蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~   作:naomi

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第十二話「任務〜恵〜」

「真壁司令や要先生どこにいったんですかね。」

 

「弓子さんや近藤さんも姿が見えないのよね」

 

CDCで待機を里奈ちゃんと指示され、どれくらい待機しているのだろう。

 

「遠見先輩のお父さんも別に遠見先輩に会ってるだけで、不自然な動きしてないですし」

 

「そういえば、二人も先程から島内のカメラに写らないわね。」

 

「言われてみればそうですね。どうしましょ椎名さん、私達追跡対象を見失ちゃいました。」

 

「私にどうしようといわれても…」

 

慌てふためく二人

 

「CDCこちら将稜応答願います。」

 

突如佐喜さんから通信がはいる。

 

「はい、こちら西尾ですどうしましたか。」

 

「里奈ちゃんね、今島内に侵入者がいるの人数は8人追跡出来る。」

 

「!?侵入者ですか。待ってください…見つけましたエリア31に不審な集団8人を確認しました。」

 

「ありがとう。これから定期的にその集団の情報を頂戴。」

 

「佐喜さん、お久しぶりです。あの、なにかあったんですか。」

 

「その声、恵ちゃんね久しぶり。今人類軍が混乱に乗じてノートゥング・モデルを強奪しにきたの」

 

「えっ、ええ、、、」

 

「これからその集団の制圧に向かうわ、貴女達にも手伝って欲しい。」

 

「わかりました。」

 

「一応内密にと言われてるから、この4人でなんとしても取り押さえるわよ」

 

「…あと1人は誰ですか。」

 

「なんでお前がCDCにいるんだよ。」

 

「亮介!?」

 

「あの佐喜さん。混乱ってなんのことですか。」

 

「…千鶴さんが、データ改ざん容疑で査問委員会が開かれているの。」

 

思わず里奈ちゃんと顔を見合わせる。

 

佐喜さんと亮介は通信を切りエリア31に向かった。

 

「なんだか、えらいことになってますね。遠見先輩のお母さん本当にデータ改ざんなんてしたんですかね。」

 

「千鶴さんはそんなことしないと思うわ。」

 

「そうですよね。」

 

遠見千鶴。遠見真矢の母で竜宮島の病院「遠見医院」の医院長。Alvisでは遺伝子の研究をしており、ファフナーパイロットが同化現象を抑え、ファフナーにのり続けることが出来るのは千鶴さんの研究の成果だと言われている。

 

「千鶴さんもし、もし容疑が認められたらどうなるんですか。」

 

「どうかしらね、春日井くんのご両親はスパイ容疑で島を追放されたっていうし、千鶴さんももしかしたら…」

 

「馬鹿なこと言ってんじゃねぇぞ。」

 

唐突に亮介から通信が入る。

 

「ビックリするじゃない。」

 

「お前らの会話、こっちに筒抜けだ」

 

「えっ。」

 

「佐喜さんなんてさっきから腹かかえて笑ってんぞ。そんなことより今、例の集団に追い付いた。」

 

「確認しました。集団も動き無しです。」

 

里奈ちゃんはすぐに切り替え対応。そんな里奈ちゃんに感心していると

 

「あいつら、二手に分かれそうね。」

 

「どうしますか。佐喜さん」

 

「CDCへ、このエリアの地図を頂戴」

 

あっけにとられていると、あっという間に事態が動いた。

 

「恵、聞いてるか」

 

気がつくと、佐喜さんと里奈ちゃん、私と亮介で分担して対応することになっていた。

 

「まずいな、この方向は…」

 

その先は、査問委員会が開かれているブロックに続いていた。

 

「佐喜さん、こちら霧島、奴ら査問委員会の開かれているブロックに行きそうです。」

 

「こっちはブルクに突入しそうだわ、亮介そっちは任せたよ」

 

亮介は隠密に対処する方法を考えていた。

 

「亮介…一か八かに乗る気ある。」

 

 

その5分後、亮介は相手に向かって突撃した。集団は突然のことへの驚きと、私がCDCからこのエリアの酸素濃度をいじったために起こしていた酸欠で動けないでいた。

 

素早く武器を取り上げ拘束する亮介

 

「恵、もう限界だ。早く戻してくれ」

 

亮介の苦しそうな表情を見て慌てて酸素濃度を元に戻す。

 

「こちら霧島、4人を拘束しました。」

 

「よくやった亮介、そっちに応援を回したから待ってな」

 

佐喜さんの方も被害が出ることなく拘束され、査問委員会も全員無罪で閉会した。

 

 

真矢ちゃんのお父さんが島を出た翌日、真矢ちゃんが家に来た。

 

「いらっしゃい、どうしたの」

 

「翔子のお墓に添える花を探しているんですけど、恵先輩オススメの花ありますか」

 

「そうね…」

 

そう言いながらも真矢ちゃんが花を探す理由を聞いて真っ先に思い浮かんだ花を手に取った。

 

「そのピンクの花はなんですか」

 

「ゼラニウム。決意って花言葉をもってるの」

 

「恵先輩…それください」

 

「わかったわ…ねえ真矢ちゃん。今回のこと、どう思ってるの」

 

「…お姉ちゃんになんでそんなことしたのと思う気持ちが無いといえば、嘘になります。皆と同じ所に居られないことが、すごく悔しかったですから。でもそれ以上に昨日お姉ちゃんに言った感謝の気持ちのほうが大きいです。」

 

「そう、なら良かった。」

 

「じゃあ私行きますね。恵先輩ありがとうございました。」

 

真矢ちゃんは太陽のように眩しい微笑みを残し、家を去って行った。




「ねえ、真矢怒ってるかな。」

「さぁな、でも真矢ちゃんは鋭い子だ。お前の想いに気がついていたから。『ありがとう』って言ったと思うぜ。」

「…。」

「確かにお前がやったことは、この島に対する裏切りといっても言いだろう。でもその行動を罪に問われなかったのは、皆がお前の気持ちを痛いくらい解ってあげられるからだと思うぞ」

「…皆には内緒よ」

「あぁ、俺の身体貸してやるよ。溜め込んだ感情吐き出しちまいな」

「バカ」

妹を思う姉の想いが涙とともに夜空に響き渡った。

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