オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

36 / 91
36話「私はリリルカの事、好きですから」

「専属契約?」

 

タケが疑問符をつけながら首を傾げる。

 

「いったい誰と結んだんだ?」

 

どうやらタケは誰と専属契約を結んだのか気になる様子。まぁ一番重要な所だからね。

 

「ヴェルフと言う人ですよ」

 

ふむ、と言って目を閉じ、しばらく考えるタケ。ダメなのかな?

 

「まぁいいか。実は直接契約をしたいって鍛治師達が沢山居たんだがな・・・」

 

え"・・・・・・で、でも、原作キャラのヴェルフの方が思い入れがあるし・・・それに、並の鍛治師よりも腕はいい。ネーミングセンスが無いだけで他は良いんだよ他は。

 

「ええ、すみません。とりあえずハルプでヴェルフには連絡しておきます。・・・・・・今日のこの後の予定は・・・」

「・・・外に押しかけてきた彼等の処理・・・だな。」

 

おうふ、ですよね。・・・現在、俺達タケミカヅチ・ファミリアは四つのホームを持っている。エロス、ヘカテー、ダイチャンが使っていたホームだ。売っても良かったんだが、俺が持ちかけた提案に皆が乗った事で売られずに済んでいる。

 

持ちかけた提案と言うのは、『住み分け』だ。俺達は今まで通り此処に住んで、これから入る人達は他のホームに住む。だいぶ飛び地だから大変ではあるが・・・。最初は近くの建物を購入しようと思っていけど、近くの空き家が無くてこの案になった。

 

ファミリア内の地位的な意味でいうなら此処は幹部の家みたいな感じかな?

それぞれの建物の規模を考えるに最大で1000人位の団員が入れるんじゃないかな、嫌だけど。流石に人数多すぎるのは困る。なぜって、ファミリアのランクが上がりすぎるとギルドに支払う金額が大きくなるから。

 

現在の総資金は戦争遊戯で勝利し、エロス達から奪った・・・勝ち取った5億ヴァリス、人質を救ったことでギルドからのお礼のお金2千万ヴァリス。後は元からあった500万ヴァリスだ。あとはヴァリスに換金されていない宝石とかも全部売れば1億は稼げそうだ。

 

そんな事を考えながら外に出てみる。

 

うへぁ、なんじゃこりゃ。

 

ワイワイ、ガヤガヤ、ヒソヒソ、ウマウマ。視界に広がるのは人、人!人!人しかいない!んー、殆どが冒険者、かな?武器持ってるし鎧着てるし。・・・おっ、あの人はきっと薬師志望だろう、白衣着てる。てかおい、俺を指さすんじゃない、失礼だろ。

 

「おいみろ!」「うわぁすげぇ、初めて生で見た」「可愛いな」「でも強いんだろ?」「そりゃもうすごい強いぞ」

 

とかなんとか言ってるよ。少し恥ずかしいな、まぁいいか、じゃあ始めよう。

 

 

「では皆さん。キチンと1列に列んで下さい。」

 

ザワ、ザワザワ・・・。と人の塊が動く。最前列が一列になれば、後ろの人達が自惚れじゃなければ俺を見ようと列を外れる。それに釣られて・・・と言った感じで列は一列になかなかなってくれない。

 

とりあえずしばらく待ってみることにしたが・・・全然一列になってくれないので部屋に飾ってある模擬刀を引き抜く。・・・一列になった。模擬刀の力ってすげー。まぁ列んでくれたのでニコリと笑っておく。・・・あれ?なんかさらに綺麗に列が・・・。ま、まぁいいか。

 

「はい、綺麗にならべていますね。では三人ずつ入ってきて下さい」

 

 

その後は俺、タケ、桜花、猿師の四人で面接官をやって、命と千草、それと応援に駆けつけてくれた清美さんが外で列を管理してくれている。

 

うーむ、公平な目で見なきゃな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つ、疲れたー。思ってたよりも多かったよ・・・。

 

「はぁ・・・疲れたな。」

 

タケもぐったりしている。疲れるよな、ひたすらやって来る人のやる気とかを聞いて質問を重ねる・・・1日で終わらせようとか無茶にも程があるってもんだよ。

 

