オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

56 / 91
英雄、ベル・クラネルのSAN値を削る戦いが・・・・・いま、始まる。

なんと遂にあの人達が本格的に・・・・・?










55話「・・・・・ごめんなさい!」

妖夢のいる森とは別方向、リヴィラの街のやや中央付近、ヘスティアは必死に叫んでいた。

 

「ベル君っ!!ベル君っ!!返事をしておくれ!!」

 

しゃがみ込むヘスティアの目の前にはベルが倒れている。西行妖とはある種の『魅了』だ、魅了に対する耐性を持っているベルならば耐えられる。いや、抗える、と言った方が正解か。

 

ベルは目を閉じ、小さく息をして寝かされていた。

 

「・・・・・ベル、君っ・・・・・」

 

涙がポタポタとベルの頬に落ちる。落ちた涙はベルの頬を伝い、地面を湿らせる。しかし、ベルは目覚めない。

 

ザッザッと足音がして、ボロボロのヘルメスが隣に座り込む。

 

「はぁー・・・・・つっかれた・・・・・もう動きたくないかなー」

「お疲れヘルメス・・・・・どうだった?」

「オッタルと協力してどうにかって感じかな」

「オッタルも平気だったんだね・・・・・」「いや、オッタルも両腕を自分でへし折って耐えた感じだったよ。・・・・・本当にえげつないなぁ、まだ背筋が凍ってるよ」

 

はははと乾いた笑い声をヘルメスがあげて、やがて真剣な顔でベルを見た。

 

「ベル君・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────地獄を、見た。

 

死ぬ、死ぬ、死ぬ。人が死ぬ。

 

死ぬ、死ぬ、死ぬ。怪物が死ぬ。

 

死ぬ、死ぬ、死ぬ。何かが死ぬ。

 

ここは地獄だ───────。

 

木が生える。その枝を揺らして花を咲かせて、喜んだ。

 

死ぬ、死ぬ、死ぬ。人が死ぬ。

 

死ぬ、死ぬ、死ぬ。怪物が死ぬ。

 

死ぬ、死ぬ、死ぬ。何かが死ぬ。

 

あぁ、──────此処は地獄だ。

 

 

「・・・・・ここは?・・・・・っ!?待って!ここどこ!?戦いは!?」

 

僕はあたりを見渡す。薄暗くて、肌寒い。オラリオにこんな所は無かったはずなのに・・・・・。

 

「・・・・・墓?見たことないお墓だ・・・・・」

 

墓を見つけた僕は墓に近づく。灰か埃を被っていて字が読めない。誰のお墓なんだろうか?

 

──リリルカ・アーデ。かの可憐な少女、ここに眠る。

 

「ひっ!?・・・・・り、リリ?」

 

墓の名前を覆う埃をどかせば、そこにあったのはリリの名前だった。

 

「あ、有り得ない・・・・・!!こっちは!!?」

 

────ヴェルフ・クロッゾ。血に呪われた男子、ここに眠る。

 

ヴェルフの名前だ・・・・・。有り得ない、有り得るはずが、無い。だって、皆生きてて・・・・・!

 

「う、嘘だ、嘘だあ!」

 

僕は何も信じたくなくてその場を駆け出した。これは幻だ。これは幻想だ。夢だ、悪夢なんだ。覚めろ、覚めてくれ─────!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁっ・・・・・は、え?」

 

走って。走って、走って。僕はいつの間にか大きな木の前にいた。首を後ろに傾けても一番上まで見通せない、そんな大きさの木。

 

ふと、頭をよぎる近視感。僕は、ついさっきこの木を見た事がある?ような気がした。その時

 

「あら?あらあら?あらあらあらあら?」

「ひっ!?」

 

人の声がして振り向けばそこには綺麗な女の人が。着ているのは和服だっただろうか、でも、そんな人が何でこんなところに?

