蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~   作:naomi

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第九話 「乙姫」

「先輩やめた方がいいですよ。」

 

「そうだ亮介くん。この機体は他のモノより遥かにリスクを伴うことが想定される。やめるんだ。」

 

「やめてよ。亮介。」

 

三人が俺を必死に止めようとしていたが、俺はどうしても試したかった。

 

「保さんお願いします。」

 

「今はファフナーパイロットも十分足りているんだ。君が無理をする必要はない。」

 

「俺は納得したいんです。お願いします。」

 

「・・・・・・。一回だけだぞ。」

 

俺は、マークザインに乗り込んだ。

 

「見てろ真壁。俺にも乗れるファフナーがあることを証明してやる。」

 

「テスト開始。」

 

マークザインの起動に試みるとこれまでと違う反応が出てきた。

 

「クッ・・・・・。」

 

「亮介。」

 

「椎名くんここまでは心配ない。マークザインに初めて搭乗しようとするときは、これくらいの同化現象は起きるんだ。・・・・・もっともこれまでテストしたパイロットはテスト中止で強制的に終了しているけどね。」

 

「そんな・・・・・大丈夫なんですか。」

 

「そうなる前に止めるさ。」

 

(この感じ、あの時以来だ。でもあの時よりもずっと激しい。)

 

俺の身体から溢れ出る緑の結晶は俺の身体を包もうとする。

 

「これ以上は危険だ。試験を中止する」

 

「霧島先輩。」

 

「亮介~。」

 

「俺を取り込めるもんなら、取り込んでみろ~。」

 

パリーン・・・・・

 

「マークザインの同化に耐えきった。」

 

保さんは驚愕していた。真壁と恵は安堵の表情を浮かべている。

 

「よしこのまま。」

 

しかし、マークザインは起動しなかった。

 

「そんな、なんで。」

 

その後、何十回と起動を試みたが、目覚めることは無かった。

 

 

 

 

 

バーン

 

射的場に銃声がこだまする。

 

「だいぶ腕を上げたじゃないか亮介。」

 

「溝口さん。お疲れさまです。」

 

「また、試したんだってな。」

 

「はい。手ごたえはあったんですが、どうしてですかね。」

 

「俺に聞くなよ。そっちのことはさっぱりなんだから。」

 

「そうですか。」

 

「う~ん。そうだなコアのお嬢ちゃんに聞いてみればわかるんじゃないか。」

 

「皆城乙姫にですか。」

 

「ああ、あの子は竜宮島そのものなんだから解ることがあるんじゃないか。」

 

「そうですね、ありがとうございます溝口さん。」

 

「おう、そっちもいいが部隊員への昇格試験を忘れるなよ候補生。」

 

俺は急ぎ皆城乙姫を探しに行こうとすると少女にぶつかった。

 

「ごめん、大丈夫か。」

 

「あぁ。」

 

「お前見ない顔だな。」

 

「あっ忘れてた。亮介その子は一騎が助けた子だ。」

 

赤い髪の短髪はじっとこちらを見ると。

 

「カノン・メンフィスだ。よろしく頼む。」

 

名前を言い残し溝口さんの後を追った。

 

 

 

 

 

「そろそろ来ると思ってたよ亮介。」

 

島中を探し回ってようやく皆城乙姫を見つけた。

 

「外が好きだって聞いてたけど、今日はここなんだな。」

 

「亮介とのかくれんぼ楽しかったよ。」

 

少女は満面の笑みを魅せる。

 

「話がある。」

 

「知ってる。」

 

「なら教えてくれ、俺はどうして適性があるのにファフナーに乗れないんだ。」

 

「焦らないで、貴方が乗る日は必ず来るから。今がその時ではないだけ。」

 

「それはいつなんだ。」

 

「・・・・・。いつかを特定することはできない。でも貴方が乗る日がくることはわかる。今の貴方にできることを精一杯やって。それがやがて貴方や島の力になるから。」

 

「信じていいんだな。」

 

少女は強い瞳でこちらを見続ける。

 

俺はその瞳を信じAlvisをあとにした。




「盗み聞きはよくないんだよ総士。」

「僕はお前を心配して見守っていただけだ。いいのか。」

「なにが総士。」

「霧島先輩はかなり思い悩んでいる。先輩が乗れない原因はわかっているんだろ。」

「・・・・・。今は話すべきことじゃないの誰にも。彼の秘めた力は。」

「先輩の力・・・・・。」

「うん。ゆっくり自分と向き合って正しく使わないと・・・・・。」

「乙姫。」

「なんでもない。今のは忘れてね総士。」

「わかった。努力する。」


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