蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~   作:naomi

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第三十話 「再始動する作戦」

「あれ、ここは」

 

「気がついた。ここ医療ブロックの病室」

 

気を失った亮介が目を覚ました。

 

「敵はどうなった」

 

「退いたよ、美羽ちゃんが『お話し』したんだって」

 

「『お話し』ってフェストゥムと会話したのか」

 

美羽ちゃんは弓子先生と2年前亡くなった日野道生さんの娘さんで。竜宮島で初めて自然受胎で生まれた子どもでもある。

 

「会話はしてないよ。私達でいうクロッシングに近いことをしたんだって」

 

「…凄いな美羽ちゃん」

 

「うん」

 

「ごめんな恵」

 

「謝らないで、お父さんから聞いた。すぐに応急措置してくれたって、そのおかげで今ここにいれるんだって。私こそごめんね。気が動転してキツく当たっちゃった」

 

「いや、恵に頼まれたのに約束を果たせなかった。ごめん」

 

「だからいいってば」

 

「おじさんは」

 

「表情は元気そうだけど、無理してる気がするの心配かけまいと」

 

「そうか…」

 

「目が覚めたか」

 

溝口さんが病室にやってきた。

 

「溝口さん。すみません勝手に跳びだしました」

 

「気にするな、あの時点で交渉は決裂してた。むしろAlvisに向かったのは適切な判断だ」

 

「俺を見張っていた二人がやられました」

 

「…あぁ聞いたよ。しっかりと弔ってやらないとな」

 

「はい」

 

重苦しい空気が流れる。

 

「それでだ。さっきのブリーティングで『第2次蒼穹作戦』を決行することになった」

 

「第2次蒼穹作戦…どんな内容なんですか」

 

「ざっくり言うと、攻撃部隊と防衛部隊に分かれ美羽ちゃんに奴等と対話してもらって戦いを止めるって感じだ」

 

(ざっくりと言う割りに割としっかり目的がわかる説明だな)

 

「対話は諦めた訳では無かったんですね」

 

「美羽ちゃんが実際に敵の撤退を促したからな。今度はこっちが奴等の本陣に乗り込んで。美羽ちゃんに停戦を呼び掛けてもらうそうだ」

 

「上手くいくんでしょうか」

 

「失敗すれば島は滅ぶ。成功させなきゃならん。絶対にだ」

 

「俺はどうすれば」

 

「俺は真壁が美羽ちゃん連れて攻撃に行く関係で防衛部隊を任されたからよ、亮介も頼むぞ」

 

「わかりました」

 

 

 

 

作戦開始直前Rボートに攻撃部隊が乗り込んで行く。

 

溝口さんや亮介に紛れて立ち会った私。ふと美羽ちゃんへ目がいった。

 

美羽ちゃんは亮介をじっと見ている。

 

「どうしたの美羽」

 

「そうなんだ…。ダメだよそれは私からじゃなくて亮介お兄ちゃんからもらわなきゃ」

 

困惑する弓子さん。当然周りも美羽ちゃんの言動を理解出来なかった。

 

「美羽ちゃんは感じるのか、コイツの存在」

 

「うん。亮介お兄ちゃんと仲良くなりたいって」

 

「…そうなのか」

 

謎の会話を大人達が強引に引き離して終わらせた。

 

「溝口。そちらは頼んだ」

 

「任せろ真壁。お前の方こそしくじるなよ」

 

島の存亡をかけた蒼穹作戦が再び発動した。




とある病室にて

「失礼します」

「これは珍しいお客さんだ。竜宮島の最高責任者様がこの老いぼれになんのようじゃい」

「ご無沙汰しております。大佐すぐに伺いたかったのですが、なかなかタイミングを見つけられずこのような形で申し訳ありません」

「今はお前さんの方が立場は上なのだ。そう軽々と頭を下げるな。…調子はどうだ」

「日に日に悪化している気がします。」

「俺も酷いわ。もうこうして話すこともしんどく思う時がある。…作戦は上手く行きそうか」

「…わかりません。ですが成功すると信じております」

「かつてフェストゥム殺しで有名だったお前が、今ではフェストゥムとの共生を試みる島の責任者だ。おかしなものだな」

「すくなくとも大佐が活躍されていた頃に提唱していた『生命共生論』の影響を受けたのは間違いないでしょう」

「冗談よしてくれ、俺は結局理想論を掲げて突っ走って大勢の仲間を無駄死にさせた愚かな将校だ」

「少なくとも、この島にいる人間はフェストゥムとの共生が出来ると信じております」

「俺は、二人のことが心配だ」

「…彼等も立派な大人です。二人で支え助け合いながらどんな困難も乗り越えるでしょう」

「まさかお前に励まされるとはな」

「励ますだなんてとんでもありません。…そろそろ作戦時間が迫ってますので」

「真壁…この島を頼んだぞ」

「私の生命に代えても必ず島を守り抜いてみせます」

深々と頭を下げ、男は島の存亡を懸けた作戦へ赴いた。

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