祝☆劇場版公開記念! ガルパンにゲート成分を混ぜて『門』の開通を100年以上早めてみた   作:ボストーク

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皆様、こんにちわ~。
ついに11日連続投稿……なんかいきなり死亡フラグが立ちそうで戦々恐々なチキンハートな作者です(^^

さてさて、今回のエピソードは……今まで出てこなかった(そして一部の皆様が安否を心配していた)ゲート系キャラがでてきます♪
そして、色々決着が付くみたいですよ?

プラスして、後書きに重大というほどではないですが、ちょっとしたお知らせがあります。

追伸
お気に入り100名越え+通産UA10000越え!
皆様、本当にご愛読ありがとうございました!




第19話 ”GIRLS und PANZER なのです!”

 

 

 

時間は少し遡る……

 

 

 

ここはみほ達が”帝国”将兵達を包囲した場所から、少しだけ離れた岩場だった。

そこには場違いなことに、豪華な鎧を身に纏った少女が二人……いや、騎乗しているので二騎というべきか?がいた。

 

「馬鹿者めが……」

 

赤毛を長い三つ編みに纏め後ろに垂らしてていた”彼女”は、魔導師が敵軍の将校に魔法を放つ様を単眼鏡(テレスコープ)で見た瞬間、そう呟いた。

 

「なんと(むご)い……」

 

濃い茶色を小ざっぱりと肩に届かない程度に切り纏めたお付の”少女”の言葉は、囲まれた自軍の兵士が無残に弾幕に細切れにされていく風景を見たときのものだった。

 

「仕方あるまい。囲まれ降伏した状態で敵の士官級に攻撃を仕掛けたのだ」

 

「しかし、”姫様”! 先にマイオ子爵を先に撃ったのは敵方です! 忠誠誓う臣下なら、その敵をとろうとするのは当然ですっ!」

 

「”ハミルトン”……言いたいことはわかる。だが、それは敗者が口に出来ることか? 勝者がそれを許容するか?」

 

「そ、それは……」

 

押し黙る従者の少女……【ハミルトン・ウノ・ロー】に、”帝国”第三皇女【ピニャ・コ・ラーダ】は、少々翳りのある笑みで、

 

「”ボーゼス”が暴走した結果とはいえ……イタリカがニホン軍に囲まれた時、我らは何か出来たか? 三年前、『イタリカを救った英雄』を我らが害し、それゆえに街が軍に囲まれた。その事実を知らされたイタリカの住人が我らに向けた憎悪の瞳……それをまともに見ることもできず、取り囲むニホン軍の威容に恐れをなし街に背を向け逃げ出したのは、どこの騎士団だったか?」

 

「……」

 

悔しそうに押し黙るハミルトンにピニャは自嘲的に笑い、

 

「負けた者は勝者が許さぬ限り、何も言うことはできぬ。それが戦場の慣わしだ。我らはイタリカを賊徒からもニホン軍からも護れず、イタリカはもはや”帝国”の版図ではない」

 

ピニャはただ冷めたような瞳で撤収(正確には再行軍の準備)作業を始める日本軍の様子を眺め、

 

「そして今やイタリカ領主は、”あの時の男”だ。世の中わからないものだな」

 

そして乾いた風に相応しい笑みを浮かべた。

 

「だからといって姫様が未だ謹慎を解かれないのは、納得しかねますっ!」

 

素直すぎる義憤を示すハミルトンの頭を撫で、

 

「そう言うな。イタリカ陥落の責を取らされ、廃嫡されなかっただけまだ幸運さ。父上の判断として些か慈悲深過ぎるくらいだ」

 

 

 

 

(もっとも父上がそんな甘いわけないがな……)

 

自分が未だ「生かされている」……政から外されていても『謹慎』、事実上の処分保留状態に置かれてるのだ。

 

(わずかとはいえイタミ……現フォルマル伯爵、ニホンの有力貴族と縁のある妾を、いざというときの交渉パイプにでも使おうという腹積もりなのだろう)

 

「フン……敗残の将、地に名誉が堕ちた皇女とはいえ、まだまだ使い道があるとみえる」

 

