オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

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詰み。果たしてそれは何を表しているのか。

戦いの終わり?

否。

戦闘は終わらない。恐らく、永遠に。

故に。

詰みなのだ。

彼が魔法を紡ぐまで、この戦いは詰み続ける。












52話「生存率が一番高い?これの何処が!?」

森の先、聳える壁から水晶が伸びて来た。それも音速を超える速度で。狙いはタケミカヅチであり、それは完全な不意打ちであった。

 

「ぐぅうう!!!」

『タケこっち来て!』

 

しかし、その攻撃に妖夢が刀を合わせ、ハルプがタケミカヅチを抱き上げ全力で撤退する。

 

「ぐっ!!」

 

刀を合わせ防ごうと力んだ妖夢であったがいとも簡単に吹き飛ばされる。地面を数度跳ねるようにし森を抜けたあと地面を滑りながら着地する。

 

「■■■■■■■■―!!!」

「っ!?危なっ・・・・・がはっ!?」

 

しかし、着地したそこに待っていたのは黒いゴライアス。横から殴りつけられ妖夢が吹き飛んでいく。防御に使った大刀が破壊されたのかキラキラと光を放っていた。

 

「ぁ・・・・・か・・・・・はっ、い、痛ぁ・・・・・」

 

壁にめり込むように激突した妖夢が高くなった視点から戦場を見渡すと・・・・・・・・・・衝撃の事態に気がついた。

 

「ぇ・・・・・?ゴラ、イアスが・・・・・2体(・・)・・・・・?」

 

黒と白。

 

相反する色が目に入る。錯覚等ではない。見れば互いに違う特徴は見られるからだ、黒いゴライアスは別段何も変わっていないが、白いゴライアスは背中から大小の水晶を生やしている、最も大きな水晶で2m程だろうか。更には足や腕など攻撃や防御に用いる部分も水晶に包まれていた。

 

「かはっこほっ・・・・・まだ、行けます。」

 

喉につっかえる痰の絡んだ血を吐き出し、妖夢が埋まり込んだ壁から出ようと身動ぎすると、2体の巨人はその首をグルリと妖夢に向けて反転させた。そして

 

「■■■■■■■―ッ!」

「□□□□□□□――ッ!」

 

同時に咆哮を放った。その光景にやや慌てながらも虚刀流で邪魔な岩を切り裂き、どうにか脱出する。そして先程まで埋まっていた場所が轟音と共に吹き飛ぶ。

 

「・・・・・水晶を、扱えるみたいですね、白いゴライアスは」

 

頭から血を流し、少し呼吸を乱しているが妖夢はまだ動ける。妖夢の見る先には咆哮により抉られた壁と、その中央に大きく聳える水晶。水晶は先程まであそこにはなかった。・・・・・つまりは白いゴライアスは水晶を使って攻撃してくるのでは。と妖夢は考えた。そして、それは当たっている。

 

「・・・・・スペアの刀で事足りるわけありませんが・・・・・魔法のタイミングを逃す訳にも行かないですし・・・・・」

 

戻ってきた半霊から適当な刀を取り出し装備する。ステイタスの大幅な上昇が見込める二刀流だ。漲る力を感じながら、妖夢は戦場に飛び出した。

 

綺麗。

 

そう言って差し支えないだろう光景が広がっていた。水晶がこれでもかという程乱立しているのだ。今太陽が出ていると伝えてくれるそれらは光り輝き、階層中を照らし出す。

 

そして悲惨。

 

眩い光は容赦なく冒険者達の視界を奪った。見えなくなった訳ではなく、視界が狭くなってしまった。それに障害物としても有効だった。水晶が有るだけで弓や魔法の攻撃は躱されやすくなってしまう。

そして、水晶の真下から地が赤く滲んでいることから、あの水晶は突き出てきたのではなく、降り注ぎ突き刺さったことがわかる。

 

――――――――現在、死者5名

 

 

秒間2発の間隔で放たれる咆哮が巨大な結界に阻まれている。リーナの張った結界だ。今までとは違い円形では無いため新しい物だろう、効果は恐らく「結界に触れた物の魔力を解く」などのものと思われる。魔力による攻撃は通さないが、先程のように魔力と関係ない水晶柱は防げないらしい。

