オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

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投稿ですー、今回は戦闘多め!


11話「スイッチ!」

うおおおおおおぉ!全開のあらすじぃ!猿家の引越しを手伝いに行った!久しぶりにお婆ちゃんに会った!綺麗な女の人とゴリラに出会った!あ、ついでにモンスター倒してたら花のやつが出てきた!以上!

 

 

―そう、今俺は花のモンスターと戦っている。名前は確か――あれ?ワカンネ。と、とりあえずまぁ置いておいてだな。・・・奴の性能についてだ、打撃は無効、魔力を感知する性質があり、無駄にでかい。まっ、触手をぶった斬ればいいだけの簡単なお仕事ですよ、ハハハ!・・・怪しまれるかも知れないが弱点は教えておこう、スキル的にも後で言い訳はできそうだしね。

 

「皆さん!あのニョロニョロに打撃は通じません!斬撃で戦って下さい!魔法を使おうとすると攻撃してきます!」

 

よし、言いたい事は伝えた、後はティオナとティオネ武器を・・・や、ヤバイそう言えば全部ロキファミリアに返しちゃったんだ・・・。が、頑張れ二人共。

 

「なんで知ってるのよ、ってか私達武器あずけてるから無いわ!」

 

でーすよねー、知ってた、まぁ俺とアイズがいれば――フブッ!!

 

 

「ウグッ!?――ガハッ!!」

「妖夢!?」

oh......よそ見してた・・・そういやコイツ50階層位のモンスターだっけ?わかんねーが不意打ちはどうなんすかねー、痛いなーこりゃあ。一撃で肋骨持っていかれたよ。あぁ・・・拝啓・・・顔も知らない両親へ・・ってんな事やってる場合じゃねぇ!俺は痛みを無視し、飛び起きる。

 

「大丈夫です、人間には206本ほど骨がある・・・らしいです。たかが1本ですよ」

 

ズキズキと痛みが体を走るが我慢出来ないほどではない。ドヤァ!

 

「ハッ!」

 

アイズが抜刀と同時に走り出し、触手による叩きつけや薙ぎ払いを回避し接近。一瞬にして切り刻む。

 

「おおー!もう私達要らないんじゃない?ティオネ」

「用心する事にこしたことはないわ」

 

そしてもう1本を斬り飛ばしたときアイズの表情が一瞬変わる。・・・なるほど、武器がもうダメか。変わろう。

 

「アイズ!もうその武器はダメです!変わってください!スイッチ!」

 

アイズの目が僅かに見開かれる。剣の状態を見極めた事に対してか、はたまた無謀に見える行為に驚いたのか、スイッチと言うただ俺の言いたかっただけのセリフに驚いたのか・・・前者だな。たぶん。

 

アイズと入れ替わる、推定レベルがどれくらいか分からないが正直攻撃が殆ど見えない、上空で待機させている半霊からの視覚情報が無ければ多分1発も避けれないだろう。

 

「くっ!」

 

直撃こそしないが奴が触手を叩きつけた時に瓦礫が飛んでくるのは正直面倒い、当れば怪我は必須だ、・・・だが俺は弾幕ごっこと言う遊びを知っている、やりたいけど他に出来る人が居ないのと、飛べないので半霊から撃ち出される弾幕をひたすら避ける自主訓練だったけど。まぁつまり飛んでくるの物を避けるのは得意な訳だ。

 

とはいえ、ほんの数十センチ横から飛来する瓦礫を避けきれる訳もない、かすり傷が増えていき、傷跡からは血がにじむ。

 

「はぁあ!」

 

こちらも隙あらば攻撃を加えていくが・・・表面を若干削る程度しか効いていない・・・。武器の質もステイタスも全く足りていないのだ。表面だけ硬いという可能性もあるか。・・・とはいえ普通の冒険者ならばここで諦めるだろう、自分の体力は削られ傷だらけになり、しかし自分の攻撃は通じないのだから。

 

「ちょ、ちょっと!逃げなさい!貴女死ぬわよ!?」

 

だが侮る無かれ、おれを「普通」にしてしまったらダンジョンはとうの昔に攻略完了してるぜ?俺は背中のもう一本の刀を引き抜く。

 

「・・・ふふ、試してみますか?」

 

フッフッフッ、植物に生まれてきた事を後悔させてやろう・・・。ほんの少しだけ怖いが仕方ない・・・クックックッ。食らうがいい自らをも焼く灼熱の剣、朧・焦屍剣をなぁ!更に!速攻魔法!煉獄切りを発動!チョー燃えるぜ!ウオォォォォアッチィィィイ!

