蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~   作:naomi

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第五十二話「それぞれの苦悩」

「そうか…そんなことが、すまない椎名くん」

 

一連の騒動を聞きつけたのか、真壁司令に呼ばれ私はAlvisに赴いていた。

 

「顔をあげてください真壁司令」

 

「君には大変辛い思いをさせてしまった。これは香奈恵くん達のケアを十分に出来なかった責任者である私の責任だ」

 

「そんな、司令の責任だなんて」

 

「香奈恵くんのように、あの計画で身内を亡くした者達が『第2次L計画』なるものを立案しているのは把握していた。特にご子息を亡くした者達ほど今の現状をその計画で打破しようとする傾向がある」

 

「…実行するのでしょうか」

 

「あの計画は二度と繰り返してはならん計画だ。しないことを約束するよ」

 

「信じています。真壁司令」

 

面会室を後にすると心なしかAlvis内の空気が重苦しく感じた。

 

「あーくそ」

 

書類を破る音と叫び声が聞こえた。部屋を覗くと保さんが頭を抱えていた。

 

「どうされましたか」

 

「あー、椎名君かすまない驚かして、ちょっとね」

 

「…凄い書類の山ですね」

 

「あぁ…。つくづく俺は『メカニック』であって『エンジニア』ではないんだなと思わされるよ」

 

「それって」

 

「どうしたら、パイロットの負担を減らせるファフナーを開発出来るか試行錯誤してるんだが、全然ダメでね。羽佐間さんとイアンにはカノンについていてもらってるから俺がなんとしてもやり遂げないといけないんだが」

 

「でも保さんはこれまでも沢山のファフナー開発に携わってきたじゃないですか」

 

「俺は最終的に組み立てたに過ぎん。『ティターン・モデル』も『ノートゥング・モデル』も設計したのは日野洋治とミツヒロ・バートランド。今の『ノートゥング・モデル』をここまで改良出来たのも、紅音さんを模したフェストゥムのくれた情報のおかげだ」

 

「保さん…」

 

「すまんね。時間をとらせてそろそろまた取り掛かるから1人にしてもらえるか」

 

「長々とお邪魔しました」

 

足早にその場を去り、我が子を迎えにいった。

 

「失礼します。千鶴先生預かって頂きありがとうございました」

 

「恵ちゃん…。真壁司令との話しはもういいの」

 

「はい。…それって新同化現象に関するレポートですか」

 

私は千鶴先生のパソコンを見ると、膨大なデータが打ち込まれていることに気がついた。

 

「そうよ。早く新しい同化現象への対処方法を解明したいのだけれど、これまでの同化現象と根本的に違うから息詰まってるわ」

 

「そうですか…」

 

「でも、必ず見つけてみせる。パイロットの皆に最悪の事態が起こる前に」

 

千鶴先生の中で静かに燃える決意。私は邪魔になると思い我が子を素早く引き取り。メディカルルームを後にした。

 

「おっ恵。面談は終わった」

 

メディカルルームを出るとばったり佐喜さんと会った。

 

「佐喜さん。ありがとうございました。…珍しいですね。Alvisの制服でいらっしゃるの」

 

「敵のフェストゥムの分析の手伝いをしててね。流石にあの格好は場違いでしょ」

 

「確かにそうですね。なにかわかりましたか」

 

「収穫はなし…お手上げよ」

 

「歯痒いですね」

 

「キッカケが欲しいところね」

 

「キッカケ…なに」

 

突然のアラート

 

「恵。急いで家に帰りなよ」

 

佐喜さんは制服を脱ぐ準備をしながら走り去る。それは派遣部隊の哨戒機が帰ってきたアラートだった。

 

 

 


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