やはり三浦優美子の青春ラブコメは幕を開けたばかりだ。 作:Minormina
それでは第4話、三浦さん回をどうぞ。
あーしは西の空に赤く映えて沈んでゆく太陽を眺めながら、ただ時を過ぎるのを待っていた。まだ3月で少し肌寒い時期なのに、そんなことに構うこともなく。
(・・・なんで振られちゃったんだろう・・・)
さっきからこんなことの繰り返し。恋をするのなんて初めてじゃないはずなのに。人を好きになることなんて初めてじゃないのに。・・・なんとなく上着のポケットに入ってたウォークマンを取り出してテキトーに音楽を聞いてみる。シャッフルにしてみたのでなんだかにぎやかなJPOPが流れてくるけれども、歌詞なんて頭に入ってこやしない。
(はぁ・・・・・・このあと、もし隼人と会ったらどんな顔すればいいの?)
もしクラスがちがったっとしても、どっかでばったり会っちゃったりしたら、あーしはどう声をかけたらいいの?・・・それこそ隼人に会ったら目の前で号泣するなんてことを今のあーしならするかもしれない。でも、涙なんて出ない。どうして?こんなに苦しいのに。悲しいというのに。
・・・♪張り裂けそうな胸の奥で 悲しみに堪えるのは何故?
え・・・、あれ・・・なんであーし、泣いてるの?一旦まぶたからこぼれた涙がとめどもなく流れてゆく。
・・・♪好きなのに 泣いたのは何故?
・・・どうしてなの?…ってなんだ、ただ涙なんて流すきっかけがなかっただけなんだ。……上着がぬれることなんて気にせずにあーしはそのあともただ暮れ行く夕陽にむかって涙を流し続けた。
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それから2、3日して春休みの宿題を片付けて少し休憩していると、ケータイがぶるっと震えた。
(・・・ん?誰からだろう・・・?)
机の端においているスマホを見てみると「由比ヶ浜結衣」って・・・あれ?これ通話?あわてて通話ボタンを押すと、
『あー優美子!?3日も連絡ないから心配したんだよ?』
「ごめんごめん。・・・ケータイ電源落ちてたから」
とっさに思いついたうそをつく。本当は誰とも連絡なんて取りたくなかったからサイレントマナーにしてただけなのに。・・・でもなんでこんな春休みにユイがわざわざ電話を?
『明日さ、葉山くんたちとディスティニーランド行くって話だったじゃん?』
「そ、そうだったわね。・・・それで?」
葉山、という名前が出てきたときにドキッとする。この数日まったく隼人とも、海老名とかとも連絡を取っていない。
『それでね、明日10時に舞浜駅待ち合わせでいいかな?』
「・・・ごめん、ユイ。あーし明日行けそうにないからさ、隼人たちに伝えてくれない?」
それだけ言うのが精一杯だった。そうしてあーしはユイの返事を聞く前に電話を切ってしまった。
(ホントごめん、ユイ・・・)
あーしはその場でケータイを握り締めたまましばらく動くことができなかった。
……よくよく考えたらユイってヒキオのことが好きなんだよね。ユイがいつからか活発で自分に正直になったのはもしかしたらあいつのおかげなのかもしれない。でもさ、ユイが未だにヒキオに想いを告げないってのはやっぱり「今の関係」を壊したくないから、なのかな……。なんか恋愛ってわからなくなってきたかもしれない。
どこか気分が晴れないから、軽くジャージを羽織って出かけてみることにする。……誰にも会わなければいいのだけど。なんとなく大型のショッピンモールまで来てしまったけど、まぁひとまずスタバでひと息でもつこうっと。
まだすこし寒いから温かいキャラメルマキアートを頼んで、冷たくなった両手を温める。ほんの少し熱いけれども、なんだか心があたたまる心地がする気がした。そうしてしばらくはあんなことがあったことなんて忘れつつキャラメルマキアートを飲んでいると、
「ふぅー、ちょっと疲れたからスタバでも寄っていくべ」
「もうー、先輩はもう引退なんですからそんなに気をつわなくてもいいですから」
(……え?なんでここに戸部と
幸い、というかあーしは割と窓の近くのカウンター席で端っこに座っているからまぁあーしだとバレないとは思うけど……。
「んじゃここでいいか?」
「そうですね」
そういって2人はあーしからすこし離れた2人席に座った。でも、この位置に座られたらあーしは動くにも動けなくなってしまった。
(……ホント、あーしって何してんだろ……)
そんなあーしには気づかずに、戸部たちは話を続ける。
「そういえばさ、昨日隼人に会ったんだけどなんだか暗くてさー。……いろはすなんか知らない?」
「私に聞かれても困りますよ戸部先輩。……ってか奢ってもらってありがとうございます」
「いや、そんなことはいんだべ。……で、ホントに隼人のこと何か知らんの?」
「……本当に知りませんよ。わたしに聞くんだったら、三浦先輩に聞いた方が早いんじゃないですか?」
「……あいつに聞くのちょっとなんかなぁ……」
「戸部先輩って三浦先輩が苦手なんですか?」
「そんなことねぇけど、あいつに隼人のことを聞くってなんか悪いだろ」
「……それもそうですね」
なんて会話を10分ほどしてから2人はスタバを出て行った。……おそらく隼人が暗いのはたぶんあーしのせいなんだろうけど、今のあーしにはどうすることもできない。
(すっかり冷めてしまったなー……)
いつの間にか聞き耳を立てていたせいか、あったかかったキャラメルマキアートがぬるくなっていた。
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それからもいつの間にか数日が経って始業式の日になってしまった。運がいいのか誰にも会うこともなく、クラス替えの表を見て教室へと向かう。他に誰がいるのかとかあまり気にすることもなしに。
とりあえず席についてぼぅーとする。スマホを取り出して時間を潰すなんてことも考えることもなくホームルームまで待っていると、……うん?なんだヒキオか……。
「……三浦………?」
「…ヒキオ?…おはよ…」
一応挨拶を返しておく。まぁ席はとなりなんだし……。まさかことあとでああなるとはしらずにあーしはことあともただただ時間をつぶすのだった。
よくよく考えたら2日連続で投稿してることに気づきました。不定期なんて言っておきながら今のところ一週間ペースをなんとか維持できてます笑。
次回はまだどうするか未定です。なんか案はないかな……。
追伸;まだまだ評価や感想を募集中です。「こうして欲しい」とか「ここを直して欲しい」とかあれば送ってくれると幸いです。