 

右手の長刀で朧・焦屍剣、左の刀で煉獄切り。夢のコラボレーションってやつさね。・・・あ、熱くなんか無いんだからね!

 

「ぐあああああああああああっ!っく!」

 

ウオォォォォアッチィィィイ!かっこつけたけどやべー!・・・こういった炎を纏わせたりする技は魔力を消費する、つまりは奴のターゲットは俺に絞られる訳で、奴は触手の1本を俺に振り下ろす。俺は左にサイドステップして回避、そして弧を描くように右下から振り上げ触手を切断する。

 

「ええ?!魔法?!」

 

や、やべぇよこれ。煉獄切りだけで良かったかも知れない・・・いやでも斬った感じだと刀の切れ味が足りないな、朧・焦屍剣で強引に焼き切ってる感じだった、つまりは朧・焦屍剣が必要なわけで・・・やべえよ右手が美味しそうな音たててるよ!ジュージューいってるよ!

 

その時、蛇のような見た目をしていた触手が開く、人などパクリと一口で・・・ハッ!まさかパックンフラワー!?

 

「えぇ!?蛇じゃなくて花!?」

 

ティオネが驚きの声を上げる、さっきからいいリアクションですね。口の様になっている花が高速で俺を食らおうと突っ込んでくる。正直、コイツを倒すだけなら苦労はしないと思う。ただ現在の戦場がオラリオの街中である、という事が俺に広範囲攻撃をさせてくれない。長刀と刀を鞘に納め、刀の鞘を腰に移動させる・・・鞘が焼ける音がする。―先手は譲ろう、だが俺はその先をゆく。

 

「―奥義 天翔龍閃――」

 

この技を使う限り、俺は絶対に後出しで相手よりも速く打点を加えなければならない。・・・まぁ後出しジャンケンは最強って事さ。だが武器の切れ味が足りない以上ほかの何かで補う必要がある、まぁ焼き切るだけなんだけどさ。

 

「―【朧】っ!」

 

眼前に迫っていたパックンフラワーは真っ二つに斬り裂ける。・・・ドヤァ!合体技だぜドヤァ。とはいえこのままだと斬った触手にぶつかってどの道ヤバイ、なら・・・。某VRMMOの二刀流スキルを借りるとしよう。

 

「スターバースト・ストリーム!」

 

もちろん武器切れ味が足りない以上焼き切るという行為が必要なわけで振り切った状態から左手で背中のもう1本の刀を抜き放ち叫ぶ。ウオオオォォ!両手がアッツーい!!朧・焦屍剣でヒートブレードの如く赤く輝いているのにスターバースト・ストリームのエフェクトで青く輝きなんかもう凄いことになっているよ!

 

「はぁあああっ!」

 

バラバラに斬り飛ばした触手は近くにボトボトッと生々しい音を立てて落ちた。半霊でチラッと後ろを見ればティオナが唖然としているのが分かる、ふっ、俺に触れると火傷をするぜ?(現在進行形で火傷中)

 

後は本体を叩くだけ。本体はでかい花だろうか、変わった所は。・・・だがここで困った事が1つ。俺は武器を落していない、しかし最早右手に感覚は無くなっていて、いつ武器を落しても可笑しくないという事だ。左腕はまだまだ使えるし、幸いアイズの武器もまだ完全に壊れてしまった訳では無い。とはいえ不安要素はまだある、確か原作ではレフィーヤの魔法で一撃で仕留めていた、もしかしたら一撃で仕留めないとダメみたいなやつかも知れないし・・・あんまり原作から乖離させるのもあれだし、てことでレフィーヤに魔法をぶっぱなして貰おうそうしよう。あれ?なんか痛みのせいか上手く思考が・・・。

