投稿予定で半分くらい書いてあった話を記憶を辿りながら加筆・修正してみました。拙い出来ではありますが、以後は再開にあたりプロット見直しながらゆっくりですが投稿してゆく予定です。
成瀬 悠生(なるせはるき)三尉
期待の新人と噂の高い彼は防衛大学校を主席で卒業し、希望の艦隊勤務は叶わなかったものの、空間防衛総隊にて防空戦隊司令部要員として実績を積む間もなく、急遽進んだ幹部訓練課程もトップの成績を収めて晴れて作戦参謀として配属となった。彼は自他共に認める優秀な若手参謀としてスタートを切る……筈である。
折しも地球は異星人からの侵略を受けるという人類史上最大の危機に瀕していたが、彼は我こそは地球の救世主の一員たらんと血気に逸る想いでいた。
真新しい軍服を身に纏い、右肩からは参謀の金モールも誇らしげに身を引き締めて……いや、緊張に強張る成瀬が立つ場所は作戦会議の真っ盛りである。
「……(配属初日にこの洗礼かよ)」
『米国主力艦隊が壊滅したのだ!最早我々の戦力では敵うはずあるまい!』
『馬鹿な! みすみす敵の軍門に降ると言うのか! 』
『まてまて!まだロシアも中国も主力は温存している。国連軍の総力挙げる反抗作戦は可能だ! 』
彼の目の前では高級参謀達が侃々諤々の舌戦を繰り広げている。話の内容から察するに、外惑星域で大敗を喫したようである。
「成瀬三尉、君はどうだ? 」
不意に横から声を掛けられ見る!?
肩の辺りまでの黒髪に凛とした横顔が美麗な男装麗人…じゃない! 瓜生二尉…3期先輩で父親が幕僚長というくらいしか知らないが、噂では親の七光りとか…爆発事故で記憶喪失になったという…なんだか残念な人?
「…どう? と、言うと? 」
「そこの参謀達の作戦案だよ。どう思うよ? 」
どう思う…と?
話からするとロシア・中国の宇宙艦隊は健在であることから、内惑星域外周…所謂、小惑星域にて日露中艦隊主力とする国連宇宙海軍の総力をもって敵を迎え撃つ。
そうなるのだろうと思う。
「ロシア・中国に我が日本艦隊を加えた連合宇宙艦隊での総力戦…の流れのようですが? 」
「ふん、そうなると思うのか? 」
いや、前回の連合宇宙艦隊も事実上米軍艦隊だったことから…
「今度はロシアか中国が主力となり……恐らく…」
「負け戦だろうな」
「自分もそう思います…!? 」
「ほう…君はこの世界の理に縛られてないようだな? 」
何故そう思うのか不思議な感覚に戸惑う成瀬を面白いモノを見たかのように瓜生はジッと見つめていた。
「成瀬、君は敵のガミラス…漠然とだが、戦力差をどの程度とみる? 」
彼女の問いにどんな答えが正解かと思案してみる。漠然と…そうだな。
「敵は太陽系外から…しかも、どの位の彼方からかやってきたかは…相応の技術力です。大人と子供くらい差がある…と…」
「ほう、驚いた…いや、感動したよ! 」
「へ? な…なにか変ですか? 」
「変なのは奴らだよ、、頭の良い高級参謀達が彼我の差を理解出来ないらしい」
瓜生はこの世界に来てから感じていたこと、人々が何か決められたストーリーに沿っての言動、思考が見られるのだ。太陽系外から攻めて来た敵ならば、そんな相手に正攻法で戦うことに疑問すら感じていないふしがあった。
「ストーリーに沿った言動しか出来ないNPC…てことだろう…… 」
「……NPC?…ノンプレイヤーキャラクターですか?」
「!?これは…驚いた! 」
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ビーメラ4
ビーメラ星系の第4惑星、地球に非常に似た環境を有する惑星だ。新見情報長から窮乏物資補給のためにと提案があった。事前観測により、この星は生命居住可能との調査結果が出ている……確かに青く輝く地球型惑星だ。
艦橋内では真田副長からの指示で古代戦術長が先遣上陸班編成にあたる。
「…1.5Gか」
腕を組みながら片手に顎を乗せ成瀬は思案していた。
少し前に新見情報長が
『これなら移住候補にも…』
…と、呟いて真田副長に睨まれていた。
やはり、参謀長が言うように違和感を感じる。1.5Gという数値を微々たる誤差程度と思うのは素人ならば許容されるだろう。だが、新見薫はプロの情報解析士官なのだぞ?