 

「あら〜。随分と綺麗なのね。・・・・・でも。少し濁りかけているかしら?いえ、違うわね、怯えてる」

「な、何を?」

 

「いいえ、こっちの話よ」と女の人は言う。そうだ、元の場所に変える方法を聞かないと。

 

「あっ!あの!・・・・・ここから出るにはどうすれば・・・・・」

「・・・・・」

 

僕がそう聞けば、女の人は驚いたように口元を隠し、しばらくの後ジト目でこちらを確認し始めた。何処か驚いているようにも見える。

 

「・・・・・・・・・・魅了されてないのね・・・・・珍しい・・・・・でも、こんな事今まで無かったし・・・・・いいえ、そう言う力を持っているならそうなのかもね・・・・・」

「え、あ、あのぉ?」

 

気まずげにもう1度質問しようとしたが、女の人は身を翻し去っていく。

 

「え?!ちょ、ちょっとま「ここにあるわよ〜?」ここって!?」

「ここよ、この墓地に。誘われた者達は墓に埋まるの、そうして西行妖に食われるわ。・・・・・まぁ、封印されているから食べられるまではすごい時間がかかるでしょうけどね」

「どうやったら助けられますか!?」

「お墓に埋まっている子達は『誘われている』だけよ?死んでなんて居ないの。死んだと勘違いして嘆いている哀れな子達。・・・・・貴方は誘われたけれど平気だったおかしな子、でも、貴方なら・・・・・救えるのではなくて?」

 

そう言って唐突に女の人は『消えた』。僕は背筋が凍るような感覚に震えながらも、リリ達の墓を目指した。あの人の言うことが本当ならリリ達は死んでない、・・・・・?・・・・・西行妖・・・・・?えぇ!?

 

 

 

 

 

「迷いなさい、戸惑いなさい。鵜呑みにしてはダメなのよ?────迷わなければ、もう戻れないのだから───。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視界がぐらつく、視界がぼやける。足が思うように動かなくて、眠気が頭に霧をかけたように不鮮明だ。でも、それでも動かなきゃ。

 

「よ、妖夢・・・・・俺達は何をすればいい?」

 

薄い膜を隔てたような不思議な感じで声が俺に届いた。何をすればいい、か。・・・・・簡単だ・・・・・モンスターを殺せばいい。

 

「殺す、それだけです・・・・・殺してください・・・・・モンスターを・・・・・はぁっ!!」

「妖夢殿・・・・」

 

足を踏み込む。力を込めて体を倒す。グニャりと曲がりかける関節を意志の力でどうにか固定し、地面をけって駆け出した。

 

「はぁぁぁ!!」

 

盆栽の様に木の一部となっているモンスターを無視して新たに湧いて、西行妖の効果で自殺したり殺しあっているモンスターに切りかかる。

 

左手に持っている楼観剣で倒していく、何故か楼観剣が消えないが、今はそれでいい。魔石を切裂く度に、キラキラと輝きながら魔素が西行妖へと消えていく。床にたまった血溜まりが地面を滑るように西行妖へと吸い込まれて行く。

 

階層中の水晶が少しづつ光を失っていく。

 

「・・・・・ダンジョンからも力を奪っているのか?」

 

恐らくタケの仮説は正しい。全てから力を奪ってでも咲こうとしているんだ。

 

「はぁっ!!」「やぁーーっ!!」「おぉおっ!!」

 

命や桜花、千草が武器を手にモンスターを倒していく。キラキラと光が西行妖に溜まり、魔石を1つ砕く度に花が1つ咲いてゆく。

 

「これでは何時間もかかってしまいます・・・・・!」

 

命が悔しそうにそう言った。わかってるんだ、それくらいは。あたりを見渡す、倒れている冒険者達はそれこそ殆ど全員、だと思う。多分立っているのは俺達だけだろう。

・・・・・っ!?ベート・・・・・?

 

「ベート・・・・・?」

「え?」「ふぇ?」

 

視界の端に一瞬映った銀の影。多分ベートだ。・・・・・そうだ、これだ、これなら、もしかしたら・・・・・!!!出来るかもしれない!!

