蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~ 作:naomi
残りのアザゼル型『ベイグラント』と人類軍連合軍との決戦を純粋ミール『アルタイル』襲来の日と予測したAlvisはその日に向けて準備を整えていた。
(今は一騎くん達が成人式か…私ももう1年経つのか)
「あの…真壁司令、何故成人式が私達二人なのですか。私達の同級生はまだ居ますよね」
私達も1年前の今頃成人式を祝ってもらっていた。
「実はこの成人式は君達しか受けられる対象者がいないんだ」
「どういうことですか」
「この成人式はAlvisの全権限を開示し、成人した君達に託す儀式的な意味もある。そのためAlvisでも中心的な役割で活動している限られた者達にしか行っていないんだ」
「それが今年は俺と恵の2人だけと…」
「そうだ…。安心してくれたまえ、かつての我々の故郷でやっていた本来の成人式もこのあとちゃんと開くその式は君達の同級生全員参加だ」
「そうですか。良かった」
「ところで彼らはまだかね」
「彼ら…」
「遅くなりました」
現れたのは彗くんだった。
「あれ、彗くんじゃないどうしたの」
「おっ、お久しぶりです恵さん、えっとなんかお願いされたので持ってきました」
白い包みから出てきたのは…
「早苗ちゃんの…」
早苗ちゃんの写真であった。
「鏑木家を説得するのが一苦労で、彗くんにお願いしました」
佐喜さんも遅れてやってきた。
「佐喜さんどうしたんですか」
「どうしたも、こうしたもこれの為に親御さんへお願いして回ってたのよ」
佐喜さんの手には僚くんと祐未ちゃん他にもあの計画に参加した私達の同級生の写真があった。
「彼等も我々と共に戦ったAlvisの一員だ。君達と共に本来執り行うはずであった式を挙げようと提案があって承諾した」
「提案って…」
「君達はそれを望むかね」
「勿論です」
「お気遣いありがとうございます。皆さん」
「恵…恵どうしたのボーッとして」
「佐喜さん。すみません一騎くん達成人式かと思ったら去年の成人式を思い出してしまいまして」
「…早い者ね」
「良かったですね、一騎くん達大勢で祝えて」
「これも、私達が痛みを伴いながらも積み重ねた成果ね」
「はい…」
「さぁ休んでいる暇は無いわ、いつ敵が攻めて来ても守れるように作業を進めましょ」
「そうですね。…この席も懐かしい」
「そういえば恵がCDCで作業するのいつ振り」
「カノン達がこの島の生活に慣れるまでちょくちょく
やってたので5年振りですかね」
「久しぶりだからって容赦なく作業与えていくからね」
「程々にお願いします。佐喜さん」
「ほんと…佐喜さん容赦なく仕事与えてきたな」
久しぶりの仕事を終え自室に戻ろうとすると
「恵ちゃん。ごめんなさい手空いてる」
「千鶴先生。どうしましたか」
「ちょっと手伝ってほしいの」
「大丈夫ですよ。ちょうどうちの子も引き取りに行こうと思ってましたし」
「そう。ありがとうこのメディカル資料をまとめて欲しいの、私は今いる患者のメディカルチェックがあるからそちらのフォロー出来ないけど、よろしくね」
「わかりました」
その資料は核の後遺症に悩まされている人々の診断記録が中心だった。
だが1つ他の記録とは一線を引く記録が混じっていた。
『霧島亮介のファフナー不適合によるフェストゥム因子の因果関係』
(亮介あの頃本当に毎日のように起動試験してたんだ。1日おきに検査記録がある…千鶴先生に突然同化現象に襲われること結構早くに相談してたんだ。家出した頃には千鶴先生もそのこと把握してる)
読み進めると千鶴先生の立てた1つの仮説が出てきた。
【当人の要望により同化現象のリスクがありながらも起動試験とメディカルチェックを行っているが、相変わらずファフナーは起動せず、身体にも異常は見当たらない。適性検査は問題なくパスしているのに起動出来ないのは何故か。考えられるのは、我々のファフナーは高度な機体との同化で一個人の専用機化される傾向があるため機体と強固な同化が出来なかった。或いは彼が持つフェストゥム因子に機体との同化を妨げる因子が形成されている可能性である】
(同化を妨げるフェストゥム因子…亮介が言ってた『力』と関係あるのかな)
「恵さん。ありがとうね、助かったわ」
気がつくと千鶴先生は作業を終えて戻って来ていた。
「すみません。勝手に」
「大丈夫よ特別秘密にすることでもないし」
「こんなにも起動試験繰り返してたんですね。亮介」
「えぇ、結局彼の望みを叶えて挙げることが出来なかったわ」
「きっと千鶴先生の想いは彼に伝わってたと思います」
「だといいわ…原因も仮説は立てたけれども突き止めるまでは出来なかった」
「前に亮介言ってました。乙姫ちゃんに亮介に備わった『力』が原因でファフナーに乗れないんだと言われたと」
「『力』…SDPの発現と関係があるのかしら」
「どうですかね」
「調べようにも本人がいないのでは…はい私です」
CDCから千鶴先生に通信が入った。
「こちらは彼女のおかげで大丈夫です。…はいわかりました、本人に伝えます。…千鶴さんCDCで佐喜さんが呼んでるわ。こちらは大丈夫だから行ってあげて」
「わかりました。失礼します」
その後はCDCに付きっきりとなり、決戦の日を迎えた。