オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか? 作:シフシフ
1週間後に投稿、そう言ったな?・・・・・間に合わなかったよ・・・・・。
しかし。約束通りにほのぼの要素も含まれているのですっ。さらに!ほのぼの要素を加速させる挿絵を・・・・・!
妖夢
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ハルプ
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59話「まだ、大丈夫ですよね?」
時は西行妖発動直後まで遡る。
突然、昼下がりのオラリオを襲ったのは猛烈な殺意だった。恩恵を持たない誰もが震え上がり座り込む中、冒険者や神々は足元・・・・・ダンジョンを見つめていた。
「こ、これは・・・・・まさか使ったんか?そんな事態になってもうたんか・・・・・?」
ロキもまた、足元を見つめている者の1人だ。ロキの頭の中にはありありと木に体を抉られ貫かれも悶え苦しむ団員達が浮かんでいるのだから、心配で仕方が無いのだろう。幸いにもオラリオに届いたのは殺気だけであり、効果範囲外であった為に犠牲者は出ない。
とは言え不意に襲ってきた殺気は街中を混乱させた。多くの者達が肩身を寄せ合い震えている。
「やぁ、ただいま。ロキ。」
「フィン!どうなってるんや?遠征はもうおわったんか?」
原作とは違いベート達が解毒薬を取りに戻っていないため、ロキの驚きは大きい。それと同時に深い安堵を得たロキは思わずフィンに抱きつく。フィンはされるがままにして、しばし待つ。
「・・もういいかな?」
「せやな、何があったか話しーや。」
真剣な目でロキはフィンを見つめる。フィンは包み隠さず妖夢から話されたことを語っただろう。御贔屓に捉えるなら人命救助の作戦。けれど、未然に防ぐ手立てなど、それこそいくらでもある。
「・・・・・・・・・・なんで妖夢たんはその方法を取らなかったんや?」
何かが引っかかる。ロキの知る妖夢は決してお馬鹿さんでは無い、そもそもゴライアスが出現しないようにする事くらいは出来そうなものである。なのに、それをしない。敢えて出現させる。・・・・・なぜ?
「死ぬかも知れないから死地を呼び込むって、何がしたいねん。」
「不器用では無いはずだけれどね。」
2人が頭を捻っていると、「失礼します!」と聞きなれはしないが知っている声が聞こえた。ハーフエルフのギルド職員エイナだ。ハァハァと少し息を切らしており、走ってきたのが伺えた。足が小刻みに震えているのは何も疲れだけでは無いのだろう。恐怖を耐えるだけで精一杯な人が多い中、普段通り動けている方だと言える。
エイナは少し息を整えた後話し始めた。
「ギルドは捜索及び救出隊の編成を開始しています。現在はガネーシャ・ファミリア、フレイヤ・ファミリアその他5つのファミリアが参加しています。」
エイナの表情をロキは細い目で舐めるように見る。そこにあったのは純粋な心配だけ、この殺気の中、人を想う気持ちだけで耐えたのだと当たりをつけロキはニンマリと微笑む。フィンからアイズ達3人が残っている事を聞いていたので渡りに船と団員達をフィンに選ばせる。
「・・・・・ふむ、こんなものかな。編成は完成だ、みんなポーションその他アイテムの確認、装備の確認を済ませたらダンジョンの入口へ来てくれ。集団で動けば更に街の人々を混乱させることになる、なるべくバラバラに集まるように。」
「「「「はいっ!」」」」
時間を戻そう、時は戦いが終わった瞬間へ。
「妖夢!大丈夫か!!」
私は思い出しました。自分が誰で、どうしてここに来たのか。何もかも。・・・・・・・・・・・・・・・私に憑いていたあの子がいない。それが、途轍も無く悲しい、寂しい。まるで心にポッカリ穴があいたみたいです。
身体が痛い。どうしてここまで無理をしたのかな・・・・・そっか、大切だったんですね。
記憶が流れ込んできました。それは失った後に手にした記憶でした。2人で手に入れた記憶です。
「・・・・・タケ・・・・・」
一言呟くだけで心が染みていく。染みて痛いけれど、少し心地よい。けれど、やっぱり足りない。
「妖夢・・・・・良かった・・・・・!」
ガバッと私を抱きしめるタケ。どうやら気がついて無いみたい、私は貴方の知る妖夢では無いのに・・・・・。
言いたいけれど声が出ない。もう何も残っていないみたいです。指先すら動かない・・・・・呼吸が浅くなっていく・・・・・意識が・・・・・。
────嘘だ。
目の前に流れる光景は過去。けれど俺の物じゃない。
─────嘘だ。
「みょおおおおおおおおおん!!」
空を落ちて、地面に迫る。けれどそれは『俺』では無い。
────嘘だ。
光が『誰か』に迫る。
「ひ!?お化け・・・・・!?あわわわわ!どどどうしたら!」
『誰か』は光が怖いのか両腕を振って退けようとする。けれど光はその『誰か』の周りを回って何かを伺っている。
「ひぃいいいい!乗っ取られる~!?」
───嘘だ!
