やはり三浦優美子の青春ラブコメは幕を開けたばかりだ。   作:Minormina

6 / 9
あーしさんの誕生日に合わせました!……と本当なら喜びたいところですが、まぁ詳しくは本編で。

……とにかく、誕生日おめでとう!(苦笑)




三浦優美子は予想外の人物と出会う

 なんだか心の真ん中にぽっかりと穴の開いた気分だった。ユイにも本心を打ち明けることもできないでいるし、不本意ではあるけれども「獄炎の女王」といわれてる手前、他の女子からも敬遠されるところもあるし、こんなところでもし弱みなんかみせたらおそらくあーしは格好の獲物になってしまう。…っていうかまずあーしのプライドがそうさせないと思う。

 

(こういう時って、なにかに打ち込んだりするって言うけど・・・)

 

 ふっと教室のあーしのロッカーを見てみると、袋に入ったラケットとジャージが入っていた。テニスウェアはないけど、どうにかこれでテニスができそうかな・・・。なんとなく更衣室へと向かってジャージに着替え、放課後のテニスコートへと向かう。

 

 もちろん、放課後はテニス部が活動してるはず。・・・前みたいに割り込む気力は、今のあーしにはない。あわよくば練習に参加させてくれればいいな、って感じだった。

 

「・・・・・・三浦さん・・・・・・?」

 

すごく女子みたいな声がしたのでふっと振り返ってみると、

 

「・・・戸塚・・・?」

 

テニスラケットを持って緑のジャージを着た、・・・たしか戸塚彩加だったけ?がいた。

 

「……うん?三浦さんもテニス部だったけ?」

 

「……いや、違うんだけどね…?」

 

あーしがジャージにラケットを持っていることが不思議なのか、戸塚は少し首を傾げてこんなことを言う。そして、

 

「あのさ、……少し、練習参加させてくれないかな……?」

 

自分でも不思議に思うような発言だった。普段のあーしなら絶対言わないような台詞。それがなぜかためらうことなく出てきた。

 

「……?……え……あ、ああいいよ!?三浦さんがいいなら!」

 

一瞬ぽかんと半分口を開けたまま固まってる戸塚。……そりゃ無理もないか……。だってあーしは去年ヒキオと戸塚に思いっきりケンカ吹っかけたワケだし。……まぁあそこに雪ノ下がいたのも原因かもしれないけど。

 

戸塚は「ちょっと待っててね」と言って部員が練習しているコートの方へと走っていく。

 

(……一体何するの……?)

 

コートの方からは戸塚のホイッスルの音と何やら言ってるのがかすかに聞こえるけど、どんな話してるのかはわからない。しばらくして、戸塚が戻ってきて、

 

「これから僕とシングルスで練習試合してくれないかな……?」

 

「……へ……?」

 

予想外の申し出だった。なぜあーしに試合申し込んでくるのかよくわからないんだけど。

 

「……去年さ、僕たち三浦さんたちと試合したでしょ?……そのとき思ったんだ。やっぱ三浦さんってテニス強いなー……って。確かに八幡とか雪ノ下さんと何かあったのは事実だけど、僕は純粋に三浦さんがすごいな……って思って」

 

あははー……とちょっと照れながらいう姿は女子にしか見えないんだけど……ってそんなことじゃなくて、

 

「……それじゃホントにあーしでいいの?」

 

「うん!」

 

楽しそうに頷く戸塚。彼は純粋にテニスを楽しんでるんだ。強いとか弱いとかというのにこだわらずに。それからコートに入ったあーしはコートのフェンス越しにあーしらの試合を見守る部員たちをバックに、久しぶりの真剣試合を始めるのだった。

 

______

 

結果は3セットやって2-1であーしは負けた。……たぶん1時間ほどは試合していたのか、時計を見ると最終下校時刻が近づいている。にしても、まさかここまで強くなってるとは思わなかった。

 

「今日はありがとね、三浦さん」

 

笑顔でそんなことをいう戸塚。どこか隼人とは違う清々しさ、というか……なんと言えばいいかわからないけど、何かしらすっきりとはした、そんな試合だった。気づいたら、

 

「……こちらこそ」

 

……なんて柄にもないことを言ってしまうあーし。そんな様子にきょとんとして再び固まる戸塚。……なんか既視感ってこんなことを言うんだっけ。

 

「……うん!……それじゃまたね」

 

またね、というのが何を指しているのかはわからないけど、少なくともあーしはその声がどこか嬉しかった。

 

そのあと着替えたあーしは部活棟から下駄箱を目指して少し急ぎ足で戻る。そもそもこんな時間になるなんて思ってもなかったし。そんなとき。

 

「……なぁ三浦」

 

「平塚先生?」

 

背後から何か声をかけられたとおもったら平塚先生だった。……でもあーしなにかした?平塚先生はしばらくあーしを見てから、

 

「……いや、なんでもない。……まぁその様子じゃおそらく大丈夫だろう。……悪いな、引き止めて。早く帰るんだぞ」

 

そう言って踵を返して職員室へと戻っていく。平塚先生が何を言いたいのかよくわからないまま、あーしは首を傾げつつ再び家路についたのだった。

 

______

 

夕食を済ませてお風呂も上がったあーしは、とりあえず勉強を済ませてから、ベットに横になる。といっても、まだ寝るわけじゃなくて、天井を向いてスマホを触っていると、

 

(……ん?って海老名からじゃん)

 

バナーにメッセージが表示されるので見てみると、

 

海老名姫菜 >あまり何があったかは追及しないけど、なにかあったら相談して欲しい 23:19

 

彼女らしからぬ言葉だけど、あーしは結局海老名にも迷惑かけてた、ってことか……。あいつはあいつであーしのことを心配してくれてたんだ。……でも、これはあーしがいつか自分で決着つけなきゃダメだから。

 

(……ホントにそんなことできるの、あーし?)

 

海老名への返事を打とうとして固まる。……スマホを支えた右手を天井に向けたまま。

 

三浦優美子>……とりあえず今のところは大丈夫だし 23:24

 

とにかく反射的にそう送ってしまうと、

 

海老名姫菜 >……本当に? 23:26

 

海老名のその一言がまるであーしの心を覗き込んでいるかのように、深く突き刺さる。彼女はもともとそんな詮索ばかりするようなキャラじゃない。……だからこそ、余計にそう思う。

 

三浦優美子>……海老名ってばしつこくない? 23:29

 

そう返してあーしはばたっとスマホを持ったまま、腕を力なくばさっとベットに沈めてしまう。

 

(……結局、あーしはまだ向き合えてないってわけか……)

 

大きなため息をつくが、誰も見向きはしない。ここで泣いたとしても、誰も気づきはしないだろう。

 

「……うぅ……」

 

誰もいない部屋の中で、あーしは意識を手放すまで嗚咽を漏らしていた。




今書いてて思ったんですけどあーしさんちょっとセンシティブすぎる気がしてきました……。でもあーしさんとエンジェル戸塚(誤字にあらず)がまともに会話してるなんてたぶんないと思いますが、これはこれで書いてて面白かったです。

……あれ?いつの間にかPVが30000超えてたけども、気のせいかしら?いろいろな人に読んでいただけてるってことでしょうか。


PS;実はこれまでのところにちょっとした仕掛けというかなんというかを入れてたのですが、思ったよりも分からないものなのですね(ボソ)。……引き続き感想や評価を募集してまーす(ログインなしでも感想書けるようにしました!)。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。