祝☆劇場版公開記念! ガルパンにゲート成分を混ぜて『門』の開通を100年以上早めてみた   作:ボストーク

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皆様、こんばんわ~。
今回のエピソードは、どうやら戦車にあるまじき距離での戦闘になる模様です(^^
ついでにみほはなんだかとんでもない人に目を付けられたような……?

今回の設定資料は前回に続いてキャラクターノーツになってますよ~。


第07話 ”ガンスリンガーです!”

 

 

 

「あははははははははっ♪」

 

”DooDooDooDooDooDooM !!”

 

西住みほは上機嫌で砲塔上の武2式(M2ブローニング)重機関銃を撃ちまくっていた。

M2ブローニングは本来は地対空用に開発された重機関銃で、使用弾は”50口径BMG(12.7x99mm)弾”。

その威力は硬いことで知られる翼竜(ワイバーン)の鱗を貫通できるほどで、人などが喰らえばひとたまりも無くミンチだ。

人間より強靭な肉体を持つオークやトロルですらも、一発で絶命させる。

 

そして、みほは人もオークもトロルも公平に、あるいは一緒くたに50口径弾で薙ぎ払い切り裂いてゆく。

 

「優花里さん、今の位置でいいから擲弾筒撃って! 続けて対人弾3発!」

 

「了解です!」

 

ハッチの下にいる秋山優花里に呼びかけると同時に、”ポンッ!”と少々間の抜けた音と同時に擲弾が放たれ、程なく散弾が九八式重戦車に近づこうとしていた眼下の敵に浴びせかけられる。

 

第1小隊長車(アンコウ01)から放たれる銃弾はそれだけじゃない。

主砲の同軸と車体前面に取り付けられた武1919式車載機関銃が火を噴いている。

それぞれの機銃を操るのは砲手の五十鈴華と運転手の”冷泉麻子(れいせん・まこ)”曹長だ。

短期とはいえ正規士官教育を受けたみほを除けば階級が最も高いのは、「大洗女子戦車学校」在学中に取れる資格を片っ端から取ったお陰だろう。階級は高くとも身長がチームで一番低いのは変わらないが。

 

麻子の身長が伸びなく胸も膨らまず、どうやら某予算委員長と同じくロリBB……もとい。合法ロリまっしぐら路線の問題はともかく、合計3丁の機関銃と擲弾筒から繰り出される火線は対人用として考えるなら十分に強力で、不用意に近づこうとした者たちに「生肉の生垣」という末路を与えていた。

だが、遥か離れた帝都で誰かがこんなことを言っていたはずだ。

 

『油断大敵よ? 流れ矢だって当たれば人は死ぬんだから』

 

と……

半身を乗り出して重機関銃を撃ちまくるみほを、まるで言葉を肯定するように戦車の陰からいつの間にか忍び寄る小さな影が狙っていた。

 

”ギィィーーッ!”

 

人間には発音できなさそうな雄たけびと共に斧を片手に飛び上がり、彼女を背中から切りつけようとするその正体は……ファンタジー物では雑魚として定番の”ゴブリン”だった。

無防備な背中に今にも粗末な刃が届こうとするが、

 

”VAM!”

 

重めの銃声と同時に首から上を失った”ゴブリンだった物”が不自然に空中に跳ね、地面に落ちる。

 

「Sorry、ケイ。お尻にぶちこむ前に頭を吹き飛ばしちゃったよ」

 

そう、みほの右手には、肩からスリングで吊るしていたはずの親友より贈られた短縮(ソウドオフ)モデルの”イサカM37(ショットガン)”がいつの間にか握られていた。

 

「まさか『特地』でハンティングもどきをやることになるとは思わなかったな」

 

硝煙まだ消えぬ銃口を手近な標的へと向け、

 

”VAM! VAM! VAM!”