 

「レフィーヤ魔法を!一撃で倒せる魔法使ってください!時間は稼ぎます!」

 

そうだ、時間稼ぎが必要だな。スキルのお陰であらかたコイツの攻撃パターンもわかった、時間稼ぎならまだまだできそうだ。

 

「私達も!」

「ええ!任せてられないわ!」

「うん。」

 

おお!これは夢の共演ってやつかい?まさかオラリオ最高峰の冒険者達と一体のモンスターを相手にするなんて夢のようだ。だがこれでレフィーヤが魔法を詠唱するまでの時間を容易に稼げるだろう。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】」

 

暴風が吹き荒れる。ええ?!何事?!俺はアイズが血迷ったのかと思ったがそんな事はなく、俺とティオネが先程たっていた足元から触手が飛び出して来ていたのだ、ナイスだよアイズ!しかし真横で暴風なんか吹いたら軽い俺は吹き飛んでいく訳で、あ、ティオネさんも軽いよ?でかいけど。(何がとは言わない)

 

「あぐっ!いたたた・・・大丈夫?」

「うぅ・・・はい・・・大丈夫です」

 

俺を受け止めるティオネのさり気ない気遣いに感謝しつつ、レフィーヤに魔法詠唱をしてもらうためには時間を稼がなくてはいけない、アイズがエアリエルを使っている以上接近戦は無理だ、とか考えていうちにアイズの剣がぶっ壊れる。アイズは仕方なくエアリエルでぶん殴る事にしたらしい。

 

「【ウィーシェの名のもとに願う 】」

 

それと同時に詠唱が始まった、エアリエルとレフィーヤの魔法では魔力量に差がある。持続的に魔力を消費するエアリエルと、溜めてから放つ長文詠唱ではきっと奴の優先度は違うのだろう、急に目の色を変えて(目ってどこだろう)レフィーヤを狙い始める。・・・ここは俺に任せろ!

 

「させません!」

 

迫る触手を防ぐのは正直俺のステイタスじゃ無理だ・・・だがここには俺以外にも冒険者は居るのだ・・・。それは―

 

「――大丈夫か・・・名も知らぬ少女よ」

 

低い声が聞こえると同時に触手が粉々に切り刻まれる、男は身長2mを超える巨体で筋肉質、そして何より頭に二つの可愛らしい猪の耳を乗っけている。―そうティオn・・・オッタルだ。

 

え?

 

「【森の先人よ、誇り高き同胞よ。我が声に応じ草原へと来れ。】」

 

詠唱は続く、確かに時間は動いている様だ、ただこの瞬間、目を瞑り一生懸命魔法を詠唱しているレフィーヤを除き、俺を含めて全員が固まった。誰もがこう思っただろう。・・・オッタルかよぉぉおおおおおお!?と。

 

「・・・騒ぎを聞きつけてな、もう一度聞くが・・・大丈夫か?」

 

殆ど一定の音程で俺の安否を事務的に聞いてくる、しかしその表情はどことなく俺の身を案じている様にも見えた、いやいや、自意識過剰だな。落ち着いてちゃんと返事しなきゃ。

 

「だだっだ大丈夫ですっ!?」

 

落ち着いてねぇ!?全く動揺を隠せてねぇよこれ!

