蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~ 作:naomi
俺はまたブルクでファフナーを見上げていた。
「どうしたんだい亮介君」
「手塚さん、いえこういう時に乗れたらと思って見てただけです。」
「君が退院して1週間で状況が目まぐるしく変わったね」
この時、Alvisは1機のファフナーが大破し、2人のパイロットを失っていた。
「保さんは」
「おやっさんなら心配ないよ、ただご子息が亡くなったからな気持ちの整理が必要なんだよ」
「そうですよね」
おじさんやおばさんそして恵…もし誰かを失った時俺は俺でいられるのか不安になった。
「おやっさんの分も皆で力を合わせ頑張るぞ」
手塚さんは自分を鼓舞するように持ち場に戻った。
「霧島先輩」
振り向くと一騎がいた
「目大丈夫か」
「まだ見えてます大丈夫です」
「また試しますか」
「いや、乗れないことはわかってる。ただ乗れない自分の無力さに悲観してるだけだ。もうすぐなんだろ総士を助ける作戦」
「はい。助け出してみせます」
「頑張れよ」
声をかけることしか出来ない自分が情けなくなった
「どうしたの亮介」
俺は皆城乙姫を探し尋ねた。
「作戦前にすまない」
「大丈夫。これは皆にとっても大事なことだから」
「俺に眠る力をコントロール出来るようになれば、俺は乗れるのか」
「わからない」
意外な答えに驚いた。
「君にもわからないことがあるんだな」
「私は神様じゃないから。でも確かなのは支配とかコントロールとかそう言った立場をつけてはいけないということ」
「立場をつけない…。つまり対等にってことか」
「そう。今の貴方はその力には敵わない」
「…わかってる」
「それを受け入れて。焦らずゆっくり1つになるの」
「わかった。ありがとう皆城乙姫」
「どいたしまして。あと私はもう貴方に近付けなくなるかもしれない」
「何故だ」
「私が貴方の力を拒否する力がもう…あまり残ってないの」
「そうなのか…」
幼い身体に刻まれた宿命が彼女の生命の限界を伝えていた。
「ありがとう。今まで」
「貴方の未来が希望に満ちることを願ってるね亮介」
この笑顔が俺が最後に見た皆城乙姫だった。
「亮介、どこで油売ってたんだ」
「すみません」
俺達防衛部隊には、万が一の事態を想定して島の各ブロックで待機する指示が出ていた。
「基本的に二人一組で行動することを忘れるな。まずは将陵と陣内…」
(受け入れ一つになるか…。どうすれば)
「亮介。聞いてるのか大丈夫か、もう一回入院しとくか」
「すみません。大丈夫です」
「お前は俺とペアだいいな」
「はい」
俺は溝口さんと一緒にCブロックエリア11を担当していた。
(家が近いな)
「でえ、どこまで進んだんだ」
溝口さんがニヤニヤしながら俺に尋ねてきた。
「なんのことですか」
「とぼけんなって、チューしたんだろ恵ちゃんと」
「なっ、なんで」
「俺の情報網を甘くみてもらっては困るな」
「別に進展だなんで」
急に顔が真面目になる溝口さん。
「俺達はいついなくなるかわからん。パートナーとして恵ちゃんを選んだなら。早めに色々済ませとけよ」
「…はい」
ちょうど総士を救出する作戦の開始が合図された。
「マークザイン、ウルドの泉にてコアである皆城乙姫とクロッシング…」
「順調のようだな」
「ソロモンに反応」
「敵さんの御出座しか」
「隊長なんかヤバイです」
Nブロックを担当している隊員から震えた声で通信が入る
「出撃したマークアイン、ベイバロン、マークジーベンが瞬殺されました」
「なんだと、敵は」
「敵はザルヴァートル・モデルのようです」
「それって」
ザルヴァートル・モデル…それは一騎の乗るマークザインのような島のノートゥング・モデルを圧倒する力を持つファフナー
「ウルドの泉のスカラベ型がザルヴァートル・モデルに反応して急激に活動を始めました。」
「総員退館せよ」
真壁司令の緊迫した声が通信から伝わってくる。
「なにがどうなってやがる」
「隊長。スカラベ型が竜宮島全土に増殖しています」
「なんだと」
各エリアからスカラベ型増殖の報が続々と入る。
「いいか、島民の避難が最優先だ撃退出来るならソイツに攻撃して構わん島民の避難と自分達が生き残ることを最優先に行動しろ」
ここにもスカラベ型が出てきた。触手のようにウネウネともの凄いスピードで増殖する。
溝口さんと共にライフルで迎撃しながら島民の誘導を始める。
(恵、おじさん、おばさん…)
「亮介、あっちの方を見てこい」
溝口さんの指した方には俺達の家があった。
「でも、溝口さん」
「俺は大丈夫だ、だがなるべく早く確認してこい」
「ありがとうございます」
急ぎ家に向かう。(皆、無事でいてくれ)
「お父さん、お母さん急いで」
恵の声がする。駆けつけるとおじさんが拳銃片手に二人を守りながらこちらに向かっていた。
「皆急げ」
「亮介」
俺を見て安堵した恵、しかし後ろからは魔の手が勢いよく彼女を襲おうとしていた。