最も現在はその驚異となる咆哮は全て妖夢へと向かっているが。

 

「【国之狭霧神!!】」

「リーナ・・・・・ありがとうございます。」

 

妖夢が吹き飛ばされてから既に詠唱を始めていたのだろう、妖夢に結界が展開される。妖夢の場所からではリーナが豆のように小さく見える、それでもリーナが珠のような汗をかきながら懸命に魔法を制御していることが伺えた。

決して聞こえないであろう音量でお礼を述べる。そして低い体制で構え、攻撃が来るのを待った。

 

「■■■―!!」「□□□□□□□□□――――ッッッ!!」

 

単発の咆哮と、薙ぎ払うようにして放たれる結晶咆哮(クリスタル・ハウル)とでも言うべき咆哮。

 

「くっ!」

 

真横に回避し、咆哮は躱した。しかし、下から津波のように、剣山のように突出して来た結晶を防ぎ切れず全身を切り裂かれる。肩や腕、腿や頬、脇腹等に傷を負ったまま妖夢は構える。

 

「剣伎「桜花閃々」!!」

 

紡ぎ使ったのは元から持っているオリジナルの技。霞むほどの急加速で接近し、通った道筋は斬られ大量の桜弾幕を撒き散らす。

 

「転生剣「円心流転斬」!!」

「□□□!?」

 

一瞬にして距離というアドバンテージを埋めた妖夢は白いゴライアスの足元で刀を構えていた。技名を叫ぶと同時に技を繰り出す、連続斬りからの斬り払い。斬り払いながら横に抜け、黒いゴライアスが白いゴライアスに重なるように移動する。こうする事で1体1の状況を作り出す。

 

「断迷剣「迷津慈航斬」!!」

 

両足を斬られ転んだ白いゴライアスに霊力をつぎ込む事で巨大化させた刃が襲いかかる。魚を3枚におろすように横薙ぎに振るわれた巨大な刃は白いゴライアスを真っ二つに切り裂いた。

 

「これで・・・・・!!」

「■■■■――!!」

 

露出した魔石に止めの一撃を加えようとしたその時、黒いゴライアスがまるで仲間を守るかのように強引に割って入った。後方に一旦下がった妖夢だが、白いゴライアスは既に全回復して立ち上がっている。

 

「くっ・・・・・霊力をだいぶ使ったのに・・・・・!」

 

黒と白の都合4本の巨腕による大砲連射を縮地や鮭飛びでなんとか躱しながら、妖夢は考える。

 

「(アイズ達は何処に・・・・・?)」

 

いま白黒ゴライアスと戦っているのは妖夢だけだ。・・・・・そして気が付くだろう、天井から降り注いでいたモンスター達が、先程白いゴライアスが現れた壁からも溢れ出ている。

 

壁と天井からのモンスターの大量発生に、第一線級冒険者達が対処に駆り出される事態となった。最早それはモンスターの川。妖夢から見えるだけでも既に300は軽く越えているだろう。

 

援護しなくては、そう思い弓を創り出すも、白と黒のゴライアスの猛攻が援護射撃をさせてはくれない。このままでは物量で押し潰される。

 

妖夢はガリッと歯を噛み締める。

 

「生存率が一番高い?これの何処が!?ぐっ!」

 

よそ見は出来ない、自分が死ねばこのゴライアス達は家族の元へ突撃し、前線は簡単に崩壊するだろう。ハルプを援護に出すかを考えた妖夢だが、今このタイミングで意識の分割は「痛い」。

相手はレベル5、もしくは6。それが2体。対して妖夢のレベルは3。

 

戦力差は・・・・4倍、なんて簡単なものでは無い。まずこの世界において自分よりもレベルが高いモンスターは倒すことが出来ないのが常識だ。

 

さらに、数の差も2倍だ。

 

それを1人でどうにか抑えている現状は正に奇跡だろう。その中で意識まで半分にするなど正気の沙汰ではない。

 

しかし、援護しなくては高レベルの冒険者達はこちらに駆け付けることが出来ず、魔法の詠唱を始められない。魔法が発動できなければあの黒いゴライアスは殺せない。魔法を発動できれば白いゴライアスも倒せる可能性がある。

 