鼻を鳴らしながらも、少し面白そうな顔をするピニャだったが、

 

「それでも……騎士団も解散させられ、蟄居閉門なんて姫様が不憫すぎます」

 

「そうか? だが妾は現状もそう悪くないと思ってるぞ? 騎士団は解散させられてもお前やグレイが傍に付くことは許されてるし、無理に政に関わろうとしなければこう遠出して物見遊山もできる」

 

(それに妾の予想があたっているとするならば、きっと父上は、)

 

「ともかく、今は政に関わるべき時ではないということだろう」

 

(政治的に身奇麗でいられることも、また妾の強みとなる、か……)

 

 

 

***

 

 

 

今の”帝国”は主戦派が主流だ。

当然だろう。彼らは30年近く日比谷公園を中心とした日本の帝都を占拠しており、日本が逆侵攻してきてからまだ3年しか経ってない。

占拠時間……日本が彼らを追い払うまでにかかった時間を考えれば、「ニホン人がやれるなら我らもやれる」と思い込み、我らもまた逆撃できると考えるのも無理はなかった。

 

日本は最初こそ(実はアクシデントに近い形で)イタリカを占領、デュラン国王を懐柔しエルベ藩王国を属国とした。

そして北端をイタリカ、南端をエルベ藩王国国境とし、その間にある日本軍との戦闘で領主不在となった土地を平定し、東西をデュマ山脈とテュベ山&ロルドム渓谷と定めた。

そしてそれ以降、日本は防戦のみで積極的な攻勢に転じていない。

”帝国”はこれを日本の兵力的限界と見ていた。

 

 

 

これはあながち間違いではない。

日本は、現”帝国”領土を占領という形で終戦に導くには最低でも現有戦力の3倍以上、つまり58万6千人規模の陸空軍の派兵が必要と試算しており、占領を恒久的なものにするにはさらなる増員が必要と試算されていた。

現状、『日本本国のある世界』における世界情勢の緊迫から、そんな数の派兵は到底無理な話であった。

 

思考経緯は違えど同じ結論に至った”帝国”主戦派は、「きゃつらの動員できる戦力は少なく、今ある領地の防衛が精一杯。こちらが犠牲を恐れず攻勢を繰り返せば、必ずや敵は撤退するであろう」と主張していた。

 

(主戦派は何もわかっていない。ニホンが積極的攻勢を仕掛けない理由が、そんな単純なわけはなかろう……)

 

そしてピニャもまた一つの真実に近づきつつあった。

日本が積極的攻勢をしかけないのは、”新領土の社会資本(インフラ)整備”が終わってないのも理由の一つだった。

そう結局、”帝国”は近代国家が現占領地を「国民が恒久的に生活できる自国新領土」とするためにかける労力/時間/投下資本、その目的であるインフラ整備の手間など理解していなかったのだ。

そして、インフラが整備された土地が、民事的にも国事的にも軍事的にもどのような意味を持つかなど……

 

日本の目算では、占領地を新領土と呼ぶに相応しい基準にインフラを引き上げるのは、最低でもあと数年はかかると踏んでいたのだ。

 

 

 

(まあ、いい。妾にもいずれ出る幕が用意されるだろう……)

 

「それを待つのも、また一興か」

 

「姫様、何かいいました?」

 

呟きを聞き逃したハミルトンに微笑み、

 

「帰るぞ。もう見るべきものは見た」

 

「えっ? よろしいんですか?」

 

するとピニャは苦笑し、

 

「せっかく見逃してもらえたんだ。ここで足早に去るのが、せめてもの礼儀というものであろう?」

 

「えっ……?」

 

「敵にはあの”ロゥリィ・マーキュリー”がいたのだぞ? 我らがここにいたことなぞ、とっくにお見通しに決まってる」

 

「何故、見逃してくれるのでしょう……?」

 

するとピニャは愉快そうに笑い、

 

「わからないのか? 宮廷での発言権が奪われ、自前の騎士団を持つことも許されぬ今の我らが、気にする必要もないほど矮小な存在だからだよ。巨象がいちいち足元をチョロチョロする蟻を踏み潰そうとするか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************************

