蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~ 作:naomi
「あれ、恵先輩珍しいですねAlvis内にいるなんんて」
とある用事でAlvis内を歩いていると、要咲良に出会った。
「息子が熱を出しちゃって、千鶴先生に診てもらってるの」
「お子さん大丈夫そうですか」
「大きな病気にはかかってないと診断受けたから安心してるわ、今寝てるから久しぶりにこの中回ろうかなって散策してるの」
「良かったですね」
「ありがとう。ところでパイロット教官から見てどうなの新戦力は」
「各々の得意分野は全盛期の一騎や総士並のレベルの子達なので期待値は高いですね、初期の私らと違って連携もしっかりとれてますし、実戦を積めば化けると思います」
「期待の世代な訳だ」
「…はい」
「咲良ちゃんどうしたの」
「あの子達が戦うことが無いように戦ってたはずなのに、いつの間にか守られる側にいるんですね…」
「咲良ちゃん…」
「一騎や総士、剣司みたいに戦果を挙げたパイロットならまだしも、ろくな戦果も挙げないまま引退した私が教官っていうのもなんか虚しくなってしまって」
「…」
「能力値でいったらあの子達の方が当時の私より上ですし…」
「そんなことない」
「恵先輩」
「今より性能で劣る当時のノートゥング・モデルで戦って生き残った。同化現象にあって生命の危機に陥ったときも立ち直った。」
「…」
「『生き残った』という事実が咲良ちゃんの戦果だよ。それは戦場に赴く後輩達にとって途轍もなく大きな『希望』になっているはずだよ」
「ありがとう…ございます。恵先輩」
堪える涙、優しく身体を包み込む。
『私は何を残したのだろう』
答を出したはずのジレンマが再び私の脳裏をよぎった。
「熱もだいぶ下がったし、もう大丈夫よ」
元気に笑う我が子を見て不安は一気に消え去った。
「ありがとうございました。千鶴先生」
「どういたしまして、あっ恵ちゃん」
「はい」
「良かったら夕飯食べていかない」
「お邪魔してもよろしいのですか」
「えぇ、ちょっと作りすぎちゃって一人で食べきれないの」
「…真壁司令もお招きしますか」
顔を赤くする千鶴先生
「なぜ真壁司令を」
「時々ご一緒に夕飯食べているって噂で聞きましたけど」
「…時々ね」
「じゃあお招きしに行きますね」
「えっ。待って恵ちゃん」
「…いつもご馳走になってしまいすみません。遠見先生」
真壁司令に千鶴先生に私と我が子…なかなか無い組み合わせの夕食会が遠見家で開かれた。
「いいんです。1人で食べるより、皆で食べた方が美味しいですし」
「お子さんは順調に育っているようだね。椎名君」
「はい。ここ数日は体調崩してましたが、元気に育ってくれています」
「それはなによりだ…」
「どうかされました。真壁司令」
「いや、こうして誰かと食卓を囲むことがいかに素晴らしいことかと感慨深くなってしまいまして」
「そうですね。平和な時は当たり前で意識することがないですけど、こういう当たり前のことを当たり前に出来る日々が一刻も早く来てほしいです」
「『平和という文化を残す島』なんですよね竜宮島は」
「そうだとも」
「私達の戦いに意味があるのでしょうか」
「この子達がフェストゥムの脅威とは無縁の日々を過ごせるように戦う。そう考えればこの戦いも意味があるのではないかな」
「そうですね…」
「恵ちゃんどうかした」
「大丈夫ですよね、派遣部隊の皆」
「信じよう。彼等は幾度も困難を乗り越え、生き残った者達。今回も無事に帰ってくると」
何度も息子を戦場へ送り帰りを待ってきた方からの言葉には、重みがあった。
「さぁ、せっかくのお夕飯ですし冷めない内に食べましょ」
三者それぞれが想いを馳せながら和やかな夕飯会が進んだ。