蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~   作:naomi

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第六十二話「追憶:叶」

(ここは…どこだ。俺はそうだ溝口さん達を庇ってやられたんだ。溝口さん達は無事に島についたかな…)

 

広がる真っ暗な世界に亮介はいた。

 

(アイツの声も聞こえない。…何度も奇跡的に助かったけど今回は流石にダメかな)

 

(ったく久しぶりに顔を見れたと思ったらなんて情けない顔してんだい亮介)

 

どこからか懐かしい声が聞こえる。

 

(ここだ、ここ)

 

振り向くと一人の女性がいた。

 

(もしかして…母さん)

(あったりー…じゃないわ、母の顔忘れてんじゃないわよ)

 

(いや、だって母さんは…)

 

(ここはあんたも何度か来たことのある場所よ。『存在と無の地平線』あんたは今そこにいる)

 

(『存在と無の地平線』ってことはあいつは)

 

(あいつ…もしかしてこの子のこと)

 

母の隣に1つの緑の結晶が現れた。

 

(私の行いがこんな副産物を産み出していたとはね)

 

(どういうことだよ、何がなんだかわからないよ)

 

(うーん。そうね、それもそうねじゃあ亮介あんたが聞きたいこと整理して質問しなさい)

 

(相変わらず自分勝手だな…まず俺とこいつ、あと母さんはどういう状況なんだ)

 

(まずはあんたも私も皆のいる世界で肉体は既に消滅してるわ、あんたは乗ってたファフナーで機体ごと海の底。私はだいぶ前に脱出挺で潰されたわ)

 

(母さんはあの計画でギリギリまで生き残ったの)

 

(えぇ。でもそこで想定外の事態が起きてね、当時はまだ海の中では活動出来ないと言われていたフェストゥムがいたのよ。僚と祐未のファフナーはだいぶ離れてたからね。間に合わずやられたよ…二人は元気)

 

(二人とも島には戻ってないよ…結局誰一人帰って来なかった)

 

(そっか…私はその時運が良いのか悪いのかフェストゥムに同化されてね気がついたらこの世界をさ迷ってた)

 

(なんで)

 

(んなもん私にもわからないわよ。まぁ考えられるとすれば私もあの人と近い考えを持ってたからなのかなとは思うわ)

 

(あの人…)

 

(真壁紅音。あの人は『フェストゥムの気持ち』を理解しようとして、理解したと聞いたわ。私は『フェストゥムを知りたい』という探究心が強かったからね。フェストゥムを理解は出来なかったけど強い探究心にフェストゥムが興味を持ったのが、私がここにいる理由かもね)

 

(フェストゥムを知る…)

 

(私はアルベリヒト機関出身でAlvisでの任務は『フェストゥムの同化現象の究明』だったから、必然的にフェストゥムを理解する必要があったのよ)

 

(なんで『L計画』に参加したの)

 

(それは…贖罪かな)

 

(贖罪って…)

 

(あんたのメモリージングが上手く行かなかった理由が大きく関係してるのよ)

 

(なんで知ってるんだ、俺のメモリージングが上手くいかなかったの)

 

(それは…)

 

(なんで黙るんだよ)

 

(霧島叶が生まれる前の人工子宮にいた貴方の遺伝子を改竄したからよ)

 

突然俺の後ろから声がした。振り向くと少女がじっとこちらを見ていた。

 

(皆城乙姫…)

 

(それは違うわ亮介。皆城乙姫はもういない。その子は皆城乙姫によって『生と死の循環』を学んだ島のミールから新たに生まれた竜宮島のコアよ)

 

(島の人々は私を『皆城織姫』と呼んでるわ。貴方もそう呼びなさい亮介)

 

(知ってるのかその出来事)

 

(私は島のコア。当然よ。霧島叶が話すのを躊躇うのなら私が見せてあげるわ)

 

(いや、ちゃんと話すわ、私の口から)

 

そうして母の口から俺に起きていた現象の真実が語られた。


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