蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~   作:naomi

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第三十九話「突きつけられた現実」

「溝口さんこっちです」

 

美羽ちゃんが『アルタイル』とコンタクトを取ったその夜、フェストゥムの襲撃を受けた。

 

俺達派遣部隊ははナレイン将軍のご厚意で宿舎に宿泊していたため、応戦出来ず自分達の乗ってきた輸送機に急ぎ避難した。

 

「全員無事か」

 

「溝口さん達で全員です」

 

「まさかこんなにも早く襲撃を受けるとはね、ここのミールのご加護で襲撃は無いようなことを聞いたから驚きですわ」

 

「そうだな…敵さんは余程俺達の接触を阻止したいらしい」

 

俺はある違和感に気がついた。

 

「その子…美羽ちゃんですか」

 

「あぁ、なんでもここのミールが『アルタイル』と接触させる為に成長させたんだと」

 

「大丈夫なんですか美羽ちゃん」

 

「大丈夫。今はただ眠っているだけだから」

 

美羽ちゃんを抱き抱える弓子さんに何故か違和感を感じた。

 

「弓子先生…大丈夫ですか」

 

「先生…私は大丈夫よ」

 

「そうですか…」

 

「とりあえず、全員無事で何よりだ。襲撃が止むまではここで待機する」

 

「助けに行かないのですか」

 

「恐らく奴等は俺達がまだあそこにいると思ってる。わざわざ見つかりに行く必要は無いからな。ここの連中に任せよう」

 

「しかし溝口さん」

 

「亮介。俺達の任務は美羽ちゃんを守ることだ、目先の状況に囚われて本質を見失うな」

 

「…了解」

 

「よし、見張りの人選をするそれ以外はあまり休まらないかもしれんがここで休んでいてくれ」

 

「霧島先輩」

 

俺も話し合いに参加しに行こうとすると遠見真矢に呼び止められた。

 

「どうした遠見」

 

「お姉ちゃん…やっぱり変ですか」

 

「やっぱりって遠見もそう思うのか」

 

「なんとなくですけど」

 

「本人が大丈夫って言ってるし大丈夫だろ」

 

「そうですよね、すみません変なこと聞いて。溝口さん私も見張りやります」

 

(貴方の感覚は正しい)

 

(なんのことだ)

 

(今いる遠見弓子は貴方の知っている遠見弓子では無い)

 

(…じゃああそこにいる人は誰だ)

 

(それはわからない、一つ言えることはあの遠見弓子はミールの祝福を受けているということだ)

 

(ミールの祝福…)

 

「亮介、こっちにこい今後について話し合うぞ」

 

溝口さんに呼びとめられアイツとのコンタクトが途絶えた。

 

俺はアイツの言葉の意味を考えながら、話し合いに参加した。

 

 

その翌日から俺達は町の復興の手伝いをしていた。

 

「Dアイランドの方ありがとうございました。ここは大丈夫ですので、よろしければ他の場所を手伝って挙げてください」

 

「そうですか。また困ったら呼んでください」

 

街中を歩いているとある子ども達の集団に目がいった。

 

「おいお前達何してる」

 

子どもの集団は1人を残し慌ててバラけた。

 

「大丈夫か」

 

「余計なお世話だ」

 

生意気な態度に苦笑いになる。

 

「アトムここにいたのかい」

 

年配の女性がその子のところへ走ってくる

 

「母さん…外で止めてくれ人が見てる」

 

「またそんなにボロボロになって…貴方が息子を助けてくださったのですか」

 

「えっ、まぁ…そんなところです」

 

「ありがとうございます。この子人付き合いが苦手でよく喧嘩になってしまうんです」

 

「他所の人にそんなベラベラ話さなくていいだろ母さん」

 

「アトム。…すみません助けていただいたのに」

 

「いえ、そんな気になって声をかけただけですので」

 

「外ではなんですから家に来てくださいお礼もしたいので」

 

「母さん」

 

「そんなお気になさらず」

 

「そんなこと言わずに」

 

結局アトムという少年の家にお邪魔することになってしまった。

 

「すみません。お茶まで頂いて」

 

「息子を助けて頂いたんですこれくらいさせてください」

 

「母さんコイツそんなの必要無いって言ってるんだからさっさと帰ってもらえよ」

 

「アトムいい加減にしなさい」

 

「…母さんの馬鹿」

 

少年は自室に引き籠ってしまった。

 

「すみません」

 

「お気になさらず…息子さんの人嫌いは深刻そうですね」

 

「父親を人の裏切りで亡くしてまして。本当に信じられる人があの子には…いないんです」

 

「…差し支えなければ教えて頂けませんか」

 

「2年前、あの子が6つの時です。私達3人はこことは別の場所で暮らしていました。その場所がフェストゥムの襲撃を受けました。その場所は人類軍の方々の防衛も虚しく無くなりました…人の手によって」

 

「!?どういうことですか」

 

「防衛を諦めた人類軍が無差別な核攻撃を行いました。ここに来て知ったのですが『交戦規定α』と言うそうです」

 

無差別な核攻撃…ふと2年前の『第2次蒼穹作戦』を思い出した。

 

「私達は輸送機で無事脱出出来たのですが、定員オーバーで次の便に乗るはずだった夫はその核攻撃に巻き込まれて…死にました」

 

「…」

 

「あの子は言ってました『父さんはどうして助けてに来てくれたはずの人に殺されたの』とフェストゥムから人類を守る人類軍に憧れていたあの子にとって、それは深い傷になりました」

 

返す言葉が無かった…俺の知らなかった世界の現実。人が人を殺すという竜宮島にいたら起きることの無い非情な行為

 

「それ以来あの子はあらゆる人から距離を取るようになりました」

 

「彼にはそんな過去があったんですね…」

 

「すみません。こんな重たい話になってしまい」

 

「いえ、私が聞きたいと望んだことですから」

 

(…亮介、応答しろ亮介)

 

緊迫した溝口さんの無線が入った。

 

「こちら霧島。どうしましたか溝口さん」

 

「どうしたじゃねえ、今どこにいるすぐに戻ってこい。島に来たのとは別のアザゼル型がここのミールを襲い出した」

 

窓の外を見ると…見たことの無い巨大なフェストゥムが『アショーカ』と呼ばれているシュリーナガルのミールを襲っていた。

 

 


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