 

立て続けに引き金を引いたままポンプをスライドさせる特殊な連射(スラムファイヤ)で12番ゲージの一粒弾(スラッグ)をゴブリン相手に叩き込み物言わぬ肉塊に変えた後、スリングに挟み込んでいた予備のショットシェルを抜いて慣れた手つきでチューブマガジンに再装填(リロード)する。

どうやら故郷の熊本で狩猟でもやってたのか、みほの散弾銃の扱いは妙にサマになっていた。

戦闘前に装着したのだろうか? よく見れば彼女が戦車兵戦闘服(パンツァージャケット)の上から巻きつけた、どうやら私物らしい革製の茶色いガンベルトにはびっしりとショットシェルがインストールされている。

使い込まれ具合から見ると、本当に普段から散弾銃片手に狩猟とかクレー射撃とかをやってるのかもしれない。

 

 

 

”GYuWaaaaa !!”

 

またまた奇妙な叫びと共に視界の隅に入ったのは、金属製の棍棒を振りかぶった巨体を誇るジャイアント・オーガ。

その巨躯とそれに見合った灰色熊(グリズリー)を凌ぐ頑強さは、いくら12番ゲージのスラッグでも荷が勝ちすぎる。

みほもそう思ったのか、

 

「あなたはこっち!」

 

”DooDooDooM !!”

 

素早く旋回させたM2ブローニング重機関銃の弾丸で、怪異を斜めに切り裂くのだった。

 

 

 

***

 

 

 

「ふぅ~ん。あの娘、やるじゃない♪」

 

重機関銃とショットガンを的確に使い分け、手早く敵を屠るみほを人知れず見つめる双眸が合った。

そのどこか猫科の獣を連想させる獰猛さを隠さない視線の主は、新しい興味の対象を見つけたことで愉悦を滲ませた笑みを浮かべていた。

 

「まっ、とりあえずは……」

 

”彼女”は小柄な自分の背丈より大きな斧矛槍(ハルバート)をまるで指揮者がタクトでも振るかのように片手でビュンと軽々と振るい、

 

「お仕事お仕事♪」

 

そして黒のゴスロリ少女は戦場の空を舞う!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

************************************

 

 

 

 

 

『こちら”第6中隊長車(カメ)”、”第1小隊長車(アンコウ01)”聴こえるー?』

「こちら”アンコウ01”。どうしました?」

 

『そっちの塩梅はどーお?』

 

「大分、圧力が減ってきましたよ。どうやらピークは過ぎたみたいです」

 

と返事するみほは、未だ車長用キューポラから上半身をだした”鋼鉄の人馬族(ケンタウロス)”状態。

左手に持つ双眼鏡を覗きながら右手でほんの4年前に三軍統合の軍用制式拳銃の座を射止めた”武35式自動拳銃(ブローニング・ハイパワーのライセンス生産版)”……をベースに少々趣味でカスタムしたモデルを右手に握り、視線すらむけずにゴブリンや敵兵を打ち抜く彼女だ。

何気に名人芸領域の射撃のような気もするが……というか、まさかと思うが近接戦が始まってからみほはずっとケンタウロス状態なのだろうか?

性能はお粗末かもしれないが、”帝国”とて既に拳銃や小銃は実用化しているというのによくも無事だったものである。

 

『そっかそっか。まだ砲弾に余裕ある?』

 

「あと一会戦くらいならなんとかなるんじゃないかと思います」

 

そろそろ拳銃の残弾がなくなるので、首からかけた双眼鏡から手を離し左腰のポーチから予備弾倉(マガジン)を抜いてスライドがオープン・ホールドされると同時に空マガジンを引き抜き交換。

ジャムらず再び13発の射撃が可能となったことに内心で安堵しながら、接近してきた敵兵の眉間に銃口を向け無造作に引き金を絞った。

エモノを散弾銃から拳銃に代えたのは、やはり両手がふさがるのを避けるためだろうか?

