蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~ 作:naomi
「暉のやつ、ご飯をわしづかみで食べようとするんです。本当ビックリしましたよ」
あれから数日が経ち、私はメディカルルームから退院し、Alvisの部屋に戻った。
「どうですか、恵先輩調子は」
「もう大丈夫よ、ありがとう里奈ちゃん」
「霧島先輩は…残念です」
「…うん。正直まだ完全には受け入れきれてないかな」
「そうですよね、暉が同化現象末期寸前で戻ってきた時の私が不安でいっぱいだったのに、そう簡単には受け止めきれませんよね」
「でも、いつまでもくよくよしていられないわ、あいつの分も精一杯生きないとこの子と二人で」
「恵先輩…」
「っもう、暗い話はここまで。そういえば里奈ちゃん達また乗るんだって、『ゼロファフナー』」
『ゼロファフナー』 人類がフェストゥムに対抗するために産み出した最初のファフナー。正式にはファフナー・エーギルモデル。アルヴィス製ファフナー第一世代モデル。
最初のパイロットは里奈ちゃん達のご両親であったが起動実験の失敗によりご両親は亡くなり「実戦モデル」開発計画は凍結した。半擱座状態で長らくアルヴィスの補助システムとして供用されてきたが、第二次蒼穹作戦の時に封印が解かれ、里奈ちゃんと暉くんが搭乗した。
そしてこの度第3Alvis上陸作戦にて再び二人が搭乗し作戦に参加することが決まった。
「はい。この前の戦いであのアザゼル型のコアをマークノインの出力では完全に破壊しきれなかったので今度こそぶっ壊してやりますよ」
「ゼロファフナーって複座式だよね、暉くん大丈夫なのファフナーに乗って」
「…本人が志願してるんでなんとも言えないです。暉のSDPも私と同じ『増幅』みたいなんで乗ることになりましたけど…自分が末期になったことわかってるんだか」
「そっか…やるせないね」
「…あっ時間なのでそろそろ行きますね恵先輩」
「気をつけてね」
「いってきます」
作戦直前。Alvis内を歩いていると、とある部屋を覗く暉くんを見つけた。
「暉くん。そろそろ作戦じゃないの」
「恵先輩…そうです。今から行きます」
「里奈ちゃん待ってるから早く行きな。…確かここって一騎くんの治療室だよね」
「はい。一騎先輩に決意表明を勝手にしてました」
一騎くんは先の合流でアザゼル型『アビエイター』と一騎討ちをし敵の同化に成功したものの、敵の自爆行為に巻き込まれマークザインの『フェンリル』が作動。辛うじてマークザインに守られたのか身体は残ったが昏睡状態にいた。
「俺。一騎先輩のこと尊敬してますけど、負けたくないんで」
「身体は大丈夫なの。同化現象末期だって聞いたよ」
「治療受けたんで問題ありませんよ。それに決めたんです。俺も広登と一緒に竜宮島の平和を世界に伝えるんだって。だからまだ死ぬ訳にはいかないんです」
「そっか…頑張ってね」
「ありがとうございます恵さん。行ってきます」
始まった上陸作戦。知らぬ間に別の存在の手に墜ちていたアザゼル型『ウォーカー』が、ゼロファフナーとアマテラスの活躍で撃破。ディアブロ型の出現でファフナー部隊が乗っ取られ全滅の危機に瀕したところで
一騎くんが覚醒して復活。蘇ったマークザインと共に戦場を駆け敵を退き上陸作戦は成功した。
しかし、苦悩の旅を乗り越え大きく成長した青年はもう一方の同化を引き受け旅立った。願いを込めた御守りを残して…