「お茶を入れました、どうぞ飲んでください」

「ありがとうございます」

 

流石は命、気が利くね。にしても今回面接に来た人は200人を超えた、俺の予想では二三人だと思ったんだけどね。だってキュクロ達の怪我凄かったからさ、てっきり街の人からはドン引きされてると思ってたぜ。

 

ちなみにタケのお眼鏡に叶ったのはその内の80人位かな?そこから更に皆で篩をかけて少なくするらしい。

 

あ!そうそう!ダリルが来てたぞ!ビックリしたよおれ!ワンコが増えるのかー、でもワンコはベートが居るからね、あとジジさんも。猿とゴリラも居るし、猫は・・・・・・クロエさんか、あとオッタルは猪だろ?んー?あと居ないのは・・・って何やってんだ。

 

それにしてもダリルが来たのは意外だったなぁ、万能薬効いて良かったね。キュクロは「罰は受ける、それがなんであれ、悪を悪と認め事を起こしたのだから。」とカッコよく言っていたなぁ。万能薬使わないでエン・プーサとダリルに渡したのは個人的に凄い好感が持てたぞ。

 

にしてもやりすぎた気がしなくもない、いや、あれをやってなければ俺達が負けてたんだけど、それでもキュクロを見ると少し申し訳なくなる。謝ったら怒りそうだから言わないけど。

 

「さて・・・どう振り分けるか・・・。剣の館、弓の館、雷の館。此処にバランスよく振り分けたいな。」

 

タケがうむむ、と悩み始める。昔、まだこのホームを改造してない時は『仮住居の長屋(タウンハウス)』って呼んでいたけど、今は『武錬の城(ぶれんのやかた)』って変わってる。折角人が増えるなら変えようってなったからだ。

 

武錬の城は正直数十人が暮らすには狭い。一世帯が丁度いいくらいなんだ、だからここには振り分けない。

 

剣の館は元ヘカテー・ファミリアのホーム。弓の館が元ダイチャン・ファミリアのホーム。雷の館が元エロス・ファミリアのホームだ。剣の館と雷の館が北西方面、弓の館が東方面にある。

 

振り分けは本当に難しいな。最初は適当に振り分けるしかないだろう、性格とかわかってからじゃないと困ることも多そうだ。まぁ、性格はタケがある程度見抜いてるはずだから平気かも?

 

お金は取り敢えずあるから設備を揃えてあげる事も考えないとね。

 

 

タケが相変わらず唸っている。お盆を抱え正座している命と、千草と話し合う桜花。そしてそれを見る俺。・・・・・・ふふ、こんな時に感じるなんてな。・・・・・・・・・・・・守れてよかった、この光景を。この関係を。

 

「どうかしましたか妖夢殿、わらっていますが」

「えへへ、いいえ?何でもないですよ♪」

「ははは!なんか変だぞ妖夢」

 

こんなふうに皆で悩んで、皆で話して、皆でご飯を食べる。当たり前だけど、何よりも尊いもの。何よりも貴いもの。何よりも守りたかったもので、どんな物よりも大切なもの。

 

 

 

 

 

 

そして、守れなかったもの。失ってしまったもの。忘れてしまったもの。

 

 

 

けれど、こうして再び手に入れた。だから、守る、だから、無くさない、だから忘れない。だから俺は誓おう、何に変えても、この『絆』を守り抜くと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バベルの前、広間になっているそこで俺はベルとヴェルフ、あと多分リリルカも来るらしいので、噴水の近くでその三人を待っていた。

 

「・・・・・・」

 

ふむ、なんだろうか、この視線の数々は・・・。俺が視線の方向に顔を向ければ、視線は無くなるんだが・・・。てかさ、誰も周りにいないんだけど?遠くから俺を見てるだけで誰も近寄ったりしないんだけど・・・え?これ俺が悪いの?俺なんかしたの?

