祝☆劇場版公開記念! ガルパンにゲート成分を混ぜて『門』の開通を100年以上早めてみた   作:ボストーク

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皆様、こんにちわ~。
昨日、「今日は更新できない」と書きましたがそりゃ嘘だ(笑)
実は昨日(あるいは今日)の午前三時過ぎまで執筆し、今日は今日で予定に大穴……空白時間は数時間(泣)が空いたので、一度帰宅し一気に執筆しました。
慌てて書いた分、ちょっと精度が心配です(汗)
それにしてもこれで八日間連続投稿……我ながらようやるなぁ~と。

さて今回のエピソードですが……サブタイ通りに罠の口が閉じます。
そして、絹代お嬢様の内面とかも少し触れてみました(^^




第16話 ”そして罠の口は閉じられるのです!”

 

 

 

戦車隊、前へ(パンツァー・フォー)!!」

 

みほの命令と共にアイドリング状態だった16台の統制型ディーゼルが呻り声をあげ! 鋼鉄の無限軌道が地面を掻き毟り巨大な車体を一気に押し進める!

 

死兵と化した囮を蹴散らしたみほ達は当初の計画通り追撃戦に移行した。

森から焼け出されるように飛び出た数から考えて、これも実は囮……とは考えにくいが、後詰めで杏たちが確認に来る以上、問題はないと考えていた。

 

仮に残存兵が森の中で生き残ったとしてもごく少数のはずだし、その程度の数なら”中隊長随伴車(カモ)”の乗員達、”園みどり子軍曹”を中心とする憲兵資格持ち(オニ)達がどうにかするだろう。

見た目は思わずベッドに連れ込みたくなるくらい可愛いが、イタリカ全部隊から「鬼の風紀委員会実働部隊」と恐れられるのは伊達じゃないのだ。

 

 

 

「優花里さん、弾種”榴散弾”。華さん、照準は敵後方集団、最後尾。頭を押さえるのじゃなく背中を蹴り飛ばす感じで」

 

「了解です!」

 

「かしこまりました!」

 

優花里の正確な装填と、まだ実戦経験が浅いにも関わらず名人芸の片鱗を見せ付ける華の射撃能力なら、そうそう意図しないところに落ちることもないだろう。

むしろ気にしなくてはならないのは、砲身命数や薬室内温度の上昇による命中精度の低下のほうかもしれない。

ただ、ライフリングを最も削る徹甲弾系はほとんど使っておらず、発射ペースも遅いためどちらも重篤な状態ではない筈だった。

 

そしてデフォ搭載では心許無い数しかなかった榴散弾が潤沢にあるのはありがたかった。

 

 

***

 

 

 

そして、みほ達は追いかける。

いや、追いかけながら誘導する。

みほ達第6戦車中隊主力の九八式重戦車が主砲を射掛けながら後ろから追いかけ、装甲偵察小隊の九五式軽戦車が敵逃走集団の左右から挟みこむように機動し、群れから離れて散って逃走し様という者を37mm砲と機銃でしとめてゆく。

左右にも後ろにも逃げ場が無ければ、集団は前へ逃げるしかない。

その先に何が待ち構えているとしてもだ。

 

「進路上にぶっ倒れてて障害物になってる敵はどうする?」

 

麻子の問いかけにみほは迷わず、

 

「走行に支障が出ないようならばそのまま轢き潰してください。今は迂回でスピードを落としたくないです」

 

「りょーかい」

 

気のない返事のようであるが、実は乗り気の麻子である。

彼女もまどろっこしいのも面倒なのも嫌いなのだ。

 

「やだもー! なんでそんなスプラッタ的な展開ばっかり!」

 

趣味に合わないのか否定的な叫びの沙織だったが、

 

「戦争はそもそもスプラッタの連続だぞ? 無血開城ならともかく、無血戦争なんて聞いたことが無い」

 

と言葉でばっさり切る麻子。

 

「砲弾や機関銃で撃つのは文明の利器だからいいの! 近代的な戦争だから! でも戦車でひき潰すのはなんて言うか……野蛮じゃない? 死体もぐちゃぐちゃだし」

 

沙織が言うことも論理的には怪しいが、感覚的には理解できなくはない。

 

「??? 結果は変わらないだろ? 死体は死体。死人はそれ以上殺せない」

 

心底理解できないという顔をする麻子である。

きっと「望まれる結果が得られるなら、過程や経緯は気にしない。合理的で効率的、面倒くさくなければなお良し」というのがきっと彼女のスタンスなのだろう。

何気にみほと馬が合うはずである。

本日の教訓は「常識人が一番心労がたまる」……だろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「『狐は巣穴から焼け出された』! 繰り返します! 『狐は巣穴から焼け出された』!」

