蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~   作:naomi

8 / 66
第八話 「和解」

その場にいた皆の視線が真壁くんに集まっていた。

 

様々な感情が交錯する格納庫。

 

「真壁、お前・・・・・。」

 

亮介が目の前に睨みを利かせて立ちはだかる。

 

「霧島先輩・・・・・。」

 

「なにをしに来た。」

 

真壁司令が格納庫にやってきた。

 

「父さん・・・・・。」

 

「・・・・・。」

 

親子の間の沈黙を破ったのは父親のほうだった。

 

「話はじっくり、聞かせてもらうぞ。」

 

「わかってる。」

 

格納庫を後にする二人。

 

私は、亮介が感情を抑える姿を見守っていた。

 

 

 

しばらくして、真壁くんが独房に入ることになったと聞いて独房へ向かった。

 

「霧島先輩に椎名先輩どうしたんですか。」

 

独房の前で皆城総士くんが立っていた。

 

「そこをどいてくれないか。」

 

「霧島先輩。恐らく先輩の用事と僕の用事は同じだと思います。」

 

「・・・・・。」

 

「ここは、僕に任せてもらえませんか。」

 

亮介は渋々皆城くんに役目を託し、その場を立ち去った。

 

「椎名先輩。」

 

ついて行こうとする私を、皆城くんが止める。

 

「どうしたの。」

 

「あの・・・・・。霧島先輩に一騎と話す時間を必ず作ると伝えておいてくれませんか。」

 

「わかった。皆城くんありがとう。亮介に気を使ってくれて。」

 

私は駆け足で亮介を追った。

 

 

 

 

亮介は、私達の家の前で立ち止まった。

 

「どうしたの。入ればいいじゃない。」

 

「今更どんな顔して仕切をまたげばいいんだ。」

 

「亮介。」

 

パチーン

 

私は初めて亮介を叩いた。

 

「痛って~、なんだよいきなり。」

 

「これまで何してたのか話すって約束したじゃない。」

 

「そうだったな。」

 

「しっかり話そうよ。私達家族じゃない。」

 

「恵・・・・・。ありがとう。」

 

扉を開ける亮介。無言のままだった。

 

「恵。帰ったの・・・・・。亮介くん。」

 

「ただいま戻りました。おばさん。」

 

「無事でよかったわ、さあ上がりな。」

 

母は大粒の涙で亮介を出迎えた。

 

「恵。玄関の前でなに突っ立っているんだ。」

 

ちょうど外出していた父も戻ってきた。

 

「亮介・・・・・。」

 

「おじさん・・・・・。」

 

久しぶりに家族が揃った。

 

居間で顔を合わせる4人。どこかあのときの雰囲気を引きずっていた。

 

亮介が重い口を開く。

 

「まずは、これまでの一連のこと。すみませんでした。」

 

「そのことはいいよ、無事で戻ってきてくれてなによりなんだから。」

 

「でも、おじさんとおばさん全く関係ないのに俺は二人に八つ当たりを。」

 

「これまで何をしていた。」

 

父は厳しい口調で亮介に尋ねた。

 

「実は・・・・・。」

 

亮介は、あれから溝口恭介という人物のもとで島の防衛隊の仕事を学んでいたと話した。

 

「どうするつもりなんだ。」

 

「そういった島の守り方もありだと考えています。でもファフナーに乗るのを諦めた訳ではありません。」

 

「そうか・・・・・。あくまで『戦う』道を選ぶんだな。」

 

「はい・・・・・。」

 

父は、居間を一旦離れると小さな木の小箱を亮介に渡した。

 

「これは・・・・・拳銃。」

 

「お前のお父さんから預かっていた。できれば渡したくは無かったが。この道にお前が進むと決めたとき渡してくれと言われていた。」

 

「ありがとうございます。」

 

「それと、ここはお前の家だ。どうするかは好きにすればいいが、いつでも戻って来い。」

 

「おじさん・・・・・。ありかとう・・・ございます。」

 

涙ぐむ亮介。やっと戻って来た彼を私達は涙を流して迎え入れた。

 

 

 

家族の絆が戻って一段落したあと

 

亮介はようやく真壁くんと話す機会を設けることができた。私は亮介についていく。

 

扉越しに話す二人。

 

「すみません。霧島先輩。」

 

「何に謝っている。」

 

「島を出たこと、先輩の気持ちを考えることなく。」

 

「あのときは確かに腹立たしかった。だが島の守り方を学んで。お前が出て行った理由を色々考えた。」

 

「先輩。」

 

「外の世界はどうだった。」

 

「・・・・・。総士と話したんです色々。そして改めて総士のこれまでの言葉を考えてみました。」

 

「・・・・・。」

 

「この島ってホントに素晴らしい島です。」

 

「そうか・・・・・。」

 

亮介が扉から離れる。

 

「真壁。この島を頼む。俺もできる限り助けるぜ。」

 

「先輩・・・・・。ありがとうございます。」

 

「俺も早くアレに・・・・・。」

 

「先・・・・・輩?」

 

「いや、頑張れよ真壁。じゃあ。」

 

その場を離れる亮介の背中は、逞しくなっていた。

 

そして、真壁くんが一人の少女と島を人類軍の策略から救ったのは、

 

このやりとりから数時間後のことだった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。