蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~ 作:naomi
「ただいま」
サイレンを聞いてから情報収集に出た亮介が戻ってきた。
「お疲れ様。どうだった」
「やはり現れたみたいだなフェストゥム。ファフナー部隊がやっつけたそうだ」
2年ぶりに現れたフェストゥム。それは島に訪れた来訪者が起因していた。
「人類軍の輸送船を島に迎え入れたの」
「なんでも、美羽ちゃんに用があるそうだ」
「人類軍がなんで美羽ちゃんを…」
「輸送船の部隊に美羽ちゃんの力と近い力を持つ少女がいて、ずっとコンタクトしてたそうだ」
美羽ちゃんの力…フェストゥムと対話が出来る力。ふと前に弓子さんとお会いした時に美羽ちゃんが空想の少女とお話しをしだすことがあると不安を相談してくださったのを思い出した。
「なんでもその部隊が所有しているミールと美羽ちゃんを会わせて備えるんだそうだ」
「備えるってなにに」
「新たなるミールの襲来。なんでも『アルタイル』と呼ばれる北極ミールに匹敵する純粋ミールが地球に接近しているらいし」
「そのミールをどうするの」
「美羽ちゃんのような『エスペラント』と呼ばれるフェストゥムと対話が出来る人達の力で人類に有益な存在に変容することを目指すんだってさ」
「エスペラント…もし失敗したら」
「なんでも世界は『アルタイル』に呑まれて消滅するらしい」
「そんな…」
「さらに。消滅した北極ミールから派生した『アザゼル型』というミールに匹敵するフェストゥムが現れて、そいつらも『アルタイル』と接触しようとしてるそうだ。そいつらが先に接触しても人類に敵意を向ける相手だからいけないということだそうだ」
「アザゼル型…」
「人類軍の輸送機を迎え入れた時にアザゼル型に一体遭遇しているみたいなんだ。資料を見たけど確かにこれまでのフェストゥムとは全然違ったな」
「なんだか2年で随分状況が変化したね」
「事が事だから真壁司令はその人類軍が所有するミールへの接触をはかることに前向きだそうだ」
「どうやって接触するの」
「派遣部隊を結成して美羽ちゃんと一緒に人類軍のミールがある場所に向かうそうだ。…それで俺も志願しようと思う」
「えっ…」
予想外の言葉に私は耳を疑った。
「なんで」
思わず語尾がキツくなる私
「前々から気になってた外の世界を見るいい機会だと思ったから」
「この子はどうするの」
「この子と君を置いて今行く訳にはいかないのはわかってる。でも外の世界を知る絶好の機会だとも思ってる」
「…」
「現状は島の外にファフナー部隊を派遣した場合に島を防衛する戦力が足りないから。すぐに行くことになるとはならないと思う。でも俺が今したいことはあらかじめ君に伝えておくよ」
その頃、竜宮島では来訪した人類軍のエスペラント『エメリー』ちゃんと美羽ちゃんが邂逅を果たしワルキューレの岩戸へ向かいエメリーちゃんが島のコアと接触。
エメリーちゃんの要望に島のコアが応え、島の外に派遣しても問題の無い量のファフナーのコアが急激に誕生。
更に既存のファフナーの戦闘力も急激に上がり。島の外にファフナー部隊を派遣する体制が急遽整った。
私の想いとは裏腹に竜宮島は新たな希望を掴むための準備に取りかかった。