つまり、今この現状は・・・・・・・・・・詰んでいる。しかし、まだ解消できる詰みだ。どうにかしてモンスターを一時的に減らしさえすればいい。

ただそれだけのこと。

 

しかし、魔法を放つには霊力と魔力が必要だ。現状全く足りていないその二つが。無駄遣いは出来ない、一刀修羅で十倍近く増やすとしても、増やす前の数値が小さければ意味は無いのだ。

故に多くの魔力や霊力を使う広範囲攻撃も使うのは気が引ける。

 

「うわっ?!」

 

白いゴライアスの攻撃を回避するが、その拳は水晶に覆われていた。着弾と同時に周囲に鋭く尖った水晶がショットガンのようにまき散らされる。自分に当たりそうな水晶を全てたたき落とすが、これでは反撃が出来ない。さらに、黒いゴライアスの攻撃が。

 

「埒が・・・・・明かない!」

 

再び連続の攻撃を受け、妖夢の姿が土煙に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおおおぉおおおッ!!」

「はあああああッ!!」

 

槍を、斧を、一心不乱に振り回す。敵、敵、敵、敵、敵。眼前に広がるすべては異形の怪物。自らの持つ得物をただ振り回し続ける。体は既に傷だらけ、腕は微かに震え、握力が失われ始めている。

 

「グルルルゥルルウオオオオ!!」

「右翼を援護してくれ!!お願いだぁあ!」

「リーナぁぁあ!!援護を頼むッ!!」

「た、助けて団長!!やっ!やだ!!きゃぁぁぁぁあ!!」

「!?くそ!誰が穴を埋めろ!!マシュー!!」

「は、はいぃ!?」

 

飛び交う怒号、飛び交う悲鳴。やや弧を描くように1列に並ぶ戦列。そこに津波のように押し寄せるモンスター。また1人、戦列から孤立し、モンスターに貪られた。

 

「すまんっ・・・・・!!」

 

タケミカヅチもまた、刀を全身全霊で振るっていた。その身に傷は無くとも、消えていく自身のさずけた神の恩恵に心を酷く痛めた。

 

「千草っ、大丈夫か!?」

「う、うん。・・・・・まだ、まだ撃てるよ!」

「・・・・・頼むっ!」

 

タケミカヅチを除く殆どの冒険者が傷を負っている。モンスターに引っ張られず、深い傷を負った者は猿師によって傷を癒されている。

 

「アリッサ!!まだ行けるか!!」

「ぐぅっ・・・・・!!あぁ!まだ行けるぞ団長!!」

「わかった。・・・・・全員!!堪え忍べ!!」

「「「「「おう!」」」」」

 

そんな時、モンスターが吹き飛ぶ。それは希望の降臨だった。金、銀、黒など、様々な色が舞い踊る。

 

高レベル冒険者、彼らの登場だった。

 

あっという間にモンスターの大群が崩壊し、一時的にこちらまでの到着に空白ができる。

 

「おう、わりぃ、遅れた。」

「いや、ありがとうベート・・・・・助かった」

「助けにきた、よ?」

「みんなー!だいじょーぶー?助けに来たから安心してねー!」

「皆さん戦列を崩さないで。行きますよアスフィ」

「はぁ〜。疲れますが、非常事態ゆえ仕方ありませんね。」

「死なないモンスターは珍しい、骨が折れるな」

 

【凶狼】【剣姫】【大切断】【疾風】【万能者】【猛者】。なんと言うメンバー。国でも落とすのかと言いたくなるほどの面子だが、それが何よりもその他冒険者からすれば嬉しかった。

 

気が付けば再びモンスターが眼前まで迫っている。大半を片付けても一言交わせばいつの間にか大量に現れている。

 

【不死の階層主】と【無限に湧く怪物】。決して、先程並べた冒険者達に劣らない最悪。

 

「ったくよぉ。・・・・・ん、死んだか、何人か。」

「・・・・・あぁ。」

「へっ、雑魚が。「なんだと貴様!」黙れ鎧女。・・・・・てめぇら、提案がある。リヴィラまで撤退して籠城するんだ、そうすりゃお前らだけでも生き残る位できるだろ。」

「さっきまでは戦力不足でな、足を止めて受け止めるしか方法がなかった。だが、今なら撤退もしやすくなっただろう。」

「まて貴様!先の発言を撤回しろ!」「だーまれ黙れ。モンスター来てんぞ」「ちぃ!どけぇ!!ダァァクパワァー!」

 

