祝☆劇場版公開記念! ガルパンにゲート成分を混ぜて『門』の開通を100年以上早めてみた   作:ボストーク

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皆様、こんばんわ~。
今回よりいよいよみほ達の戦いが始まりますが、今回はほんの触りです(^^

それに何やら……みほには誰かから手紙が届く模様ですよ?

いつもながら後書きにはちょっとマニアックな設定資料集を入れてますが……果たしてこの巻末資料って需要があるんでしょうか?(汗)







第03話 ”防衛戦、はじまります!”

 

 

 

『Dear ミホ

 

元気してる? ワタシはもちろん元気が有り余ってるついでに毎日戦車乗り回してるわよ♪

やっぱりカンザスはいいわね~。赤茶けた荒野を戦車で走り抜けてバーガーとコークを買いにいっても何も言われないし。

でも訓練場でもベッドの上でも、中々ミホみたいな刺激的な娘にはあえないのよ~。

お陰で身体の火照りをどう鎮めたらいいか悩んでるわ。

 

ああ、この間はタントー・ブレード Very Thanks!! ジャパニーズ・ナイフは引き刃で最初は戸惑うけど、慣れたら凄い切れ味ね!

 

お返しにワタシから素敵な”トレンチ・スペシャル”を贈るわね♪

短くしてあるけどパワーはオリジナルと同じ12番ゲージのパワフル&キュートな子よ。

ワタシのミホに手を出す不埒なモンスターがいたら、ケツにスラッグぶちこんで穴を増やしてやりなさい♪

それじゃあ、またいつか出会える日まで See You Again !!

 

         From アナタのことが大好きなKei』

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

「ふんふんふんふん♪ ふふふふふ~ん♪」

 

上機嫌に鼻歌を歌う西住みほ。ちなみに曲は南北戦争時代の米国が生んだ名行進曲『リパブリック讃歌』だ。

きっと今、手に持って磨いてる”エモノ”を贈ってくれた”親友”のことでも思い出しているのだろう。

 

「西住隊長、凄い散弾銃(ショットガン)ですね~」

 

感心したように呟く秋山優花里にみほはにっこり笑って、

 

「いいでしょ? 【イサカM37”ステークアウト”】の短銃身(ソードオフ)カスタムだよ♪ 言うならば現代版塹壕散弾銃(トレンチガン)になるのかな?」

 

”イサカM37”とは、この時間軸だと2年前にあたる1937年に米イサカ・ガン・カンパニー社から発売されたまだ最新モデルと言っていいショットガンだ。

実際、正規代理店のない大日本帝国ではほとんど出回っていない。

基本的には他の散弾銃と同じく猟銃なので市販モデルは長い銃身とショルダーストックが付いてるが、みほの手に持つそれはチューブマガジンぎりぎりの長さの短銃身(ショートバレル)に交換され、ストックは外されて代わりにピストルグリップに変更されていた。

おかげで原型に比べて非常にコンパクトで、狭い戦車内でも取り回しそうだが……明らかにそれなりの銃職人(ガンスミス)が手を入れた改造モデルだった。

原型ですらまだほとんど出回っていないのに、そのカスタム・モデルともなれば普通は入手困難なのであるが……

 

「もしかして”ケイ”さんですか?」

 

「うん♪ この間の便で届いたんだよ」

 

優花里的には「ショットガンと45口径拳銃と言えばアメリカ人」という発想だったのだが、どうやら正解だったらしい。

ケイとは日本の婦女子装甲部隊に感銘を受けた米陸軍が編成した装甲公報部隊【サンダース戦車中隊(サンダース・タンクトルーパーズ)】の隊長、ふわふわのブロンド美少女”ケイ・ユリシーズ・サンダース”のことだろう。

サンダース・タンクトルーパーズは基本、みほ達と違い実戦部隊ではなく米陸軍の広告塔、軍に憧れを抱かせ志願兵を増やす目的のリクルート部隊な訳だが……

 

まだ「大洗女子戦車学校」時代に彼女たちは交流戦を兼ねた合同演習を行なったことがありそれを機に交友を深めた。

優花里もケイに好意的ではあるのだが、仲間内では特に元生徒会長の杏とみほとは意気投合したようだったのだが……

 

「前にちょっと短刀を研ぎなおしてボウイナイフ拵えにして贈ったら、お返しに貰ったんだ♪ ケイに言わせると『接近戦にはショットガンがイチバンよ♪』だって」

 

