蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~   作:naomi

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第四十三話「旅の始まり」

「お疲れ様。二人共よく来てくれたな。ありがとう」

 

アザゼル型『ロードランナー』を倒しなんとか危機を間逃れたエリアシュリーナガル。

 

派遣部隊の皆との会話を終えた二人を個人的に労った。

 

「肝心のアザゼル型は逃げられました残念ながら」

 

「ザインの攻撃の直前にあのアザゼル型のコアは何処かへ跳びました」

 

「そうだったのか」

 

「当分は襲ってくることは無いでしょうが、油断は出来ません」

 

「そうか…」

 

「霧島先輩もご無事でなによりです」

 

「一騎。大丈夫か」

 

「まだ、機体に喰われたりはしませんよ」

 

「総士は遂に乗れるようになったんだな、ファフナーに」

 

「島を何度も滅ぼしかけた怪物ですがね」

 

「…良かったな」

 

「…ありがとうございます」

 

「…すまん。変な空気にしてしまった」

 

「問題ありません」

 

「霧島先輩これを」

 

一騎から薔薇とピンクのカスミソウを渡された。

 

「椎名先輩から預り物です」

 

「恵から…ありがとう一騎」

 

不意に笑みが溢れた。

 

「この後どうするか聞いてるか」

 

「恐らくナレイン将軍と今後どうするか話し合いをするでしょう」

 

「まぁ、そうだよな」

 

「どこか行くんですか霧島先輩」

 

「町の様子を見てくる。溝口さんに会ったらそう伝えてくれ」

 

「わかりました」

 

俺はあの親子を探し回った。

 

「アトムって誰だい」

 

「知らないな」

 

「そんな子ども見てないよ」

 

ここは竜宮島よりも何倍も人が多く住んでいる。こうなるのはむしろ自然だった。するといつぞやの少年達を見つけた。

 

「アトム、見てないよ」

 

「そうか…」

 

「僕、あっちで見たよ」

 

「そうか、ありがとう」

 

急いでその少年が指さした方へ向かう

 

「アトム」

 

彼を見つけた。

 

「無事だったか、お母さんは…」

 

そこには亡くなった方々が沢山横たわっていた。アトムは1つの横たわった人を指指す。

 

「…僕を庇って死んだ」

 

かける言葉が無かった。

 

「母さんはまだ幸せ者だよ、フェストゥムに襲われたら姿・形も残らない人も居るんだから」

 

少年のその目には魂が宿ってない…そう感じた。

 

思わず力強く抱き締めた。

 

「いきなりなんだよ」

 

「ごめんな」

 

「なんでアンタが謝るんだよ」

 

理由は自分でもわからなかった。ただ後悔とアトムの心情を察するとこうせずにはいられなかった。

 

「止めろよ、みっともないだろ」

 

「…」

 

自然と涙が流れた、やがて今置かれた現状を小さい身体で必死に受け止めていたアトムの目からも雫が落ちる。

 

「やめて…くれよ…」

 

「泣いていいんだ。こういう時は」

 

ポーカーフェイスを装い。いつもぶっきらぼうな表情の少年はこの時ばかりは人目を憚らず大声で泣いた。

 

俺はその小さな身体を精一杯受け止めることしか出来なかった。

 

 

その夜、溝口さん達がナレイン将軍と話し合い決定した内容をメンバーを集め教えてくれた。

 

(エリアシュリーナガルを放棄して新天地を目指す旅か…)

 

「なんだ悩み事か亮介」

 

「大下先輩。なんかえらいことになりましたね」

 

「そうだな。遠見の娘さんがここのミールと対話して宇宙から接近しているミールとコンタクトするだけのはずだったのにな」

 

「そうなんですよね…」

 

「目的地のダッカ基地だったか、大丈夫なのかね」

 

「どういうことです」

 

「今俺達はたまたま人類軍の穏健派グループと行動してるから忘れがちだが、人類軍はそう信用出来る組織じゃねえ」

 

「そうでしたね」

 

竜宮島はかつて何度も人類軍に攻撃されている。そんな人々と手を取り合い行動を共にする…不思議な感覚である。

 

「嘆いたところで状況が変化する訳じゃないな。切り替えろ亮介。生きて島に帰るぞ」

 

「勿論です」

 

明朝、新たに『アショーカ』を根付かせる新天地を目指す旅が始まった。


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