神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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『--大日本ラジオ、臨時ニュースです。本日未明、108個目の立方体による選別が終了し、最後の神の子が誕生しました。繰り返します--』

ヘリコプターのラジオから聞こえる声を聞き、天谷は表情を変えた。天谷は肩に置いたプロペラを捨てると、言う。
「あ、そーだった。約束してたんだった。また、あの場所で逢おうって……」
「同窓会か何かか?」
丑三のどこか的を射ているようないないような質問に、天谷は「うん」と返す。
そのまま立ち去ろうとする天谷に、丑三は立ち上がると声をかけた。

「……待てよ。せっかくだから、オシャンティに決めた方がいい。

髪。切ってやろうか?」


第60話---何の為に

「俺に……何か?」

高畑はこちらに聞いてくる。しまった!名前を言うべきじゃ無かった!

俺が慌てていると、明石が口裏を合わせてくれた。

「あ、キミのコト、TVで見たんだ。最初の神の子って……だからつい、声かけちゃって……はは……」

明石の言葉に高畑も納得したような顔をすると、再び質問してくる。

「てゆーか、キミ達。同い年ぐらいだよね?もしかしてキミも神の子?」

「え?」「あーうん……そんな感じ」

高畑は納得したように頷く。そして俺達の顔を交互に見た。

「あのさ、ちょっと聞きたいんだけど……」

高畑は一呼吸おいて、言う。

 

「俺達って、何の為に生かされたんだと思う?」

 

何の……為に……?

 

「あの、死のゲームをクリアしてから、ずっと考えてたんだ……でも全然答えが出なくて。世界は俺達の事を『神の子』とか言って騒いでるけど、俺にはそんなコト、どーでもよくて……

 

……あのゲームで死んでいった、好きな人のコトしか考えられなくて……」

 

こいつ……俺達と同じだ……

リアスやアーシア、仲間達を失って、抗い続けてる俺達と……

 

「あ……ゴメン。こんなの、会ったばかりの人に聞く事じゃ無いよね「わかるよ……その気持ち」え?」

いつの間にか言葉が、口から出ていた。

「俺もキミと同じ、大切な人達をあのゲームで失ったから」

俺の頭の中には、散っていった仲間達が浮かんでは消える。

明石が俺の言葉を繋いだ。

 

「『何の為に生かされた』のかなんて……俺にもまだわからないけど……キミはそんなに苦しまなくていいんじゃないかな。

 

大事なのは『何の為に生かされた』のかじゃなくて、『何の為に生きる』かだと思うから」

 

その言葉は、俺の心にも響いた。『何の為に生かされた』かではなく、『何の為に生きる』のか……俺は何の為に生きるんだろう……

「ありがとう……いい奴らだね、キミら。

キミらは?キミらは何の為に生きるの?」

 

その言葉に、明石がはっきりと答える。

「……俺……ケンカ別れした親友がいるんだ。そいつにちゃんと謝るまでは、死なないって決めてる」

「俺は……死んでいった仲間の為に。あとは、死んでない仲間とまた会う為に」

「……そうなんだ、うまくいくといいね」

「「ありがと」」

俺は、高畑に聞いてみたくなった。

「……お前は?お前は何の為に生きるんだ?」

 

その言葉に高畑は一瞬考えた後、堂々と告げる。

 

「俺は……このゲームを仕組んだ奴をぶっ殺す!

おかげで今、決心がついたよ」

 

「神を……ぶっ殺す?」

神……カミをぶっ殺す?

 

その言葉は俺に激しい衝撃を与えた。

 

今の俺達なら、カミも殺せるんじゃないか?

生き残った10人はみんな『戯』を使える。更に俺達のうち4人は悪魔……人よりもかなり能力が高い。

今のカミは俺達を舐めている……今なら、あいつを殺せる?

 

「じゃあ俺、そろそろ行くわ」

その言葉と共に、高畑はこちらに背中を向ける。それを明石が止めた。

「また、どっかで逢えたら、その時はよろしく」

「!……へへ。よろしく」

高畑と明石は固く握手を交わした--

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

アイムホーム(ただいま)」「戻ってきたぁ!」

丑三と光圀はスタッと着地する。眼前には、先に影踏みを終えた6人がまとまって何かを見ていた。

「お、何それ?マンガ?」

そういう光圀の方に、その本が渡される。光圀が読もうとしたそれを丑三が奪い取り、読み始める。光圀も丑三の肩に頭をおいて、一緒にそれを眺める。その顔がだんだんと険しくなってきた。

 

「『まめまき』……『すなとり』……『七×七不思議』……どういう偶然だ?」「解析中(アナライジング)……」

 

その時。

 

「何でジャマすんだよ姉ちゃん!!ちゃんと俺、あの本使って予定通り選んだじゃん……!!」

クラスハウスの外から、カミのさけび声が聞こえてきた。玄関のドアがゆっくり開く。そこから、カミが現れた。しかし、どこか焦っているように見える。

「かみまろの選別が遅いのがいけないんだろぉ……!?こっちはもぉ『戯』も教えたし、戦う準備出来てんのにさぁ……!!何で横取りされなきゃいけないわけぇ……!?

 

たった4億年早く生まれただけでこれだもんなぁ……あ」

カミはこちらに気づいた。そして外に再び声をかける。

「姉ちゃんストップ……アイツら、もぉ帰ってきて「そんなのカンケーないの!」!?」

 

女の子の声がしたかと思ったら、カミの腹部に巨大な鉛筆が飛んできた。カミは白目を剥き、悶える。

玄関の方を向くと、1人の女の子が立っていた。

フリフリがたくさんついた子供っぽいゴシック調の服を着ているのは、それ相応の見た目をした女の子。カミが姉ちゃんと呼んでいるのが彼女かはわからないが、少なくとも丑三達にはそれがカミの姉には見えなかった。むしろ、妹のように見える。

 

「もともと、マナが思いついたことだもん!ルールはマナが創るの!マナがダメって言ったら、ダメなの!」

「だったら最初から、一緒にやろうなんて……言わないでよねー!!?」

マナ、と名乗った少女に向けて、カミはビームを放つ!しかし……

「だってしょうがないじゃん」という言葉と共に、そのビームは方向を変え、カミへと戻っていった。自分の技を受けたカミは壁に叩きつけられ、倒れる。

「かみまろに『戯』あげたのは我ながら正解だったけど、見てたらすっごい面白くて楽しそうで、マナも選別(ゲーム)やりたくなっちゃったんだから。

 

カミーズJr.(この子)達、マナがもらうね」

マナは恐ろしいオーラを放ち、カミーズJr.の前に立つ。しかし、

「ダメーーーッ!俺の!!」

その言葉と共にカミが指を動かすと、

 

やえちゃんが、消えた。

「!?やえちゃん!?」

 

「あ、コラ!マナのなのぉ!!」

マナも負けじと指を振る!すると今度は、紫村と涙ちゃんが消えた。

「絶対渡すもんかぁ!!姉ちゃんのバカぁ!!!」

その言葉と共に、残りの全員も何かに引っ張られたような感覚に襲われる。

彼らが最後に聞いたのは、マナの拗ねたような声だった。

 

「カミのバカ。もぉ知らない」




そろそろ出席者も始めないと……

今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!

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