蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~   作:naomi

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第十三話「変化」

「お嬢ちゃんスゲーな」

 

溝口さんが興奮気味に遠見の適性テストについて語っていた。

 

「遠距離射撃命中率90%オーバー、Alvisきってのスナイパーの誕生だ」

 

部隊の皆もその話題で持ちきりだ。

 

「亮介浮かない顔だね、どうした」

 

佐喜さんには俺の心情を見破られていた。

 

「いや、なんでもないですよ」

 

「なんだ亮介、もしかしてお嬢ちゃんに焼きもちか」

 

「そんなんじゃないですよ」

 

「溝口さん」

 

佐喜さんの鬼の形相に溝口さん達が冷や汗をかいた

 

「将陵冗談じゃないか、亮介も悪かった。悪ふざけが過ぎた」

 

「本当にデリカシーの無い人達なんだから」

 

「悪かったて…。けどよ亮介。お前は正式に竜宮島防衛部隊の隊員になれた。その歳での着任は史上最年少の事だ。お前の想いとたゆまぬ鍛練が認められたんだ。もっと自信を持て。」

 

「溝口さん…」

 

この人はこういう所がズルいとつくづく思う。

 

「よし、お前ら気を引き締めて。訓練に戻るぞ」

 

野郎達がぞろぞろと動き出す。

 

「まったく」

 

「断ち切ったつもりだったんですけどね」

 

「亮介…」

 

「遠見に親近感を持ってたんですよ。なんか境遇が似てるなって。けど実際はデータミスでトップクラスのパイロット適正があった。俺も適正はあるはずなのに…」

 

「今自分に出来ることをするって決めたんでしょ」

 

「佐喜さん」

 

「出来ないことを嘆いてもしょうがない。今出来ることを精一杯やりなよ。そのためにこの道を選んだんでしょ」

 

「そうですよね、ありがとうございます。少し気持ち楽になりました」

 

佐喜さんに励まされ、俺はその日も訓練に打ち込んだ。

 

 

 

家に帰ると

 

「お帰りなさい。」

 

恵が店番をしていた。

 

「なんだよ」

 

「…悩みは一応解決したんだと思って」

 

「なっ、悩みだ。俺が」

 

「うん。家出る時の亮介の表情いつもより元気なかったから」

 

恵にまで気づかれていたとは、恥ずかしくなって話題を反らした

 

「今日は売れたのか」

 

「そうだね…売れたほうだと思う」

 

「思うってなんだよ」

 

「毎日店番してる訳じゃないからわからないよ」

 

「それもそうか」

 

変な間が流れる。なにか切り出そう

 

「あのさ」

 

被った。

 

「なんだよ」「そっちこそなによ」

 

「この間はありがとうな、お前の提案のおかげで上手く行った。」

 

「あんな危険な提案乗ってくれると思わなかったは」

 

「恵のこと信じてるから…お前の提案だから迷わずいけた」

 

「なによ急に恥ずかしい」

 

恵の恥じらう表情になぜか胸がときめいた。

 

「二人ともご飯だよ。店閉めていらっしゃい」

 

二人は視線を合わせること無く食卓へと向かった。

 

 

その夜

 

「ねえ、亮介まだ起きてる」

 

普段俺よりも早く寝る恵が部屋のドアをノックした。

 

「起きてる。珍しいな恵がこんな時間まで起きてるなんて」

 

「…眠れなくて。ドア越しでいいから聞いてくれる」

 

「どうした」

 

「亮介はこのまま戦い続けるの」

 

「なんだよ急に」

 

「あの時、初めて亮介の仕事を見た。モニター越しだけど、無事に帰って来てくれるのか凄く心配だった」

 

「当たり前だろ、俺はこの家に必ず戻ってくる」

 

「フェストムは人よりも遥かに未知数で恐ろしい存在なんでしょ。嫌だよ私、亮介がいなくなるの」

 

「恵!!」

 

俺は思わず扉を開けドアに持たれ掛かっていた恵を抱き締めた。

 

「俺は恵を信じてる。だから恵も俺を信じてくれよ」

 

「…うん」

 

「どうだ。落ち着いたか」

 

「うん。亮介もう少しこのままでいて」

 

「わかった」

 

その日、幼なじみであり家族でもある恵に対する気持ちが変わった気がした。

 


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