大学生ボッチの一人暮らし   作:なかのん。

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遅くなりましたが更新です!

よろしくお願いします!


大学生ボッチの一人暮らし 4

 

 

 

 私は比企谷八幡の事が好き。

 この気持ちに気づいたのは高校の卒業式の日だった。

 卒業式の日に由比ヶ浜さんが比企谷君に告白していたところを私は見てしまったのだ。

 由比ヶ浜さんの気持ちは薄々気づいていたから驚きはしなかったけれど、何故か胸にチクリと痛みが走ったのだ。

 この胸の痛みの正体が分からないまま陰から二人の様子を見ていた。

 比企谷君が何かを言った瞬間、由比ヶ浜さんが泣き出してしまったのを見て何となく駄目だったのが分かった。

 そして、少し会話をした後二人は別れた。

 何故かほっと胸を撫でおろしている自分に気づき、そしてもう一つの事実にも気づく。

 それから大学に通い始めてからも比企谷君の事が頭から離れることは無かった。

 

 

 慣れた手つきで夕飯を作っている。

 いつか比企谷君と一緒に私が作った夕飯を食べられたらいいな。

 そんなことを考えていると指に鋭い痛みが走った。包丁で切ったのだ。思っていたよりも傷はそこまで深くないが切った部分に消毒液をつけながら私は考えていた。

 駄目だ…今の私。ここまで自分が恋愛に弱いなんて考えてもみなかった。

 彼の事ばかり考えている。ずっと上の空な感じで何も手につかない。早急に何とかしなくては。

 とりあえず彼に連絡を取りたいのだが、私はメールアドレスも電話番号も知らないのだ。

 彼は聞いてこなかったし、私も聞いたことは無かった。改めて由比ヶ浜さんのコミュニケーション能力は凄いと思った。

 とりあえず、夕飯を作ってから考える事にしよう。

 

 

 夕飯を片付けお風呂にも入り、私は電話を掛けた。

 

 「もしもし、お久しぶりです! 小町です!」

 

 「小町さん、お久しぶり。こんな時間に電話して申し訳ないのだけれど……比企谷君は……」

 

 「あ、兄なら大学入る時に一人暮らし始めたので家にはいないですよ! よかったら連絡先、教えましょうか?」

 

 え? 一人暮らしを始めたの? 彼が? とても驚いたけれどそれなら話が早いわ。

 

 「いいえ、彼の今住んでいる住所を聞いてもいいかしら?」

 

 連絡先は本人から直接聞きたいし、直接話したいから。

 

 

 次の日、早起きして教えてもらった住所を目指した。

 結構近い場所にある為、すぐに到着した。

 するとちょうど彼が家から出てきた。相変わらず目は腐っていて何も変わっていなかった。

 「そんな簡単に人が変わるかよ」とか言っていた彼がすぐに変わるわけがないわね。

 ここまで来たら話しかけに行かなければと思ったが、緊張で足がすくんで動けないでいた。情けない…。

 結局、話しかけるどころか一歩も動けず彼はさっさと行ってしまった。

 私は一体何をしているのだろう。自分の意気地の無さに絶望しながらもう一度顔を上げると、彼が出てきたドアに鍵が刺さっているのが分かった。

 そうだ、あれを口実に彼に会える。…そうだ、合鍵を作りに行こう。

 

 

 

 

 それから毎日彼の家に行った。

 やっと連絡先の交換もできたし、夕飯も作って一緒に食べている。

 だけど彼と私の関係は前と全然変わることは無かったけれど、今はこうしていられるだけでとても充実しているし思いを伝えるのはまだ早いと思っていた。

 だが、由比ヶ浜さんと一色さんが彼の家に来たとき我慢が出来なくなった。

 好きな人から「全然意識していない」みたいなことを言われるのがこんなに辛いとは思っていなかった。

 だから私は泣きながらその場から逃げ出してしまった。

 

 

 体力がないので疲れて歩いていたところを由比ヶ浜さんに捕まった。

 

 「ゆきのん、ヒッキーのこと好きなんだよね?だったら、逃げちゃだめだよ!ヒッキー鈍感だし……言わなきゃ分かんないことだってあるんだよ!」

 

 それは分かっている。

 だけどもし思いを告げ、彼にオーケーを貰えたとしても由比ヶ浜さんに合わせる顔がない。

 ノーだった場合、彼と今後どういう関係になるのか分からなくて怖かった。

 結局私はあくまでも彼から言って来てくれることを期待していただけなのかもしれない。

 

 「私は、彼にふさわしくなんてない、とても卑怯な女よ……。由比ヶ浜さんの気持ちを知っていたのに相談もしなかった……」

 

 言っていて自分がとても醜いと思った。

 

