蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~   作:naomi

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第二十三話 「明日」

ファフナー部隊を乗せた輸送機が竜宮島を出発した。

 

「勝てるのかな、俺達」

 

「大丈夫だ仲間を信じろ亮介」

 

「私達も万が一に備えて警戒しとかないとね」

 

飛び立つ輸送機を眺めながら作戦部隊が帰る島を守る決意を固める。

 

「あの二体、現れると思うか」

 

「奴等に依存しちゃダメだ。俺達でこの島を守るんだ」

 

「おっ、さっきまで弱音吐いてたやつが強がっちゃって」

 

「強がってなんてないですよ陣内さん」

 

「どうだか」

 

高笑いする陣内さん。

 

「二人とも…任務に集中してくれないかしら」

 

後ろから佐喜さんの威圧感が迫ってきた。

 

「おい落ち着け将陵」

 

「佐喜さん話せばわかる…」

 

「CDCより防衛部隊へ。フェストゥムが竜宮島近海に出現、防衛部隊は直ちに出動してください」

 

「さぁ、行くよ二人とも」

 

俺と陣内さんが戦闘機で先陣を切る。

 

「二人とも、フェストゥムの行動目的がわからないから気をつけて。CDCからは攻撃的な意思を見せない限り警戒態勢のまま待機ということよ」

 

「俺達のこの警戒態勢がヤツを刺激するって可能性は無いですかね」

 

「…なんとも言えないわ。でも絶対先に手を出しちゃいけないから」

 

「了解」

 

睨み合いが続く。

 

「あなたはそこにいますか」

 

「うっ、同化しようとし出した」

 

「陣内さん」

 

陣内機の飛行ペースが徐々に乱れ出した

 

「貢、しっかりして貢」

 

「心に入ってくる…」

 

気づけば俺はフェストゥムにミサイルを撃ち込んでいた。

 

「亮介」

 

「すみません。でもこのままだと陣内さんが…」

 

「サンキュー亮介助かった。CDCへ敵から同化による攻撃を受けた。反抗する許可を」

 

「…許可が出たわ、でもどうするの私達の通常兵器ではあいつにダメージすら与えられないのよ」

 

「あいつのコアに集中攻撃すれば…」

 

「どこにそんなのがあるんだ」

 

「それは…」

 

(私が力を貸しましょう)

 

頭に声が響くと痛みとともに緑の結晶が俺の身体から出てきた。

 

「こんな時に」

 

「なに…フェストゥムが苦しんでいる」

 

佐喜さんの声を聞き目を向けるとフェストゥムがジタバタと暴れながら、胸部付近から緑の結晶体が顔を出した。

 

「なんかそれっぽいものが出てきたぞ」

 

「二人とも集中砲火」

 

ありったけの火力をぶちこむ、気がつけば身体から出ていた緑の結晶は消えていた。

 

集中砲火を続けるが流石はフェストゥム。通常兵器では効いているのか全くわからないが微かに露出した緑の結晶体が傷ついてるのがわかった。

 

しかし弾薬は尽きそうだ

 

(やれるのか)

 

パリーン…フェストゥムの結晶が割れ黒いワームホールと共にフェストゥムは消えた

 

「おい、やったぜフェストゥムを俺達で倒したぞ」

 

「CDCから…フェストゥムの消滅を確認したそうよ」

 

竜宮島防衛部隊初のフェストゥムの討伐。俺達は歓喜に沸きCDCも安堵の表情を浮かべていたらしい

 

その3時間後溝口さん達の輸送機が島に戻ってきた。

 

「なに、島の火器だけでフェストゥムをやった!?」

 

「えぇ本当にですよおやっさん。あとでCDCに確認してみてくださいよ」

 

陣内さんが珍しく今だにはしゃいでいる。

 

「お前らよくやったな」

 

「どうでしたか北極は」

 

「まさに決戦って感じだな、一騎達は無事上陸したが作戦が成功するかは、あの4人次第ってとこだな」

 

「次は補給物資を運んで、最後に迎えに行くんですよね」

 

「おう、そうだ。だが亮介それでもお前の外デビューはお預けな、討伐したって言っても、ありったけの火力を使ってようやく1体だ。下手に戦力を連れ出してあいつらの帰る場所が無くなったら話にならんからな」

 

「そうですね…」

 

不満はあったが、納得するよう自分に言い聞かせた。

 

「溝口さん発信準備出来ました」

 

「わかった。今行く。だから亮介、島を頼んだぞ」

 

「わかりました」

 

輸送機は再び北極へ向かった。

 

しばらくして恵が防衛拠点を訪ねてきた。

 

「お前危ないだろ、こんなとこに来るなよ」

 

「亮介…乙姫ちゃんが」

 

「…知ってる。もうすぐいなくなるんだろ。俺は行けない」

 