 

「・・・・・・」

 

は、早く来てくれヴェルフ達。そんな事を思っていると人混みの奥に大きなバックが見えた。おそらく、いや絶対にリリルカだ。

 

「ッ!!」

 

俺は全力で縮地を使用し、人混みを飛び越え、リリルカの前に着地する。

 

「へあ!?」

 

驚きの声を上げるリリルカ。そのリリルカを抱えた後再びさっきの位置まで跳躍して戻る。

 

「な!?ななななな!?何をするですか!・・・・・・って妖夢様!?」

 

「リリルカ、遅いです。待ちくたびれましたよ私は」

 

驚くリリルカにニヤリと笑いかける。悪戯が成功した時って嬉しいよね。後でどうせ怒られるとわかっててもさ。

 

「妖夢様が早すぎるんですよ!私はポーションやその他アイテムを補充していたのです。」

 

そう言われてしまうと何も言い返せないな、年甲斐もなく楽しみにして早起きしてしちゃったんだから仕方ないだろ。

 

「極東には早起きは三文の徳、という諺があります。早起きはいい事です。鍛錬も出来るしお料理も時間があれば豪華にできます」

 

「は、はぁ」

 

「まぁ今回は早く起きすぎただけですけど」

 

リリルカがガクッ!となった。カワイイやつめ。ほっぺとかつんつんしても良いかな・・・?いや、だめなきがする。

 

「ツンツンしないでください妖夢様」

 

っは!馬鹿な・・・考えるよりも先に体が動いていた・・・だと・・・?まさかリリルカのほっぺは半霊、藍の尻尾に次ぐ癒しポイントだという事か・・・!藍の尻尾触ったことないけど・・・!

 

 

 

 

「「「「い、癒される・・・」」」」

 

 

 

はっ!?・・・周りからの視線がすっごい優しくなった。いや、今までも微笑ましい物を見るような目線だったけど・・・ってああそうか、傍から見たら幼女がほっぺツンツンしてじゃれあってるだけだもんな・・・恥ずかしっ!止めよ。

 

「あっ!リリー!」

 

おーい、とベルが走ってくる。どうやら1人のようだ。そして、周りの人の視線に怯えるようにキョロキョロしながらくる様はまさに兎である。

 

「ベル様おはようございます!」

 

えへへーとリリルカがベルに近づいていく。ふむ、正しく女の顔だな。まじパルパルだわ、畜生爆発しやがれ。

 

「おはようリリ!妖夢さんもおはようございます!」

 

まぁしかし、この兎は爆発させないでおいてやろう。・・・・・・貴様を爆発するのは最後にしてやる・・・的な?

 

「はい。おはようございます、ベル・クラネルさん」

 

ベルが微妙な笑顔で俺を見ている。なんだ?礼儀正しい挨拶だと思ったが。・・・あぁ、なるほどな。もっと可愛くやらないといけない的な感じか・・・・・・ちっ、ハーレム主人公が・・・!

 

「ヴェルフさんがまだみたいですけど・・・」

 

ベルが周囲を気にしながらそう零す。ふっ、まだまだだな。俺は既にヴェルフを視認している・・・上から。

 

「ヴェルフなら北東方面から来ました」

「へ?」

 

ちなみに俺が向いている方向は西だ。なのに東からヴェルフが来ている・・・だなんて何言ってんだコイツって感じだろうな。

 

「ほら、今まさにコチラに声をかけようとしています。」

「おーい!ベルー!みょんきちー!」

 

うそ・・・。とベルとリリルカの声、くっくっく、この私に死角など存在し得ないのだよ。

 

「ん?どうしたんだよ驚いた顔して?まぁいいぜ、さぁダンジョンに行こうか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やってきました11階層!」

 

ヴェルフの威勢の良い声がダンジョンに小玉する。ここは11階層、霧に包まれる洞窟みたいな所だ。入口であるここは霧がほとんどないが、少し進めば霧に囲まれる。

 

しかし、俺とベル達の表情は浮かない。なんといっても此処は今までで一番死にかけた場所だ。べつに俺が弱すぎてオークに殴り殺されそうになったとかそんなんじゃない。オークの強化種、推定レベル4の怪物に襲われて、どうにか勝ちを勝ち取った、苦い思い出のある場所だ。

 

リリルカがこちらをチラチラと見ている。

 