 

 

 

 

 

 

「ロゥリィ」

 

「なにかしらぁ?」

 

それはみほ達が再行軍の準備に勤しんでる頃のことだった。

ふとエアポケットのように空いた時間と空間、レレイは軽くロゥリィの袖を引っ張った。

 

「……ミホを眷族にしたの?」

 

「わかりきってることを聞くなんて、レレイらしくないわよぉ?」

 

典雅な笑みのロゥリィに、レレイの感情は特に揺り動かされない。

 

「そう。そのこと、伝えないの?」

 

「伝える意味は無いわぁ。ミホがミホとしての生き様を貫くのなら、やがて自分の身に起きたことくらい気付くでしょう。わたしはミホのママになりたいんじゃなくて、お友達になりたいの。だから必要以上に甘やかしたりはしないしぃ、余計なこともしないわぁ」

 

するとレレイは少しだけ……ほんのかすかに空気を揺らすように微笑み、

 

「ロゥリィらしいね? それでもミホの命は護るんだ?」

 

「だってミホは戦場に焦がれてるんですもの。戦場に焦がれて、戦争に恋して、戦場に惚れられて、戦争に愛されてるのよぉ? なら簡単に死んだらつまらないじゃない?」

 

彼女は死と狂気の巫女には見えない……慈母のような笑みで、

 

「人生は楽しまなきゃ嘘よぉ。思うように生きて、思うように戦って、生きて生きて戦って戦って最後に思うように死ねたら最高よぉ♪ 生の謳歌と満足の死……それがエムロイが望む理想だもの。それに、」

 

くるくると今度は笑みを猫を連想させる悪戯な物に変える。

 

「きっとエムロイはミホを欲しがるものぉ。すごくすごぉ~くね。たまにはアイツが焦れる顔が見たくなったのよぉ☆」

 

 

 

***

 

 

 

彼らにとって最悪の一日が終わろうとしていた。

何度となく鉄壁の敵の防衛線に突っ込まされ、何度も死に掛けた。

 

あちこちで士気が崩壊し、逃げ出す兵も大勢いた。

しかし、逃げ出す兵にも敵は容赦なく背中に鉄砲を射掛け、大砲を放ち、鋼の獣や鋼の翼竜で追撃して来た。

 

戦争は壊走あるいは撤退するときが一番被害が出やすいというが……背を向けて逃げ出す自軍に訪れたのは、まさにその典型だった。

 

だから彼らは夜を待って逃げることにした。

敵に気付かれぬように身を潜め、夕闇の訪れと共に逃げ出す予定だった。

あの眩しい篝火は厄介だが、鋼の獣や鋼の翼竜は夜目が利かないらしい。

 

(なら、逃げ出せるはずだ……)

 

 

 

かくて彼、いや彼らは逃げ出した。

夕闇に紛れ夜を駆けた。

 

(司令部なら何かあるはずだ……)

 

煩いぐらいに伝令を飛ばしてきた司令部……いつの頃からかその早馬も来なくなっていたが、敵の攻撃が早馬にも及んだのかもしれない。

 

(司令部の玉無し共はもう逃げ出したのかもしれねぇが……)

 

それでも撤退時に”あの森”が再集合場所になってたし、あそこまでは敵の大砲も届かないという話だった。

 

(もしかしたら何か残ってるかもしれねぇからな)

 

それが希望的観測なのは彼にもわかっていたが、他にこれといって思いつかない。

それに夜通し走るのは御免だった。

森で一夜を明かし、朝を待って撤退する……それが最善のはずだった。

 

そして、男の希望的観測は的中することになる。

たしかに森の中には「何か残っていた」のだ。

それが彼、彼らにとって最悪の物だとしても……

 

 

 

***

 

 

 

”カッ!”

”カッ!”

