蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~   作:naomi

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第六十三話「追憶:真実」

(貴方が生まれる前ね、私はアルベリヒト機関の子ども達が生まれる人工子宮の管理責任者をしていたの)

 

(どうすればファフナーのリスクを無くすことが出来るか、それが無理でも最低限のリスクで済む方法はないのか日々研究してその結果を人工子宮の子ども達に反映させてったわ)

 

(そんな時に貴方の情報を記録する日がきてね…驚いたわ貴方の適正はその当時で最高値を叩き出した)

 

(…)

 

(そのあと真壁一騎が記録をすぐに塗り替えることになるんだけどね。自分の子どもが戦場に行くことが確定した中で育てやがて戦いへ送り出さなきゃいけない。それがその時の私には耐えられなかった)

 

(そして記録を改竄した…)

 

(記録どころじゃないわ、貴方の遺伝子も徹底して修正しようと試みたわ…結果として適正はパイロットに必要な平均レベルまで落ちたわ。私は安堵してそれ以上のことを行うのを止めた。けどそこで1つの誤算が発生してしまった)

 

(誤算って)

 

(遺伝子を弄り過ぎて貴方のメモリージングが全く機能しない可能性が出てきた)

 

(実際それは貴方を育てる過程で確信したわ。貴方は遅くても本来15歳になって開放されるはずのメモリージングが全く機能しないことに。メモリージングが発生しない誤作動はその頃には全く起きない体制が整ってたからね。これではマズイと思って私はもう1人同じ子どもが出来れば疑われずに済むと思って実行を決めたわ。そして選んだのが…)

 

(恵なのか…)

 

(そう。あの子の両親とは古い付き合いだったからね。その為に1番貴方と長い関係を持つ可能性がありお互いを助け合うことが出来るであろうと考えた私は恵の遺伝子も弄ったわ、彼女の場合は特に他の影響は無かったみたいでホッしたわ)

 

(なんだよそれ…全ての原因が母さんだなんて。)

 

(当時の私が貴方を守る為に行ったことが貴方を苦しめる結果になったことは悪かったと思うわ。でも私が貴方を守りたかったということだけは知っていてほしい。例え理解されなくても…ところでさ、島のコア貴女は何故このことを黙認したの)

 

(それは私ではなく皆城乙姫が行ったことだから私に聞かないで、でも皆城乙姫の記憶を借りて言えることは霧島亮介の中で目覚めた存在と霧島亮介を向き合わせるのは早いと判断したからよ)

 

(俺の中で目覚めた存在…それは)

 

(そう。もともと貴方の因子でしかなかったその結晶は霧島叶が遺伝子を弄ったことで不要となった因子や遺伝子の集合体。『存在したい』という強い想いが因子でありながら自我を持つ存在になった。そしてその『存在したい』という願望が『力』となった)

 

(どういうことだ)

 

(貴方が適正があるのにファフナーに乗れなかったのは、その強大過ぎる力が他の存在を呑み込み消失させる可能性を秘めていたから。ファフナーにあるそれぞれのコアが『自分が呑み込みまれる』ことを拒絶した。だから貴方はファフナーに乗れなかった)

 

(それが俺達の力…)

 

(そう。貴方が時より他者から恐れられたのも、これまで多くのフェストゥムが貴方の同化を躊躇ったのも貴方に『支配される恐怖』を感じ取ったから。マークザインが拒絶し、皆城乙姫が距離を置く程の強大な『力』)

 

(『支配』…)

 

(『支配』。それはその者の意志によって相手を服従させる力。凄く強い力だけど。使い方によっては相手だけじゃない。貴方の大切な人達を恐怖に陥れる可能性を秘めた力。だから皆城乙姫は貴方が貴方のぶつかる数々の困難と向き合い乗り越えることで力を制御出来るようになることを望んだ。私もそれに同意した。だから霧島叶の行いを咎めるつもりはない。)

 

(そう…ありがとう)

 

(貴女は自らの行いに罪の意識を常に持っている。これからも持ち続けなさい永遠に。それが私が貴女に与える罰)

 

(わかった。島のコアの心使いに感謝するわ)

 

(亮介。そろそろいいかしら。貴方がここにいるのは選んでもらう為なの)

 

(最後に聞かせて欲しい。僚や祐未、母さん達の戦いを)

 

(…いいのかしら)

 

(…手短にしなさい)

 

(ありがとう)

 

そうして語られた。旅立った親友達の戦いそこには記録には遺しきれていない多くの人達の葛藤があった。


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