 

「ベート、ベートを呼んでください!!今すぐに!!出来る、出来るかも知れないです!!」

「わ、わかった!命!千草!タケミカヅチ様と妖夢の護衛を頼んだぞ!」

「「はい!」」

 

西行妖の桜を咲かせるには魔素が必要だ。魔素ってのは魔石を砕く時の他にも魔法を放った後も発生する。つまり、俺が何を言いたいのかというと、全員で魔法を撃ち込んで魔素を大量に生み出せば咲くのを早められるかも知れないってことだ!

そんでベートにはやってもらうことがある、ベートのブーツで西行妖を蹴りつけて力を吸い取る。吸い取っている間はその分だけ弱体化してる事になるからその間は体の自由が多少は効くはずだ、そうして魔法の詠唱を行って・・・・・待てよ、いや、大丈夫だ。ゴライアス達が暴れだしたとしても、その魔法で吹き飛ばせばいい。・・・・・!!その時の攻撃でアイツらの魔石を吹き飛ばせれば・・・・・!!行ける!倒せるぞ!

 

「・・・・・ここにいたのかよ」

「ベート!良かった!貴方が居なければ終わっていたかも知れません!分かったんですよ!」

「・・・・・」

「ベートが倒れていなくて本当に良かったです!さぁ作戦を」

 

 

 

 

 

「てめぇ、巫山戯てんのか?」

 

 

 

 

 

ベートが呟いた。

 

「な、何言っているんですか?巫山戯てなんかいません!」

 

無表情でベートが俺に顔を近づける。

 

「妖夢、てめぇ、自分がどんな顔してるか、わかってんのか?」

「え?」

 

俺の顔?俺の顔がどうしたってんだ、いや、違うだろ、そんな事はどうでもいいんだ、今は早く西行妖を発動させなきゃいけないんだ!

 

「なんで、そこまで怯えてやがる(・・・・・・)

「───ッ!!」

 

怯えてた?俺が?

 

「何が怖い、何を恐れてる。お前の顔は勝ち筋を見つけた顔じゃねーぞ。まるで───────」

 

止めろ。言うな、それ以上は言わないでくれ。いや。まて、なんでそんなことを思う?・・・・・可笑しい、おかしい、なにかがおかしいんだ。

 

「───迷子のガキじゃねぇか。親とはぐれて、帰り道もわからねぇ、誰かに聞こうにも怖くて話しかけられねぇ。・・・・・そんな顔してんぞ、お前。」

「な、何言って・・・・・そんなわけ・・・・・」

 

触れて初めて気がつく。笑ってるつもりだったのに、俺の顔は引きつっていた。タケを見ても、命を見ても、千草を見ても、桜花を見ても、俺の顔は引きつったままだ。

 

「・・・・・殺しそうになったから罪悪感でも感じてんのか?ハッ!だっせぇなぁ!一度やったんだ、最後までやって見せろよ。じゃねぇと、アイツら(仲間)にやった分だけ返してやる!」

 

ベートは唾を飛ばしながら俺に怒鳴りつける。罪悪感?・・・・・感じているのだろうか、俺は。でも・・・・・ベートに怒られるのは仕方ない事なんだ、俺のせいでこうなったんだから。それくらいは受けて当然、いや、寧ろ死んで詫びる位は必要なのかもしれない。でも、まだ死ぬ訳には・・・・・

 

「冒険者はなぁ!!雑魚どもを守る為にいんだよ!モンスター共から守る為によぉ!殺してどうすんだこのバカが!!守るのは自分の家族だけかよ!?そいつらは俺に託すんじゃ無かったのか!?テメェだけで守れたじゃねぇか!!雑魚共を殺しまくって、助けられたじゃねぇか!!罪悪感?ハッ!笑えねぇ!くっだらねぇ冗談なんて捨てやがれ!・・・・・・・・・・テメェは殺したんだ、理不尽に、一方的に。

自分の目的のためにな、知らなかったじゃすまねぇんだぞ・・・・・」

 