光がより一層強く輝いた時『誰か』は半霊を光に向けて突撃させた。
「お願い!半霊!!」
そして空すら覆う程の輝きの後。『俺』は気を失い落ちていく・・・・・。
──有り得ない。瞞しだ。
目が覚めた俺は近くの湖に近づいて身体を確認し始めた。
「みょおおおおぉぉぉん!」
鈴のような綺麗な可愛らしい声で『俺』は叫ぶ。
──違う、違うんだ。俺は・・・・・奪って無い。
『嘘だ!!』
「「「「「「「?!」」」」」」」
かけられていた布団を弾き飛ばして起き上がる。そして気がついた幾つもの視線。
振り向いた先にいたのはモンスター。リザードマンにアラクネ、ハーピィにガーゴイル。それらがこちらを警戒していたり、好奇の視線を向けている。
『・・・・・・・・・・何だ、お前達。』
顔が引きつっているのが分かる。だが受け入れたくない。
「グルルル」
『話せるなら話せ。話せないなら敵だと判断する。』
声が、今までに無いくらい怒りを帯びている。思考はこうして冷静なのに、なぜ身体はここまで怒っているのだろうか。・・・・・身体は無いか。
──ピシリと罅が入る。
「「「「・・・」」」」
モンスター達は何やら視線で意思の疎通をしている様だ。やはり『
そんなゼノスの内1匹が前に出る。リザードマンだ。
「あー。オレっちはリド。宜しくなっ」
ビシッと親指を立ててこちらに恐らくだがウィンクするリド。
『・・・・・』
「驚くのも無理はないけどよ、話せって言ったのはそっちだぜ?」
それもそうだ。なぜ言葉が出ないんだろう。・・・・・・・・・・そもそも何で俺はモンスター何かと話そうとしてるんだ?地上に戻らなきゃ・・・・・・・・・・地上に戻って何になる。
──ピシリ。罅が入る。
地上に俺の何がある?・・・・・家族?いや、違う。それは瞞しだった。嘘だった。幻だった。皆・・・・・『俺』の事なんて見てくれてなかった。
──ピシリ。メリメリ。広がっていく。
「お、おい・・・・・大丈夫か?」
『ん?あぁ、大丈夫だよ。俺の名前はハルプ。宜しくな!』
なら、作ればいい。失ったならまた・・・・・すべてを奪われたなら、また、つくればいい。何度でも何度でも繰り返せばいい。
「おう!宜しくハルっち!」
『ハルっち?ははは、宜しくなリドっち!』
──自己否定は精神の崩壊を引き起こす。
俺は魂魄妖夢じゃない。タケミカヅチ・ファミリアは魂魄妖夢の家族だ。俺の物じゃない。・・・・・俺の物だった筈なのに・・・・・今は、違う・・・・・。
──罅が広がっていく。
「マタ厄介ナモノヲヒロッテキタナ、リド」
「グロス、そんな事言うなよ。ハルっちだって嫌がるぜ?」
・・・・・厄介か、確かにそうだ。俺は厄介な何かなんだから。妖夢からすれば厄介なものに違いない。
『いや、グロスの言う通りだよ?俺は厄介者なんだから。』
痛い。何が痛いのかわからないけど。何故か痛い。
『俺なんかを助けてくれてありがとうな?助けたくないって思う奴も居たと思う、ありがとう。』
頭を下げて、・・・・・この後はどうすればいいんだっけ。わからない。俺はどう動けばいいんだ。
「いいんだよハルっち。よぉし!皆で宴と行こうぜ!」
「「「わぁぁあ!!」」」
様々な鳴き声が反響しあって耳に届く。
「笑ってくれよハルっち!皆で楽しもうぜ!」
『わかった!』
そうか、わらえばいいのか。なら、笑おう。自分の無様さを嗤おう。嘆くな、笑え。後悔するな・・・・・笑え。
「・・・・・泣いてるのかハルっち。」
『嬉し涙だよ。』
俺はいつの間にか出ていた涙を拭う。目の前にセイレーンや、ハーピーなどが降り立ち自己紹介を重ねていく。歌って踊って、食べて飲んで。
「いやな事なんて忘れちまえばいいんだぜ!」
『あはははそうだな!』
わすれよう。全ては嘘だったんだから。夢だったんだから。
───ヒビが広がる。
「・・・・・ハルっち」
『ん?どうしたリド』
「ははっ、何でもないぜ」
