蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~   作:naomi

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第十一話 「任務~亮介~」

とある一室。

 

火薬の臭いが充満し、床には薬莢が落ちている。使い古された包帯が其処ら中に散乱する。

 

ここが俺の新しい”居場所”だ。

 

俺達は”制服”に着替え来たるべきときに備えて準備をする。

 

いつくるかもわからない「そのとき」のために。

 

「全く、いつもこんなに散らかして私の身にもなってほしいわ。」

 

そんな部屋に似つかわしくない人が入ってくる。

 

「佐喜さん。おはようございます。」

 

「おう、おはよう・・・ってなんだ亮介じゃんか。なんだよ堅苦しい挨拶しちゃって」

 

「いや、ここでは先輩ですし、今日は一緒に訓練のパートナーになってもらう方に・・・・・」

 

「なにを今更、あの頃は馴れ慣れしくタメ口だったくせに。」

 

「確かにアノ頃は・・・・・」

 

「・・・・・お前に責任はないんだ。私に気をつかう必要はないよ。」

 

「はい。」

 

「そんな顔するなよ、今日はよろしくな。あっ今から着替えるから外にいてくれ」

 

「あっ、はい。」

 

着替えをしだす佐喜さん。そこに

 

「おい、将陵。霧島開けんぞ。・・・・・ってすまん。」

 

「溝口さん早く出て行ってくださいよ。亮介こっちを見るな~。」

 

俺達にあらゆる物が飛んできた。

 

 

 

 

「改めて二人共いいか。」

 

「溝口さん、いい加減ノックしてくださいよ、あと部屋は綺麗に・・・・・。」

 

「わかったって。悪かったよ。それで二人への用事なんだが。任務についてもらう。」

 

「任務ですか。」

 

「二人でですか。」

 

顔を見合わせる俺達。

 

「ああ、本当は予定どおり訓練のはずだったが、来客がくることになってよ、そいつの警護を頼みたい。」

 

「警護対象は。」

 

「な~に、昔島にいたやつさ」

 

「予定では、1時間後にはそいつを乗せた飛行機が竜宮島に降り立つ。将陵を中心に警護の用意をしてくれ。」

 

「了解。」

 

佐喜さんは足早に準備に向かう。

 

「亮介。」

 

俺は溝口さんに呼び止められた。

 

「この任務、昇格試験前のテストだと思って臨めよ」

 

いっきに俺の緊張感が増した。

 

 

 

警護対象の男が島の飛行場に降り立った。

 

「なんだ、元島の島民が帰ってきたというのに、出迎えは三人か。」

 

「あいにく、こっちも手が離せなくてな、この二人がお前の警護を担当する。」

 

ミツヒロ・バートランド。弓子先生や遠見真矢の父親で研究者。竜宮島のファフナー設計に亡くなった日野洋治さんと共に関わり、島を抜けた後も新国連で一騎の乗るマークザインのようなザルヴァートル・モデルの開発をしているらしい。

 

「溝口。女と子どもに私の警護をさせるのか。」

 

俺と佐喜さんは男を睨みつけた。

 

「安心しな、二人は優秀だ。それにこの島に人間の命を狙うやつはいねーよ。じゃ二人共頼んだぞ。」

 

「あの男・・・・・。まあいいせいぜい足を引っ張るんじゃないぞ」

 

「なんだと。」

 

「亮介。やめな。」

 

佐喜さんが手で静止を促す。

 

「しかし本当にこの島は人手不足なのか、幼い子どもまで徴兵して。」

 

「あいにくこれは、俺の意思だ。」

 

「そうかそれはすまなかったな、坊や。」

 

小バカにした高笑いをしながら俺達の前を歩く男

 

「亮介、感情的になるなどんな任務でも感情的な行動は命取りになる。」

 

「でも、佐喜さん。」

 

「ああゆうヤツは好きに言わせておけばいいのさ」

 

俺達は一定の距離を保って男についていった。

 

「なんだ・・・。」

 

「どうした亮介」

 

「なんか嫌な気配がするんですが。」

 

「そうか。だが今は対象の警護に専念するぞ。」

 

「はい。」

 

しばらく男は歩き遠見真矢と再会した。そばにいた弓子先生はイラついていた。

 

「警護の二人、しばらく真矢と二人にしてくれないか、親娘みずいらずの話がしたい。」

 

(島のモニターでも監視はしている。要望に答えていいぞ)

 

「了解。・・・・・わかりました。しかし我々が目視できる範囲にはいさせていただきます。」

 

通信を聞いた佐喜さんが素早く対応した。

 

「なにをしにきたんですかねあの人。」

 

「さぁ。ただ娘に会いにきたわけではないとわ思うが。」

 

「・・・・・あの人なにをしてるんだ。」

 

俺はさっき感じた嫌な気配をまた感じた。

 

「どうした亮介。」

 

「佐喜さんはそこにいてください、怪しい人物を発見しました。追跡します。」

 

怪しい人物について行くと7、8人の集団に遭遇した。

 

「目標のモノは見つかったか。」

 

「はい。このポイントにあるかと」

 

俺は双眼鏡でヤツらの手元を見て驚愕した。

 

「佐喜さん。こちら霧島。大変です。あの男以外に島の外の人間が紛れ込んでいて島のファフナーを盗む気です。」

 

(なんだと、わかった一人で動くなよ亮介。戻ってこれるか対象が移動を始めた。)

 

俺は見過ごすべきではないと思ったが佐喜さんの指示に従い戻った。

 

 

 

 

「なるほどな。ノートゥング・モデルの強奪か、あの野郎白々しい顔してそんなこと考えてやがったのか」

 

任務一日目が終わり溝口さんに報告をしていた。

 

「よくやったぞ亮介。将陵もよく単独で行かせなかった。」

 

お互いに小さくハイタッチする。

 

「上層部への報告は俺がしておく。お前達は休め。」

 

「溝口さん。どのように対処するおつもりですか。」

 

「そうだな。Alvis上層部に許可はもらわないといけないがなにせ大変なことになっちまったからな。」

 

「どういうことですか。」

 

「なんでもデータの改竄疑惑で遠見先生に査問委員会がかけられるそうだ。」

 

「えっそんな。」

 

「査問委員会に俺も召喚することになってるからよ。お前達に任せようと思う。」

 

俺と佐喜さんは再び顔を見合わせた。

 

溝口さんが、現時点で考えている作戦を俺達に説明する。

 

そして長く慌ただしい二日目が幕を開けた。

 

 


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