闇の波動の様な物がアリッサから前方に広がり、モンスター達が眩暈を起こしたようにふらつく。そこに高レベルの冒険者達が飛び込み、敵の前線を粉々に打ち砕いていく。

 

「撤退だぁあ!!撤退しろ!!リヴィラまで戻り立てこもるぞ!背を向けるなよぉ!」

「た、退却ぅ!!!リヴィラまで退却ぅ!!陣形は崩すなぁ!!」

 

これを機と見たタケミカヅチのよく通る声が冒険者達に指示を飛ばす。隣にいたマシューがその大きな声で全体に更に指示を飛ばす。

 

総勢30名程の冒険者達がリヴィラへと撤退を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒険者達が移動を始めたのを見た猿師は、座り込み目を閉じ、珠のような汗をかきながらも魔法を制御し続けているリーナに声をかけた。

 

「大丈夫でごザルかリーナ殿。」

 

返事は無い、荒く細かい息遣いと、胸の前で祈祷のように握りこまれた両手がわずかに震えるのみ。

 

「・・・・・そうでごザルか。さて、拙者は患者を運ぶとするでごザルか。」

 

地面に寝かされている冒険者は数十人。彼らはリヴィラの者達とモンスターにやられたタケミカヅチ・ファミリアの者達だ。もうすぐタケミカヅチを先頭にここまで戻ってくるであろうが、少しでも多くの患者を移動させておいた方がいいだろう、そう考え患者達に近付くと。

 

「まって・・・・・、猿師、さん。僕、頑張る、から、あと少し、もう少しこっちにみんなが来ればっ・・結界は外しても平気な筈・・・・・!

大丈夫、もう誰も!死なせないから・・・・・!」

「・・・・・・・・・・・・・・・信じましょう。その心意気。拙者、猿飛猿師――――」

 

バキバキ、と壁が割れる。何かが生まれでるのだろう。猿師達のすぐ後ろの壁だ。

 

「微力ながらこの力を尽くしましょうぞ。」

 

出てきたのは十数体。眠っている冒険者を殺すには少々多すぎるが下の戦いを見ていると少なく感じてしまう。飛びかかってくるモンスターに何らかの薬を投げつけるとモンスターは鼻を抑え転がり回る。そこに忍術を放ち、爆発。

 

クナイを投げつけ、短刀で斬りかかり、蹴りあげ空中に吹き飛ばしたところに忍術で追い討ち。少しだけぎこちないものの、その戦い方には年季が入っており、頼りがいがあった。

 

3匹のミノタウロスが同時に猿師に襲いかかる。ミノタウロスの攻撃が確かに猿師に当たったと思われたが、そこには「ハズレでごザルよ(笑)」と書かれた可愛らしい猿の絵が落ちているだけだ。

 

ミノタウロスがそれを理解し、探そうとした時、背後から猿師が短刀を持って飛びかかる。首を刺し、そこから抉り、殺す。ほかの2体にクナイをなげ、そのクナイには毒が塗られていたのかミノタウロスは体を震わせながら倒れた。

 

「ふぅ・・・・・ガリッボリっ。不味いでごザルね」

 

脇腹をやられているのか血が滲んでいる、丸薬を噛み砕き、リーナの元へ。

 

「これを舐めるでごザルよ。魔与の丸薬でごザル」

「ん、あり、がとう。・・・・・不味いね、これは」

 

汗に濡れた顔で、ニヤリと笑う。状況と味、両方不味かったからだろうか。そして、リーナが目を開く。

 

「よし、一つ解除!ふあぁ〜疲れたぁ〜。・・・・・よし、次も解除。ふぃー、だいぶ余裕が出来たよ。四つ程度なら話す余裕もあるしね。さて・・・・・僕はまた魔法を使うよ。みんなが来たら呼んできてくれないかな」

「・・・・・承知したでごザルよ」

 

しかし、開かれた目に余裕は無い。猿師は理解した、彼女は今、トラウマを行おうとしているのだと。

 

「・・・・・頑張るねぇ。彼女も」

「そりゃそうさ、ヘルメス、僕だって戦える力が有るなら戦っているよ」

「ヘスティアが?ははは!・・・・・マジで?」

「なんて失礼なんだ君は!?」

 

 

 

 

 

 

 

いったぁ・・・・・・・・・・・・・・・、ちくしょう・・・・・。

 

また壁に叩きつけられ、俺は呼吸が出来ずに苦しんでいた。

 

おうふ、息が、出来ない・・・・・!