 

『ほんじゃあ悪いんだけどさ、第3小隊(アヒル・プラトーン)引き連れてポイント”シュガー・シュガー・ウィリアム32(S.S.W/32)”まで火力支援に行ってくんないかな?』

 

「えっ? ”南南西32番陣地(S.S.W/32)”……もしかして別働隊に回り込まれました?」

 

敵の進軍方向から考えると現在、敵軍は東から北にかけて集中している。

全周囲警戒が基本の要塞防衛戦とはいえ、見えない監視網の穴が存在しても不思議ではない。

 

『みたいだねー。どうやら敵にも頭の回る奴がいるらしくてさ、さっき煙幕あったじゃん? あの対応してるうちに後方にいた一部の部隊を、分派/迂回させてたみたいなんだよ』

 

「煙幕と敵兵の数に目くらましされた……ってことですよね?」 

 

無理もないと思う。

敵が今まで行なってこなかった浸透突破戦術に煙幕、ワイヤーカッターの投入による鉄条網の突破は誰も想定してなかった事態だ。

その対応で浮き足だち、それに比べればオーソドックスな迂回戦術を見逃すのは無理もないが……

 

「改善点は戦闘詳報(レポート)にまとめて提出するとして……現地部隊での対応は?」

 

自分達がいかなくともそこを担当する装甲部隊はいる筈である。

別働隊がいかほどの規模でも、機動防御を得意とするいわば移動トーチカの九八式重戦車や九五式重戦車が簡単に圧し負けるとは思えないのだが……

 

『それがさー、機甲化されてる部隊はもう他の重点被圧力地点の増援(あなうめ)に引き抜かれてるんだ。おまけに攻めて来てるのが、防弾板っぽく胴鋼(どうがね)巻いたジャイアント・オークを集中投入して破城鎚(ジャガーノート)代わりに使ってるって話だよ?』

 

 

 

(っ!?)

 

思わず上層部批判になりそうな言葉を、みほはなんとか危ない所で飲み込む。

失態であることは間違いないが、そもそも攻め手に対して数の優位が無い以上はこういうこともあると自分に言い聞かせた。

予備部隊は敵方の方が多いのだ。

 

「わかりました。救援に手早く駆けつけられる最も状態の良い部隊が、私達だと上層部は判断したってことですよね?」

 

『そういうことー』

 

本当に杏の普段と変わらぬ声はありがたいとみほは思った。

そうじゃなければこうも落ち着いていられず、もしかしたら怒鳴り散らしていたかもしれない。

 

「了解しました。でも、ここだってまだ装甲削れるほど圧力は減ってませんよ?」

 

”Pam! Pam!”

 

周囲に鳴り響いてる銃声に比べれば遥かに小さく軽い音と同時に9mmパラベラム弾が間隔をおかず2発放たれ、ゴブリンが脳症を撒きながら地面に倒れる。

 

『それに関しては大丈夫。連隊長(クマモト)とかけあって、師団司令部直轄の機甲予備……”九七式中戦車(チハ)”を2個小隊ばかりまわしてもらうことになったから』

 

なるほど。失態であることは言葉にしないが、フォローはするからなんとかしてきてくれということ……みほはそう理解した。

 

(チハだと火力に不安は残るけど、この際贅沢は言ってられないよね)

 

他の新型兵器同様に九八式重戦車が『特地』に最優先配備されてるとはいえ、まだまだ中隊全車が最新の九八式で構成された第6中隊のほうが少数派なのだ。

それに九〇式野砲譲りの巨大な火力と分厚い装甲が自慢の九八式だが、鈍足なのが泣き所だ。

師団司令部が随時投入する機甲予備として考えるなら、九八式よりは足が早く目標に迅速に到着できる九七式中戦車の方が理に適ってるだろう。

 

「アンコウ01、了解。チハ小隊と合流次第、アヒル・プラトーンと共にS.S.W/32に急行します」

 

『頼んだよー』

 

 

 

***

 

 

 

「こちらアンコウ01。第3小隊長車(アヒル01)、聴こえますか?」

 

『ああ、ばっちり聴こえてるよ。情況は既に把握してる。巨人を駆逐しに行くんだろ?』

 

そう応えたのは、第3小隊小隊長で小隊長車車長を兼任してる”磯辺典子(いそべ・のりこ)”曹長だった。

みほより1期上の先輩で杏の同期。「大洗女子戦車学校」ではバレー部の主将(キャプテン)を務めた、「山椒は小粒でピリリと辛い」という言葉を具現化させたような小柄だが快活なボーイッシュな元気っ娘だ。

 

「話が早くて助かります。チハ小隊が到着次第、向かいましょう」

 

(ならその前に、一通り”掃除”はやっておかないとね)

 

みほはもう一度、武2式の銃把を握る。

 

「小隊、もう一仕事したら移動しましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 





皆様、ご愛読ありがとうございました。
みほがなんだか引き金がハッピーな女の子になってしまったような気がしますが(汗)、いかがだったでしょうか?