 

「元気はある様だな、安心だ」

 

そう言って微笑むオッタル、どことなく無理をしている様に見えるが俺って外見子供だしな、安心させようと慣れないことをしているのだろう。や、優しい・・・。

 

「【繋ぐ絆、楽宴の契り。円環を廻し舞い踊れ。至れ、妖精の輪。どうか――力を貸し与えてほしい】」

 

・・・って詠唱の第一段階が終了したみたいだな、あと少し踏ん張れば・・・!俺が前に進もうとすると目の前に大きな手が。

 

「ここは俺に任せてくれないか?新人を護るのも俺の勤めだ」

 

オッタル・・・あんたいい奴だなぁ・・・。でもさ、首を突っ込んだのは俺なんだ、最後までやらせてくれよ。

 

「【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に風(うず)を巻け。】」

 

「すみません、私が始めた戦いです、私には終わらせる義務がある」

 

俺の言葉にオッタルは目を見開く。そして頬を緩めニヤリと笑う。

 

「・・・思い違いだったか?・・・いや、予想以上だな・・・名は?」

「魂魄妖夢」

「・・・魂魄妖夢、悪かったな、駆け付けるのが遅れた」

 

遅れてなんかないさ、むしろナイスタイミングだ、こうして会話をしている途中も大剣を片手で操り、レフィーヤに迫る触手を防いでいた。・・・強いな、まだまだ勝てそうにないわ・・・こりゃ。

 

俺は刀を構える、残る触手は2本、―あと1本くらいは持っていくか・・・。これはとある死神がつかった・・・いや、この技こそがその男がその男たる為の一撃。唯一の必殺技。膨大な霊力を使い斬撃を巨大化させる・・・ただそれだけの技だ。しかし、それゆえに強い。

 

「行きますっ!月牙ぁ――天衝っ!!」

 

オッタルの後ろから飛び出し、逆袈裟斬りの要領で放つ。霊力の斬撃は舗装された地面を抉りながら突き進み、触手を吹き飛ばし本体にもダメージを与え、奴は大きく怯む。今しかない。

 

「【閉ざされる光、凍てつく大地。吹雪け、三度の厳冬――我が名はアールヴ】 行きます!」

 

レフィーヤの詠唱が完了した、後は放つだけだ。

「いっけえぇえ!レフィーヤっ!」とティオナが応援する。しかしその時だ、後は放つだけ、放てば勝てると確信していたからこそ俺は油断していた。

 

突如モンスターから細い触手が伸びてきて俺の四肢に巻き付き引き寄せる。細いと言っても俺の腕くらいには太い。っていやいや!そんなこと言ってる場合じゃねぇ!止めて!ランボーする気でしょ!

 

「くっ!これでは撃てません!」

 

レフィーヤが暴れようとする魔力を押さえつけながら叫ぶ。そこに極めて冷静な声が響く。

 

「撃て、【千の妖精(サウザンド・エルフ)】」

「な何言って!?」

レフィーヤが戸惑いそう言ったと同時にオッタルは駆け出す、いや、駆け出した。アイズをも超える敏捷で俺に接近し体にまとわりついた触手を俺に一切の傷を付けることなく切り払って見せた。カッコイイぞーオッタルー!

 

「なにをしている、撃て」

 

「は、はい!ウィン・フィンブルヴェトルっ!!」

 

時間さえも凍らせるその魔法は一切の慈悲なくモンスターを凍らせる。戦いは終わった、それを理解すると同時に両腕が今更のように痛みを訴えてくる。右腕は焼け爛れ、手のひらは一部が黒く染まっている。

 

なんて言うかオッタルマジかっこいいってのが俺の感想かな、強いし優しいとは・・・これで主神がフレイヤじゃなければ完璧超人なのに・・・いや、フレイヤだったからここまで強くなったんだろうけど。俺の元にアイズ達が駆けてくる。

 

「「大丈夫(ですか)?!」」

 

あったりまえよ、俺がこんなところで死ぬ玉だと思うか・・・って玉ねぇやおれ。とりあえず大丈夫と伝えておこう。しかし俺が何かいう前にアイズが口を開く。

 

「・・・【猛者】と知り合いなの?」

 

いやいや、俺そんなに顔広くないからね?せいぜいロキ・ファミリアとミアハ・ファミリアと買い物に行く街の一部くらいしか顔広まってないよ?まぁ、オッタルとは今知り合った仲ですかね?