・・・・・・・・・・・・・・・知らなかった?いいや、知っていたんだ。初めから、この魔法の名前を見た時から、きっと、こうなるって知っていた。

 

「殺しきれんだろうなぁ?!おめぇのその作戦で!!俺が命張る意味はあんだろうなぁ!?家族家族って家族だけ助けてほか全部を見捨てたりしねぇよな!?おい!なんか言えよ!」

「ベート、止めろ。」

「うるせぇ!アイツの魔法で何人死んだと思ってる!助けようとした俺の前で何人自殺したと思ってる!!助けてくれって叫びながら自殺した奴らの事を考えて言ってんのかよタケミカヅチ!!」

 

・・・・・・・・・・俺は、間違ってたのかな。ベートは、きっと正しいことを言ってるんだろう。でも、もうこれ以外に倒せる方法なんて・・・・・思いつかない。

 

「あの魔法しかあいつらは殺せないんだ!」

「わからねぇだろうが!!まだ、まだ何か」

「もう遅い!・・・・・アレは俺の指示だ。全ての責任は俺にある。」

「あぁ?んだと・・・・・てめぇ、そういや魔法の効果を隠してたんだってなぁ!!」

「ああ、隠さなければならないものだった。」

「なんて書いてあったんだよ!!言えよ!」

 

止めてくれ、止めてくれ・・・・・。なんで喧嘩するんだよ、早く、少しでも早く終わらせないと・・・・・もっと死んじゃうだろ・・・・・?そしたらもっと怒るだろ?

 

「・・・・・記憶だ」

「あぁ?記憶だ?」

「妖夢の記憶に関するものが書かれていた。」

「それの何処が──────ッ!?」

 

「「■□□■□■□■□■□■□□□■□■□!!!」」

 

ゴライアス達が叫ぶ。殺してやる、殺してやるって叫ぶ。木が軋むような音を立ててポロポロと少しだけこわれる。首から上だけまともに動くようになったゴライアスが俺の方を向いて咆哮を放った。

 

殺意。それが俺に向けられた。ゴライアスから、ベートから。

 

それが怖くて、痛くて、でも、仕方なくて。諦めちゃ駄目なのに力が入らなくて、動けなくって・・・・・・・・・・

 

「妖夢っ!!」「おい糞ガキ!!」

 

咆哮が、魔力を込める事で物理的な威力を持った咆哮が俺を殴り付けた。お腹にめり込んで内蔵が壊れるのがわかる。ゆっくり、ゆっくりと。【集中】の2倍化が発動して、痛みを長く永く味わっていく。血がこみ上げてくる、口から零れでた。肋骨が粉々になる、肺に刺さった。

 

────あぁ、死んじまった・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ。・・・・・どこだ、ここ・・・・・。リリ達の所に帰れない?」

 

僕はあの後走り続けた。でも、どこもかしこも墓墓墓、変わらない景色に僕は迷い始めていた。墓もあいうえお順で並んでるわけじゃ無いみたいだし・・・・・

 

─────────()

 

「!?・・・・・泣き声?女の子の泣き声がする・・・・・?」

 

僕の耳に入り込んできたその声に僕は向かっていく。僕と同じように誘われたけれど墓に入らなかった人なのかも知れないし、リリ達が目覚めたのかもしれない。

 

「はぁ・・・・・っ、どっちだ?」

 

耳を澄ます、声は・・・・・聞こえた!

 

───────(じゃった)

 

「こっちだ!」

 

声は中央から聞こえてきていた。中央には葉のない巨大な木・・・・・多分封印されている西行妖だと思うけど・・・・・そんな方向になんで・・・・・っ!もしかして食べられそうになってる!?急がなきゃ!

 

───(しんじゃった)

 

!?・・・・・やっぱり勘違いしてる、死んでないって言わないと。僕は遠くに見え始めた女の子に向かっていく。髪の毛の色は・・・・・銀?

 

銀って・・・・・妖夢さん?