そして、名前はまだ出てませんがどうやら某亜神様がご降臨なさったようです(^^

どうやらみほ達が護る陣地は戦いの趨勢がもう決まったようですが、イタリカ全隊としてはまだまだ戦闘が盛り上がってる真っ最中、彼女達のタンクバトルはまだまだ終わらないみたいです。

なにやら次回は西隊長 with チハたんの出現フラグが立ったような気もしますが……

それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!



***



設定資料



酒井勇次

階級:大日本帝国陸軍中将

モデルとなったのは知る人ぞ知る「日本で最初に本格的な機甲部隊を創設した男」、”酒井鎬次”中将。
ビジュアルイメージは、某うさぎ系喫茶店アニメの「ちのちゃんのパパ」。
史実では関東軍参謀長時代の東條英機と対立、それを根に持った東條英機により予備役に追いやられるが、”この世界”においては、人間を凌駕する力や頑強さを持つ”怪異”などを戦力化した『特地』勢力との戦いで、そりゃもういやというほど機甲戦力の有効性は証明されており、彼を阻めるものはいない。
それでも何の因果か某予算委員長にとっては色んな意味で天敵で、彼女によれば……

「大隊なのに旅団並みの予算を使う金食い虫が機甲部隊なんだけど、師団以上の成果をあげたりするから結果的にコストパフォーマンスが良いって判断になるから、誰も何もいえないのよ」

ちなみにこの二人、いわゆる「同期の桜」であるらしい。

欧州駐在武官の経験が長く、古くは第一次世界大戦において日本が正式参戦する前から観戦武官として着任。
1920年代前半まで戦後処理や復興の様子を横目で見ながら欧州各国を回ったようだ。
帰国後、急速に発展した戦車を中心とする自動車化した【機動装甲戦力】を目の当たりにした酒井は「化物相手でもこれで勝つる!」と決意を固めた。
時は大正デモクラシー、アメリカの梃入れ(あるいは策略もしくは国家戦略)で民主主義や資本主義の概念と同時に大量生産の法則(マスプロダクション)や品質管理、ありとあらゆるものの工業品の規格化などを大日本帝国は国家戦略として導入。
そして必然として訪れるモータリゼーションの波が、酒井の計画を夢物語ではなく現実に切り替えた。
酒井は自らの手で「日本最初の本格的機甲部隊」を育てることを決意し、それを実行する。
その中で酒井は今は常識となってるが当時は真新しかった発想の”諸兵科連合(コンバインド・アームズ)”や”空陸一体戦術(エァランド・バトル)”を学び理解し、陸軍だけではなく空軍にも協力を取り付けそれを訓練に取り込んでいく。

そして1932年(昭和7年)5月15日、気が付けば自分は五十路が目前となり少将へと昇進していたが、自分が全力を傾注した【大日本帝国陸軍第1機甲師団】の初陣である『門』外勢力を帝都から叩き出すための「日比谷公園大規模強襲作戦」、別名『5・15戦役』において自ら最新鋭の九一式重戦車(通信装備を強化したタイプ)に乗り込み、戦場で陣頭指揮を取り続けた。

1939年現在、『5・15戦役』を含む数々の功績が認められ中将に昇進すると同時に”機甲総監”という要職にあり、平たく言えばみほ達をはじめとする「全ての日本戦車乗りの元締め」という感じだ。

趣味は戦車などの装甲車両の運転と某予算委員長を(色んな意味で)弄ること。
最近の悩みは、忙しすぎて某予算委員長で遊べないことらしい。










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