蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~   作:naomi

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第三十七話 「初めて見る世界」

輸送機に乗って幾分か経った。

 

「どうした霧島」

 

「なんか自分が操縦しない飛行機って落ち着かないですね」

 

「なんだビビってるのか」

 

「そんなんじゃないですよ…」

 

「まぁ俺達戦闘機乗りにとっちゃ物足りなかったり、他人に任せて空を飛ぶのは確かに不安になるよな」

 

「先輩は竜宮島の外を見たことありますか」

 

「俺はギリギリ知ってる世代だな、俺の代以降は見たことないヤツが多いと思うぜ。まぁあんまり期待するなよ、メモリージングの知識より現状は酷いかもしれん」

 

「そうですね…」

 

ときより視界に入る窓の外、人類軍のファフナーがずっと並走している。

 

「あれが人類軍のファフナー…」

 

(ファフナーに乗れるようになるわ)

 

ふいに忘れかけていた事を思い出した。かつて島を離れた者から言われた言葉

 

「どうした亮介。人類軍のファフナーじっと見て」

 

「いや、人類軍のファフナーの性能は大丈夫なのかなと」

 

「昔は全然対抗出来なかったみたいだが、真壁一騎が一時的に竜宮島を離れた時に提供したっていう『マカベ因子』によってここ最近は人類軍のファフナーもフェストゥムに対抗出来るようになったみたいだな。亮介も見たろ彼らが島にやって来た時に共同戦線を張ったのを」

 

「そうでしたね」

 

「自分達を守れる戦力が派遣部隊にはあるはずだ。心配することもないだろう。溝口のおやっさんはそうゆう判断に優れた人だ」

 

「俺もそう思います」

 

期待と不安を胸に俺達はダッカにあるペルセウス中隊の拠点エリアシュリーナガルの地に降り立った。

 

「ようこそエリアシュリーナガルへ、君達を改めて歓迎するよ」

 

ナレイン将軍と溝口さんが今後の行動について美羽ちゃんを交えて協議していると、あることが気になった。

 

(ここの兵士はずっとこちらを警戒してるな、この中に敵はいないのになんでだ。…遠見も違和感に気づいたのか)

 

彼女は視線で周囲を警戒していた。

 

よく見るとにこやかに話す溝口さんや笑顔で談笑する竜宮島防衛隊所属の先輩達はリラックスを装いつつ鋭い目を光らせていた。

 

(なにに警戒しているんだ…)

 

その答えは『アショーカ』と呼ばれるこの町にある大樹のようなコアがある建物に向かう途中でわかった。

 

「先輩…大下先輩」

 

「どうした亮介」

 

「これってフェストゥムというより、人間を警戒してますか彼等は」

 

「そうだろうな。装備を見る限り対人戦用のようだ。まぁ人類軍も一枚岩じゃないってことだろ」

 

(人に襲われることがあるのか…)

 

竜宮島でならば考えられない光景。俺は身を引き締めた。

 

 

 

「亮介。お前はこの建物周辺の警備をしてくれ」

 

『アショーカ』を祀る建物に到着し、中に入ろうというときに俺は溝口さんからそう命じられた。

 

「そんな、俺も中に」

 

「ダメ。貴方がアショーカに接触すること、それは新たな災いを生んでしまう」

 

エメリーからの強い制止もあり、俺は建物を警備することになった。

 

(気になりますか)

 

中のアイツが話しかけてくる。

 

(竜宮島以外のコア…気になるに決まってる)

 

(私に身を委ねれば、見れるかもしれませんよ)

 

(むしろお前の存在が原因で入れない気がするが)

 

(…私の存在、私の願いが妨げになっていると)

 

(かつて皆城乙姫が『力』と言い表したお前の『願い』が判れば…)

 

「亮介。集中しろよ」

 

いつの間にか大下先輩に話しかけられていた。

 

「すみません」

 

「いいか、常に警戒を怠るなよ」

 

「どちらをですか」

 

「…両方だ」

 

美羽ちゃんが『アショーカ』を通じて地球に接近している新たなミール『アルタイル』とコンタクトを取ったその夜

 

エリアシュリーナガルはフェストゥムの攻撃を受けた。


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