蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~ 作:naomi
「ここは…」
気がつくと私はメディカルルームのベットの上にいた。
「気がついた、恵」
「佐喜さん…」
「…溝口さんに会って亮介の居場所を聞いて倒れたんだよ。覚えている」
「えっ、あっ…本当なんですか、亮介がやられたって」
「…本当だ、俺の目の前で俺達を庇って敵にやられた」
「溝口さん今は」
「そんな…なんで、戦闘機で出てたんですか」
「ファフナーに乗ったんだあいつ」
耳を疑う言葉が溝口さんから出た。
「亮介が…ファフナーに」
「あぁ、この旅の途中、パイロット不足に陥った時にあいつが一か八かで試したら、乗れたんだ。人類軍のファフナーに」
「亮介が…ファフナーに…そうですか」
何故だか今でもわからない。この時私は一瞬『悲しみ』というよりも『感激』していた。
「恵…」
「よかったね亮介…ようやく乗れたんだねファフナーに…」
「恵。もういいよ、今はゆっくり休んで何も考えないで」
「そうか…亮介…やっと叶ったんだね…やっと」
「メディカルルームへ、恵ちゃんのバイタルが異常だ。すぐに来てくれ」
私はまたそこで目の前が真っ暗になった。
目が覚めると、少女が一人で立っていた。
「織姫ちゃん…」
「受け入れなさい、現実を。そして信じなさい、『希望』という可能性を」
そう言い残しコアは病室を後にした。
「失礼します」
その後エメリーちゃんと美羽ちゃんが来てくれた。
「恵お姉ちゃん大丈夫」
「ありがとう美羽ちゃん。もう大丈夫」
「コアはなんと」
「『希望』を信じてって」
「そうですか…」
突然エメリーちゃんが頭を下げた。
「貴方のおかげで私達は無事生き残ることが出来た。この旅を先導してきた者として皆を代表して言わせてください。ありがとう」
「私はなにもしてないから」
「貴女の大事な人に何度も命を救われました」
「そっか」
「多くの者が彼の決意に感謝しています。皆を代表してありがとうと言わせてください」
「貴女達はこれからどうするの」
「新天地に『アショーカ』を根づかせます」
「新天地…」
「『海神島』と呼ばれた『第3Alvis』です」
その後二人はこの長い旅路がどんな旅だったのかをお話ししてくれた。どうやら辛いことばかりで無く、とても意義のある旅だったようだ。
二人が病室を離れると少しして総士くんがやってきた。
「お身体はどうですか」
「大丈夫。ありがとう」
「すみません」
「…彼が望んだんでしょ。そうすることを」
「止めることが出来ませんでした」
「貴方が責任を感じる必要は無いのよ総士くん。むしろありがとう。亮介の望みを叶えさせてくれて」
「恵先輩…」
「これからまた島を出るんですって」
「はい。拐われた遠見と広登を連れ戻しに人類軍との交渉へ挑みます」
「気をつけてね」
「必ず連れ戻します」
総士くんは再び島を離れた。囚われた同胞を救うために
(溝口さんも一緒に行っちゃったか…ちゃんとお話ししたかったな)
総士くん達が出発している間にも『第3Alvis』へ上陸作戦の準備が着々と進められていた。