 

その無線を聴いた時、確かに西絹代は微笑んでいた。

 

 

 

みほが幼い頃から銃や狩猟に慣れ親しんだように、絹代もまたロサンゼルス五輪の馬術競技で金メダルを獲った父と一緒に厩に入り浸り、馬の世話をし乗馬を楽しんだ。

父は自分を戦争とは無縁の競技騎手にしたかったようだが……

 

(それは無理というものだぞ。父上)

 

父、西竹臣の失敗は、絹代に自分の仕事場を見せてしまったことだ。

愛馬から戦車に乗り換えた父を、絹代はこの上なく「うむ。格好良い」と思ってしまったのだ。

父のコネで富士山の裾野で行われる機甲火力演習の観覧ができ、その風景を見たとき……

絹代は、一目惚れしてしまった。

 

男ではない。いや、男以上に力強く逞しい……どんな巨根より立派な巨砲を振りかざし、どんな筋肉よりも力強いエンジンを宿し、どんな骨格よりも頑丈な装甲を持ち駿馬の如く荒地を駆け抜ける「戦車」という乗り物に、だ。

 

 

 

それからの絹代は戦車に乗る努力を惜しまなかった。

「知波単女子戦車学校」に首席で入学し、在学中に時間をやりくりし陸軍の「短期士官養成」コースを履修し、優秀な成績でそれを修め、准尉の資格も取った。

周囲からは「さすがは西さんの娘だ」と誉められたものだ。

陸軍士官学校出身者は最初から一つ上の少尉スタートだが、絹代は気にもしなかった。

知波単を無事卒業し、戦車徽章さえ取れば自動的に少尉に任官できるからだ。

 

この時代、まだ士官学校や兵学校は女子にとっては狭き門で、加えて戦車などの自動車化装甲兵としての高度カリキュラムを学ぶには、機甲学校というまた別の軍学校に入りなおせねばならなかった。

それは教育の弊害というものではない。むしろ完成された教育システムゆえの事情というべきものだろう。

陸軍士官学校はあくまで「大日本帝国陸軍の士官とはなんたるや」を学ぶ学校であり、専門課程を学ぶにはそれぞれのジャンルの専門軍学校が用意されていた。

逆に言えば軍に永久服役する気がないので出世街道(キャリア)の士官階級はいらず、退役後に潰しが効く専門技能や資格が欲しければ、各種軍専門学校に行けばよいだけだ。

 

しかも士官学校だけでなく軍学校全般は、兵役義務+退役後も予備役名簿に優先招集者として記載される覚悟があるなら、学費や衣食住などの生活費は全部国持ち(軍持ち)で、オマケに小遣いに毛が生えた程度とはいえ給料まで出るのだ。

ちなみにこの教育システムは陸軍だけでなく三軍ほぼ共通である。

 

 

逆に言えばここまでしなければ集められないほど、日本は「早すぎる近代化」をしてしまっていた。

西住みほも履修した短期士官養成コースは、言うならば「士官にはなりたいけど早く専門技能を学びたい」という軍志願者(ユーザー)需要を当て込んで解説されたもので、戦時においては大量消耗が予想される士官を大量に確保することを目的とされた。

「士官の促成栽培。ほとんど裏技や抜け道」と皮肉られるものの、各軍学校在学中にもスケジュールを上手くやりくりすれば履修でき、相応の能力と努力さえあれば卒業前に修了できるのが魅力だった。

ただ、コースを修了しただけでは准尉の資格しかとれないことで、士官学校との差別化が図られている。

 

とはいえまだこの時代、高校生相当の学力と下士官としての知識、何より戦車操作技能が三年間の間に身につけられる女子戦車学校の歴史は浅く、学校の数はまだ少なかった。

そのため競争率は陸海空のパイロット専用養成コース”予科練”……”飛行予科練習生”学校並みに人気(志願数)が高く、競争率も中々のものだ。

 

 

 

***

 

 

 

大分話が横にずれたが、そんな生い立ちの絹代にとってキューポラから上半身を乗り出した形でも、馬の大群が向かってくる音……蹄が地面を叩く音を聞き違えるわけがなかった。

 

「全軍、戦闘よーい……」

 

相手が騎乗移動してる以上、馬を撃つのは心が痛まないではないが(逆に言えば敵兵を撃つのには躊躇いはない)……

 

(まあ、これは戦争だからな)

 

絹代も陸軍少尉の階級を持つ立派な軍人だ。そのあたりの切り替えは出来て当たり前の領分だった。

 

どんどん蹄の音が近づいてくる。

まがいなりにも大日本帝国の『特地』配備戦闘車両は迷彩塗装なので、もう少しは気付かれずに済むだろう。

しかも相手はみほ達に追われ、必死で逃げているのだろうから。

 

「全軍、まだ撃つなよ……まだ引き付けられる」

 

敵が見える。

馬の足運びからしてまだこちらに気が付いていない……

 

(いや、今気付いたか?)

