蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~   作:naomi

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第二十七話 「奪われた自由」

「また警報が鳴り出したな」

 

お客のいない店内に、鳴り響く警報音

 

「うん。空も嫌な曇り方でなんだか気分悪くなりそう」

 

あれから来主操の仲間は頻繁に島に襲撃を繰り返している。

 

「彼との交渉上手くいってないのかな」

 

「真壁司令達を信じてこの状況から脱け出せることを祈るしかないな」

 

不意に鳴った電話に恵が出る。

 

「どうした」

 

「Alvisから、体調不良の人が増え始めて人手が足りないから千鶴先生を手伝ってほしいって」

 

「気をつけてな」

 

「お父さんよろしくね、日に日に体調悪くなってるみたいだし」

 

「気をつけておくよ」

 

Alvisに向かう恵を見送る。

 

「…わかってますから、そんな睨まないでくださいよ」

 

店の椅子に腰掛ける。皆が自分に出来ることをしているのに何も出来ない自分。何の為に『守る』力を学び続けてきたのか分からなくなる。溜め息をつくばかりであった。

 

 

 

 

(どうやら私の存在に怯えているようですね、彼)

 

気がつくといつの間にか目の前が真っ暗な世界に変わっていた。…俺はこの世界に一度来たことがある。

 

(やはりお前のせいなのか)

 

(…)

 

(急な同化現象や、時折周りの人達が俺を異常に怯える状況…お前のせいなのか)

 

(そうとも言えますしそうとも言えません)

 

(どういう意味だ)

 

(今の私は貴方の一部。つまり私は貴方であり貴方は私でもある)

 

(…俺自身が引き起こしている出来事だと言いたいのか)

 

(…)

 

(まぁいい。ところであの来主操がお前に怯えているのは何故だ)

 

(彼はこの島で目覚めた時に私の存在を知り私に接触を試みた。だが『私の力』に怯え拒絶するようになった)

 

(『力』…。かつて皆城乙姫が教えてくれた力のことか)

 

(そう。私は彼女の存在に興味を持ち、貴方を通して定期的な接触をしていた。しかしある時を境に私を拒んだ。)

 

(自らの死期が近づいた頃か…。俺と会うことも拒絶していた)

 

(貴方が皆城乙姫の側に近ければ近いほど。私が強く接触出来たからでしょう)

 

(お前の力とはなんだ)

 

(…わかりません)

 

(なに)

 

(わかりません。私にそもそもそのような力があるとは思えません)

 

(『私の力』と言いながらわからないはおかしいだろ)

 

(あくまで『私の願い』を皆城乙姫が『力』と表現し、それを引用しているだけです)

 

(お前の願い…)

 

(少し話し過ぎました。前回の約束を実行する気でしだがまた別の機会にしましょう)

 

(…)

 

徐々に光が射し込む手を伸ばすと…

 

見慣れた光景に戻っていた。

 

(寝てたのか。あれは夢…。いや現実だ)

 

おじさんの咳がだいぶ酷くなっていた。

 

暫く咳き込むと変な静けさがやってきた。

 

「おじさん大丈夫」

 

反応はない。寝室に向かいもう一度声をかけるが反応がない。

 

「おじさん大丈夫…おじさん」

 

扉を開けると血を吐いて目を閉じたおじさんの姿があった。

 

 


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