「うん。ここを守るのが今の亮介のやることだもんね、ごめんお邪魔しちゃって」

 

「亮介送ってやんな」

 

「でも…」

 

「俺達が心配なら早く恵くんを安全な場所へ送り届けるんだ」

 

「わかりました」

 

ゆっくりとした足取りで家まで歩く

 

「皆城乙姫と約束したんだ。俺達はもう顔を会わすことは出来ないって」

 

「どういうこと」

 

「俺に眠る力が皆城乙姫を取り込もうとするらしい。今の皆城乙姫では俺の力には抗えないから会えないと本人から言われた」

 

「そうだったんだ…亮介の力って」

 

「わからない。その俺に眠る力ってのはまだ未知の力過ぎてよくわからない」

(それらしきモノと遭遇はしたけど…なんて説明すればいいか)

 

「私ね、乙姫ちゃんに頼まれたわ、亮介をよろしくって。その力と関係あるのかな」

 

「…例えその力があろうと無かろうと俺達の気持ちは変わらないだろ」

 

「うん。もちろん」

 

あっという間に家に着いた。

 

「亮介気をつけてね」

 

頬に軽く口づけをし俺は俺の戦場に戻った。

 

その後フェストゥムは竜宮島の近くに現れることは3回あったが、どの群れも島を襲うことは無かった。

 

そのたびに俺の身体から緑の結晶が出てはきたが…

 

 

 

溝口さんの輸送機がファフナー部隊を回収する3回目の出発をした時に

 

(亮介ありがとう。私還るね)

 

「皆城乙姫…そうか、往くのか。寂しくはないか」

 

(大丈夫。芹ちゃんや史彦や千鶴…皆が私を見守ってくれてる)

 

「なら良かった。ありがとう。君のおかげで俺は『俺』という存在に少し自信を持てるようになった。」

 

(感謝するのは私の方、亮介は辛い立場の中たくさん悩んで、私が考えられるもっとも明るい可能性に進む道を進んでくれた)

 

「俺の判断は間違いじゃないと」

 

(うん。これからも貴方にしか出来ない辛い出来事がたくさん起こるかもしれない。でも貴方は独りじゃない一緒に時を歩んで支えてくれる人がいる。その人達とこれからも乗り越えて)

 

「わかった。島のコアの導きを裏切らないようベストを尽くすよ」

 

(…初めて亮介が私を島のコアとして見たね)

 

「そうかな」

 

(うん…。私の存在はこの世界はから居なくなるけど私の存在はこの島と『私が居た』と記憶に刻んでくれる人達がいる限り永遠に生き続ける。また逢おうね亮介お互いの信じる未来で…)

 

「あぁ、また逢おう」

 

「亮介どうしたのさっきからブツブツ一人で」

 

「えっ、あぁ皆城乙姫が島に命を還しました」

 

「そう。島のコアが…」

 

「どうなるんだこれから」

 

「皆城乙姫曰く、新たなコアが生まれるそうです」

 

「そう…。てか亮介、島のコアとそんなに親しかったのね」

 

「えっ、そうですね。そういえば」

 

「CDCより報告、ファフナー部隊を回収し輸送機が島に戻ってくるってさ」

 

作戦の成功に喜ぶ周り。

 

「けど、マークザインと総士君が行方不明みたいだ」

 

一瞬で鎮まりかえる

 

(なにやってんだ一騎、総士早く戻ってこい)

 

(彼等は私達の世界にいるようですね)

 

(お前…さっきはありがとうな助かった)

 

(貴方に感謝されるとは思いませんでした)

 

(フェストゥムのコアが出てきたのも、それ以降フェストゥムが襲って来なかったのもお前のおかげだ)

 

(理解しているようですね)

 

(約束だったな同化しろよ)

 

(…)

 

(どうした)

 

(もう少し貴方という存在を見ています)

 

(いいのか)

 

(えぇ貴方という存在は実に興味深いですから…)

 

(そうか…ありがとう)

 

(…彼がこちらに戻ってきます。迎えてあげなさい)

 

「CDCより報告。竜宮島に接近する機体あり、機体コード…マークザイン」

 

「よし。よく戻ってきた一騎」

 

再び歓喜に包ませる周囲、すぐにマークジーベンが救出に向かい蒼穹作戦は終了。

 

皆城総士の奪還には至らなかったものの、死んではないとのことでまだ希望があるということが後日わかった。ファフナーパイロット及びファフナーは一騎の失明があったがそれ以外は無事帰還。

 

絶望に落とされる結果が多かった中、今回は希望が持てる成果であった。

 

そして最大の成果はフェストゥムの起点となっていた『北極ミール』の破壊に成功したことであった。

 

これによりフェストゥムの襲来は無くなるだろうとAlvisは判断

 

擬装鏡面を展開し竜宮島は勝ち取った平和を噛み締めることの出来る日々へと向かっていった。


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