蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~   作:naomi

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第四十一話「救世主」

「すみません。遅れました」

 

「亮介か、無事で良かった。輸送機を飛ばす準備しろ」

 

「この状況下で飛べますか」

 

「むしろ今しかない。パイロットの3人がファフナーで出撃しているが敵の数が尋常じゃない、いつ狙われるかわからんからな」

 

「了解」

 

崩れゆく町、迫り来るフェストゥムに必死に抵抗するペルセウス中隊のファフナー達、派遣部隊のファフナー3機マークジーベン・マークフュンフ・マークツェンも奮闘しているが状況は…劣勢であった。

 

(お前…ずっと助けてくれているのか)

 

(日野美羽が接近する我々と対話を繰り返しているおかげで私は最低限のことしかしていませんが)

 

輸送機の周囲にフェストゥムがあまり近づかないのには『アイツ』の力が干渉していたようだ。

 

(…礼を言っとく。退けそうか)

 

(まず困難でしょう。『彼等』が間に合えば話は変わってきますが)

 

(『彼等』…)

 

「おい、あれはどうなっているんだ」

 

乗員の指を指す先を見ると、人類軍のファフナー同士が撃ち合っていた。

 

「味方と撃ち合いしてる場合じゃないだろ」

 

(あれは…我々に同化された者達ですね)

 

よく見ると同士討ちをしている人類軍のファフナーのコックピットにフェストゥムが同化していた。

 

「フェストゥムにコントロールを奪われたのか」

 

「全員何かに捕まれ」

 

突然溝口さんの緊迫した機内通信が入る。離陸を始めていた輸送機が激しく揺れる。

 

「なんだ、何が起こった」

 

「離陸直前にフェストゥムが現れて進路を妨害された、翼が折れて離陸出来んくなったなこりゃ」

 

「全員無事か」

 

「大丈夫そうです」

 

美羽ちゃんが泣いている、慰める弓子さん。

 

(『存在と無の力』が来た)

 

再びアイツの声が響く。

 

「溝口さん大気圏外から急速に接近する物体が」

 

「何だとこんな時に」

 

「該当シグナル有照合…キャリー・スラスター」

 

「キャリー・スラスターだと…まさか」

 

キャリー・スラスター。Alvisの所有する巨大なロケットで本来はファフナークラスの巨大な物体を大気圏外に運搬するためのもの。

 

分解されるキャリー・スラスター、中に入っていた物体から強力なレーザー光線が放たれる。

 

目にも止まらぬ速さで空を駆けるその姿…俺は一度見ている。その光景をハッキリと肉眼では確認出来なかったが着陸した姿を見て確信した。

 

Alvisの誇る『存在と無の力』がエリアシュリーナガルの地に降臨した。

 

「データ照合。マークザインとマークニヒトです」

 

「ザインとニヒトの封印を解いたのか、パイロットは」

 

「一騎と総士でしょうね。あの機体に乗れるとしたら」

 

「彼奴ら無茶しやがって」

 

マークザインとマークニヒトは第2次蒼穹作戦後その特異な力から真壁一騎と皆城総士にしか扱えず、2人がこのまま乗り続けると死んでしまうこと、分解しようにも今のAlvisの技術では機体の抵抗に遭い解体出来ないこともあり

 

竜宮島で封印されていた。その封印が解かれた…

 

(もう大丈夫でしょう)

 

マークザインは同化されたファフナーや人間を次々に元に戻した。マークニヒトは竜宮島を何度も窮地に追いやったその力で襲撃してきたフェストゥムを滅していった。

 

派遣部隊とペルセウス中隊で劣勢にたたされていた状況が

 

空から舞い降りた2機によって劇的に変化した。

 

「これが…ザルバートル・モデル」

 

他のファフナー部隊が建て直ったと判断したのか、2機はターゲットを親玉に変える。

 

目にも止まらぬ速さで周囲の敵を薙ぎ倒しながらアザゼル型『ロードランナー』に突撃してゆく

 

そこから始まる戦闘は最早未知の次元へと昇華していった。


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