「大丈夫ですよリリルカ。私はあの時より少しばかり強くなりました。・・・次はしっかり守ります」

 

安心してくれリリルカ。囮殿何でもござれ、俺に不可能は無いんだ。リリルカが安心するように笑いかける。

 

「ッ――!」

 

リリルカの顔がひきつる。・・・そうか、俺に対する罪悪感が抜けていないのか・・・。んー、どうすれば良いかなー、まぁ思ったこと言うくらいしか思いつかん。

 

「貴女達が生きていてくれて、私は嬉しいです。守ると約束した者を守る事が出来て、しかもランクアップまで出来ました。正に一石二鳥!」

 

リリルカが目を見開く。俺にはこんな事しか言えないが、それでも少し位の助けになるなら。喜んでしようじゃないか。

 

「だから大丈夫ですよリリルカ。」

 

壁にヒビが入る。ボロボロと壁が崩れ始めモンスターが生まれてくる。刀に手を掛ける。ベル達が漸く異変に気が付いた。刀を鞘に納める。

 

 

 

モンスター達がバラバラになって灰となる。全員が異変に目を見開いた。

 

「私はリリルカの事、好きですから」

 

照れくさい。けど、本当のこと。原作に登場したキャラに嫌いなやつは居ない。原作キャラだから、と言う差別をするつもりは無いけれど、初対面の人よりも好印象なのは仕方ないと思うのです。

 

 

 

 

 

 

「やってきました11階層!」

 

名前も知らない冒険者。彼はベル様が連れてきた新しい仲間、らしい。まだどんな人物なのかわからないが、少なくとも嫌な奴ではないかと。

 

ゴクリ。自然と唾を飲み込む。以前ここに来た時は大変な目にあったものだ。"血濡れのオーク"推定レベル4のオークの強化種。紅い身体に冒険者の物と思われる大剣を持ち、襲いかかってきた怪物。

 

チラリと妖夢様の方を見る。油断なく周囲に気を配り、直接手を出す事はせず、私の護衛役をしてもらっている。すると私が見ている事に目敏く気が付いた様で花のような笑顔をコチラに向ける。

 

「大丈夫ですよリリルカ。私はあの時より少しばかり強くなりました。・・・次はしっかり守ります」

 

「ッ――!」

 

妖夢様は知らない、私が何をしたかを。その事実が私の心をチクチクと突き刺し、罪悪感を生み出していく。

私はベル様を囮にしたのだ。自分が生き残るために、少しでも時間を稼げるだろうと。

でも、この人は・・・・・・そんな事も知らないで、レベル2でありながら格上のモンスターに私とベル様を逃がす為に全力で戦った。そして打ち勝った。

 

そんな英雄の様な行動を、私は裏切り、逃げ出したのだ。ズキズキと傷口が痛む。

 

「貴女達が生きていてくれて、私は嬉しいです。守ると約束した者を守る事が出来て、しかもランクアップまで出来ました。正に一石二鳥!」

 

思わず目を見開いた。ここまでストレートな言葉はベル様を除いて聞いたことが無かったから。罪悪感は消えないけど、それでも嬉しかった。

 

しかし、お礼を言おうと、謝罪をしようとしたその時だ。

 

「だから大丈夫ですよリリルカ」

 

壁が喜びの雄叫びをあげ、モンスターを吐き出したのは。

 

「――!」

 

妖夢様危ない。そう言おうと息を吸い込んだ時、大量の血しぶきと灰に視界が覆われる。

 

「私はリリルカの事、好きですから」

 

わかっていたんだ。そう確信する。私が逃げ出すことも、私がベル様を囮にすることも。何もかもわかっていてそれでも許した。

普通なら有り得ないはずなのに、ストンと胸の中に落ちた。それが何よりも正しいのだと理解出来た。口が油の塗られた機械のように滑り出す。

 

「・・・・・・私もです。妖夢様」

 