 

僅かな時差を設けられて撃ち上がり、パラシュートでゆっくりと落ちて来る発光体……それが照明弾と呼ばれる大日本帝国の野戦装備だと彼らの大半は知らなかった。

ただ、その人工的な燃焼光を見上げる彼らの影がくっきりと地面に映し出されたとき、その意味を悟った……

 

『大隊全車、照明点灯! 発砲開始ー!』

 

それはこの日最後の作戦の開始を告げる角谷杏臨時装甲大隊長の命令だった。

そして、森に隠れていた日本陸軍全戦闘装甲車両からの一斉砲撃、文字通りの弾幕が眩い無数の発砲炎と共に敗残兵の群れの中に飛び込んだっ!!

 

 

 

『西住ちゃん、頃合見て突撃命令よろー』

 

容赦ない弾幕攻撃の最中、まるで戦争なんて別世界のような呑気な声で杏は告げた。

 

「えっ? 中隊長……じゃなかった。大隊長はそれでいいんですか?」

 

『中隊長でいいってば。だってこういうのは西住ちゃんの方が得意っしょ?』

 

否定はしないけど、その評価もどうなんだろ?と思わなくもないみほだったが、杏直々のご使命となれば仕方がない。

 

『同じ階級だけど、西ちゃんもそれでいいかい?』

 

『無論ですよ。西住少尉の方が先任でしょうし、何より少尉の指揮で突撃なんて胸躍りますなーっ!』

 

心底楽しそうな弾んだ声の西絹代。

どうやら彼女は生粋の突撃将校で、「戦車は動いて撃ってこその戦車」という心情の根っからの機動戦マニアらしい。

 

「もう、皆して」

 

戦闘中の大半がそうであったようにキューポラから半身を乗り出していたみほは、ちょっと苦笑気味だ。

 

「いいじゃないのぉ。それだけミホがあてにそれているってことよぉ?」

 

そして、いつの間にやら第1小隊長車(アンコウ01)の砲塔が定位置になってしまっていたロゥリィの笑みに、みほは同じ種類の笑みを返した。

 

そして杏が言う”頃合”がやってきた。

誰に教えられたわけでもなく、戦場の機微を呼吸するように自然に嗅ぎ分ける、天性の鋭敏な感性を持つ少女、西住みほ……

 

彼女は告げる。

今宵、いや本日、いや今回の戦いの締めくくりとなる最後の命令を!

 

「九八式重戦車、九七式中戦車の全車に告げます! 第一命令、蹂躙セヨ! 第二命令、蹂躙セヨ! 第三命令、蹂躙セヨッ!!」

 

大きく息を吸い……

 

全戦車、前進っ!!(パンツァー・フォー!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日の戦いにおいて……”帝国”側参加戦力11万人超のうち、司令部を含む実に八割強の戦力を喪失することになった。

 

イタリカ侵攻軍司令官ヘルム・フレ・マイオ子爵の遺品が日本軍の”善意”により届けられ、最終的な被害集計と作戦推移報告を見たとき、”帝国首脳部”は愕然とした。

いかに日本を上回る動員力を持つ”帝国”とはいえ、決して看過できる数字ではなかった。

皇帝も元老院もその場の満場一致で、翌年のイタリカ侵攻の中止が決定される運びとなった。

まさに英断であろう。

事実、帝国が再びイタリカへの大規模侵攻を行うだけの力を取り戻すには、傷を癒すだけのしばしの(とき)が必要だった。

しかし、戦は未だ続いており、日本は”帝国”が再侵攻をかけるまでの猶予を怠惰に過ごす国ではないのだが……

だが、それは今言及すべきことではないだろう。

 

そして多くのイタリカの日本将兵たちは、朝焼けを背負い意気揚々と帰還する『凱旋の装甲少女達(GIRLS und PANZER)』を見て、確かに自分達の勝利を確信したという。

 

歓声に沸きかえるイタリカを護る軍人やそこに暮らす市民達と共に今はただ、小さな勝利を祝おう。

それが決して平和へ繋がるものだとないとしても……

 

鋼鉄の少女達に祝福を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





皆様、ご愛読ありがとうございました。
完膚なきまでの敗北が成長させたのか、少し大人になったピニャ殿下はいかがだったでしょうか?