みほに対して並々ならぬ思慕と憧憬を持つ優花里は、嬉しそうなみほの笑顔を見てるともやもやした複雑な感情を持ってしまうのであった。

それはもしかしたら”恋敵”に対する感情なのかもしれないが……

 

なにはともあれケイは今は遥か遠い、世界すら違うカンザスの空の下……圧倒的優位は狭い車内で密着できる我にありと思うことで、優花里はどうにか嫉妬に似た何かを表情に出さずに済んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『我々は一丸となり、陛下よりこの地の信託を賜ったミュイ・フォルマル伯のため、この地の守護をせねばならぬ。各員、気を引き締め一層の奮闘を期待する!!』

 

 

 

【遣イタリカ増強師団】の師団長となる最近少将に昇進したばかりの”栗林忠泰(くりばやし・ただやす)”の訓示が無線機に流れた後、

 

「航空隊、はりきってるなぁ~」

 

キューポラから上半身を出し、日本光学社製の軍用双眼鏡で上空を眺めていたみほは、そう呟いた。

上空を飛ぶのは陸軍が保有する数少ない航空機、その中でも今回の戦いが初陣となる最新鋭機【九九式襲撃機】だ。

まだ、最新鋭の引き込み脚ではなく旧態依然とした固定脚をもつうえ先行量産型という雰囲気が漂う対地攻撃機だが、陸軍の期待は大きい。

そもそも史実の陸軍と違い、”この世界”における帝国陸軍は航空機運用数が極端に少ないのだ。

 

 

 

理由は関東大震災の翌年、1924年(大正13年)に制定された【大日本帝国統合三軍法】である。

そもそものきっかけは第一次世界大戦で登場し空を人類の新たな戦場に変えた航空機を効率的に運用するため、陸軍/海軍に続く新たな”第三の軍”を建軍すると言うところにあった。

第一次世界大戦を契機に特に欧州先進国で軒並み空軍の設立が始まったが、日本の対応は比較的早く、戦時中の1917年には準備委員会が立ち上がっていた。

これは日本独自の深刻なお家事情があり、日比谷公園を中心とする帝都の一部を不法占拠してる『門』外勢力の中で、人類基準を超えた撃たれ強さと怪力を誇る怪異(モンスター)と並んで厄介だったのが”翼竜(ワイバーン)”とそれを操る”竜騎兵(ドラグーン)”だった。

元々、開戦当初から翼竜に魔導師(メイジ)を同乗させ上空から攻撃魔法を撃ってくる対地攻撃は厄介だったが、火薬が『門』外で実用化してから数の少ない魔導師だけでなく普通の竜騎兵までもが爆発物を投下してくるようになり、帝国陸軍は甚大な被害を出していたのだ。

陸軍の大砲はそもそも対空砲撃するようにはできておらず、彼らに対抗するのは仰角が大きく取れる特製の銃座に取り付けた機関銃くらいしかなかった。

しかし、50口径(12.7mm)という大きな銃弾を使用するM2ブローニング機関銃の登場前(M2登場以前に50口径機関銃はあったが、大きく重く取り回しが悪すぎた)までは硬い鱗に阻まれ翼竜に致命傷を与えるのは難しく、竜騎兵を狙うか銃弾でもダメージが与えられる竜の目を狙うかしかなかった。

それを百も承知していた竜騎兵は地上からの対空銃撃に体を晒すような飛行姿勢はとらず、またただでさえ的が小さく素早い翼竜の目に銃弾を当てるなど至難の業だったのだ。

また、機関銃より大口径高威力の地対空兵器、対空機関砲や高射砲が発展したのは航空機と同じく第一次大戦の後だった。

 

そんな日本軍にとり待望の新兵器こそ翼竜と同じく空で戦える航空機であり、航空機専属の軍を作ろうとするのは必然であった。

 

これが史実の陸海軍なら、自らの権益確保のために空軍の設立を阻もうとするかもしれないが、この世界の大日本帝国はそんな余力はなく、陸軍は航空機と同じく第一次大戦でお目見えした新兵器の戦車の研究開発に余念が無く、海軍はユトランド沖海戦(ジェットランド沖海戦)の戦訓から従来艦艇、特に戦艦や巡洋戦艦の装甲強化を余儀なくされ航空機開発とそれを運用する空母の研究開発は後回しにされていた。

