。」

 

「うむ。儂も有意義な時間を過ごせてよかったのじゃ。」

 

 

 

 

「ふぅ~。いつの間にかこんな時間になってしまったの。」

 

ようやく自分の家に着いたころには日も落ちて外套の灯りだけが頼りのような状況となっていた

 

ガチャ

 

「ただいま帰ったのじゃ~」

 

玄関を開け帰ってきたことを知らせる為に挨拶をする

 

ガチャ

 

「姉上~、遅くなっ――」

 

儂が部屋に入りながら姉上に声をかけようとしたら、隣り合って座っている姉上と一輝が居て、お互いにそっぽを向いている。なにやら入る時を間違えたようじゃ

 

「――邪魔してすまなかったのじゃ!! わしは外に出ていくのじゃ!!」バタン タタタッ

 

儂は直ぐにドアを閉めて外へと駆け出す。後ろから姉上の怒気を感じながら

 

「これは、悪い事をしてしまったのぅ。姉上の折檻を受けるのは仕方あるまい。久しぶりじゃが儂の体はもつかのぅ」

 

儂は家から離れながら姉上から受けるであろぅ罰を考えていると

 

Prrrrr Prrrrr

 

儂の携帯電話が鳴る。儂にとっては死刑宣告のように感じながら発信相手を確認すると

 

『姉上』ピッ

 

儂にとっては悪魔に感じたので反射的に拒否ボタンを押してしまう。

 

Prrrrr Prrrrr ピッ

 

直ぐに掛かってきたので今度は受話ボタンを押すと

 

『秀吉~。さっきはなんでお姉ちゃんの電話を拒否したのかしら?』

 

姉上は怒りを押さえたような声で聞いてきた

 

「そ、それは姉上が怒っていそうじゃったから」

 

『余計に怒るとは考えなかったの?』

 

「あ、姉上さっきはすまなかったのじゃ。だから折檻だけは止めて欲しいのじゃ」

 

『はぁ、いいわよ。もぅ済んだことだから。それよりもお腹空いているんじゃないの?』

 

「む? 確かに夕食はまだ食べておらぬが……」

 

『夕飯も用意してるから早く帰ってきなさい。こんな遅くにうろついてると危ないわよ』

 

姉上から優しい言葉をかけられる。どうやら本当に怒っていないようじゃの

 

「うむ。分かったのじゃ」

 

 

 

 

「姉上、肉じゃがの味がうちの味と違う気がするのじゃが……」

 

家に戻って食事をして肉じゃがの味に違和感があったので姉上に尋ねる

 

「アンタが気にする必要はないわ」

 

「そ、そうじゃの」

 

何やら触れてはいけない気がしたので話を切り上げる

 

「そうだ秀吉。アンタと紫織って次の土曜日 暇?」

 

姉上が突然思いついたように儂に話しかけてきた

 

「紫織の予定は分からぬが、どうしたのじゃ?」

 

「デパートの福引でプールのチケットが当たったのよ」

 

姉上は懐からチケットを出す

 

「む? ならば一輝と姉上が行けばよいのではないか?」

 

「4枚だからアンタにあげるって言ってるのよ」

 

姉上は出したチケットを広げて見せる。確かに4枚あるのじゃ

 

「わかったのじゃ。紫織の予定を聞いてみるのじゃ」

 

「よかったわ。チケットが無駄にならなくて」

 

「ありがとうなのじゃ」

 

「姉弟なんだから気にしなくていいわ」

 




歌舞伎の台詞を転用しているんですが、問題ないですよね?
問題があったら指摘してください。
書くのに時間がかかった割には酷い出来でスミマセン

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