蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~ 作:naomi
「溝口さん本当ですか、島のバードが飛んできたって」
「間違いない。俺達が目指している場所へ向かってそうだ」
「ようやく。この旅も終わるんですね」
「そうだ。だから最後まで油断せずに、必ず帰るんだ。俺達の島に」
「はい」
終わりの見えない旅路にようやく光明が注した。そう思った。
世界の現状。ここまでの出来事、出会いと別れ…。これまで知ることの無かった多くのことを見て感じて学んだ。この体験を次の世代に語り継ぐ。それが俺のこの旅に自ら課した最後の任務。
俺の視線は、この極寒の海の先で待っているであろう竜宮島に向いていた。
「各員に告ぐ。皆も聞いていると思うがこの先でDアイランドの人達が我々を待っていてくれている可能性が判明した。ここまで多くの困難と多大なる犠牲のもとに今の我々がある。これが私からの最後の命令となる。『生き残れ』」
ナレイン将軍の合図のもと部隊が出発した。
(恵。今帰るぞ)
(敵が来ました)
(あぁ。行くぞ)
「ホークアイ5行きます」
「亮介機の『ガブリエル』出撃しました」
(死ぬなよ。亮介)
「俺はここにいるぞフェストゥム」
俺はひたすら空をかき回し、輸送機へ目がいかないように暴れ回った。
(一つ…二つ……三つ)
やがてこれまで執拗に俺達を追ってきた人類軍の部隊が戦場に現れる。
対峙するファフナー。敵の銃撃を冷静にかわし、相手の裏をとった。そのまま両腕を撃ち落とす。
「なんのつもりだ」
「去れ。俺達の善意でお前を見逃してやる。これ以上続けるというのなら容赦しない」
「…なっなんだ。なんだお前は、ウヮーやめろ。わかったから、わかったからヤメてくれ」
パイロットは機体から脱出しすぐに機体を破壊した。
入り乱れる戦場。
(皆大丈夫なのか)
見たことのないアザゼル型と交戦するマークニヒト、マークザインはあのアザゼル型『アビエイター』と一騎討ちをしている。
マークジーベンとマークツェンの姿は見えない…二人の状況が気になった。
(美羽達が危ない)
あいつの言葉に反応し輸送機を探すと、墜落している。
(そんな…なんで)
輸送機へ人類軍のファフナーが数機近づいているのが、目に入った。
「させるかー」
急いで機体を向かわせる。
「へっ、あばよ同化されたDアイランドの人間共」
「溝口隊長マズイです人類軍のファフナーがこちらに」
「皆の避難を急がせろ」(くそ…ここまで辿り着いたのに最後の最後で任務を果たせないのか、ちくしょうが)
「ここにいるのは。お前達と同じ人間だ、お前達は本当に人間か」
「なにか喚いてるが聞こえねーよおっさん…なんだこのファフナー突っ込んで来やがった」
「人類軍のファフナー…この機体は亮介」
「やらせるかよ」
(2方向からの同時攻撃。避けたら後ろの溝口さん達がやられる)
被弾する『ガブリエル』好機と見た1機が再び視線を輸送機へ向ける。それに気がついた『ガブリエル』はすぐさま砲撃し武装ごと撃ち落とす。
しかし
もう1機がルガーグリップを突き刺し突撃を敢行…『ガブリエル』の胴体を貫いた。
「亮介ーーー」
溝口の悲痛な叫びが響き渡る。無情にも『ガブリエル』は海の底へと沈んでいった…