時空のエトランゼ   作:apride

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16話 ジレルの魔女【後編】

一夜明けて(宇宙なので朝も夜も無いが、日本の戦艦は日本標準時で行動してる)

 

瓜生ミハルは目を覚ました。

 

「ここは‥? …私の部屋か」

 

身支度を整えつつ、室内を観察する…

 

ハンガーに掛けてある制服の上着を手に取り…

 

「金モールに二佐? ‥の肩章 …そうだった 」

 

 

違和感を覚えながらも記憶に… 有る

 

隣の執務室に入り、辺りを観察する。と、まあ‥ いつもと変わらない…… ?

 

とりあえずは朝食を採ることにする。

 

 

部屋を出て科員食堂へと向かう…

 

途中で何人かとすれ違う…

 

「「おはようございます」」

 

柏木紗香と大島夏樹だ… な。

 

「おはよう」

 

 

 

 

『…(ねぇ、参謀長の雰囲気変わった?) 』

『… (私も感じた! 柔らかい? なんか女っぽい? )』

 

 

後ろから小声で話す会話が聞き取れる…

 

 

「… (私、変かな?)」

 

 

 

《 食堂 》

 

いつもと変わらずテーブルに着き朝食を採る。

 

今朝は白飯とワカメの味噌汁に、だし巻き玉子・鯵の干物・水菜の浅漬けをいただく。

 

 

「おはようございます… おや? 今朝は和食ですか! 珍しいですね? 」

 

かけられた声に少し驚きながら

 

「えっ… あ、おはようございます」

 

キョトンとした表情で平田主計長が立っていた。

 

「… そうそう、今朝はそんな気分かしらね? 」

 

何故か自然と愛想笑い… ニコニコ

 

いつもはトーストにアメリカンコーヒーをブラックで… スクランブルエッグ・ベーコン・ソーセージ・ミネストローネといった感じだ… よね?

 

 

「瓜生ミハルさん… あっ! 失礼しました! 参謀長… 今朝は雰囲気が随分違いますね?? 」

 

いきなりフルネームで呼ばれた私も内心ドキドキしていた。何か様子がおかしい…

 

「… 私、どこかおかしいかな? 」

 

 

「おかしい? いや、とんでもない! なんか素敵ですよっ!? あっ! いや、何て言うか… 女性らしさが滲み出るというか… 」

 

 

なんですって? それって、昨日までは女らしくなかったと?

 

「それは褒めてるの? それとも貶してるのかしら? 」

 

私は朗かな表情を崩してはいないが、右目の下辺りがヒクッと引き攣るのを感じていた。

 

「すみません… 失礼を承知して言わせていただきますが、今の(・・)ミハルさんは綺麗です! では失礼します! 」

 

そう言うと平田は顔を真っ赤にして帰って行った。

 

 

「…… どういうことなの? 」

 

 

────────────────

 

──────────

 

 

─────

 

 

《 艦長室 》

 

 

「瓜生参謀長入ります」

 

既に佐渡先生と原田、それに古代がいた。

 

「ん? …瓜生。 気のせいかな‥ ちょうど古代から報告を受けたところだ。君も夢を見たかね? 」

 

「は、不思議な夢を見ました。記憶に無い… いえ、覚えているのに知らない‥ いえ、知っている? あれ? 私は何を?? 」

 

何かがおかしい…

 

「まぁだ影響が残っておるんじゃろ! 後で儂のところへ来い。そろそろ定期検診だしのう」

 

不意に目眩を感じ蹌踉(よろめ)く…

 

「危ないっ! 」

 

咄嗟に古代が抱き止め、計らずも古代の胸に顔を埋める格好になった。

 

「キャッ! ……すまない 」

 

「大丈夫ですか? (なんか‥今の可愛い)」

 

「いかんな。古代、すまんが真琴と一緒に医務室へ連れてってくれんか? 儂は艦長に話があるでな」

 

「じゃ、私と古代さんでお連れしますね」

 

「大丈夫だ。一人で歩ける‥ あっ? 」

 

私はそう言いながらまた蹌踉た…

 

 

《 医務室 》

 

 

「少し熱が高いですね。37.5℃… 先生が戻られたら診察してもらいますから、それまで休んで下さい」

 

「そうさせて貰うわ… 」

 

 

休むといったところで、眠くない…

 

横になりながら、昨日の『 夢 』を思い出す…

 

「… (あの海は‥ 何処だろう? )」

 

今朝から幾つも違和感があるものの、思い出すことが出来た。薄気味悪いが、記憶に有るなら納得することになる… しかし、あの夢… 前半・後半に別れて、後半は過去の記憶に基づく内容だった。

 

問題は前半なのだ… 全く知らないだけでなく、あの夢の中で自分は『男の子』だった!

 

まぁ… 夢とはそんなモノなのだが、あの『 夢 』は意図的に再現された【過去の記憶】という調査結果だ。

 

あの海は… 日本の何処かの軍港‥ 潜水艦と航空母艦が碇泊していた。建造物が見えなかったが、軍港なら当然の配置… 『江田島』と言ってた! ならば、広島の呉か! 目の前の道路を走り去る自動車と二人の着ていた制服から… それに、水上艦にしても古い艦型…… あの光景は現代ではない。

 

夢の途中で違和感を覚えた途端… 切り替わった

其れまで【自分】だった人物を見た…

次の瞬間、舞台は宇宙になり… 私の過去に体験した夢を見ていた。

 

「彼はいったい… それに、ここ数年の記憶が他人のような感じ? あの夢は精神攻撃ならば説明がつかない事象だわ… 」

 

どれだけ考えても答えが浮かばない!!

 

「なんなのよっ!! 」《 ドンッ 》

 

半ば自棄糞気味にベッドに両拳を降り下ろした。

 

 

『すまない… 俺も明確な答えを持ち合わせてない』

 

 

「ひいっ!? … 誰? 」

 

部屋には誰も居ない…

 

明瞭に聞こえた声は聞き覚えがあった。

 

 

 

『俺は‥ 瓜生 美晴(ウリュウ ミハル)

 

 

 

 

 

 

 


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