『そか。で?どうだよ味は』
「さいっこう!何でこんなに料理旨いんだ!?」
『・・・・・さてな、忘れちまった。』
俺の名前はハルプ。魂魄妖夢などでは無いし、ほかの何者でも無いはずだ。
───ヒビが、広がる。
地下深くで宴会が開かれた。そして、地上でも宴が開かれたのだ。ギルド職員は大量に持ち寄られた仕事の処理に大忙しであり、今回の騒動の罰はまた後日に受けることになるだろう。なら宴やっちゃおう!と言う安直な考えにより、宴は始まったのだ。発案はロキ。
「ん〜!飲めや!歌えや!チキチキ!宴会ターイムー!」
イヤッフゥゥウーーー!!と歓声があちこちから上がる。死傷者は沢山でた。しかし、それよりも生きて帰ってこれた事、それ自体が嬉しくてたまらないのだ。
「のめのめーー!!」
「一気!一気!」
「ゴクゴク・・・・・ぷはァ!」
「ヒューヒュー!」
そんなめでたい宴会の中、妖夢はキョロキョロしながら両手を胸元で合わせ、モジモジしている。傍から見ても全くと言っていいほどにこの場のテンションに合わない。
それもそのはず、記憶があっても実体験が伴わないのであれば、混乱は避けられない。
「おい妖夢」
「ひゃい!」
そんな様子の妖夢に勿論皆気が付かない訳が無い。笑い合いながらも、誰が励ましに行くのか相談していたのだ。妖夢以外からすれば、妖夢の挙動不審は今回の戦いによる死傷者が原因だと思うだろう。ベートもそう思って話しかけた・・・・・のだが。
「・・・・・俺は謝らねぇぞ。間違った事は言ってねぇからな。テメェもうじうじしてねーで切り替えろ。」
「は、は、はひ!」
あわあわ、わたわた、と慌てながら頭を下げ、ベートが、踊る猿師に目を取られた隙に「タケぇ・・・・・」とタケミカヅチの後ろに隠れて、服を掴んで顔をタケミカヅチの背中に押し付ける。
「おっ?妖夢どうした?膝座るか?」
「・・・・・はい」
タケミカヅチの後ろからチラチラと頭を出しては宴会場を見ていた妖夢だが、タケミカヅチにそう言われて、タケミカヅチの胡坐で出来た窪みにすっぽりとハマる。
「しおらしい姿も最高だぜ」
「しょぼーん、としているのもポイント高いな」
「何言ってるんだよ何時も最高だろう?」
「「「それな」」」
一部のファンの言動に妖夢がビビっているとタケミカヅチが睨みを効かせて一掃する。妖夢は小さな体を更に小さく縮めてフルフルと震えている。
「なー、ベート何したん?遂に襲ったか?」
「はぁ、全く君は・・・・・」
「愚かな・・・・・」
「はぁ!?どうしてそうなんだよ!?言っとくけど俺は何も間違った事はしてねぇからな!?」
「最初は皆そういうんやで?」
「「「経験者は語る」」」
「なんでや!?」
そんな会話を聞いた皆の視線がベートとロキに集中する。集中するきっかけを作ったフィン、リヴェリア、ガレスは何処吹く風だ。
「みろ、アレが我らが妖夢様を泣かせた男だ」
「あぁ、アレが我らが妖夢様を泣かせた男か」
「うむ、アレが我らが妖夢様を泣かせた狼だ」
「獣・・・・・ケダモノだわ・・・・・」
悪ノリに悪ノリが重なって最早ベートが可哀想である。
「おい!妖夢お前も何か言いやがれ!テメェのせいで俺が被害被ってんだぞ!」
ベートの悲痛とも言える叫びに妖夢ビクッと肩を震わせたあと、ビクビクしながら言葉を紡いでいく。
「え、えと、ベートさんは皆の為に・・・・・」
「「「「「「「ベート・・さん?」」」」」」」
「へ?(妖夢)」
「なん・・・・・だと・・・・・?(タケ)」
「さん・・・・・・・・・・だと・・・・・?(桜花)」
「ありえへん、冗談やったけど本当に・・・・・(ロキ)」
「嘘・・・・・(千草)」
「なななななな!?(命)」
「ちょ、ちょっと待て、なんで俺を見てる?なんだその疑いの目は。おい!冗談は止めろ!(ベート)」
妖夢の悪気のない・・・・・と言うかこれが普通なのだが、敬意を表した言葉は皆の確信を突いた。
