蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~   作:naomi

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第二十話 「訣別」

「お父さんどうなの」

 

総士君を助ける作戦が始まり、私達家族は居間でラジオを置きCDCの周波数に合わせて状況を聞いていた。

 

「今のところは順調のようだな」

 

「皆城くん大丈夫なのかね」

 

「生きてはいるってかなり弱ってはいるみたいだけど」

 

「亮介くんは」

 

「万が一に備えて島内を巡回するんだって」

 

母と皆の心配をしていると、父の血相が引いていくのに気がついた。

 

「お父さん、大丈夫」

 

「お前達今すぐ避難の準備をしろ」

 

こんなにも固い表情の父は初めてだ。

 

「急げ。CDCがフェストムにやられた」

 

父の言葉に動揺が隠せない。竜宮島の司令部であるCDCが落とされた…

 

「活動の止まっていたフェストムが急に活動して各エリアで被害が出ているそうだここも直に…」

 

突然触手のようなフェストムが家の床を突き破った。

 

悲鳴をあげる母、父は寝室から拳銃を取り出し発砲するが、当たり前のように効いていない

 

「外へ出ろ急げ」

 

慌てて私は母と外に出ると外は触手は外で触手だらけだった、飲み込まれていく人々

 

「走れ」

 

父の荒れた声が響く。私達は前だけを見てひたすら走った

 

「お母さん頑張って」

 

母はかなりつらそうだ、父は私達を気にしながら後ろで鼓舞してくれている。

 

「恵お前は先に行って助けを呼んでくるんだ」

 

「二人を置いていけないよ」

 

「俺達なら大丈夫だ母さんは俺が守る。だからお前は助けを呼んで来てくれ」

 

「…わかった」

 

私は後ろを振り向かず人を探した。しばらく走ると人影が見えた

 

(人だ…良かった助かる)

 

「助けが来てるお父さん、お母さん急いで」

 

人影が私の声に気がついたのか近付いてくる

 

「皆急げ」

 

助けに来てくれたのは亮介だ。

 

「亮介」

 

安心して思わず気を緩めてしまう。

 

「恵危ない」

 

亮介が必死にこちらへ走ってくる。振り向くと触手が目の前に迫っていた。怖くて足が動かない

 

(あぁ、飲み込まれる)

 

おもわず目つぶると勢いよく誰かに押された。

 

「お父さん」

 

父に触手が襲いかかるその時

 

母が瞬間父の前に立った

 

「よせ、お前」

 

「お母さん」

 

「…」

 

…母は飲み込まれてしまった。

 

目の前の一瞬の出来事を受け入れられない。母が消えた自分のせいで…

 

「くっそったれー」

 

僅かに遅れて亮介が追い付いてきた。だが私も父も動けないでいた。

 

「恵、おじさんしっかりしろ」

 

亮介の呼びかけにも上の空の二人

 

「亮介、お母さんがフェストムにやられちゃった」

 

「間に合わなかった。ごめん、だけど切り替えて立ってくれ、まだそこにいるんだ。おじさんも」

 

増殖が分岐し再びこちらに襲いかかる

 

(お母さんごめんね。一人にはしないよ、今行くから…)

 

私達を襲う…はずのフェストムは私達に覆い被さる寸前で止まり徐々に引いて別の道で動き出した。

 

「うっ」

 

呻き声を出す亮介。身体から緑の結晶が次々とで出す

 

「そんな、同化現象なんで」

 

「これが力の代償か…まだ俺はここにいる」

 

結晶は瞬く間に砕けた。

 

「亮介大丈夫なの」

 

「変なこと考えるなよ」

 

「えっ」

 

「おばさんが庇ってくれたことを無駄にするようなこと俺が許さないからな」

 

「うん…。お父さん行こ」

 

「あぁ…」

 

総士君救出作戦は失敗。ファフナー及びパイロット1名死亡。出撃したファフナーは大破。真壁君は同化現象が末期まで進行、島民は母を含めて3/1が死傷

 

かつてない絶望が竜宮島を襲った。

 

 


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