 

「しんじゃった、しんじゃった、しんじゃった、しんじゃった。・・・・・私、死んじゃった。」

 

両手で顔を覆い、指の隙間から涙がポタポタと垂れている。経ったまま西行妖に背を向け、泣いている。その姿に僕はとても悲しくなって・・・・・少しして話しかけた。

 

「妖夢さん、妖夢さんは死んでなんか無いですよ、これは西行妖のせいで」

「西行妖・・・・・?あ、あ、あぁ!・・・・・ごめんなさい!」

「え?」

ごめんなさい(ごめんなさい)ごめんなさい(ごめんなさい)ごめんなさい(ごめんなさい)ごめんなさい(ごめんなさい)ごめんなさい(ごめんなさい)ごめんなさい(ごめんなさい)ごめんなさい(ごめんなさい)ごめんなさい(ごめんなさい)ごめんなさい(ごめんなさい)!!」

「・・・・・!?」

 

思わず顔が引きつった。まるで呪詛のように謝り始めた妖夢さんに僕は体まで固まってしまった気がした。小刻みに震えて謝り続ける妖夢さんを僕は哀れんでしまった。

 

「妖夢さん、顔を上げてください。」

 

妖夢さんは顔を上げない。

 

「妖夢さんは僕に言ったでしょう?「・・・目を開いてください、貴方が見るべきはそんな物では無いはずです。」って。」

「・・・・・ぇ?」

 

妖夢さんが顔を上げた。・・・・・僕はあの言葉に励まされた。僕は彼女を励ます事が出来るだろうか・・・・・?

 

「妖夢さん、目を開いてください。こんな所にいたら謝ったって伝わりません!」

「で、でも、死んじゃって・・・・・」

「死んでませんよ!妖夢さんは死んで何かいません!」

「えぇ?」

「西行妖のせいで死んだって勘違いしちゃってるだけです!」

 

僕は口が下手だ、言いたいことを言えてる気がしないけど、それでも、あの戦いに勝つには妖夢さんが必要なのは何となくわかる。だから、って言うのも勿論あるけど、僕は妖夢さんを助けたい。助けなきゃいけない、そんな気がするんだ。恩返しの思いもある、けど、泣いてる女の子を助けようとしないのは間違ってると思うから。

 

「・・・・・妖夢さん、行きましょう。皆を助けるんです!!」

 

どう言葉をかければいいんだろう、妖夢さんは涙に濡れた顔で困惑した表情をしている。・・・・・ふと、妖夢さんの隣を見れば、長い刀が地に刺さっていた。記憶のピースが重なりあう。

 

「妖夢さん、その刀・・・・・その刀のもう片方!白楼剣は!?それがあれば皆を助けられるかも!」

 

白楼剣、たしか・・・・・・・・・・あれは・・・・・!

 

「白楼剣・・・・・知ってます、何処にあるか、知ってます・・・・・」

「妖夢さん!?」

「向こう、向こうの屋敷に・・・・・っ!?頭が!?痛い・・・・・!!ノイズが・・・・・!」

「ここで待ってて下さい!僕が白楼剣を取ってきます!!」

 

僕が白楼剣を取ってくれば妖夢さんを助けられるかもしれない!

 

走る、走る、走る。妖夢さんが指さした方向へと。

 

──リリルカ・アーデ

 

「っ!?」

 

急ブレーキを掛けて立ち止まる。視界の端に確かに見えたリリの名前。でも今は白楼剣を取りにいかなきゃ・・・・・。・・・・・!!

 

「ベル様・・・・・?死んで、しまったのですか?」

 

後ろからリリが話しかけてくる。・・・・・なんで?目が覚めて・・・・・?

 

「ベル・・・・・お前まで・・・・・糞が・・・・・アイツのせいで・・・・・」

 

ヴェルフまで・・・・・?

 

「まっ待って!二人共死んでなんか無いから!」

「「「「アイツのせいだ、アイツのせいだ」」」」

 

墓からボコボコと冒険者達がはい出てくる。口々に恨みの言葉を呟きながら辺りを見渡す。僕の声が届かない・・・・・!!