それにしても……みほが苛烈なこと苛烈なこと(^^
そして、素直な胸のうちをレレイに話すロゥリィがなんか書いてて可愛かったです(笑)
よっぽどみほが気に入ったんだな~と。

長かったイタリカ防衛戦もこれで終了となりました。
ちょっとしたお知らせですが……内容やサブタイからお気づきの方がいらっしゃるかもしれませんが、実は次回でこの物語(シリーズ)は最終話を迎えます。
正確には、最終話と物語全体のあとがきを二つに分けて投稿したいと思ってますので、ちょっと今までよりアップは遅くなるかもしれないです(^^

少し気が早いですが、ここまでお読みくださり本当にありがとうございました。
残すところあと1話ですが、最後までお付き合いくだされば幸いです。

それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!



***



設定資料



九〇式統制型発動機(軍用モデル)

基本構造:予備燃焼室付4ストローク空冷ディーゼル・エンジン

各モデルの系番(形式、出力、排気量):主な搭載車両
DB52型(直列6気筒、134馬力、10.9l):九八式装軌装甲兵車
AB型(V型8気筒、160馬力、14.5l):九五式軽戦車系列
AC型(V型12気筒、240馬力、21.7l):九七式中戦車系列
AC-K型(機械式過給機(スーパーチャージャー)/中間冷却機(インタークーラー)付V型12気筒、307馬力、21.7l):九八式重戦車
AL型(V型12気筒、412馬力、37.7l):一式中戦車(予定)
AL-K型(過給機/中間冷却機付V型12気筒、予定出力555馬力、37.7l):開発中
AJ型(V型12気筒、設計値500馬力以上、45.8l):開発中(AL型の排気量拡大リファイン版)

備考
軍民問わずエンジンごとメーカーごとにばらばらだった新技術エンジンであるディーゼル・エンジンの規格を統一し、車両用高速ディーゼル機関の共通仕様を製作しようとする動きが1920年代後半、アメリカから伝播したモータリゼーションの流れを受けて始まった。
国防総省と通産省、更に民間の重機メーカーや自動車メーカーが会議を重ね、皇紀2590年(1930年)に国策の一環として決定されたのがこの軍民共用の【ディーゼル統制規格】であり、この規格を用いて生産されるディーゼル・エンジンを開発年を取り【九〇式統制型発動機】と呼ぶ。
つまり、九〇式統制型発動機とは単体のエンジンやメーカーごとのエンジン・シリーズを指すのではなく、軍民採用や製造元を問わない統一規格の元に製造されたディーゼル・エンジンのことだ。

水冷型と空冷型の両方のタイプがあるが、基本的に水冷型は冷却水がすぐに入手できる国内民間向けの民生モデル用(バスやトラック、重機など)で、冷却水が手に入らない過酷な戦場を想定し、軍用モデルは空冷を基本としている。
この項でも軍用モデルを中心に話を進めていく。

基本的な構造は空冷エンジン本体にに放熱性のいいアルミ製の大型オイルクーラーと強制冷却用のシロッコ・ファンを搭載するというもので、系番を表す2文字のアルファベットの後ろに”-K”と付くのは「中間冷却機(インタークーラー)」と「機械式過給機(スーパーチャージャー)」をエンジンに装着した高出力モデルである。
加えてモジュラー構造などの部品の共通性や燃料の汎用性の高さ等を考慮しながら手堅い設計が為され、よく「馬力が低い」と評されるが、例えば同時代のT-34中戦車に搭載されていたV-2エンジン(水冷4ストローク・ディーゼル)は排気量38.8lで500馬力を発生したとされているが、同格のAL型が412馬力なので極端に見劣りするというわけではない。


史実でも【一〇〇式統制型発動機】という同種のエンジンがあったが、10年以上登場が早まったのは、やはりアメリカの影響下で起きた前出のモータリゼーションに加え、アメリカ式の重工業……大量生産の原理と徹底的な品質管理、あらゆるものを規格化する工業規格の設定の導入の流れが1920年代よりあったからだろう。
そのため、史実のオリジナルと比べるなら生産性も均質化も機械的信頼性も段違いであろう。

また、統制型規格はその汎用性の高さ/設計の自由度ゆえに戦後も民生分野で数十年に長く使われ、日本の戦後発展に大きく寄与したようだ。






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