やっと明久編に入れました。たぶん2話で終わります。
その後はプール編になります。
今日は待ちに待った5月の最終日曜日。明梨と日向と3人で如月ハイランドに行く日だ
ピンポーン ガチャ
「おはよう明君 良い天気でよかったね」
チャイムを鳴らすとドアから明梨が出てきた。明梨の服装はオレンジのタンクトップに薄黄色の薄手の半袖シャツを羽織っていて、デニムのミニスカート。……露出が多いわけではないのだが少し目のやり場に困るな。すらっとした手足が眩しいよ
「おはよう明梨 その服似合っているよ」
活発な明梨らしい服装だ
「あ、ありがと……」
明梨は赤くなって俯いてしまった。え? 何か変な事言った? 服装を褒めるのは変な事じゃないし……恥ずかしがっているのかな?
「と、とりあえず、日向の家に行こうか」
「う、うん」
僕が歩き出すと明梨も付いてきた。……会話がないと、時間が長く感じるな
ピンポーン
歩くこと5分ほど、日向の家に着いたので呼び鈴を鳴らす。会話が続かなかったので1時間くらいに感じたよ
ガチャ
「おはようございます。明久君、明梨ちゃん」
日向の服装は薄青色のワンピースの上に白いレースのボレロ
「おはよう日向 その服似合っているよ」
大人しい日向らしい服装だ
「あ、ありがとうございます……」
日向もさっきの明梨と同じ反応をする。……なんでだろう
「おはようヒナちゃん その服カワイイね」
「あ、明梨ちゃんの服も似合ってますね」
明梨が日向の服装を褒めると普通に二人で服の話をし始めた。……同性か、異性かの違いかな? 僕の場合はどうだろう……う~ん、雄二に褒められても優子さんに褒められてもあまり差は無いと思うんだけどなぁ。……明梨や日向に褒められたら違う気がするけど
「明君 どうしたの? 難しい顔しちゃって」
「どこか体調でもすぐれないんですか?」
僕が考え事をしていると心配したのか二人が声をかけてきた
「大丈夫だよ。ちょっと考え事をしていただけだから」
「良かった~。じゃあ行こっか」
僕の返事に安堵の笑みを浮かべると明梨は僕の腕に自分の腕を絡めてきた
「そうですね。時間も限られていますし」
今度は反対側の腕に日向が腕を絡めてきた
「あの~、二人ともどうして僕の腕を掴んでるの?」
二人の柔らかな膨らみが腕に当たっているんですけど。……やばい理性がぁ~~
「あ、明君が誘ってくれたんだから、明君について行こうかなって」
「明久君にエスコートして欲しいんです」
そう言われたら仕方がない……理性が飛ばないように素数でも数えよう。2 3 5 7 11…………
……71437 71443 71453
「や、やっと着いたか」
あれから30分ほど、公共交通機関じゃなかったら理性が本能に負けていただろう
「疲れているみたいだけど大丈夫?」
僕の様子を見て明梨が声をかけてきた
「大丈夫。問題ないよ」
なんだかダメな返答な気がする
「無理はしないでくださいね」
「大丈夫だよ。早く中に入ろ」
僕は二人を促して入場ゲートへと向かった
「いらっしゃいマセ!如月ハイランドへようこソ!」
入場ゲートにいる係員は帽子を目深にかぶり、特徴のある訛り口調で定番の文句を言ってきたが、声が僕のよく知る人物の声だった
「何してるの? "父さん"」
僕は額を抑えながら目の前の男性に尋ねる
「一目で見破るとは流石は僕の息子だね」
そう言いながら帽子を取ると、僕の父親の顔が現れた
「あ、昭斗さん?! こんなところで何をしてるんですか!?」
「ん~、まぁアルバイトかな」
父さんは明梨の質問にテキトーに答えた
「あ、あの。明久君のお父さんですか?」
日向はおずおずと父さんに尋ねる。そういえば日向と父さんは初対面になるのか
「ん? 君は?」
「あ、私は久遠日向と申します」
日向は腰をかなり曲げて礼儀正しく父さんに挨拶をした