なんで急に目覚めた?妖夢さんがこっちに来たことで西行妖が少し目覚めたとか?それとも単純に妖夢さんへの恨みで目を覚ました??

 

「ベル、アイツは・・・・・魂魄妖夢は何処だ!!」

「うっ!ヴェルフ落ち着いて!!」

 

駄目だ、このままじゃ・・・・・!!ごめん!ヴェルフ!

 

「ぬうぉ!?べ、ベル!!」

「ごめんっ!!」

 

ヴェルフを蹴り飛ばし、僕は走る。そんな時中央の木が軋むような音を立てた。

 

「「「「あそこかっ」」」」

 

冒険者達が中央に向かって走り出す。ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!早くしないと、早くしないと!速く!速く!速く!!

 

「こっちへ来なさいな」

「ふぇ!?う、うわああああ!!!」

 

 

全力で走っていたその時。不意に足元が開いて、目玉だらけの空間に僕は落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぅう・・・・・痛たた・・・・・っまた気絶!?僕気絶多くない!?」

「うふふ、目覚めて一言目がそれなのね。」

 

目を開いて知らない天井であることを確認して、起き上がると腰を打っていたのか若干痛い。そしてこんな大切な場面なのにまた気絶だよ・・・・・と自虐してたら良くわからないけど綺麗な女の人達に囲まれていた。

 

「ファ!?ふぇ!?」

 

クスクス笑う彼女達だけど、僕は木の天井であることを思い出した。あの場所で天井があるなら妖夢さんの言っていた場所の可能性も高いんじゃないか、そう思って僕は急いで体制を直して向き直る。

 

「こここ、こんにちは!あ、いやおはようございます?」

「えぇ、こんにちは。焦らなくても良いのよ?」

「ほら、お茶上げるわ」

「あ、ありがとうございます・・・・・ってさっきの着物の人!?」

「あら~バレちゃった?」

 

いや、目の前にいればそりゃあバレるでしょ。なんてツッコミは押し込んで、僕は早速本題へと入ろうとする。

 

「そ、それで、妖夢さんの為に白楼剣を貸していただきたいんですけど・・・・・いいですかね?」

 

あんまり美人なものだから正面から見ていられなくてチラチラと地面と顔とを交互に見る。クスクス笑っていた声は止まり、怪訝な雰囲気が僕の肌を刺した。

 

「・・・・・妖夢?・・・・・あぁ・・・・・そういうこと。」

「あらあら〜」

 

妖夢さんの知り合いなんだろうか?でも、それなら貸してくれる可能性も上がるかも。

 

「・・・・・えぇ、イイわよ?」

「ホントですか!?」

「ええ・・・・・・・・・・貴方が英雄であるならね。・・・・・妖忌」

「・・・・・へ?」

 

ガラッ、と襖が開いた。そっちを見れば白髪混じりの銀髪の男の人が立っていた。見れば手には刀を持っている。

 

「準備は出来ております。・・・・・さぁ、来い。」

 

その目が余りに鋭くて、僕の心臓が縮み上がるかと思ったけど、妖夢さんは今不味いことになっている、此処で止まるわけにはいかない。

 

「・・・・・はいっ!!」

 

廊下を歩き、橋みたいな奴を渡って、縁側を進み、中庭へと出る。ここまで来るだけでも少し時間がかかった。どれだけ広いんだこのお屋敷・・・・・。ってかさっきから見える白い浮かんでるのってやっぱり魂!?怖い!!ハルプさんは人の形に成れるから怖くないけどやっぱり不気味だよぉ!

 

「・・・・・・・・・・好きな得物を取れ。」

「は、はい!」

 

棚のような物が中庭に用意されていた、そこには刀を初めとした様々な武器が担い手を待っていた。

この中から武器を?僕の武器は・・・・・な、ない!?どうやら何処かで落としたらしい・・・・・。

 

「・・・・・ふむ、短刀か・・・・・それも2本。」

「はい・・・・・妖夢さんから教わったスタイルです・・・・・」

「ほう?それは期待しても宜しいかな?」

「ゴクリ・・・・・はいっ!!」

 

・・・・・戦いがはじまる!












