時空のエトランゼ   作:apride

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地球へ遊星爆弾を送り続けているガミラス前線基地がある冥王星。ヤマトは冥王星基地攻略に向かうことになるが、立役者『山本玲』の存在が不可欠であろう。


5話 メ2号作戦立案

「ゆきかぜ・・・」

 

古代の目の前に傷だらけで横たわる〔ゆきかぜ〕

 

「兄さん・・・の(フネ)だったなんて」

 

 

 

 

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「ヘルメットをはずせ!」

 

加藤隊長(一尉)は仁王立ちで睨みつけている。傍らには篠原(二尉)もいる。

 

山本はゆっくりとヘルメットを外した。真っ直ぐ見つめる瞳には揺るぎない意志が感じられる。

 

「ったく、お前って奴は・・」

 

 

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《 艦長室 》

 

室内には沖田艦長・古代戦術長・そして私、瓜生参謀長の三人がいる。

 

「救難信号は駆逐艦〔ゆきかぜ〕のものと確認しました。同艦に生存者は無く、不時着後に脱出した形跡も認められません。先ほどのガミラスの襲撃からすると拿捕された可能性があります!」

 

「そうか、生存者は無しか・・・」

沖田艦長は『生存者無し』のみ報告として受けたようだ。

 

「艦長!〔ゆきかぜ〕乗員が捕虜になった可能性があります!」

古代は艦長の対応に納得がいかない様子だ。

 

「司令、後は私が・・・」

「うむ・・」

 

古代には私から説明しよう。

 

「では古代戦術長。仮にだ、拿捕されて捕虜になった乗員がいたとする。どうやって事実確認を行うのだ?」

 

「そ、それは・・・ガミラスの・・・・わかりません」

私から質問されて、古代は考えたが・・わからなかった。

 

「そもそも、この戦争は『宣戦布告』無く始まった。そして今現在に於いてもガミラスとの公式な接触は無い。このことが意味するのは?」

 

「・・・・」

古代は沈黙してしまった。

 

「我々地球人類とガミラスとの間には外交チャンネルが無いのだよ・・・彼等から見たら、我々は未開の星の原住民でしか無いのかもしれん」

 

「もしかしたら、冥王星の敵基地に・・・」

 

「古代、その可能性はゼロではないが憶測でしかない。仮の話だが、我々なら捕虜を前線基地に置いておくかな?また、敵から捕虜に関してのメッセージなども無い」

 

「確かに憶測の域をでません。僕はどうすれば・・」

 

「今回の捜索では『生存者無し』のみ!それ以外は一切口外無用だ!艦内が混乱しかねんからな」

 

「わかりました・・・」

 

 

 

「奴等を交渉のテーブルに引きずり出すには『対等』と認めさせるしかないのかもしれん。瓜生参謀長・・メ2号作戦を立案せよ」

 

沖田艦長は静かに力強く呟いた。

 

 

 

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「君の行動は明らかな軍規違反だ。結果はどうあれ・・・処罰は免れん。わかるな?・・山本三尉」

 

渕上飛行長がやや困惑気味に話す横では憮然とした表情の加藤隊長が立っている。

 

「はい、それは承知してます。しかし、あの時点では最速・最善の判断と最良の結果を出しました!それは加藤一尉が一番ご存知のはずです!」

そう言って玲は加藤を見る。

 

「っ!」

加藤が言いかけたところを渕上が腕を出して遮った。

 

「確かに君が言う通りだ・・が、それはあくまで君が航空隊だったらの話だ」

「航空隊に転属させてください!飛行長!」

「ダメだっ!!」『ガァン!』

怒声と共に加藤は横のロッカーを叩きつけた。

 

「加藤!!お前は黙ってろ。山本、君は処分が決まるまで自室で謹慎していなさい」

 

「渕上三佐!」

玲は食い下がる

「話は以上だ!下がれ」

 

「・・・・失礼します」

玲はまだ納得がいかない表情で退室した。

 

 

 

「やれやれ・・・お前が言うこともわかるが、あれは戦力としては魅力的だ。どうしたものかな?」

渕上飛行長は加藤を見つめる・・

「ダメですよ・・・渕上さん。いつも仰ってるじゃないですか、パイロットはどんなに熱くなっても心の底では常に冷静でなくちゃいかん!と・・」

「山本は違うか?」

 

「あいつは明生の死を歪んで受け止めてしまった。腕が良くても、あいつは心の底に歪みを持っているんです」

 

「惜しい腕だな。・・・それにしてもだ、彼女が一人でやったにしては出来すぎじゃねーか?裏に誰かいるな・・・いきなりスイッチオンで飛ぶわけないわな(笑)」

「・・・笑いごとじゃないっすよ」

 

「山本は配属された当初から機会を伺っていたのだろう。自分一人で強奪したと言い張っているが、協力者無しには不可能だ。幹部の誰かを味方につけてるんじゃないかな?」

 

「幹部?真田副長とか・・いや、違うな」

加藤は考えてみるが、思い当たる人物は浮かばない。

 

「色仕掛で籠絡したかな?」

渕上はニヤッと笑いながら加藤をみた。

 

「はあっ?あいつはそんな器用な真似出来ないです」

 

「ま、後は艦長がどうするか・・古代に続いて二人目のゼロパイロットが誕生するかもな?」

 