「日向ちゃんか。僕は明久の父親の昭斗だよ。よろしくね」
「あ、はい。よろしくお願いします」
父さんが右手を差し出すと日向と握手をした
「それじゃあ、ちょっと話があるから明久を借りても良いかな?」
父さんの質問に二人は頷いた。と言うより頷くことしかできなかったんだろうな。突然だったし
「よし、じゃあ向こうの方に行こうか」
仕方ないので父さんに従った
「さてと、久しぶりに父子水入らずだね」
少し歩いて話が聞こえないくらいの距離になったところで父さんは立ち止まって話しかけてきた
「なんであんたがここに居るんだよ?」
僕は一番気になっていた事を聞いてみた。理由はアルバイトなはずがないからだ
「息子のデートが気になってね」
「デ、デートじゃないよ。だいたいなんで二人が僕なんかと」
父さんが嬉々として言ってきたので僕は食い気味で反論した。二人みたいな美少女が平凡な僕なんかと釣り合う気がしない
「いやぁ好きでもない男とテーマパークに来るかねぇ?」
「いつも一緒に遊んでるんだから変な事でもないでしょ」
「はぁ~、明久。お前は如月ハイランドの企みを知っているよな?」
「『如月ハイランドを訪れたカップルは幸せになる』ってジンクスを作る事でしょ?」
それがどうしたんだろう?
「その企みの一環としてほとんどの中高生はそのジンクスの噂をもう知っているんだよ」
「え? ほとんど」
明梨と日向はどうなんだろう? いや、僕と来てるって事は知らないのか?
「たぶん二人も知っているよ。文月学園に限ればほぼ100%の認知度らしいからね」
「え? じゃあなんで僕と?」
「はぁ~、ここまで言って分からないのか?」
「へ? う~ん……」
父さんの言葉に僕は考えてみる
バレンタインの時には二人ともかなり手の込んだ手作りチョコを渡してきた→あんなに手の込んだチョコは1つくらいしか作れない→本命チョコ →イケる!
「あれ?! 意外と単純?!」
いやいや、明久よ。よく考えてみるんだ。ここで勘違いしたら大変な事になるぞ
「……ダメだ。どう考えても結果が変わらない」
128パターン考えても『イケる』以外の結果が出てこない
「二人が僕に惚れているって結果しか出てこないんだけど……」
もしかして僕はナルシストなのか?
「まぁ、二人は明久に惚れてるだろうね。さっき見たのでもわかるけど」
父さんは明梨と日向の方を向いて呟く
「明久は二人のどっちが好きなんだ?」
「そんなの選べるわけないじゃないか」
二人とも僕にとっては大切な人だ
「二人の悲しむ顔なんて見たくないよ」
僕は俯きながら答える。二人の人を同時に好きになるなんて親に胸を張れる事ではない
「そんな明久に朗報です。父さんは息子のために日本でも重婚できるようにしちゃいました☆」
そう言って父さんは僕に紙を渡してきた
『改正民法732条 配偶者のあるものは双方の同意のない場合、重ねて婚姻することができない』
『改正刑法184条 配偶者のある者が双方の同意なく重ねて婚姻をしたときは、二年以下の懲役に処する。その相手方となって婚姻をした者も、同様とする』
そうだった。僕の父さんはいくらか可笑しな人だった
「あんたは何日本の法律を変えているんだ!!」
僕は思わず叫んでしまった。民法と刑法を変えるなんて
「うん、ちょっと国会でオハナシしただけだよ」
うん"お話"のイントネーションがおかしかったのは気のせいだろう
「でも、二人と結婚なんて……」
いくら法律で問題なくなったとはいえ倫理観とか世間体とかいろいろと問題がある
「明久は二人とも好きなんでしょ? 悲しい顔を見たくないならそれしかないじゃん」
確かに二人を悲しませない方法はそれぐらいしか思い浮かばないけど
「まぁ、二人と話し合ってみることだね」
父さんは僕の肩を叩きながらそう言ってきた。二人と幸せになるか……考えた事もなかったな