一夜明けて(宇宙なので朝も夜も無いが、日本の戦艦は日本標準時で行動してる)
瓜生ミハルは目を覚ました。
「ここは‥? …私の部屋か」
身支度を整えつつ、室内を観察する…
ハンガーに掛けてある制服の上着を手に取り…
「金モールに二佐? ‥の肩章 …そうだった 」
違和感を覚えながらも記憶に… 有る
隣の執務室に入り、辺りを観察する。と、まあ‥ いつもと変わらない…… ?
とりあえずは朝食を採ることにする。
部屋を出て科員食堂へと向かう…
途中で何人かとすれ違う…
「「おはようございます」」
柏木紗香と大島夏樹だ… な。
「おはよう」
『…(ねぇ、参謀長の雰囲気変わった?) 』
『… (私も感じた! 柔らかい? なんか女っぽい? )』
後ろから小声で話す会話が聞き取れる…
「… (私、変かな?)」
《 食堂 》
いつもと変わらずテーブルに着き朝食を採る。
今朝は白飯とワカメの味噌汁に、だし巻き玉子・鯵の干物・水菜の浅漬けをいただく。
「おはようございます… おや? 今朝は和食ですか! 珍しいですね? 」
かけられた声に少し驚きながら
「えっ… あ、おはようございます」
キョトンとした表情で平田主計長が立っていた。
「… そうそう、今朝はそんな気分かしらね? 」
何故か自然と愛想笑い… ニコニコ
いつもはトーストにアメリカンコーヒーをブラックで… スクランブルエッグ・ベーコン・ソーセージ・ミネストローネといった感じだ… よね?
「瓜生ミハルさん… あっ! 失礼しました! 参謀長… 今朝は雰囲気が随分違いますね?? 」
いきなりフルネームで呼ばれた私も内心ドキドキしていた。何か様子がおかしい…
「… 私、どこかおかしいかな? 」
「おかしい? いや、とんでもない! なんか素敵ですよっ!? あっ! いや、何て言うか… 女性らしさが滲み出るというか… 」
なんですって? それって、昨日までは女らしくなかったと?
「それは褒めてるの? それとも貶してるのかしら? 」
私は朗かな表情を崩してはいないが、右目の下辺りがヒクッと引き攣るのを感じていた。
「すみません… 失礼を承知して言わせていただきますが、
そう言うと平田は顔を真っ赤にして帰って行った。
「…… どういうことなの? 」
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《 艦長室 》
「瓜生参謀長入ります」
既に佐渡先生と原田、それに古代がいた。
「ん? …瓜生。 気のせいかな‥ ちょうど古代から報告を受けたところだ。君も夢を見たかね? 」
「は、不思議な夢を見ました。記憶に無い… いえ、覚えているのに知らない‥ いえ、知っている? あれ? 私は何を?? 」
何かがおかしい…
「まぁだ影響が残っておるんじゃろ! 後で儂のところへ来い。そろそろ定期検診だしのう」
不意に目眩を感じ
「危ないっ! 」
咄嗟に古代が抱き止め、計らずも古代の胸に顔を埋める格好になった。
「キャッ! ……すまない 」
「大丈夫ですか? (なんか‥今の可愛い)」
「いかんな。古代、すまんが真琴と一緒に医務室へ連れてってくれんか? 儂は艦長に話があるでな」
「じゃ、私と古代さんでお連れしますね」
「大丈夫だ。一人で歩ける‥ あっ? 」
私はそう言いながらまた蹌踉た…
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《 医務室 》
「少し熱が高いですね。37.5℃… 先生が戻られたら診察してもらいますから、それまで休んで下さい」
「そうさせて貰うわ… 」
休むといったところで、眠くない…
横になりながら、昨日の『 夢 』を思い出す…
「… (あの海は‥ 何処だろう? )」
今朝から幾つも違和感があるものの、思い出すことが出来た。薄気味悪いが、記憶に有るなら納得することになる… しかし、あの夢… 前半・後半に別れて、後半は過去の記憶に基づく内容だった。
問題は前半なのだ… 全く知らないだけでなく、あの夢の中で自分は『男の子』だった!
まぁ… 夢とはそんなモノなのだが、あの『 夢 』は意図的に再現された【過去の記憶】という調査結果だ。
あの海は… 日本の何処かの軍港‥ 潜水艦と航空母艦が碇泊していた。建造物が見えなかったが、軍港なら当然の配置… 『江田島』と言ってた! ならば、広島の呉か! 目の前の道路を走り去る自動車と二人の着ていた制服から… それに、水上艦にしても古い艦型…… あの光景は現代ではない。
夢の途中で違和感を覚えた途端… 切り替わった
其れまで【自分】だった人物を見た…
次の瞬間、舞台は宇宙になり… 私の過去に体験した夢を見ていた。
「彼はいったい… それに、ここ数年の記憶が他人のような感じ? あの夢は精神攻撃ならば説明がつかない事象だわ… 」
どれだけ考えても答えが浮かばない!!
「なんなのよっ!! 」《 ドンッ 》
半ば自棄糞気味にベッドに両拳を降り下ろした。
『すまない… 俺も明確な答えを持ち合わせてない』
「ひいっ!? … 誰? 」
部屋には誰も居ない…
明瞭に聞こえた声は聞き覚えがあった。
『俺は‥