「そうか!古代の奴っ!あいつが手引き・・あ、そか」

加藤は以前、自分の目の前で古代がコスモゼロを強奪した事件を思いだした。一瞬疑ったが、当の古代が襲撃されていたのだ。

 

「おい、古代は無いだろ(笑)」

 

 

 

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《 艦長室 》

 

山本三尉の処遇について、該当部署の責任者が集められている。尚、参加者は

 

沖田艦長 (宙将)

真田副長 (二佐)

古代戦術長 (一尉)

渕上飛行長 (三佐)

平田主計長 (一尉)

 

瓜生参謀長 (二佐)

 

以上6名である

注:戦術長の下に飛行長が配置されているが、本来は三佐以上の補職である戦術長が一尉であるため、階級の逆転現象が起きている。戦艦の場合は副長二佐、各部署の長は三佐が相当である。

補足:階級が同じでも、職位の違いで上下関係が出来るのは軍隊に限らず企業などの民間組織に於いても常識である。[軍組織]職位+階級[民間組織]職位+役職

民間の場合は組織により様々で一概に比較はできないが…

 

 

真田副長から経緯の報告が始まった。

「本件につきましては、戦闘機の無断使用列びに所属部署の職務放棄の二つの重大な軍規違反が行われました。規定により、山本三尉には30日間の営倉入りと一階級降格処分が妥当と判断致します」

 

「処罰に関しては妥当でしょう。では、今回の敵地上部隊撃退と捜索隊救援の功績についての処遇は如何されるのでしょうか? 」

私(瓜生参謀長)は疑問として投げてみた。

 

「本来ならば敵撃退と友軍を救った功績は感状の1枚、状況からすると勲章が与えられたかもしれん」

真田副長は(良い質問だという表情で)答えた。

 

「自分は救われた立場ですが、後数分遅れていたら捕虜になっていたと思います。地上から見た限りですが、山本三尉の操縦は見事でした。航空隊でないのが不思議です」

古代戦術長が発言した。

 

「処罰は当然ですが、その後はうちで預かれませんかね?ゼロをもう1機戦力化したいところですし」

渕上飛行長から意見がでる。

 

「しかし、それでは主計科の人員が減ります。平田主計長、人手が減っては困りますよね?」

私は平田に意味有りげに目配せした。

 

平田主計長は(なるほどという表情で)視線を受け止めて発言した。

「山本三尉は主計科には向いてないです。はっきり言いますと『お荷物』でしてね! 今回の件で【和】を乱したこともあり、どちらかで貰って頂けると助かりますね!」

 

 

一通りの話を聞き終えて沖田艦長が口を開いた。

「皆の意見も聞いた上で考えた。現在、本艦は単独行動中である。他からの支援を受けられないことも考慮して規定に捉われず判断する必要があるだろう。儂に一任して貰って良いかな? 」

 

艦長の言葉に全員が了承した。

 

「うむ、では山本三尉を呼んでくれ」

 

 

暫くして

 

『山本三尉入ります!』

 

艦長室に入室した玲は艦長と幹部を目の前にして緊張の面持ちで直立不動だ。顔は紅潮し、身体はガチガチのようだ。

(大胆な行動の割りに案外小心者みたいだ)

 

「山本玲三尉!航空機無断使用列びに職務放棄により一階級降格と禁固30日間を申し告げる!」

沖田艦長直々に処罰を言い渡された玲は身体をブルブル震わせ瞳からは光るものが出てうつ向いた。

予想はしていたことだったが、実際の場面になると耐え難い感状に支配されて立っているのがやっとだ。

 

「次に、職務放棄により主計科から配転要望がある。よって主計科の任を解き、飛行長預りとする‥ 」

 

「えっ!? 」

玲は驚き顔を上げた!

 

「最後に、敵撃退と友軍救援の功績を認め・・・本来は昇級・殊勲のところだが?差引きゼロとして、処罰を不問とする。但し、職務放棄に関しては営倉にて禁固3日間の処罰を言い渡す。‥以上」

 

聞き終えて、あまりの展開に立ち眩みを起こしてふらついてしまった玲を私は咄嗟に抱き抱えた。

「しっかりしろ! 山本! 」

 

「山本、下がって休め」

「はっ! 有難う御座います! 」

艦長に敬礼し退室した。

 

 

ふらついた足取りの玲を支えながら一緒に退室した。

艦長室の前には保安部長の伊東一尉が待っていた。

「なんだ、伊東だけか? 」

「…私ではご不満でしたか? 」

言われた伊東は困り顔を見せた。

「この状態では男には任せられんだろ?見てみろ、極度の緊張で漏らしそうだ♪ 」

「もっ!漏らしてませんっ!! 」

弄られた怜は真っ赤になり否定する。

「部屋までは私が連れて行くから、君は営倉入りの準備を頼む」

「あぁ、なるほど。了解しました」

伊東一尉は細い糸目をやや開いてチラリと玲を見て答えた。

 

「行くぞ」

「あ、もう大丈夫です。一人で歩けます」

目を擦りながら玲は顔を赤らめていた。

(見れば見るほど可愛い仔猫ちゃんだ)

 

 

 

さて、これで役者を立てることが出来た。

いよいよ冥王星攻略作戦に取り掛かれるな!

 

 

 


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