 

速度を落とす。いや、簡単には落とせない……馬は急に止まれないし、下手にとまれば後続がぶつかり二次災害だ。

戦車に追われてそれはないだろう。

敵はこちらに近づくしかない。

 

(距離は十分……)

 

「撃ち方よーい!」

 

既に歩兵の小銃すら有効射程距離に入ってるはずだ。

こちらの違和感に気付き、騎馬がたまる。

戦車に追われても、強引に方向転換するつもりだろうか?

 

(ならば……今!)

 

「全軍、全力射撃開始! ()っ!」

 

 

 

***

 

 

 

その時、”帝国”側の将兵は確かに【炎の壁】が現出するのをみた。

自分達は炎に包まれた森から焼け出されたはずだが、今度は炎の壁が待ち構えていたのだ。

 

(不条理にもほどがあるな……)

 

ある兵士はそんな……情況を考えればむしろ呑気な思考をした直後に九七式歩兵支援車の放った57mm榴弾の至近弾を浴び、乗馬ごと人肉と馬肉の混じった細切れにされた。

 

 

 

今、壁を形成する炎は森を包んだ炎と性質が違っていた。

実際に炎は点であり、炎点が壁に見えるほど密集していただけだ。

言うまでも無くその点の正体は、絹代の命令で放たれた砲弾や銃弾だった。

 

それは剣林弾雨ならぬ砲林弾雨と評すべきものだろう。

長47mm砲に短57mm砲の重低音(バス)、迫撃砲の陽気なパーカッション……そして重機関銃や歩兵達が小銃や機関銃で奏でるハイテンポのドラムロール……

合計28両の戦闘装甲車両と随伴歩兵達が織り成す戦場のオーケストラは、瞬く間に敵将兵たちの命を視聴料代わりに飲み込んでいく。

 

もしかしたら白旗を掲げようと試みた人間もいるかもしれないが、これだけの密度……某幻想卿の”弾幕ごっこ”もかくやと思えるような砲銃弾幕が押し寄せてる現状では、日本軍が白旗を認識する前に吹き飛ばされるか蜂の巣にされるかだろう。

 

「全車、半包囲陣形を維持したまま微速前進! 追撃隊と歩調を合わせ半包囲から完全包囲殲滅に移行する!」

 

(西住少尉なら上手く合わせてくれるだろうさ)

 

自ら砲塔上に据え付けられた防盾付きの武1919機関銃の引き金を引きながら、絹代は思う。

元々、『半包囲陣形での待ち伏せ+三方閉鎖での追撃 → 包囲殲滅』というのは作戦の手順だったが、それがなくとも絹代はみほが機を見逃すようなことはすまいと確信していた。

 

(抜群に戦の機を見るのが上手い人だからな)

 

絹代には覚えがあった。

実は毎年、「女子戦車学校交流選手権」という中隊編成を1チームとした総当り(リーグ)模擬戦が行われてるのだが(そしてこの毎年恒例行事が伝統化し、戦後に戦車を使った”とある女子武道”へ発展するのだが……それは別の話)、絹代はそのたびにみほの戦術眼の鋭さと機を見抜く洞察力と勘に舌を巻かされた。

 

特に圧巻だったのは去年、姉である西住まほが卒業で抜けた女子戦車学校の元祖である名門「黒森峰女子戦車学校」相手に回し、完膚無きにまで叩き潰したのだ。

それも容赦なく徹底的に、だ。

 

 

 

***

 

 

 

(西少尉が前進を開始……)

 

みほの決断は早かった。

 

「九五式はそのまま左右の包囲を続行! 第6中隊は鶴翼陣形に移行! 味方の射線に入らぬよう、そして味方を攻撃に巻き込まぬよう注意しながら、別働隊と共に敵を包囲殲滅します!」

 

そしてキャタピラが一層強く地面を掻き毟る!

