大学生ボッチの一人暮らし   作:なかのん。

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続きです!!


大学生ボッチの一人暮らし 3

 

 

 

 

 

 なんだか今日は疲れた。だが完全に目は冴えていて、横になっていても全然眠れる気がしない。

 雪ノ下の涙と一色からのキスと告白が脳裏に焼き付いて離れない。俺のファーストキスはあっさりと奪われてしまった。

 一色は告白をした後、「返事は今すぐじゃなくてもいいです、雪ノ下先輩の事もありますし、そろそろこのぬるま湯に浸るのはやめにしましょう。しっかりと考えてくださいね?」と言い残し帰って行った。

 恐らく一色は、ずっと進んでいなかった俺たちの関係を進めるのは今しかないと踏んでの告白なのかもしれない。

 俺は一体どうしたいのだろうか。友人が欲しい?恋人が欲しい?違う。本物が欲しいのだ。

 目を閉じて寝ることもできずに考えているとインターホンが鳴った。時刻は午前1時過ぎ。

 

 

 

 誰だろうこんな時間に。

 今は一人でいたい、だから出ない。 

 ピンポーン ピンポーン ピンポーン

 うるせえ、意地でも出ねえぞ。

 ピピピピピピピピピピピピピピーンポーン

 連打とか普通に迷惑すぎるだろう。そう思っているとドアの向こうから聞き覚えのある声が聞こえた。

 

 「ごみいちゃん、起きてんのは分かってるんだぞー。寝てたとしても起きてー」

 

 その声を聴いた瞬間、体は勝手に動いていた。鍵を開け妹を抱きしめる。会いたくて会いたくて仕方がなかった!愛しきマイシスター!

 

 「小町!お前こんな時間に外出歩いてんじゃねえよ!補導でもされたいのか!?そして急にどうしたんだよ!」

 

 すると、小町は鬱陶しいと言わんばかりに俺から離れた。

 

 「いやー、結衣さんから『雪乃さん来てない?』っていう内容のメールが来てたからお兄ちゃんに連絡したんだよ!」

 

 「そうだったのか…すまん、携帯の充電が切れてた…」

 

 これは嘘だ。

 一人になりたかったからあえて電源を切っていた。

 

 「…それはもういいよ。それよりさ、わざわざ家を抜け出してきた小町に何か言うことないの?」

 

 「ありがとう小町。事情は大体由比ヶ浜に聞いたのか?」

 

 「うん、小町的にごみいちゃんがゴミなのは今に始まったことじゃないし、いつかこうなるのは何となく分かってたから仕方ないかなーって思ったけど、どうするの?」

 

 どうするのって……そんな軽い感じで聞かれてスルッと答えが出せるような問なら俺はこんなに悩まないだろう。

 しかも一色の事もある。容易に答えは出てこない。

 

 「分からん。でも何とかする…しかないだろう」

 

踏み出してくれた一色のためにも。

 

 「お兄ちゃん、小町になんか隠してない?」

 

 「な、なんでそう思うんだ?」

 

 背筋に冷や汗が伝った。一色の事は誰にも言いたくない。

 

 「……まあ言いたくないなら無理に言わなくていいケド。どうせ誰かの為なんでしょ?」

 

 俺の考える事はお見通しか。お手上げだよ、愛しきマイシスター。

 

 

 

 

 突然だが俺は今、雪ノ下のマンションのオートロックドアの前にいる。

 何故かって?小町に言われたからここにいる。

 

 「今すぐに雪乃さんに会いに行って」

 

 小町はお願いを言いに来たのだ。これを言う為だけにわざわざ来てくれたのだ。

 ならば聞かないわけがない。

 いや違うな。これも小町の為という言い訳をしているだけだ。

 全く、一人で悶々と考えていたって仕方がないじゃないか。

 なんて言ったって俺はもう一人ボッチではないのだから。

 そろそろ俺がかっこ悪い奴じゃないって証明してやるよ。

 

 

 覚悟を決めてオートロックマンションのインターホンを押す。

 勢いのままに来ちゃったけど寝てたらどうしよう。

 

 「はい」

 

 「お、俺だ、こんな時間にすまん。ちょっといいか?」

 

 「駄目よ。貴方に今会ってしまったらきっと貴方を傷つけてしまうから」

 

 「じゃあこのままでもいい。聞いてくれよ雪ノ下」

 

 「………」

 

 雪ノ下は無言だ。

 だけど切らないってことは聞いてくれるというせめてもの意思表示なのだろう。

 

 「俺は今夜、踏み出そうと決心したんだ」

 

 俺たちの関係をしっかりと言葉で表したい。

 

 「そう決意するに至った出来事はいくつかあるが、一番大きかったのは一色からの告白だ」

 

 それを言ったとたん、通話機越しに鼻をすする声が聞こえてくる。

 

 「やめて」

 

 「駄目だ、やめない。ここでやめたら今後お前には一生近づけないから」

 

 「俺は一色にファーストキスを…」

 

 「お願いやめて」

 

 お互い無言になる。雪ノ下はもう傷つくのが嫌なんだろう。だがあえて言わせてもらおう。

 青春に傷はあるくらいがちょうどいいんだ。

 

 「なぁ雪ノ下、俺には好きな女の子がいるんだ」

 

 「………」

 

 もう制止の声はない。

 ただ雪ノ下が泣いているのだけは分かった。

 

 「俺が好きなやつは弱いんだ。いつもは強がっているだけなんだ。そして、俺はどっちのそいつの事も好きだと気づいたんだ」

 

 もう後には戻れない。

 開いた口は閉じてはくれない。全く、余計な口だな。

 

 「しかも挙句の果てには合鍵なんて作ってくるし。なあ、酷いと思わないか?こんなにドキドキしていたのに今夜その気持ちに気づくなんて」

 

 俺は今泣いてしまいそうだ。

 駄目だ。ここで泣いたら絶対言えないだろう。

 今しかないんだ。その為にここまで来たんだろ。

 

 「俺は………」

 

 声が震えているのが自分でもわかった。

 確か、前にも似たことをやっていた気がする。

 

 「俺はな……」

 

 こんな泣きそうな顔をして、震えた声を出して、震える足で立って。

 かっこいいの「か」の字もないな。俺らしいな本当。

 

 「俺は、雪ノ下雪乃が欲しい」

 

 そう言った俺の声は自分でも驚くくらいすっきり出てきた。

 足の震えはもう収まった。

 だけど涙は止まらなかった。






この続きは、少し時間がかかると思いますがよろしくです!

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