蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~   作:naomi

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第十話 「来訪」

「今日は訓練ないのか。」

 

出掛けようとする亮介をレジの傍にある椅子に座って見送る。

 

「うん。だから店番頼まれたわ。亮介は訓練。」

 

「あぁ、今日はあの人と一緒なんだよ。」

 

「あの人。」

 

「 佐喜さん。」

 

将陵 佐喜、将陵 僚のおばに当たる人で将陵 僚が消息を経って以来会うのを避けていた人。彼女も島の戦闘部隊(亮介いわく防衛隊)のメンバーだということは

 

亮介が部隊の話しをした際に聞いていた。

 

「行ってくる。」

 

少し緊張した面持ちで亮介は家を出た。

 

家の店は当たりハズレが激しい。お客さんが来るときは結構来るのだが、来ない日はとことん来ない。

 

この日は・・・・・・ハズレだ。

 

しばらく座っていると

 

「ここは・・・・・花屋か。」

 

見知らぬ少女が店を訪ねて来た。

 

「カノン勝手に動き回るな。」

 

そのあとを見覚えのある男がやってくる。

 

「あれ・・・・日野先輩。」

 

日野道生。弓子先生や狩谷先生の同級生で、ある日父親の日野洋治と一緒に島を出たと聞いていた。

 

「君は・・・・・椎名か。懐かしいな、この花屋はお前の家か。」

 

「はい。どうしたんですか。」

 

「こいつのおもりを任されたんだよ容子さんに」

 

「トリプルシックス。貴様が勝手に付いて来ただけだろ」

 

「あのよカノン。お前一人で歩き回ってどうするんだ。」

 

少女は黙り込む。

 

「俺は案内も兼ねてついてきてるんだよ。」

 

「頼んだつもりはない。」

 

「ったく、素直じゃねぇな。」

 

「カノン・・・・・さん。よければ店の花たちを見て行ってよ」

 

カノンは顔を赤らめると小声で「ありがとう」と言って店内を見て回る

 

「椎名、アイツは一騎達と同い年くらいだ呼び捨てでいいぞ。」

 

しばらくするとカノンは一つの薄いピンク色の花をじっと見るようになった。

 

「それはエリカね・・・・・。」

 

「この花を見ていると、なぜだか落ち着くんだ。これもらえるか」

 

「ええ。どうぞ」

 

カノンはエリカの花を受け取ると一礼して店を去ろうとした。

 

「待ってこれ。」

 

私はなぜかカノンの足を止めた。

 

「なんだこの赤い花は。」

 

「ポピーよ。また、いらっしゃい。」

 

「失礼する。」

 

「おい待てカノン。じゃあな椎名。なんかありがとう。」

 

二人は沈みゆく日に向かって立ち去った。

 

連絡が来たのはちょうどそのときだった。

 

「はい、椎名です。」

 

「恵ちゃん。要ですちょっといいかしら。」

 

「澄美先生どうしたんですか。」

 

「今からCDCに来れる。」

 

「はい、行きます。」

 

私は意気揚々とCDCに向かう

 

「よく来てくれたわ。」

 

「澄美先生。あの真壁司令や他の皆さんは。」

 

「用事で席を外しているの、それで私達が戻ってくるまで、里奈さんと二人でここをお願いしたいの。」

 

「わかりました。」

 

私は、西尾里奈と二人でCDCを任されることになった。

 

「椎名先輩。よろしくお願いします。」

 

「西尾さんよろしくね。私ここを任されるの初めてだから、西尾さんの経験頼りにしてるわ。」

 

「そんな、私だってCDCで戦闘のオペレーターをしたことはありますけど、任されるのは初めてですよ。」

 

「西尾さん。真壁司令達が何してるか知ってる。」

 

「さぁ~。なんでも新国連のお偉いさんが来たらしいですよ。」

 

「新国連・・・・・・。」

 

「噂では、遠見先輩のお父さんらしいですよ。」

 

「真矢ちゃんの・・・・・。」

 

「ちょっと待ってください。えっとこの人です。」

 

西尾さんは素早いタイピングでその人物の映像を出した。

 

「この人です。名前はミツヒロ・バートランド。」

 

「あっ。」

 

「どうしました先輩。なんだか嬉しそうですけど。」

 

「えっそんなことないよ。」

 

その映像には、警護をしている亮介の姿が映っていた。

 

 

 

 


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