疑惑は確信へ。狼は違う意味の狼へ。多少の哀れみの視線は容疑者へと向ける侮蔑の目へ。圧倒的精神的リンチを受けたベートの耳は垂れ下がり、SAN値はゴッソリと減り、尻尾は力なく地面に垂れる。しかしそれは、周りから見たら犯人が捕まる瞬間の諦めきった姿にしか見えず、すぐ様ロープで縛られ天井に吊るされた。
「俺は・・・・・悪くねぇ・・・・・妖夢が悪いんだ・・・・・」
「コイツ挙句の果てに妖夢のせいにしたぞ・・・・・」
同じ同族だとしてもこれは庇いようが無い、ダリルは一瞬にして見捨てる事を選び、妖夢を庇う。
アリッサは妖夢を救えなかったと嘆き、orzとなった後、妖夢の前で土下座を始める・・・・・ちなみにタケミカヅチ直伝だ。
命や千草などは事情を知っているため苦笑いであるものの・・・・・
「おのれぇ!妖夢に何をしたァ!渡さん!お前なんかに妖夢は渡さないぞおおおおお!・・・・・妖夢、お父さんに言いなさい、何があったか言ってみなさい」
同じくあの場に居たタケミカヅチは全力で妖夢を抱きしめながらベートを睨みつけていた。どうやら酒が入っているせいで話しの根幹を聞いていなかったらしい。
「お前もかよ・・・・・」
最早ベートに何かをする気力は残されていなかった。更に、その誤解を完全に解くことが出来る筈の妖夢は、まさに混乱中であてには出来ない。
「そおりやぁあ!!」
「グボァ・・・・・!」
「悪!即!殴!」
ドゴォ!と人体から出ては行けない音がなってベートが気絶する。それを行ったティオナはご満悦である。
目の前で繰り広げられる奇々怪々で騒然とした抗争に妖夢は目を白黒させて驚いている。
(これが・・・・・あの子が作った光景なんですね。)
そう思って、少し沈む。今はどこにいるのだろう、なぜ、自分の隣にいてくれないのだろう。記憶を失ってから、ずっとずっと隣で、時には前で導いて居てくれた彼は。
(私が・・・・・守ります・・・・・!)
この光景を、この絆を、決して壊しはしない。自分を偽る必要などない、彼の居場所を、帰る場所を守らなくては。
真剣な目で妖夢はそう思う。しかしだ、その真剣な目をどう捉えたのか、人々は左右に別れ、ベートへと続く道が作られた。妖夢は立ち上がり確かな足取りでベートの元へと歩く。
「神判の時やな。堪忍せぇや(ロキ)」
「殺れ、妖夢(タケ)」
「あわわわわ(命)」
「キュー〜バタッ(千草)」
妖夢はベートの前で座り込み、逆さになった顔に視線を合わせる。スカートの中が見えないようにしっかりと折りたたんでいる。タケミカヅチが後ろで「おぉ」と謎の感動をしている中、妖夢は口を開いた。
「ベートさん、貴方の言葉は間違ってません。私が悪かったんです。人を殺めるその行為が間違っていない筈が無いんです」
「あ、やっぱりそっちか」と言った空気が流れる中、妖夢はそれを気にせず口を動かした。
「私は確かに間違っていました、けれど、この景色を、この光景を見るためには・・・・・必要な事だった。そう思います。」
妖夢に確信などない。あったのは彼だ。いつも助言をくれる彼は必ず正解を掴んできた。だから、今回も。そういった思いが妖夢にはあった。
「私はこの光景を守りたい。私達が作り出した絆を壊したくないです。」
守ると決めたなら守りとおす。それが庭師。
「だから・・・・・ごめんなさい。私達はベートとの絆も大切です。これからも友達でいてくれますか?」
緊張の一瞬。妖夢の勇気を振り絞った言葉は、確かにベートに届いていた。何時から目を覚ましていたのだろうか。気絶していたはずのベートの目は確かに開かれていて、目は鋭く光っている。・・・・・逆さに吊るされてるが。
「・・・・・ハッ!下らねぇ。そんなのテメェの好きにすりゃあ良いだろうが。」
答えはYes。妖夢がホッと胸を撫で下ろす。ロキ達が若干の困惑から目覚め、その隙を狙って事情を知る命と千草が説明に走り回る。