 

「ええ、たった今知り合いましたよ?」

「あ、いやそうじゃなくて・・・」

 

俺の返答にティオナが「あはは・・・」と苦笑いしながらいつの間にか俺達の近くまで来ていたオッタルをチラリと横目で見る。流石のティオナもオラリオ最強さんの前では持ち前の明るさを発揮できないと見える・・・。

 

「あはは冗談ですよ、初対面です、知り合いに猪さんはいません。」

 

笑いながら怖い事言ってるよこの子、誰の子ですか?親の顔が見てみたいぜ!・・・ひ、ひっでぇ自虐ネタ・・・。

とりあえずお礼をしなきゃね、お礼は大事、乞食にも書いてある。

 

「ありがとうございます、アイズ、ティオナ、ティオネ、レフィーヤ、オッタルさん。お陰で助かりました」

 

俺は感謝の気持ちをこめた言葉に何故か口を開けたまま固まるティオナ、な、何だろうなんか変な事言ったかな?

 

「妖夢ちゃんが・・・さん付けした・・・?」

 

え?そこですか?別に付けて欲しいなら付けるけど・・・あ、いやここはあれだ特別扱いにしようかさん付け。んー、オッタルには勝てなさそうだし絶対に勝てない人にはさん付けとか?んー、それは嘗められてると取られるなー、じゃあ普通に何となくでいいか。いや、あれだな武人って感じもするし。

 

「んー、何となく付けてみたんですよ?なんか武人って感じですし」

 

ティオネがあー確かに、と呟く、アイズはオッタルの事をジーっと見ており、レフィーヤはあわわっと慌てている。そんなこんなしていると色々と人が集まってくる、それはギルドの人だったりこの場の者に関係のあるファミリアの人だったりただの野次馬だったりだ。そんな中誰よりも先に桜花と命に守られたタケが走ってくる。

 

「妖夢!大丈夫か!?」

 

なんかすっごい血相変えて走ってるんだけど!?あれ、これもしかしてもしかしなくても怒られる感じか?!い、いやだ!お尻ペンペンは嫌だぞ!!

 

「わ、わ、わわ!タ、タケおちおち落ち着いてくだしゃい!?大丈夫大丈夫ですから!お仕置きは止めてくださーい!!」

 

だ、誰かに助けを求めよう!こ、この中で1番頼りになりそうな人は・・・アイズは天然だからダメ、ティオネはバーサーカーだから参加してきそうだからダメ、レフィーヤは気が弱いからダメだ、ティオナは・・・ニヤニヤしてるからだめだ!命・・・はなんか眉毛がつり上がってるから無し!桜花は・・・目が合ったら微笑まれた、あれは頑張れよって言ってる目だ・・・。終わった、知り合い全滅だよ。流石にオッタルに頼むわけにもいかない・・・、甘んじて受けるしかないか・・・。

 

「た、タケ?お手柔らかに・・・」

 

「無事みたいだな、はぁ・・・言いたい事は沢山あるが・・・まずは状況を教えてくれないか?」

 

よ、良かった流石に状況を理解出来てないらしい。まあ、ある程度把握してると思うけどね。おれが状況を説明しようとした時

 

「・・・む」

 

あ、なんか俺の手をみて眉間に皺寄せてる。桜花たちもそれに釣られて俺の右手を見て息を飲んだのがわかった。・・・まぁ焼け爛れて一部黒くなってるからね、仕方ないね。ふっ、この程度の痛み表情には出さんよ。

 

「・・・・・・妖夢。・・・自身を傷つける技は使うなと言った筈だ。」

あー、こりゃ完全に切れたな、説教が何時間続くのか・・・。

するといつの間にかロキもやって来ていてこう切り出す

 

「ならどうや?ウチのファミリアで話さんか?なんかウチの子供たちが世話になったみたいやし・・・・・・猛者も含めてな」

 

と目を開いて言う、おお、こわいこわい。しかしオッタルは「フレイヤ様に呼ばれている、ここで失礼する」とクールに去っていった。どうやら今晩はロキ・ファミリアで食事の様だ、・・・何だかロキ・ファミリアとよく会うなー。とりあえずタケに謝らな、くちゃ?・・・あれ?な、なんだ世界が回る・・・

 

