蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~   作:naomi

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第五十四話「愛すること」

「カノン大丈夫」

 

合同葬儀でカノンを見かけ私は声をかけた。

 

「恵。あぁ大丈夫だ問題ない」

 

「最近メディカルルームによく運ばれてるって聞いたけど」

 

「私に芽生えた力はどうやら心に大きな負荷をかけるみたいなんだ。休めば治る」

 

「そう…ならいいんだけど」

 

背中の我が子がカノンに抱っこしてほしかったのか元気にはしゃぐ

 

「ごめんな、今はこれで我慢してくれ」

 

カノンの手が頬に触れると突然泣きじゃくる。

 

「どうしたの。カノンお姉ちゃんだよ」

 

これまで無かったカノンへの反応に私は困惑した。

 

「…恵ごめんな」

 

「なんで謝るの、ほらよしよし」

 

「またな恵。また店に顔出すよ」

 

「う、うんまたね」

 

様々な人々の苦悩と葛藤の末、新同化現象の原因が判明したその夜カノンが店を訪ねてくれた。

 

「いらっしゃい、よかったわねカノン。新同化現象の原因がわかったそうじゃない」

 

「あぁ、これで私も自分の信じた道を進むことが出来る」

 

「カノン…」

 

「恵。あの子を見てもいいか」

 

「いいけど…寝てるわよ」

 

「寝ててもいいんだ」

 

私はカノンを家に上げ、寝ている我が子のもとへ連れていった。

 

「お前達の未来…私が守るよ」

 

我が子を見るカノンの後ろ姿に私は寂しさを感じた。

 

「ありがとう恵。私のわがまま聞いてくれて」

 

「わがままだなんて、いつでも会いに来てよ、この子も喜ぶわ」

 

「そうか。ならよかった、あと花を買いたいんだいいか、店閉めているだろう」

 

「大丈夫。ちょうど閉めようかなって思ったところだから」

 

「よかった。ありがとう」

 

珍しくいつも悩みながら花を選ぶカノンがこの日はすぐに決めてきた。

 

「この2つを買いにきた」

 

「珍しいわね、花を決めて買いにくるなんて」

 

「そうか」

 

「赤のポピーとカンパニュラね、誰かにお礼でもしに行くの」

 

「そんなところだ…。ありがとう恵、またな」

 

「うん、またねカノン」

 

なにかスッキリしたようなカノンの笑顔。私はその笑顔が凄く頭に刻みこまれた。

 

この年の盆祭り。私は我が子と二人で三人の灯籠を流した。

 

「これはね灯籠って言って、亡くなったを人を弔ってるの、貴方のおじいちゃんとおばあちゃんを弔ってあげてね…って言われてもわからないよね」

 

にっこりと笑う我が子。上がり始める花火、眺めているとショコラが泣き叫ぶ。それに反応して泣きじゃくる我が子…

 

その日、1人分の魂の質量分、竜宮島で生まれた新たな力の結晶『ゴルディアス結晶』が増えた。

 

そして、喫茶『楽園』のとある席には見覚えのある麦わら帽子が置かれていた…。




「容子さん。どうしましたか」

あれから数日が経った時、羽佐間容子さんに呼ばれ家を訪ねた。

「あの子の部屋に貴女宛の手紙が置いてあったの」

「お邪魔します…」

彼女が使っていた部屋に案内される。

机の上にあの日の花が花瓶にさして手紙と共においてあった。

恐る恐る内容を見る。

『三人の幸せを願っている』

そこには力強いメッセージが遺されていた。

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