蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~ 作:naomi
「恵先輩お待たせしました」
その日、私は西尾里奈ちゃんと会う約束をしていた。
「こんにちわ」
笑顔で里奈ちゃんの顔を触る我が子。
「相変わらず可愛いですね。お子さん」
「ありがとう。佐喜さんから聞いたよ。最近大活躍なんだってね、ファフナー部隊」
「そうなんですよ。SDPっていう力が使えるようになってからフェストゥムの討伐がすごくスムーズになりました」
「そんなに凄い力なの」
「はい。鏑木はなんか遠くのモノを引き寄せたり、御門は瞬間移動したり、水鏡の乗るツクヨミのイージスはヴェルシールドに匹敵する強度を得て、芹なんて自己再生するんですよ」
「なんか凄いわね…」
「私なんて一騎先輩みたいに武器の火力を底上げして撃てるようになりました」
「皆すごいじゃない。これなら派遣部隊の人達も安心して帰って…里奈ちゃん大丈夫」
気がつくと、里奈ちゃん今にも寝てしまいそうな勢いだった。
「ふぇ、すみません恵先輩。最近凄く眠たくなるんですよ。今みたいに急に睡魔が襲って来たりして」
「寝不足なの」
「むしろ日に日に睡眠時間が増えてるんですけどね、原因が全然わからなくって」
「大丈夫なの、ファフナーに乗って」
「不思議とファフナーに乗ってる時は全然眠くならないんですよ」
「…」
「この前なんか、お風呂入ってたのに気がついたら鏑木の部屋に居て…」
顔を赤くする里奈ちゃん。なんとなく状況を想像したら赤面の理由がわかった。
「大変だったね…」
「ほんと、次同じことやったらあいつぶっ飛ばしますよ…あっそろそろ時間だ」
「どこか行くの」
「近い内にファフナー部隊の合宿をするんです。その打ち合わせを鏑木や佐喜さんとすることになってまして」
「佐喜さんも」
「今回の合宿の宿舎として、甥っ子さんが昔住んでいた空き家を貸してくださるんです。そういえば恵先輩その甥っ子さんと同級生だったんですっけ」
「えぇ、そうよ」
「どんな方だったんですか」
「里奈ちゃんは覚えてないかな、生徒会長だったんだよ『将陵僚』」
「『将陵僚』…あっ、そんな名前の生徒会長いたかもしれないです。佐喜さんの甥っ子だったんですね。あまり学校で見かけたことはないですけど」
「生まれつき身体が弱くてね、学校自体来ない日が多くて、来れても早退してたりしたからね」
「そんな調子で生徒会の仕事とか出来たんですか」
「他の生徒会のメンバーで必死にサポートしたって聞いてるよ、総士くんも確かその時書記だったと思う」
「そうなんですね、びっくりする位覚えてないです」
「1年の時はそんなものじゃない」
「でも、なんでその僚さんが生徒会長だったんですか」
「確か僚が欠席してた日に役員選挙があったのよ、誰も生徒会の立候補者がいなくてね推薦って形でなったの」
「それって…酷くないですか」
「その時やたら推薦してたのが亮介なのよ」
「霧島先輩酷い」
「その後なんでそんなに推薦するのか尋ねたら『学校になかなか来れない僚に居場所を作ってあげたかった』って」
「怪しいですね」
「でも実際、亮介が推薦で僚の名前出すまで『その人誰だっけ』って反応結構あったのよね」
「そうなんですね…」
「当の本人はどう思ってたかはわからないけど、少なくとも亮介にとっては大切な友達だった」
「僚さんって確か…」
「そう『L計画』に参加したわ」
「『L計画』って確か彗のお姉ちゃんも参加したんですよね」
「『鏑木早苗』ね、早苗ちゃんは皆のアイドルって感じの子だったわ、今の美三香ちゃんみたいにいつもニコニコして明るい子でね。よく小さい頃は彗くんも交えて遊んでた」
「恵先輩、彗のことそんな頃から知ってたんですね。あとなんか思い出したんですけど。凄く美人で優等生な方いましたよね」
「きっと『生駒祐未』ちゃんかな、僚の幼なじみでね副会長として生徒会を僚に替わってまとめてたわね。成績も優秀で才色兼備って言葉がピッタリの子だったわ。皆のマドンナって感じの子だったかな」
「その方ももしかして…」
「うん。『L計画』に参加したわ…」
「恵先輩ごめんなさい。そんなつもりは無かったんですけど」
いつの間にか目から涙が流れていた。里奈ちゃんは申し訳なさそうに必死に謝っていた。
「私こそごめんね急に、そろそろ時間でしょ。頑張ってね里奈ちゃん」
「ありがとうございます恵先輩。失礼します」
「パイロット達への店の宣伝ありがとうね」
「いやーアハハはー。これからもどんどん宣伝しますね」
「誇張し過ぎないようにね」
「気をつけまーす」
里奈ちゃんは駆け足で次の約束へ、私はその後ろ姿を見送りつつ、暫くその場所で思い出に浸った。