 

叩きつけられた衝撃が強すぎて肺から空気が抜けてしまった。俺は刀をふってどうにか脱出したが、片腕が折れている。

 

やばいかこのままだと。けど、ここを降りる直前タケ達が後退してるのが見えた。・・・・・少しだけ希望が見えてきたな。

 

あの撤退をどうにかして成功させればオッタルもベートも参戦できる。それまで、どうにかしてゴライアス達のヘイトを稼がなくちゃ。

 

本体はだめだ。片腕じゃあ出来ることが限られる。・・・・・霊力の消費があるけど、ハルプで行くしかないか。

 

『うっし・・・・・こっちなら怪我しても関係ないからな。』

 

本体を木に寄りかからせて戦場に飛び出す。

 

『そぉぉおい!!』

 

唐突に飛び出してきた俺に反応が遅れたのか、鈍い黒いゴライアスの腕を切り落とす。が、白いゴライアスの超反応で殴られて吹き飛ばされる、が、空中で半霊化し、黒いゴライアスの頭上でハルプ化、落下速度や重量も加えた龍槌閃で頭から足まで切裂く。

 

ほんの数十秒だが黒いゴライアスは再生に時間をかけることになる。だから今の内に全力で白いゴライアスを再生中の状態にすれば援護ができるはずだ。

 

『断迷剣「迷津慈航斬」!かーらーのー!空観剣「六根清浄斬」!!』

 

断迷剣で刃を巨大化させて、空観剣で分身。全員で巨大化した刀を思いっきり振り下ろす。両手両足、首胴体を全部吹き飛ばす。よっし!今しか援護できない!

くるりと反転しながら弓と矢を作り出す。

 

『・・・・・はあっ!!』

 

40本。多次元屈折現象を利用し4人で放つ、合計160本の矢が階層中にばら蒔かれ、モンスターを貫き、そして爆発した。

 

『よし!これであがっ!?』

 

後ろから黒いゴライアスに殴られた俺はポンッと言う呆気ない音で半霊に戻される。つまり、妖夢は1発でも直撃すれば即死って訳だ。

 

ハルプ化しながら2体の正面に位置取る。場所的にタケ達は俺の後ろの方角にいる事になる。つまりベート達援軍が来るのは後から。

 

出来れば、もうそろそろ俺は戦線を引いて魔法を詠唱したい、だってそうしないと倒せないらしいし、とりあえず本体に戻って動き始める。

 

どうやらこちらの思惑は皆にも伝わったらしく、ベート達がこっちに向かってくる。そして数秒で俺の元まで到着する。

 

「妖夢!!無事か!?」

「はいっってええ!?ベート!?本物ですか!?」

 

ベ、ベートが俺を心配してるだと!?ありえない・・・・・これは白ゴライアスの新しい技に違いない。

 

「あわわわ、白いゴライアスは幻術を使うのですか?!あのベートが人の心配をするなんて!?」

「ああ!?何言ってんだボケ!自分の傷見てからいえ!」

 

おっと、たしかにそうだった。全く言い返せないぞこれは。もうボロボロですからねははは。・・・・・血が入って片目が使えなかろうが片腕が使えなかろうが関係ない、魔法さえ使えば倒せるなら、殺るしかないんだ。俺が、俺しか出来ないから・・・・・!!

