蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~ 作:naomi
カノンの遺した新設計のファフナー『エインヘリアル・モデル』に改修したファフナー部隊は、アザゼル型『ウォーカー』による大規模襲来を、剣司くんのパイロット復帰、美三香ちゃんの結晶化そして『春日井甲洋』の奇跡とも言える復活で守り抜くことが出来た。
「申し訳ないわね恵さん。子育てで大変なところで」
「大丈夫ですよ千鶴先生。島の危機に私も一人の島民として役にたちたいと思っていたので良かったです」
ウォーカーの大規模襲来の際に、竜宮島が大きなダメージを受けたことで島の環境維持装置が機能不全となり、過去に核の後遺症に悩まされた人々の症状が悪化したため人員不足となった。
その関係で私にも医療スタッフとして手伝って欲しいと連絡があり、我が子と共にAlvis内部で一時的に部屋を借りて生活していた。
私が仕事中はアルベリヒト機関出身のスタッフの人達に預けている。
竜宮島が派遣部隊を迎えに北へ移動することを決めた時、私はお墓参りに行っていた。
お墓に着き、目的の墓石に行こうとすると1人の男性が立っていた。
「春日井くん…こんにちは」
彼は軽く会釈を返すと
「守るよ、この島を」
と目の前の墓石に言いその場を去った。彼が立っていた場所は私の目的の場所だった。
(カノンありがとう。貴女のおかげで竜宮島は危機を脱したわ、これから貴女が示した座標へ島を移動させることになったの。亮介…皆は無事だよね。きっと無事だよね…そうだよね私、信じてる。皆と亮介を)
それから暫くして、カノンの示した座標に近付いた際に、私はブルクを訪ねていた。
「恵さん、どうしたんですか」
「なんか、皆を労いたくなって来ちゃった。彗くんどう調子は」
「新ファフナーのおかげでだいぶ楽になりした」
「よかったね…ご両親との仲戻せて」
「恵さんも母さんに色々言ってくれたと聞きました。ありがとうございました」
「そんな…私は愚痴を溢しただけだから」
「少なくとも、母さんになにかしらの影響はあったと思います。本当にありがとうございました」
「うん…皆をよろしくね」
「はい。今度こそ救ってみせます」
「恵先輩、いいんですか。ここに居て」
「里奈ちゃん。うん千鶴先生にも許可はもらってる」
「労いに来てくれたの初めてじゃないですか」
「そうかな…皆をよろしくね」
「はい」
「剣司くん。大丈夫」
「恵先輩。はいカノンのおかげでジークフリートとスレイプニール両システム起動しても問題ありません」
「そう…よかった」
「…亮介先輩は強い人です。きっと大丈夫ですよ」
「うん…そうだね」
「帰ってきてもらわないと、貴重な父親談が聞けなくなっちゃいますし」
「そうだね。あの人帰ってきたらそう言っとく」
「では、いってきます」
ファフナー部隊は座標へ進撃した。
「どんな状況ですかね…」
「フェストゥムだけでなくて、人類軍にも追われているそうだし、あまりいい状況ではないのは確かね。私はいつでも派遣部隊を受け入れれるように準備するわよ」
「はい」
「CDCより各員へ、派遣部隊の救助を確認。直ちに手当て及び保護にかかってください」
「行くわよ恵ちゃん」
「はい。千鶴先生」
救助者の手当てが始まる。多くの人達が怪我を完治出来ず、またまともに食事が摂れていないのか衰弱していた。
ここまでの道のりの凄まじさを肌で感じる。
ある程度手当てが終わった時、
千鶴先生は既に、美羽ちゃん達を出迎えに行っていた。
「遠見先生より『恵さんもここまで終わったら引き継いで出迎えに行ってもいいよ』と伝言を預かっています」
「わかったわ、ありがとう」
私は仕事を終わらせ急ぎ出迎えに向かう。
溝口さんを見つけると、舞さんが今にも泣き崩れそうな表情でそれを陣内さんが支える形でこちらに歩いて来ていた。
私は陣内さんに声をかけられた気がしたが一目散に溝口さんのもとへ向かった。
「溝口さん。ご無事で良かったです」
「…恵ちゃん」
どこか表情の冴えない溝口さん。
「亮介はどこですか」
「亮介は…俺達を庇ってやられちまった…」
「えっ…」
急に気が動転し、足下がふらつく。溝口さんの丈夫な身体で受け止められる。
「恵ちゃん。すまん」
私の目の前は真っ暗になった。