固まっていた頬が動き出す。傷口が塞がり、痛みも無くなった。妖夢様が笑う、私も笑う。なぜなのかはわからないでも、何故だか嬉しかったのだ。妖夢様について理解出来たような気がして・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴェルフ達の経験値が貯まらないと言う理由で、俺はほぼ見学だった。んで、俺達は小休憩を取ることにした。全員で座ってシルさん特製だというサンドイッチを広げた。そして、自己紹介を始めることにしたんだ。

 

「ぼ、僕はベル・クラネルです。ええと武器は短刀と短剣で・・・・・・魔法はファイアボルトです。あ!よろしくお願いします!」

 

あ、そういう自己紹介なのね?てか俺は完全な臨時パーティーだぜ、魔法とか教えなくていいぞ?いやベルのは直接見てるけど。一応忠告しておこうか

 

「私は臨時メンバーです、ベル・クラネルさんの魔法は知っていますが、リリルカとヴェルフは秘匿されて結構ですよ」

 

なんていうか緊張するな、口調がいつもより硬い気がする。やっぱり主人公勢だからかな?

 

「俺はヴェルフ・クロッゾ。ヘファイストス様の所で鍛治師をやってる。よろしくな!」

 

おう!よろしく。と頷いてリリルカの方を向く。するとリリルカは困惑したような表情を見せた。

 

「『クロッゾ』・・・?あの魔剣鍛治師の家名・・・・・・?」

 

あ〜・・・そういやこんなイベントありましたね。少し時間軸はずれてるが。ヴェルフの方を向くとバツが悪そうに後頭部を掻いている。

 

「え・・・クロッゾって?」

 

ベルが俺とヴェルフとリリルカの顔を順番に見ながらヴェルフの家名について尋ねる。俺の出る幕じゃなさそうだ。

 

「知らないようなのでお教えしますね。クロッゾ家は王家に魔剣を献上する事で貴族となった名門鍛治一族です。クロッゾの打つ作品はすべてが魔剣だったと言われており、その威力は海すら焼き払ったそうです」

「う・・・海を・・・?」

 

驚きリリルカの方を見るベル、それにリリルカは真面目な顔で頷く。

 

「ですが、ある日を境に信頼を失い没落したと・・・」

 

リリルカがそこまで言うとヴェルフが髪をかきわけた後首を振った。

 

「おいおい、辛気臭い話は止そうぜ?それに今はダンジョンに潜ってるんだ、どうでもいい話なんて止めてモンスターを倒そうぜ?なっ?」

 

そう言ってヴェルフは大刀を地面に突き刺した。おい、やめろ土がサンドイッチに入ったらどうする。てか俺も欲しいな大刀。壊れなさそう。ここ大事。俺がジーと見ているのに気が付いたのかヴェルフが大刀と俺の顔を交互に見た。

 

「使いたいのか?」

「というか同じような物が欲しいです」

 

間髪入れずに答えた。ヴェルフが苦笑いしている、だって仕方ないじゃないか。壊れない武器、むかーしからずっと探してきたし。お金は沢山手に入ったけど・・・ファミリアの団員に使うだろうし。

 

「わかったわかった。みょんきちの頼みとあらば作ってやるよ!まずはそれに使う材料からだな。」

 

ふむ、材料か。モンスターがドロップするレアイテムは鍛治師が加工すると強力な武具になる。ふむ、なら今度狩りに・・・いや待てよ?今までで取ってきた物を使えば良いのでは?あ、待てよ待てよ?確か・・・ベル君をギルドに届けたベート達は俺達とパーティーをしてその後再び遠征にでかけたから・・・。今は三十階層位か?そこにハルプを向かわせて素材を・・・・・・・・・いや、いきなり強い武器持っても驕りになるだけだからやめよ。

 

「はい!・・・あっ、そう言えばリリルカと私が自己紹介してませんでしたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃地上では、タケミカヅチ・ファミリアに入りたいと言う者達の『第2波』が訪れていた。タケミカヅチは猿師の特製胃薬を飲み、耐えしのいでいた。

 

「お茶です」

 

命が渡すお茶で喉と心を癒し、持ちこたえる。今日だけで一体何人の面接をしたか。それを考えようとして止めた。子供たちの為に、父として主神として全力で働こう、そう誓ったタケミカヅチはめげない負けない泣いちゃダメと己に言い聞かせ踏ん張る。