「タケごめんなさ・・・およ?な、なんで回る・・・むきゅう・・・」バタッ

 

おい!しっかりしろ!とか聞こえる・・・な、なんだ?マインドダウン?いや、魔力の消費はそこまで無かった筈・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し前に遡りタケミカヅチ達はいっこうにトイレから帰ってこない妖夢を心配し、オラリオの街に飛び出していた。

 

「遅い・・・遅すぎる。」

「では俺達が探してきましょうか?」

 

桜花がタケミカヅチにそう提案するがそれは止めた方がいいとタケミカヅチは思う、何故なら彼等がまだ挑んだことの無い階層のモンスターが多数だからだ。近くにいたギルド職員エイナ・チュールの話ではモンスター達は一斉に広場の方に向かったらしい。・・・光が見えた、とも言っていたから妖夢がいる可能性は高くなっていく。

するとエイナがタケミカヅチ達に声をかける。

 

「神タケミカヅチ。モンスターの討伐へはアイズ・ヴァレンシュタイン氏が向かいました、ですのでもうすぐ安全になるかと」

「そうか、じゃあ向かうぞ」

 

第一級冒険者が向かったならもう事件は解決しているだろう、ならば妖夢の安否が気になる。タケミカヅチはもう待っていられない、という風に駆け出す。桜花たちもそれを守るように走っていく。

しばらく走ると現場が見えてきた、エイナやその他ギルド職員、ロキ・ファミリアの団員などもどうやら向かうらしい。

 

 

 

「妖夢!大丈夫か!?」

 

タケミカヅチの視界に映った妖夢は全身すり傷だらけで服の至る所がボロボロになっていた、きっとアイズ・ヴァレンタインとやらが駆けつけるまで必死に戦っていたのだろう、タケミカヅチはそう思って少しだけほっとする。

 

「わ、わ、わわ!タ、タケおちおち落ち着いてくだしゃい!?大丈夫大丈夫ですから!お仕置きは止めてくださーい!!」

 

何故か妖夢はお仕置きされると思っている様だ、俺は褒めようと思ったんだけどな、と内心苦笑するタケミカヅチだが妖夢の右腕を見た瞬間思わず声が出てしまう。

 

「む」

 

焼け爛れ赤くなり、手のひらに至っては黒くなっている。焼けた皮膚はびらびらとめくれ非常に痛々しい。それで尚さも何事も無かったかのように振る舞う妖夢にタケミカヅチは深い怒りを覚えた。

 

「・・・・・・妖夢、・・・自身を傷付ける技は使うなと言った筈だ。」

 

分かってはいる。そう言った技を使わなければならない状況だったのだろう、見れば剣姫に猛者までいるのだ、きっと何かあったのだろう。それでもタケミカヅチは許せなかったのだ、ロキの提案が無ければそのままギルドの治療施設に強引にでも運び込みそのままお説教へと発展していただろう。

 

「タケごめんなさ・・・およ?な、なんで回る・・・むきゅう・・・」バタッ

 

突如妖夢はバランスを失ったかのようにふらつき倒れる。タケミカヅチは慌てて妖夢を抱き抱え込み、声をかける。

 

「おい!妖夢!しっかりしろ!大丈夫か!くそマインドダウンか?」

「しゃーない、ウチのファミリアに来てくれへんか?妖夢たんは乗り気やったみたいやし、アイズたんが妖夢たんのお陰や言うてたしな、ぜひ招待したい・・・・・・それに今回の事件・・・どうせあいつの仕業やろうし」

 

タケミカヅチはそれを聞きロキを睨む、いや、正確にはロキの言った「あいつ」を。話は聞きに行こう、妖夢を狙ったのか、偶然なのか。

 

「・・・わかった、手当てをさせてくれ。・・・ありがとうな、ロキの子供たち、妖夢を助けてくれて。」

 

妖夢には彼女達に何か礼をさせる必要があるな、随分と迷惑をかけているし、そう思い腕の中で眠る妖夢の髪をそっと撫でるのだった。

 




いやー物語が進まないねぇー。30話位でちゃんと終わるだろうか?

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