はい、という訳でいきなり東方世界に突入しました。ここで西行妖について、

この魔法【西行妖】の効果は『自殺させる』ではありません。あくまでもオマケの効果です。対象を内部から引き裂き、更に締め付けて血を絞り取るのもオマケ効果です。

体が勝手に動いてしまうと言う状況ですが、食らった人によっては個人差がありますよね、それは現世にどれだけ執着しているかにより症状に変化が現れているのです。
オッタルの様にとてつもない執着(フレイヤ様prpr)があるならば、自分を殺す前に腕をへし折るなりして防ぐ事が出来るわけですね。ですが気をつけないと自分で舌を噛みちぎるのであまり話さないことをお勧めします。

もちろん他にも防ぐ手立てはあります、あくまでもオマケ効果なので結構防げる人は居ます。それと神様には自殺効果は聞きません。

ダンまち世界で言うならば呪術に近い特性を持っている西行妖ですが、それを考えて作ったりしてはいないので・・・・・呪術め・・・・・妖夢のステイタスが完成した後に原作で現れおって・・・・・。付けたかったなぁ。寧ろ西行妖を呪術に・・・・・まぁもう遅いですが。

呪術に似た特徴は「本人の意思に関係無い」強制的なデバフ付与ですね、無意識的自殺行動、そして魅了。死ねばそのまま“魔法の西行妖”に食われ、死なずに気絶すれば他世界に引きずり込む。

絶対に殺してやるぅ!と言う意思を感じますね!

ですがご安心を。まだ本命は残ってます。

オマケ「西行妖を発動するまでに必要な詠唱、必要な過程」

まずは妖夢の第一魔法【白楼剣or楼観剣】の楼観剣を詠唱。

【幽姫より賜りし、汝は妖刀、我は担い手。霊魂届く汝は長く、並の人間担うに能わず。――この楼観剣に斬れ無いものなど、あんまりない!】

唱え終わったら薬で魔力回復。そして第三魔法を詠唱。

【覚悟せよ《英雄は集う》】

第三魔法の効果を発揮させるために、行いたい技を詠唱文に起こし詠唱します。同時詠唱が必要なのでハルプを召喚。技は「一刀修羅」を選択

【男は卑小、刀は平凡、才は無く、そして師もいない。頂き睨む弱者は落ちる。その身、その心、修羅と化して。
《此度修羅は顕現す、修羅、一刀にて山、切り崩し、頂きは地へと落ちる。時過ぎし時、男、泥のように眠る》】

詠唱が終わったならば制限時間1分以内に第二魔法【西行妖】を詠唱しましょう。

【亡骸溢れる黄泉の国。
咲いて誇るる死の桜。
数多の御霊を喰い荒し、数多の屍築き上げ、世に憚りて花開く。
嘆き嘆いた冥の姫。
汝の命奪い賜いて、かの桜は枯れ果てましょう。
花弁はかくして奪われ、萎れて枯れた凡木となる。
奪われ萎びた死の桜、再びここに花咲かせよう。
現に咲け───冥桜開花。西行妖。】

さて、まだまだ続きます。ここからは花を咲かせなくてはいけません。魔石を1つ砕けば1つ花が咲くと考えてください。
そして、満開まで咲いたら隠し詠唱です。

はい、無理ゲー臭がすごいですねぇ、だって一刀修羅のデメリットを2倍にして受けている状態ですから。



それと。

─────此処は地獄だ。の部分は冥界の事を指しているのでは無く、戦場を指してます。わかりづらいので一応。

さて、冥界からの脱出をしなければゲームオーバーです、主人公はアテにならないぞベルくん!頑張って妖忌を倒すんだ!

・・・・・ちなみに本気の妖忌はこの小説の妖夢でも無理ゲーなので気をつけるんだぞ!

なんだか批判が多そう・・・・・なので、明日続きを投稿します、連日投稿だぜ。

誤字脱字報告、コメント待ってます!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。