 「違うよ。これはゆきのんとヒッキーの事なんだから私は口を出せる立場じゃない。だけどこれだけは言わせて。……悔しいけどヒッキーは多分ゆきのんのこと好きだと思うよ。だからさゆきのん、逃げないで」

 

 そう言ってくれた由比ヶ浜さんは泣きながら笑っていた。

 

 

 

 由比ヶ浜さんと別れて歩いていると電話が来た。

 画面には一色いろはと表示されている。

 

 「……はい」

 

 「雪ノ下先輩、私、先輩に告白してきました」

 

 「そう……」

 

 「それだけでした。それではお休みです」

 

 電話が切れた後もそのまま立ち尽くしていて頭の中が真っ白だった。

 由比ヶ浜さんも一色さんも自分の気持ちをしっかりと彼に伝えた。

 だけど私は…

 本当に自分がちっぽけに思えてきて、枯れたと思っていた涙がまた溢れてきた。

 

 

 

 帰ってからは何もする気が起きず二時間くらいぼーっとしていた。

 彼は一色さんの事どうするのかしら……。私はどんな顔をして彼に会えばいいのだろうか。

 いきなりインターフォンが鳴り、反射的にビクッとしてしまった。

 かなり遅い時間に何だろう怖い。

 恐る恐るインターフォンのカメラを見るとそこにいたのは彼だった。

 

 「はい」

 

 「お、俺だ、こんな時間にすまん。ちょっといいか?」

 

 「駄目よ。今貴方に会ってしまったらきっと貴方を傷つけてしまうから」

 

 今の精神状態で彼と話してしまったら何を言ってしまうのか自分でも分からない。恐らくみっともなく泣きじゃくる事になると思うけれど。

 

 「じゃあこのままでもいいから聞いてくれよ雪ノ下」

 

 本音を言うと聞きたくない。だけど由比ヶ浜さんに言われた言葉を思い出して逃げない方を選ぶ。

 

 「俺は今夜踏み出そうと決心したんだ」

 

 消極的な彼から発せられたとは思えない言葉だった。

 

 「そう決意するに至った出来事はいくつかあるが、一番大きかったのは一色からの告白だ」

 

 駄目だ、もう聞いていられない。また涙が出てくる。

 

 「やめて」

 

 「駄目だ、やめない。ここでやめたら今後お前には一生近づけないから」

 

 確かにここで引いたら私たちの関係は終わってしまう。

 

 「俺は一色にファーストキスを……」

 

 「お願いやめて」

 

 もう一回言ってしまった。だけどそんなこと彼の口から聞きたくはなかった。

 成程、彼は一色さんの事が……。

 悔しさや色んな感情が私の中で渦巻いていた。

 私はもうどんな言葉を彼の口から聞いても多分泣いてしまうだろう。

 

 「なあ雪ノ下、俺には好きな女の子がいるんだ」

 

 もう分かっている。その女の子が私ではないことを。

 聞くまでもないことなのだ、私は何も変わっていない、弱くて脆くて怯えているだけなのだ。

 傷つくのが怖いだけ、私は卑怯者、そんな自分が嫌で嫌で仕方がない。

 

 お互いが無言の状態を破ったのは彼だった。

 

 「俺が好きなやつは弱いんだ。いつもは強がっているだけなんだ。そして俺はどっちのそいつの事も好きだと気づいたんだ」

 

 「挙句の果てには合鍵なんて作ってくるし。なあ、酷いと思わないか?こんなにドキドキしていたのに今夜その気持ちに気づくなんて」

 

 彼は話し始めるとどんどん涙声になっていっている。

 

 「俺は…………」

 

 こんなシーンが前にもあったような気がする。

 確かあの時も私は逃げ出した。だから私はもう逃げない。

 

 「俺はな…………」

 

 次の言葉を言おうと必死に歯を食いしばっている彼の顔はとても泣き出しそうで、それでもかっこよかった。誰の事をどんな気持ちで話しているのかは分からない。

 

 「俺は、雪ノ下雪乃が欲しい」

 

 その言葉を聞いた瞬間、私の口は勝手に動いていた。

 

 「……はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「私は卑怯な女よ?」

 

 「それでも欲しい」

 

 「自分から告白する勇気なんてなかったくせに逃げ出したのよ?私」

 

 「だからここまで追いかけてきたんだろーが」

 

 「欲しいというのはどういう意味かしら?」

 

 「そ、その……恋人として……というか本物として」

 

 「何よそれ」

 

 「とゆーかお前は俺のどこが好きなんだよ」

 

 「そうね……優しいけど不器用なところかしらね。あなたは?」

 

 「さっき言ったじゃねーか。恥ずかしいからもう言わん」

 

 「そう……なら今すぐ私の上からどいてもらえるかしら?」

 

 

 






はい、という訳で続きます!

続きも頑張って書きます!

ではでは!

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