時空のエトランゼ   作:apride

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瓜生美晴の帰還?〔閑話〕

長かった旅路が終わりに近づいている。

つい先程、地球に向けて最後のワープが行われた。もうすぐ地球が見える筈だ。

私、瓜生美晴は佐渡先生と艦長室に居る。

中央に据えられたリクライニングベッドには、やや起こした姿勢で沖田艦長が正面を見据えている。

 

 

「佐渡先生、瓜生…ひとりにしてもらえないか」

 

佐渡と瓜生は無言で退室した。

 

 

 

 

「先生…」

「わかっとる…」

 

既に沖田十三の身体は限界を超えている。ここまで保ったのは奇跡に近い。退室した扉の傍に立つ二人も覚悟はしている。ましてや、原作知識を持つ美晴は直後に起きることも……

 

「佐渡先生、そろそろ様子を‥」

「そうじゃな… 」

 

美晴の促しに応え、佐渡は艦長室の扉を開いた。…あえてノックをしないのは……そうなのだろう。

小走りに沖田の傍に取りついた佐渡は脈と瞳孔を確認すると振り向き……伏目がちに首を振る。

 

「沖田さん…… 」

 

 

美晴の目には涙が溢れ視界がぼやける。この世界に来て7年…。美晴はそれまでのアニメやコミックを通しての傍観者から当事者になっているのだ。既に美晴はこの世界の住人だ。

沖田十三の顔に刻まれた皺や髭の一本一本がこの男の五十数年の生きざまを語っている。

 

「もっと貴方から学びたかった。もっと…酒を酌み交わしたかった…… 」

 

止めどなく溢れる涙で……

 

 

目の前に漆黒のモザイクが…?

 

 

視界を覆い尽くしたモザイクが歪む…

 

 

「え‥なんだ!? 」

 

「どうしたんじゃ? おい! 瓜生! ……… 」

 

 

異変に気づいた佐渡先生の呼掛けが、何か遠く…現実感が無くなる……そう、微睡みの中に在るかのよう……

 

 

美晴は酷い立ち眩みを感じ、後ろへと倒れながら意識を失なった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

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◇◇◇

 

 

 

 

「…… ん? 寝ていた? 」

 

 

気がつくとベッドに寝ていた。たしか艦長室で倒れた筈だが?佐渡先生が一緒に居たから医務室に運ばれたのだろう……?

 

「あれ? 天井が……変だ? 」

 

ヤマトの医務室と思ったが、視界に入る天井が違うのだ。白い天井に壁…傘の付いた裸電球とは?

 

「何処だ!‥ここは? 」

 

上体を起こした時、誰かがドアを開けて入ってきた。

 

「あ! お気づきに成られましたか! 良かった… 」

 

側に来て心配そうに話し掛けてきた女性……

聞こえた声に新見かと思いきや… 誰??

 

「誰? ‥貴女は? 」

 

「え? …私のことわからないのですか? 」

 

美晴の問いに狼狽える彼女は… ひと目見てヤマトクルーとは違う出立ちである。長い黒髪に端整な顔‥紛れもなく美人なのだが、和服というか…道着? 装いは大和撫子というに相応しい。

 

この部屋からしてヤマト艦内では無さそうだ。もしかして……帰ってきたのだろうか?

 

 

「ここは何処なのだ? 」

 

「ここですか? ここは鹿屋基地ですよ? 」

 

「鹿屋? …そうか、やはり! 私は‥否!()は帰ってきたのか!? 」

 

日の明かりが差し込む窓に目をやると‥なんと!

誘導路を往く輸送機が見える!! 民間機ではなく、自衛隊機の塗装に日の丸!

 

そして!! 一番大事なことを確認すると…

 

「胸が無い… 下は付いてる!! 帰ってきた! 俺は帰ってきたぞぉぉ!! 」

 

 

 

 

 

 

「帰ってきた? どうされたのです…提督(・・)? 」

 

 

 

 

「……提督? ……俺のこと‥か? 」

 

 

 

「はい! 瓜生提督(・・・・)

 

 

 

「…………………。…俺は瓜生ミハル‥いや、瓜生美晴三尉…宇宙戦‥護衛艦やまと…… 」

 

「ど‥どうされたのですか提督? 」

 

美晴も動揺しているのだが、どうやら彼女も事態が飲み込めていない様子で困惑顔だ。

 

「と、とりあえず落ちつこう。先ずは‥そうだ君の名は? 」

 

 

「私は…赤城と申します」

 

 

「赤木さんか‥そうか…ん? 」

 

「はい。航空母艦赤城です」

 

 

「航空母艦……赤城(・・)…………………」

 

 

「どうされました? 提督? …てい‥と‥く‥」

 

 

美晴は意識を手放しベッドに倒れるのだった。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

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◇◇◇

 

 

 

「………ん? ……ううん? 」

 

目が覚めると……ヤマトの自室ベッドだった。

 

『夢? ……夢だったのか? 』

 

「夢だったわね! たまんないわ…頭の中に他人が居るのって! あんたの夢に付き合わされる身にもなって欲しいわ! 」

 

『すまんな…あービックリした! 』

「で、誰よ? あのアカギってコ!」

 

夢の一部始終を共有していたとはいえ、ミハルには其処へ至る経緯まではわからない。その言いぐさは浮気を勘繰る妻のようである。

 

『ゲームのキャラだよ… 』

 

美晴は思い出した。自衛官だったときにスマホで遊んでいたゲーム……艦⚫これ⚫しょん

 

確か‥鹿屋基地所属の中将だったな? しかも本名で登録してしまったんだ…律儀にフルネームで。

秘書艦はいつも赤城だった…オキニなんだよ!悪いか?

 

 

 

「悪いとは言ってないわよ…。良かったわね?オキニ(・・・)の赤城さんに逢えて… 」

 

『なんか機嫌悪くない? 』

 

「別に… 夢は願望かもね? 赤城さんに逢いたいんでしょ! 」

 

『やっぱり怒ってるじゃん! 』

「怒ってない…」

 

 

一心同体であっても女心は難解なものだと思う美晴なのだった……

 

 

 

 

「…難解ですみませんねぇ」

 

 

 

思うだけで伝わる…一心同体

 

 

 

イスカンダルへの旅路はまだまだ長い……

 

 

 

 

 


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