 

 

 

「ねぇ、ミホ。わたしは突っ込んじゃダメなのぉ?」

 

「いくら死なないと知ってても、流石に砲弾と銃弾のミキサーの中に突撃するのは看過できませんから」

 

「つまらなぁい。身体が疼くのよぉ~」

 

頬を赤らめ肢体をくねらせるロゥリィに、みほは「しょうがないなぁ~」と言いたげに溜息を突いて、

 

「……包囲から逃げ出そうとする輩がいれば、その時は始末をお願いします」

 

「うふふ♪ わかってるじゃない☆」

 

相変わらず平常運転の二人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「降伏だ! 降伏するぞぉーーーっ!!」

 

一緒に逃げていた将兵が半分まで減らされた頃、”帝国”司令官ヘルム・フレ・マイオ子爵はついに馬から地面に降り、両手を頭の後ろで組んでうつ伏せに倒れふした。

 

もはや万策は尽きた……いや、正確には前方に伏兵がいた時点で万策は尽きていたのではあるが、あまりといえばあんまりの展開に一瞬、思考も感情も空白化してしまい命令を出すことができなくなっていた。

その僅かな間に、凄まじい弾幕で味方は半分にまで減らされてしまっていた。

このままいけばあっという間に文字通り全滅すると頭ではなく感覚で理解した。

 

だから上の台詞と行動は半ば衝動的に行ったものではあるが、かといって責められるようなものでもない。

司令官が真っ先に降伏すれば、下の者もそれに倣って降伏しやすくなる。

意味を変えれば、ヘルムは司令官として最低限の責務は果たしたといえるのかもしれない。

 

もっとも、少なくともこの時点まで大きな戦傷も無く生き残ってることを考えれば、凄まじい強運の持ち主という解釈も成り立つ。

それが彼にとって本当に幸運なことかはわからないが……

 

みほと絹代が「撃ち方やめーっ!」という命令を出したのは、生存者の全員が地面に平伏した後……ここから約2分後のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





皆様、ご愛読ありがとうございました。
ついに罠の口が閉じ、戦闘の”大部分”が終了しましたがいかがだったでしょうか?

そして絹代ちゃんの内面やら女子戦車学校の事情を書くのが妙に楽しかったです(笑)
それにしても……みほがかなりアレな性格してるはまあ当然としても(えっ?)、麻子も中々のモンのような気がしてきました。
みほと気が合う時点でお察しとも言えますが(^^

さて、次回はいよいよイタリカ戦のラスト・ステージに突入か?
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!


***



設定資料



九六式四連対空自走砲

主砲:武2式重機関銃(12.7mm)×4(照準機一体型旋回式四連装銃架に一括搭載)
機銃:武1919式車載機関銃(7.62mm)×1(車体前面)
エンジン:統制型九〇式発動機AB型(空冷V型8気筒ディーゼル、160馬力)
車体重量:9.2t
装甲厚:防盾20mm(最大),車体前面20mm(最大)
サスペンション:シーソー式連動懸架装置
最高速:48km/h

備考
日本最初の本格的対空戦車。九五式軽戦車の車体に後の米国M45機関銃架(M16/M17対空自走砲の銃架)とほぼ同じ仕様の防盾付き動力旋回式の四連装銃架を搭載したもの。

もともと『門』外勢力の翼竜は、戦闘機や対空兵器が円熟してなかった大日本帝国にとって大きな脅威であった。
その福音となったのが、”50口径弾(12.7mm×99BMG弾)”という従来とは比べ物にならないくらい威力の大きな銃弾を使う、”M2ブローニング重機関銃”だった。
当時の戦車並みの装甲なみの翼竜の装甲を貫通できるこの機関銃は即座に購入/ライセンス生産契約が結ばれ、”武2式重機関銃”として陸海空三軍まとめて採用されることになる。
また”この世界”の日本はアメリカ以外で初のM2ブローニング重機関銃生産国となる。

そしておりしも時代は自動車化の真っ只中で、陸軍も三脚装備での射撃が前提で歩兵のみによる機動的運用が重さと大きさゆえに難しい武2式重機関銃を機動化しようとするのはむしろ必然的だった。

そこで白羽の矢が立ったのがプラットホームとして最適な九五式軽戦車である……というのは実は俗説で、実際には九五式軽戦車の試作車両が完成した時点で平行して開発が進められたらしい。
その性能は概ね満足できるもので、初の実戦参加となった『特地』では翼竜対策の対空銃撃以外にも、地上目標に対する水平掃射兵器としても多大な戦果を残している。

日本で量産される武2式重機関銃は、信頼性や耐久性を確保するために発射速度を550発/分に固定されることが常で、九六式四連対空自走砲全隊の発射レートは2200発/分という膨大なものであった。

さらなる火力増強を求めた武2式重機関銃×4を九八式高射機関砲ないし九九式二十粍標準機関砲×2に換装したバリエーション・モデルも後年に登場している。







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