「古代戦術長! 私も同行したい」
「成瀬参謀…」
参謀の同行要請に戸惑い、返答に困った表情の古代戦術長に内心同情しながら私は同行要請の理由付けを口にした。
「地表へ降りるなら、陸戦要員も必要でしょう。こう見えて…」
私は胸のレンジャー徽章を指差しながらウインクした。幹部訓練課程で修得したレンジャー徽章も役に立つものだ…。
『君を副官に推薦した理由?』
ヤマト計画発動に際して私が参謀長副官に抜擢されたのは、参謀長を拝命した瓜生二佐の推薦…と言うより名指しで指名だと聞いた。何故だろう?実績の無い新米の私を?
『…女の勘? あとはそれかな?』
彼女の指は私の胸に光るレンジャー徽章を指差していた。
空間汎用輸送機 SC97コスモシーガル
ヤマトには2機搭載されている多目的輸送機である。
惑星降下中の現在、コクピットには古代・山本両名が操縦し、後部座席に私と平田主計長で計四名が搭乗している。後部コンテナ部には桐生・岬両名と榎本掌帆長が搭乗している。と、アナライザーAUO9
高度が下がり大気濃度が上がるとエンジンが大気圏内モードに切り替わる……深緑の地表部分と群青の海域が美しい…!?
ドオォン
閃光と轟音が!!
山本三尉が回避機動で機体を滑らせる!…後部コンテナからは黄色い悲鳴が上がった直後、何やら笑い声が聞こえたので問題ないな?
「高射砲撃か!」
左横からは平田一尉が叫びながら地表付近を警戒する様子が覗える。しかし…高射砲?地表から狙撃して外すか?威嚇射撃ということか?撃墜する気ならば降下中の輸送機など一撃だろう。
地球にしろガミラスにしろ、射撃統制システムは一撃必中の性能は当然だ。この惑星の防空施設の性能が低いのか、それとも威嚇でしかないのかは降りてみればわかるだろう。
なんとか無事に着陸し、周囲に警戒しつつ古代戦術長に問いかける。
「事前観測では文明らしき活動は無かった筈です…ね?」
「ああ、それらしき構造物も確認されてない」
「不自然ですね…敵の駐留部隊か?」
野戦装備程度ならば先程の攻撃能力も有り得るが、とすれば指揮官のレベルは…いや、単純に無人砲台? 何れにせよ地上部隊からの攻撃は警戒だな。
成瀬は小銃を携え警戒しつつ、内心ぼやいていた。
「…(こりゃ足腰に来るぜ)」
1.5倍の重力というのは想像以上に重石を背負う感覚だった。
その頃、ヤマト艦内では…
一部乗員による反乱が起きていた!
「ヤマト計画の破棄とイズモ計画再実行の判断と指揮を…」
「ありえない」
「両計画策定の主管であった…」
「やめたまえ」
「ヤマト計画の破棄とは、聞き捨てなりませんね」
新見と真田に割り込んできたのは伊東だった。
「…保安部長、彼女を一時拘束したまえ」
「艦船令に基づき、反乱の意図有りとして…」
そう言いながら伊東はホルスターからハンドガンを取り出し、撃鉄を引くとスッと銃口を真田に向けた。
「!?」
「あなたを拘束します」
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同時刻
「瓜生参謀長、貴女の拘置を解きます」
「おやおや、早くないか?」
「…沖田司令がお呼びです」
「ひとつ聞くが、成瀬はどうした?」
「成瀬参謀でしたら、現在は惑星探査チームに同行中です」
「!?…ふっ、ふふふ」
「??」
瓜生は思わず笑みを浮かべていた。