 

 

 

***

 

 

 

そして震災により甚大な被害を受けた帝国軍は、軍の再建を行なうと同時に組織改革を試みた。

それが先に出てきた【大日本帝国統合三軍法】の制定で、空軍の設立でなく旧来の陸軍省/海軍省、あるいは法的には戦時のみに設営される臨時最高軍司令部の大本営という枠組みを改め同時期に英国で提案された(デビッド・ロイド・ジョージ連立内閣で破棄されたが……)同種のアイデアを参考に、「大日本帝国の持つ全ての兵力を統括する省庁」の設立を試みた。

 

それが大本営と違い戦時/平時に関わらず常設される【国防総省】とその直轄機関である【三軍統合参謀本部】である。

また陸軍省や海軍省は再編され、空軍を加えた陸軍庁/海軍庁/空軍庁として再出発、国防総省下の管轄庁とされた。

またこの時、震災による製造設備にダメージで供給不足に陥った銃砲弾の不足を補うという名目で『日米砲弾/弾薬相互間協定』も締結されている。

ちなみに大本営法が廃案になったのは、「帝都の一部が敵の占領下にある今の日本にとって、いつが戦時と定めるのは難しい」という理由だったらしい。

日本人にしては革新的な行動だが、それだけ日本という国家が心情的に追い詰められていたという証明でもあるだろう。

 

 

 

さて、話を航空機に戻すが……

大雑把に言えば対航空兵力の切り札である戦闘機と、敵の拠点を直接攻撃する爆撃機は空軍の管轄となった(これに加えて1939年現在は対艦戦も研究されている)。

しかし、航空機の爆発的な発展や陸上装備の急速な機甲化により、陸軍にも航空機の需要と必要性が生まれてきた。

陸戦に直接関わる戦術的運用が基本の”直協機”のことである。

 

例えば後方から前線へ緊急物資や人を運ぶ輸送機や連絡機、広範囲で素早く索敵する偵察機、また陸上砲の大口径/長砲身化による射程延伸で地上の観測場から精密な弾着確認が難しくなったために必要性が生まれた弾着観測機、そして何より欲したのは翼竜と同じく上空から一方的に攻撃できる”対地攻撃機”だ。

 

無論、陸軍には翼竜に好き放題やられた意趣返しという意識もあるだろうが、ろくな空対空/地対空攻撃法を持たない『門』外勢力には、自分達がやられた以上の抜群の効果を発揮すると予想できたからであろう。

 

さて、陸軍は駄目もとで国防総省と統合参謀本部に陳情すると……

 

「エンジン開発からのフルオーダーは駄目だけど、既存のコンポーネント使って手っ取り早く仕上げるならいいよー」

 

と想像以上に色よい返事が返ってきた。

その結果としてイタリカ上空を飛ぶのが、みほが見上げる【九九式襲撃機】の編隊だった。

実際、九九式襲撃機は開発の期間や費用を抑制するためエンジンをはじめ可能な限り海軍の【九九式艦上爆撃機】とコンポーネンツを共有化していた。

 

「みぽりん、空軍の防空戦闘機隊が翼竜と交戦を開始したって」

 

「うん。わかったよ」

 

沙織の報告で既に戦端が開かれた事をみほは知る。

 

(近代陸戦は、こういうとこは味気ないなー)

 

陸兵としては最前線にいるはずの自分が、双眼鏡をのぞいても爆煙すら見えないところで戦闘は始まっている。

定石(セオリー)通りなら、

 

(先ずはイタリカの野戦飛行場から飛び立った戦闘機隊の翼竜迎撃、その次は後方基地から飛び立った爆撃機隊の水平絨毯爆撃……)

 

【大日本帝国統合三軍法】成立以降、「三軍共同緒兵科連合の立体的一元化した投入できる全ての総力戦術により戦場を制せよ」という金科玉条が唱えられているせいで、陸軍と空軍が指揮系統がばらばらで相互支援ができないという情況はありえないものとなっている。