 

「ししょー、これ」

「あっ万能薬ですか、ありがとうございますっ」

 

あ、はい。全ての怪我完治ですわ。俺の決意を返せ。そしてベートてめぇにやついてんじゃねーぞ!まぁいい!本当にいいとして、こっからは少し皆にも説明しなきゃいけないな。

 

「・・・・・・・・・・極めて重要な話があります。これはあの不死を殺せるかもしれない、いえ、絶対に殺せる方法の話です」

 

誰かがゴクリと唾を飲んだ。あれだけの化物を殺せる何か、それを俺が持っているからなのか、それともだただ単に緊張からなのか。

 

「・・・・・それで、その殺す方法ってのは?」

「ししょーのスキルでわかったの?」

 

はい。と答えてゴライアス達へと向き直る。2体のゴライアスはオッタルが1人で受け持って時間を稼いでいる。

 

「私の魔法です。私の魔法ならあの二体を殺せます。」

「魔法・・・・・もしかしてっ!あの木を生やす魔法!?でもあれって相手から木を生やすだけじゃないの?」

 

ティオナが速攻で正解を当ててくる。流石ですわ。だけど、恐らくこの魔法の真の効果は・・・・・「相手は死ぬ」だと思う。

 

「この魔法は、まだ成功した事がありません。戦争遊戯の時は詠唱が途中で中断されて爆発してしまったのです。」

「・・・・・え?・・・・・あれって失敗だったの。」

「はい。効果はタケが私に隠しているのでわかりませんが・・・・・恐らく名前を冠する物から考えるに、相手を殺す。という効果でしょう。タケもこの魔法なら奴らを倒せると言ってくれました。」

「・・・・・じゃあ私達はししょーが詠唱している間守ればいいの?」

「はい。・・・・・ですが、先程も言ったように、まだ詠唱を最後までしたこともないのです、何が起こるかはわかりません。」

「んなもんその場その場で対応するしかねーだろ。ガキは難しく考えないで詠唱しやがれ。」

「ふふ、わかりましたベート。うっかり巻き込んでもベートのせいですね!」

「はぁ!?巻き込まない努力をしやがれ!」

「・・・・・はいっ」

「お、おう。」

 

 

・・・・・だが、この魔法を使っても良いのだろうか?ゴライアスが倒せる。それしかわかっていない今、他に何かを失うかも知れない・・・・・いや、だが、それでも・・・・・

 

詠唱しなくては。












いやー、まだまだ戦闘は続くのです。ここでゴライアス達についてまとめておきましょうか。まぁ本文で登場したものだけです。登場してない能力は?で書きます。

【黒いゴライアス】

・高ステイタス
・魔石を砕かれても破片や魔素が収束し凝縮され、再び魔石となる。
・魔石が移動する。
・超再生
・???

【白いゴライアス】

・高ステイタス
・結晶を纏っている
・結晶による追加攻撃及び長距離攻撃。
・咆哮が結晶属性
・???

となっています。まぁ見ての通り白いゴライアス通称シロゴラさんは不死身ではありません。

それとリーナの実力について

リーナ「ほいほい、僕だよ、リーナだよ」

リーナの最大結界展開数・・・・・同時に制御できる結界の数は6個です。はい、化け物です。

リーナ「化け物では無いよー、可愛いエルフちゃんですよー」

【魔道】のアビリティを持っていると、魔法の安定性と共に破壊力が増すのです。
が、リーナはそこに加え、霊力による安定化も合わせています。はい?と思う方も居るでしょう、ですが相当前に主人公が霊力の方が扱い易く爆発しにくいと説明しているので、裏付けになる・・・・・かな?と思ってます。

リーナ「凄いだろぉ!」ドヤァ

つまり少量の霊力も練り込むことで魔法の安定力を増加させています。霊力が生まれつき高く、巫女として生活した事もあるリーナが考え付いた運用方法です。
しかし、そもそも魔力に霊力を混ぜるという方法事態が難易度が高い事、霊力を扱うには才能が必要な事としっかりとした扱い方を習う必要がある事、極東を除いて一般的に霊力と言う概念が知られていない事など、結果としてこの方法を使うのはリーナだけです。

リーナ「ふふん、つまり僕は最強ってことだねッ!」

ただし弱点として制御数が増える事に負担が増えていくため、5つ以降は最早話すのも辛い状況になります。

リーナ「それは・・・最強故のハンデと言うか・・・・・」

次の話ではもっと負担が増えることでしょう。

リーナ「ぇ?・・・・・」

最強ですから問題ないそうです。

リーナ「・・・・・Zzzzz」
ダリル「逃げたっ!?」



それと遅くなって申し訳ありません、リアルが忙しく執筆の時間が取れませんでした。

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