蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~   作:naomi

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第十八話 「告白」

呼吸器を外す亮介

 

「ちょっと亮介、まだ安静に」

 

「恵ありがとう」

 

感謝のあとには、唇と唇が重なり合っていた。

 

(ちょ、えっ。私達キスしてるの)

 

動揺して思わず突き飛ばしてしまう。

 

「どうしたの恵ちゃん」

 

突然鳴り響いた音に慌てて千鶴さんが病室へやってきた。

 

「亮介くん。良かった気がついたのね」

 

「えぇ、はい、まぁ」

 

「凄い大きな音がしたけど二人とも大丈夫」

 

「大丈夫です。失礼します。千鶴さん亮介お願いします」

 

一目散に病室をでる。胸の高鳴りが止まらない。

 

「なにかあったの」

 

「いや、なにもないですよ、ウッ」

 

「無理しちゃダメよ。安静にしてなきゃ」

 

「はい」

 

 

息が乱れている。病室を出てから走りっぱなしだったから無理もない

 

「どうしたの恵」

 

顔を上げると家に戻っていた。

 

「亮介が…」

 

「亮介くんになにかあったのかい」

 

「…意識を取り戻したよ」

 

「ほんとうにかい、お父さん。亮介君が意識取り戻したって」

 

母は父を呼びに急いで居間に戻る。

 

(亮介どうしたのかな。なんで突然…)

 

「どうした恵」

 

「ちょっと疲れちゃった。部屋で休んでるね」

 

気づけば母が夕食が出来たと部屋まで起こしに来ていた。

 

 

「なにかあったのか」

 

夕食中に父が尋ねてきた。私は慌てて作り笑いをした。

 

「なんで」

 

「さっきから上の空だし、亮介に会いに言ったらやたらお前の心配をしていたぞ。危険な目にあったのは自分だというのに」

 

「そんなことないよ、どうせ千鶴さんに私が付きっきりだったとか聞いて申し訳なく思ったんじゃない」

 

「ならいいが…」

 

普段お気楽そうな父だが、人の悩みや考え事を見抜くのは妙に冴えている。この時もそうだ。私が別のことを考えていると察していたのだろう。

 

「明日も亮介のお見舞い行ってくるね」

 

その夜私はなかなか寝つけなかった。

 

 

「椎名先輩どうかしましたか」

 

私が病室の前で突っ立っていると総士君に話しかけられた。

 

「あれ総士君どうしたの」

 

「乙姫が霧島先輩と話したいと病室に入っていったので、まぁ付き添いです」

 

窓を覗くと乙姫ちゃんが亮介と話していた。

 

「なに話してるのかな」

 

「乙姫曰くカウンセリングのようなのですが」

 

「そうなんだ…」

 

「恵だ、いらっしゃい」

 

扉が空き乙姫ちゃんが立っていた。

 

「亮介が待ってるよ恵」

 

「えっ、うん」

 

「さっ行こ総士」

 

乙姫ちゃんが総士君を強引に押し進める

 

「もういいのか乙姫」

 

「いいのいいのじゃあね恵」

 

「バイバイ乙姫ちゃん…」

 

(病室ってこんなに入りにくい場所だったっけ)

 

「恵か。毎日悪いな入れよ」

 

「うっ、うん」

 

隣に座ったものの、なかなか話しを切り出せず、静かな時が流れる。

 

切り出したのは亮介だった。

 

「俺が気を失ってる間ずっと隣にいてくれたんだってな。ありがとう」

 

「うん、調子はどう」

 

「今からでも退院出来そうだ」

 

「なら良かった」

 

「昨日のことだけどな」

 

もうそこに話しを持ってくのかと内心ドキドキした。

 

「どうしたの」

 

「俺、向こう側に行きそうだったんだ」

 

「えっ」

 

「同化される人の苦しみや憎しみをたくさん見て肌で感じとった。余りに強大過ぎて飲み込まれるところだったんだ」

 

「…」

 

「意識が朦朧として自分がいなくなりそうになったそんな時に声がして声の方へ進むと『俺を信じてる』と言ってくれるお前の声だった」

 

自然と涙が溢れた。

 

「恵の声と想いが俺を俺という存在を取り戻してくれた」

 

「うん…うん」

 

亮介が私の身体を抱きしめる。そこに最早恥じらいは無かった。

 

「こんな無鉄砲で危なっかしい俺だけど、これからもずっと一緒にいてくれないか」

 

「…キス」

 

「えっ」

 

「私、あれが初めてなんだからね。初めてがあんなに唐突な感じなんて嫌」

 

「…」

 

「これからもずっと一緒だよ亮介」

 

「あぁ…」

 

昨日よりもしっかりとした口づけを交わす。そして私達は家族を越えた関係になった。


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