『 俺は… 瓜生美晴 』
「ウリュウミハル? それ、私の名前ですが? 」
『あー だから、同姓同名だ! 俺は漢字で
「あぁ!? 成る程ね… ふーん… … 嫌だ…違和感なく話して… どういうこと? 」
『それは多分、何年も一心同体だからじゃないかな? 』
「…で、あなたは何処から話し掛けているの? 」
『んー …多分、君の脳内? 』
「あぁ、やっぱり… 私…… 頭がおかしくなったんだ!! イヤァァ~!! 」
ミハルは目を剥き、頭を抱えて狂乱気味になった。
『ちょっ!? 落ち着け! 俺の話を聞け! 』
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〔その後約30分して〕
「…ふぅ。 ま、害は無さそうなことはわかったわ」
『そう言って貰えると助かるよ』
「ミサイル攻撃を受けて飛ばされて、気がついたら私の身体に入ってた… と? でも、腑に落ちないわね…
『あ、その理由はね… 甲板に出て登舷礼やるからとイージスシステムを切ってたんだよ! 』
「え…… 呆れたものね。いつの時代も呑気な艦長はいるものね? ま、いいわ… あなたは爆発で吹き飛ばされて、どういう経緯か私に同化してしまったということね? 」
『そういうこと。 先日のガミラスの精神攻撃がきっかけとなり、君の意識が6年振りに戻ったという訳だ』
「6年? …じゃ、私は今… えっ! 27歳!! 」
ミハルが年月を意識した途端に己がアラサーになっていたことに愕然とした!!
さらには薬指に婚約指輪… 記憶に有る
※(美晴がミハルの身体で体験した記憶はミハルの記憶となって蘇ってくるのだ)
「… 婚約までしてたんだ。お相手は芹沢… しかも亡くなったのね…フフフ ウフフ アハハ 」
ミハルは両手で頭を抱え、髪をグシャグシャしながら笑いを溢した。
『おい、大丈夫か? 』
「大丈夫なはずないでしょ!! …責任とってもらうわ!! 」
『せ‥ 責任? 』
「私が寝てるのを良いことに、この身体を散々弄んだでしょ? 」
どうやったら自身を弄べるのか謎である。それを言うならは… [慰める]では?
「どっちでもいいわよ! あなたの思考が駄々漏れして聞こえるわ… 」
『わかった… 責任をとって、君を嫁に… 冗談はこれくらいで、俺はどうすれば良い? 』
「冗談でもよして… 縁談は懲り懲り。 芹沢さんは残念だったわね… 」
『そうだな、親父さんに似ず… 』
「似てる筈がないわよ… 達也さんは局長の実子じゃない。私もご本人にお逢いしたのは初めてだったけど、奥様の連れ子よ。だいたいね、局長はまだ60前なんだから… 気付きなさいよ! 案外鈍いのね? 」
『ぐぅ… 割りとキツいことさらっと言うな? 』
「あのうぉ… お取り込み中に失礼します」
カーテンの隙間から原田真琴が覗いてきた。
「えっ? かまわないわよ? 」
「あれ? お一人でしたか? 誰かと話してると思いました」
「あっ、あら… 夢でうなされてたかもね? アハハ… 」
『俺たちの会話に声は必要ないぞ』
「…(そうみたいね…)」
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《 中央作戦室控室 》
ミハルはモニターを睨めている。
『調べても無駄だぞ。俺も調べたからな… 記憶に有るだろ? どうやら、俺が体験した記憶は君の記憶になっているからな』
「わかってるけど… やっぱり、あなたの言う通りね」
【瓜生美晴】について調べてみたが、軍歴どころか存在すら記録になかった。勿論、瓜生家とも無関係。更には、21世紀の海上自衛隊に巡洋艦〔やまと〕も存在せず、東シナ海上での戦闘記録も無い。
「あなたの世界と、この世界は時間軸だけでなくて… 次元軸も異なるということのようね」
『並行世界でもない。全く繋がりが無い異世界だな』
「異世界… それにしては? あなたはこの世界に違和感なく溶け込んだわね? まるで知っているかの如く… どういうことかしら? 」
『知っていたさ… この世界の物語りを… 結末までもね』
「…かなり理解に苦しむけど、それはこれから起こる事象をも知っていると? 」
『大筋は相違なく起きて行ってるからな… この後も恐らくは… 』
「私達はどうなるの? イスカンダルへはたどり着くの? 」
『その答えを聞くことに恐れは無いのか? あ、すまん。愚問だな… イスカンダルへはたどり着く! 但し、大きな影響が無ければな 』
「それは‥ 何らかの干渉で未来が変わる可能性がある? 」
『そうだ。あと、人の運命だな。メインキャスト以外の人物はちょっとしたことで変わる可能性有るな‥ 例えば古代進は主役だからガチガチの運命。しかし、瓜生ミハルは脇役だから… どうなるかわからん。‥という』
「私は脇役ですか… 」
『脇役ですらない。俺の世界にあったヤマトの物語には瓜生ミハルは全く登場しない! 』
「私は登場人物に入ってないと? 」
ミハルはイマイチ要領を得ない表情で問いかけた。
『判りやすく説明しよう。【宇宙戦艦ヤマト】という物語があり、アニメーション・コミック・ライトノベルなどが存在していた。メインキャストは古代進・森雪・沖田十三・真田志郎など艦橋組は全員。メインキャストはどのメディアでも登場する。脇役はメディアによって扱いが変化する場合がある。また、後年にリメイクされた作品に於いては…… 』
「ちょっ!…ストップ! 判りやすいかは別として、話せば長くなる… というやつね」
『そのとおり! 』
~~~~~中略~~~~~
《 1時間後 》
『ヤマト2199に於いてのヒロインとも云える【山本玲】も元々は【山本明】という男性キャラだった。このことから、一部の主役級を除いて我々の干渉の効果を期待出来ると思われる。…と、こんな感じだが? 』
「……大方理解したわ。 それで、私自身の今後は? 」
『 全く不明だ 』
「でしょうね… わかったわ… それで、次の発生イベントは? 」
『ドメル将軍の軍団と戦いがあるはずだ。まず、次元潜航艦による攻撃が最初にくる』
「次元潜航艦… 要するに潜水艦ね!?
『ASWを効果的に行うには対潜哨戒機が必要だ。 哨戒機の手筈を… やれるか? 』
「哨戒機… 100式に空間ソノブイを搭載すれば可能かしらね? 」
『整備班に… 水原・榎本両名に声を掛ければいい。操縦は古代・山本両名だ! 』
「うん、わかった… しかし、出撃命令をどう… 」
※参謀に指揮権は無いのです。
『だから古代
「お膳立てしておいて、後は彼の背中を押すのね? 」
『それと、艦橋を抑えておかないとな。絶対にピンを打たせるな! ヤマトクルーは対潜に関して素人だからな… 』
アクティブソナーを不利な状況下で使うのは愚策。敵を誘き寄せる等の変則的使用ならばあり得るが…
「先ずは格納庫で哨戒機の手配からね! 」