「なるほどなぁ・・・・・結局妖夢たんが全部良い話しに待ってったなぁ。」
「流石ですよね、ふふふ」
「退却ぅ!」
「りょうかい!」「了解!」「敵の潜水艦を発見!」
「ダメだァ!」「ダメだァ!」「ダメだァ!」
一転して明るい空気に包まれるホーム内、その事に妖夢はもう1度ホッと胸をなで下ろす。
「まだ、大丈夫ですよね?」
下を向いて、遠くを見る。そこに、彼は居るのだろうか。妖夢にそれを知る術は無い。何故なら彼からは何も伝えて来ないのだから。
「ねェ、ハルプは知ってる?上の階層ガ壊れちゃッタ事。」
酒をみんなが浴びるように飲む中、そこそこに控えていたレイが俺に話しかけてきた。
『まぁ・・・・・知ってるな、うん。』
壊したの・・・・・俺、なのか?いや、妖夢?・・・・・どっちだよ、わからねー。
「おぉれちの!ゆめはぁ!ちじょうにでてぇ!がぁんばるっ!?ことぉ!」
ブッサイクな歌で夢を語るリドに合わせて、巨大なフォモールから小さなゴブリンまで踊る。俺は遠巻きに眺めている形だ。
「ねェ。私達は地上二デレると思う?」
そんなこと聞かれても正直困るのだが、地上で暮らしいていた俺に聞いてみたいと思う気持ちもわからなくも無い。
『質問はYesだ。いつか出られるだろうし、俺が今すぐ出してやることも出来る』
「本当に?」
『まぁ結果は・・・・・会話の成立すらせずに殲滅されるだろうけど』
「そうかァ・・・・・」
『手伝ってあげるから皆で頑張ろうな?』
「ソウね。」
真実を伝えてあげながら、自分に出来ることを考える。壊した十八階層を利用できないだろうか?
十八階層は大穴があいて、恐らくセーフティーエリアとしては使いものにならない筈だ、そしてゼノスの存在を人に良いものとして知らしめるなら、それ相応の利益やら利点を見出してやる必要がある。
・・・・・とは言え、少し休みたいかな。
疲れたからさ。
目の前で眠る少女の様な外見をした何かをゼノス達は見つめていた。いや、正確には、その頬を走るヒビを見つめたいた。
「ハルっち・・・・・なにかあったんだろうな」
見つめていた殆どが頷く。彼女は元気で明るい少女である、それは出会って数分で理解出来た事だ。モンスター相手にも明け透けに接してくれる、理解者。
「デモ・・・・・理解されなかッタ。」
「アァ、恐ラクハナ。」
地上の話をされる度にこちらが痛くなるほどに顔を歪ませるのだ。まるで自分のすべてを奪われた、とでも言うかのように。
ガーゴイルのグロスがハルプを抱き上げる。誰もがその行為に驚く中、グロスが歩いていく。
「ちょ!おいグロス!どうするつもりだ!?」
「・・・・・ワカラナイカ。崩壊ヲ我々デハ止メラレン。コノ者ハ・・・・・何処カニ捨置クシカアルマイ。」
「止めろ!もう少し様子を見るんだ!」
「殺サナイダケ有情ダト思エ!」
「あと少しでいいんだ!ハルっちが協力してくれれば俺達は地上に・・・・・!」
「無駄ダトナンド言エバイイ!!」
2匹が争う中、ハルプはグロスの腕の中で額をグロスのお腹に押し付けるようにして眠っていた。グロスはそれに気がついたのか、少し戸惑う。
『ぃや、だ・・・・・・・・・・置いてかないで・・・・・皆・・・・・。』
ポロポロと涙が零れでて、眠っているのに泣きじゃくるハルプは、余りに幼気でグロスは唸る。やがて尻尾でハルプの頭を一度撫でた後、踵を返してリド達の元に進む。
「ハァ・・・・・見捨テルノハ苦手ダ・・・・・」
「慣れないことしようとするからだ、ははは」
レイがハルプの涙を拭い、その両翼で優しく抱きとめる。ここは、ハルプにとって楽園の一つになり得るだろうか。
次回はさらにほのぼのです!只の買い物パートなのでね。シフシフ嘘付かない。
今後のプロットは決まってはいますが・・・・・しばらくはほのぼのパートを続ける必要があるのです。なので活動報告とかで募集してみようかな?と思ってます。