蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~ 作:naomi
「恵じゃないか、どうしたんだこんなところで」
「カノン。ちょっとお父さん達に挨拶したくなってね。カノンは」
「私もだ、翔子に挨拶しに来た」
「偉いねカノンは、翔子ちゃんと実際に会ったことないのに。毎週欠かさずお参りしてて」
「母さんの大事な娘だったと聞いているからな。例え血が繋がらず、面識はなくても私達は家族だ。なぁショコラ」
ショコラの鳴き声に反応して背中の我が子はケラケラと笑っている。
「動物の鳴き声に反応して泣く赤子は見たことあるが、笑う赤子は初めてだ。可愛い反応するなお前達の子は」
「ありがとう。ショコラも心なしか嬉しそうね」
「そうだな」
静かな風がなびく、私は沈黙を破らずにはいられなかった。
「パイロット。復帰するんだって」
「…情報が早いな。そうだ、咲良と共にレギュラーパイロットに復帰することになった」
「そんなに深刻な状態なの」
「あぁ、今回の同化現象はこれまでと違い原因が全くわからない。各々が『人間としての自分から離れていく』感覚に陥っているらしい。その結果。『人ならざる者』になってしまうかもしれないという恐怖で、ここ最近はSDPが発動出来なくなってしまったんだ」
ふと、里奈ちゃんがやたら眠くなると言っていたのを思い出した。
「それはそうだよね…」
「だが、それではダメなんだきっと。敵はこれからもどんどん強く厄介になる。私達が変化を恐れてはいけないんだ」
「カノン…」
「だから示さないといけない。今一度『私達がなんの為に戦う』のか、後輩達の導き手として今、私は必要とされている。そんな気がするんだ」
そこには、かつて命令のままに行動し、自らの意思を持つことをやめていた少女の姿はなかった。
「…一騎や亮介のことをとやかく言えないな私は、気がつけば『戦う』ことに目を向けている自分がいる。…恵」
私は、強くカノンを抱き締めた。
「貴女の居場所はここにある。だから必ず生きて戻ってきなさいよ」
「ありがとう恵」
「…どうして私の周りはこうも戦いたがるのかしら」
「…」
私の涙と同じタイミングで、突然我が子が大泣きし始めた。
「どうしたんだ急に」
「大好きなカノンお姉ちゃんがどこかへ行っちゃうから、寂しいんだよね」
「また、そうやって赤子を使って私をからかう」
「からかったつもりは無いんだけど、島をお願いします」
「あぁ、任せろ」
長い間、竜宮島の守護者として島を護り戦い続け役目を全うして一線を退いた二人の女神は、後輩達を奮い起たせ導くために
再び武器を持ち立ち上がった。