 

なぜこんなに人が来るのか、それは戦争遊戯による知名度の上昇、ファミリアの女の子が可愛い。など以外にも団長イケメン、主神がイケメンなどの要因も大きい。さらに『武神』に鍛えてもらえると言う理由で強さを求める者達が。『猿顔薬師(モンキー・F・ドクター)』に薬学を教えて貰えると言う理由で医者や薬師を目指す者達が。

 

更に資金難に陥っておらず、ホームには有り余る程の空きがあり、自分の部屋を用意できそう、と良いことばかりなのだ。勿論いきなり団員が増える以上不安定になるが、都合の悪いことには人は目を瞑る。

 

「取り敢えず非戦闘系の人達を優先で行こう」

 

目の下の隈を隠さず独り言のように呟く。手元には冒険者達がそれぞれ持ち寄ったプロフィールのような物と、ギルドから送ってもらったコンバージョンをする者達の詳細な資料が山積みとなっている。

 

「これは波に乗るまでは大変でごザルな・・・」

 

疲れたような声で、天井から落下するように登場した猿師はかすれた笑いを零す。すぐさま命が死んだ目で「お茶です」とお茶を差し出した。それを受け取り、命に疲れを取る薬を渡した猿師はタケミカヅチに向き直る。

 

「拙者と純鈴だけでは教えきれないでごザル、講師としてミアハ・ファミリアにも要請を・・・・・・と思ったでごザルがそれでは向こうの仕事が滞る・・・・・・デュアンケヒト・ファミリアに頼もうにもコチラは仕事の報酬とは別に色々と要求されそうでごザルからなぁ・・・」

 

猿師が自問自答を繰り返し、あれじゃないこれじゃない。とやっている間に桜花が汗だくで駆け込んできた。

 

「はぁ―――組手、は。・・・この人数相手はなかなかにキツイ・・・・・・です、タケミカヅチ様・・・はぁ、はぁっ!」

 

どうやら冒険者希望の者達相手に組手を行っていたようで、しかし、数が数だ。流石の桜花もスタミナが切れた様だ。

様だ。

 

「ダリル、が。・・・手伝ってくれてるからまだマシですが・・・」

 

命が「お茶です」と差し出したお茶を一気に煽り、ダリルが手伝ってくれている事を報告する桜花。すると千草が駆け込んできた。

 

「はぁ、はぁ。タケミカヅチ様!食料やその他備品の調達で報告です!「お茶です」あ、ありがとう命ちゃん・・・。そ!それで北のメインストリート近くの商店街と契約を結ぶか否かと言う判断をお願いします!」

 

タケミカヅチは決意する。

 

「もう・・・・・・募集は締め切ろう」

 

「お茶です」

「あぁありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴェルフ達とのダンジョンを終え、意気揚々と帰宅する。いや〜特に何もしてないけどお話は楽しいよな!リリルカと話しながら時折弾幕で援護してサーポーターとして頑張りました!リリルカと勝負になったけどね。まぁ勿論負けた。割と手加減が難しい。

 

「ただ今帰りましたー」

 

ん、居ないのか?すごい静かなんですけど・・・?

 

いくつかの襖を開けて奥に進む。そして、ガサッという音を聞き取った。後ろか。後方に進んでいくとそこはタケの執務室的な役割を持つ居間だ。

 

そこには――――書類の山に圧殺されかけている家族の姿が・・・。

 

「みょぉおおおおおおおん!?!?」

 

今日も、平和・・・です?!

 




現在、活動報告にてファミリアに入った団員達の名前などを募集しています。

三つの館のリーダー的ポジションにおさまる3人の名前や性別などを読者の皆様に考えてもらいたいのです。

他にもエキストラの名前を募集します。セリフの中や地の文に登場する可能性があるだけなので活躍の場面はほとんどありません。

リーダー達の性格やステイタスは既に考えてあります。活動報告に大まかな物が載っているのでそこを見てください。

ここからは暫くファミリア内でのゴタゴタを描いていくつもりなので、登場する事は多くなると思います。ぜひ考えた物を教えてくれると嬉しいです!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。