これは無線機などの通信手段の発達も大きいのだが……故にイタリカの街の後方にある野戦飛行場から飛び立った強力だが航続距離の短い防空戦闘機(局地戦闘機)が制空権を獲得した後、遥か後方のアルヌスの空軍基地(爆撃機などの整備に手間のかかる大型の機体は、本格的な整備ハンガーがあるこの基地からの運用が前提)から飛び立った爆撃機隊が間髪いれずに密集水平(じゅうたん)爆撃を行なうなんて密接な連携が可能になっているのだった。

 

今の陸軍にとり、戦いの火蓋を切るのが空軍であることは当然で、

 

(でも、爆撃だけで撤退はしてくれないよね……)

 

そして空軍だけで戦は終わらないのもまた常識だった。

 

「わたし達の出番は、九九式の近接航空攻撃と重砲の後か……」

 

 

 

その時までに可能な限り数を減らしていて欲しいと願わずにはいられない西住みほだった。

 

 

 

 

 

 

 

 





皆様、ご愛読ありがとうございました。
実は作者的に一番書きたかったのは、『ミホLOVEのケイ』だったりして(^^
それにしても、ナイフとショットガンを贈りあう少女って一体……



***



設定資料



九九式襲撃機

エンジン:金星四四型(空冷星型14気筒、1070馬力)
最高速:420km/h
航続距離:1,082 km
固定武装:武2式航空機関銃×2(12.7mm。主翼内。M2ブローニングの航空機搭載型AN/M2)、武1919式機関銃×1(7.62mm。後部座席、旋回銃)
搭載量:60kg対物/対人爆弾×4(主翼下)もしくは250kg×1(胴体下)

備考
大日本帝国陸軍が、大型の加農砲や榴弾砲などの重砲の射程外での近接航空支援、直接共同攻撃をするための専門対地攻撃機として開発された機体。
国防総省や三軍統合参謀本部の要求に従い、史実の九九式襲撃機と違い同時期に海軍に採用された【九九式艦上爆撃機】と多くのコンポーネンツを共用化している。
その顕著な例がエンジンで、史実の”瑞星(ハ26-II)”ではなく九九式艦爆と同じ”金星四四型”を搭載している。そのため史実に比べて100馬力ほど出力が上がり、その余力ゆえに幾分の機体構造の強化につながり若干ながら搭載量が増えている。
水平爆撃と急降下爆撃をこなす九九式襲撃機は、万能対地攻撃機として評価が高い。
逆に『特地』勢力が後部装填式の近代的小銃を採用したため装甲板は、史実同様に採用されている。
また史実では初期型は主翼内機銃は7.7mm機銃(八九式固定機関銃)だったが、人類よりはるかに頑強な怪異や飛竜に対抗するため、最初から50口径の武2式航空機関銃(AN/M2の輸入品、もしくはライセンス生産品)を採用している。

また、九九式襲撃機の隠れた特徴は既存の技術で作られたゆえの整備性の良さや稼働率の高さ、野戦飛行場での使用を前提としたゆえの堅牢さ、何より燃料弾薬を補給などを行う再出撃までの所要時間の短さが強みといえる。。
爆弾搭載重量の低さ(九九式襲撃機は、同時期同クラスの空軍の急降下爆撃機”九七式軽爆撃機”と比較するなら、半分の搭載量でしかない)や陸軍の機体保有数の少なさゆえに九九式襲撃機は反復攻撃を重視して設計されており、また搭載爆弾はその小ささゆえに威力も低いが、逆に言えばそれだけ味方を巻き込む危険も少ない。


『特地』で初陣を飾ったこの九九式襲撃機だが、第二次大戦序盤~中盤にかけて有力な対地攻撃機として地球上でもあちこちの戦場を駆け抜けることになる。
当時の帝国陸軍軍人にとっては「最も頼りになる空の相棒」だったのかもしれない。



☆☆



栗林忠泰(くりばやし・ただやす)

【遣イタリカ増強師団】の師団長。階級は陸軍少将。モデルとなったのは『硫黄島からの手紙』で有名な戦時中、有数の激戦地だった硫黄島司令官【栗林忠道(くりばやし・ただみち)】大将。
栗林大将が少将になったのは史実では1940年だが、この世界ではイタリカ併合前の最初の占領地であるオラリオの丘の攻略戦や続くオラリオ要塞防衛戦で「功アリ」と認められて以降、『特地』での数々の戦功が評価され、史実より早く1938年に少将に昇進している。
やがて「要塞防衛戦の名手」として名を知られてゆくことになり、『不落の栗林』の二つを得る。






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